仮想通貨革命 (The Virtual Currency Revolution)

仮想通貨革命-ビットコインは始まりにすぎない by 野口 悠紀雄

野口悠紀雄

1940年東京生まれ。
63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。
一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、
2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。

ビットコインをはじめとする
「仮想通貨」が、
世界で注目を集めている。

管理主体を持たない通貨、
国家の枠組みを超えた通貨として
従来の通貨を脅かしつつあり、
その技術革新はより広範な分野に
影響を及ぼすとみられている…

起こり始めた通貨革命のインパクトと、
現代の通貨の問題点、
そして通貨革命によって経済・社会が
どう変わっていくのかを述べる…

目次

はじめに

第1章 マネーの革命が始まった

第2章 きわめて斬新なビットコインの仕組み

第3章 ビットコインを支える技術

第4章 現代社会におけるマネーの仕組み

第5章 マネー革命は社会をどう変えるか

補 論 公開鍵暗号と電子署名

仮想通貨革命

仮想通貨革命

Amazonに移動する…

MEMO

仮想通貨革命

◆仮想通貨の投資ではなく、積極的な関与を…

ビットコインを、
「どうしたら儲かるか?」という観点から
見ている人が多い。

その典型は、
「いま買えば、将来価値が上がるだろう」と
考えてビットコインを買う人々だ。

つまり、ビットコインを投資の対象と見ているのである。

しかし、ビットコインへの投資は勧められない。

危険すぎるのだ。

これまでも価格変動が激しかった。

それに、仮想通貨として、ビットコインは唯一のものではない。

競合するコインがすでに多数登場している。

ビットコインは先行しているとはいえ、
先行者が勝つ保証はない。

また、「マイナーになって、
マイニング作業に参加すれば儲かるのではないか?」
と考えている人もいる。

ビットコインのマイニングは、
専用の機械を用いないと成功しないような
難しい作業になってしまった。

しかし、もっと簡単に採掘できるコインもある。

では、そうしたもののマイニングに参加すれば
「儲けられる」だろうか?

確かにマイニングは、ビットコインを支えるための
重要で不可欠な作業である。

しかし、それで「儲かるか?」と言えば、疑わしい。

カリフォルニアのゴールドラッシュの最大の教訓は、
「マイナーは儲からない」ということなのだ。

投資やマイニングより重要なのは、
仮想通貨がもたらす社会の変化を正しく予測し、
それに適応することだ。

大きな変化だから、
誰もが影響を受ける。

新しい社会で有利な立場につくことを考えるべきだ。

◆ビットコインは通貨ではなく
プラットフォームだと考えるとスッキリする…

◆仮想通貨の種類

▶POW(プルーフ・オブ・ワーク)
▶POS(プルーフ・オブ・ステイク)
▶POB(プルーフ・オブ・バーン)
▶Consensus Ledger(コンセンサス・レジャー)

