中央銀行が終わる日

中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来 by 岩村 充

岩村 充

1950年、東京生まれ。
東京大学経済学部卒業。
日本銀行企画局兼信用機構局参事を経て、1998年より早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授…

フィンテックはマネーの流れをどう変えるのか。

日銀を飛び出した経済学者が、
ビットコイン等の仮想通貨の仕組みをわかりやすく解説し、
マイナス成長と大格差時代を生き抜くための新たな通貨システムを提唱する…

目次

第1章 協調の風景―良いが悪いに、悪いが良いに(協調か競争か/戻ってきた流動性の罠/閉じた選択肢の前で)

第2章 来訪者ビットコイン―枯れた技術とコロンブスの卵(ビットコインの要素技術/コロンブスの卵はどこか)

第3章 ビットコインたちの今と未来―それはどこまで通貨になれるか(ビットコインからビットコインたちへ/それはどこまで通貨になれるか)

第4章 対立の時代の中央銀行―行き詰る金融政策とゲゼルの魔法のオカネ(中央銀行は成長とともに生まれた/金融政策は使命か重荷か/ゲゼルの魔法のオカネ)

第5章 中央銀行は終わるのだろうか―ビットコインから見えてくる通貨の未来(ビットコインから何が見えるか/通貨独占発行権は必要か/再びハイエク)

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MEMO

中央銀行が終わる日

◆ビットコインの価格は大きく変動する

そうした価格変動は、投機的な関心をビットコインに引き寄せる誘引になるが、
他方ではビットコインを文字通り貨幣として使おうとする人たちにとっては心配の種になる。

ビットコインの価格がいつ暴落するか分からないからである。

もし何らかの原因でビットコインが他のアルトコインなどに取って代わられるようなことがあれば、
そとのきにビットコインをたまたま掴んでいた人は大きな損失を被ることになる。

まるで、バブル崩壊時の不動産投資のようである。

それがビットコインの最大のリスクである。

◆ビットコインを決済手段としてみれば、
それは「なかなかの優れもの」と評価することができる。

評価できる理由は、
なんといっても送金、
とりわけ国際送金におけるコストの安さ。

たとえば一般的な銀行システムを使った国際送金の手数料は
1件あたり数千円かかる。

ところが、ここでビットコインを使えば、
当事者が払わなければならない手数料は桁違いに安いものになる。

ビットコインを使った送金の場合、
そこでマイナーに支払う手数料は1万分の1BTC程度が標準のようである。

国内あてか海外あてかは関係ない。

ビットコインは公開鍵から作り出したアドレスに紐付けて婚姻の「所有者」を確定しているだけだから、
国内あてか海外あてかを区別する方法自体がそもそも存在しない。

そこで、この手数料水準を現在のビットコイン相場に換算すると5円から数十円という金額になる。

銀行の送金手数料と比べて桁違いの安さである。

ビットコインは、送金コストという点では銀行システムなど遠く及ばぬほど経済性を示してくれる。

ビットコインの送金手数料が安いのは、
送金当事者にシステムの維持費用