◆日本から外国への送金コストは高い

世界銀行が発表している「G20諸国からの送金コスト」によると、
G8(主要8ヶ国)の平均は約7%だった。

G8の中では、日本がもっとも高い。

最近15%を切ったが、これまでは17%程度だった。

◆国際送金がビットコインに代替えされる

ビットコインを用いれば、
地球上のどこへでも、ほぼゼロのコストで送金できる。

このことの意味はきわめて大きい。

ビットコインについては、
個人の利用が注目されている。

しかし、個人はコストにそれほど敏感ではない。

安いとわかっていても、
惰性で従来の方法を変えないことが多い。

それに対して企業は、
コストの差に敏感だ。

明白な利益の機会があり、
競争圧力が十分強ければ、
必ず採用する。

これは、銀行にとって深刻な事態である。

外国為替業務が侵食されることになるからだ。

2012年の全世界貿易量は約1500兆円だ。

仮に為替スプレッド(手数料)を含めた銀行の手数料が
この4%であるとすると、60兆円になる。

この1割がビットコインに移行するだけで、
銀行の収入は6兆円失われる。

銀行の経営基盤は大きく揺らぐ。

◆マイクロペイメントが引き起こす社会革命

現在の送金コストは、
先進国でも送金額の2~3%だが、
これがゼロに近くなることの効果は、
きわめて大きい。

利益率が2~3%より低い事業
(現在の送金システムでは成立しない事業)も
経済的に成立しうるからだ。

そのひとつは、
マイクロペイメント(きわめて少額の支払い)だ。

これが実現すれば、
従来はできなかったことが可能になる。

最も明白な例は、
コンテンツの有料化である。

100円未満の課金が可能になれば、
コンテンツを切り売りできるようになる。

そうなれば、広告以外の収入源を得られるようになり、
バナー広告は一掃できる。

インターネットが普及して以来、
コンテンツ販売業は深刻で根源的な問題を突きつけられていた。

コンテンツは、究極的にはゼロの価格でしか提供できないと
思われていたのである。

しかし、マイクロペイメントが可能になれば、
事態は大きく変わる。

また、途上国における送金コストは、
先進国よりさらに高い。

それどころか、銀行システムが存在しないため、
そもそも送金が不可能な場合も多い。

ビットコインで送金できるようになれば、
途上国の経済は大きく変わる。

◆日本のマスメディアは、
仮想通貨(ビットコイン)をどう評価するかについて
態度を決めかねている。

「まったく斬新なものだが、今後の成行きが注目される」とか、
「規制・監視が必要」などという類の、
腰の引けた扱いが多い。

こうした評価の根底にあるのは、
「責任ある主体が発行・管理しない通貨など、
広まるはずがない」
「どこかに技術的または経済的な欠陥があるに
違いない。だから、ビットコインを所有したり
使用したりしていれば、いつか大損害を被る」という考えだ。

しかし、ビットコインは、
きわめて重要な発明なのである。

送金コストがきわめて低いため、
これまで不可能だった経済活動が可能となる。

他方で、決済制度や通貨制度、ひいては国家の存立基盤にまで
重大な影響が及びうる。

価格変動が激しいのは事実であるし、
バブル的要素が含まれているのも、
たぶん間違いない。

しかし、そうした表面的現象に目を奪われていると、
事態の本質を見抜けなくなる。

◆仮想通貨はIT革命の第三の贈り物…

第一はPCであり、第二はインターネットである。

これらはすでに世界を大きく変えた。

ただし、これだけでは十分ではなかった。

経済活動には常に送金という行為が伴い、
これについて従来の体制が続く限り、
「産業革命以前への回帰」は、
完全な形では実現しない。

しかし、いまコンピュータ技術の結晶である
新しい通貨(仮想通貨)が、
世界を変えようとしている。

◆多くの人は、ビットコインに中央銀行の管理がないことを捉えて、
通貨ではありえないと言う。

また、金(きん)などの物質資産の裏付けがないから、
信用できないと言う。

この二つの点で、ビットコインは
これまでの人類が築き上げてきた通貨の
常識にさからおうとするものであり、
したがっていつかは破綻すると言う。

しかし、金の裏付けや中央銀行による管理が
通貨の必要条件かと言えば、
そんなことはない。

預金通貨は中世イタリアの両替商で始まったが、
このときすでに通貨は金貨ではなくなっていた。

モノから情報に進化したのである。

そして、17世紀までは、中央銀行のない通貨体制が続いた。

ビットコインは、この頃の通貨によく似ている。

だから、通貨革命とは、17世紀以前の体制への回帰
だと言えなくもない。

さらに言えば、IT革命自体が、
回帰的な性格を強く持っている。

それは、産業革命以前の世界、
つまり小規模な独立自営業者の経済への回帰である。

ドイツの哲学者ヘーグルの生んだ「弁証法」を知っているだろうか。

弁証法において、日々の生活や仕事に最も役立つのは
「螺旋的発展」の法則である。

これは、物事は直線的に発展するのではなく、
あたかも螺旋階段を登るようにして発展する、
というものである。

この螺旋的発展がまさに通貨の世界でも起きているのである。

ビットコインは17世紀以前の体制への回帰であるが
インターネットを活用することによって
使い勝手をワンランク上げているのである。

電子メールは「ハガキ・手紙」を螺旋階段的に
発展させたものであり…

ヤフオク(Yahoo!オークション)は「昔のセリ」を螺旋階段的に
発展させたものであり…

ビットコインは通貨を螺旋階段的に
発展させたものである。

◆仮想通貨は、これまでの体制とは、
さまざまな点で折り合わない。

だから、多くの国は、これを国家に対する
反逆であると見なし、排斥しようとする。

たとえば中国がそうだ。

人民元からビットコインへの流出が起こり、
それが続けば国家存立の基盤が脅かされかねない
事態に陥ったのである。

しかし、一党独裁国家の中国でさえ、
この動きを止めることはできない。

中国ではICOが禁止され、
仮想通貨の取引所も10月末ごろまでには
閉鎖されることになった。

だが、中国の取引所が閉鎖されても
中国人は日本、韓国などの取引所に
移動するだけである。

その証拠に直近の日本の仮想通貨の
取引所が全世界の取引の50%を越えるようになった。

仮想通貨の取引を完全に禁止するには、
インターネットの利用を禁止するしかない。

いくら一党独裁の中国でも
インターネットの利用を禁止するのは難しい…

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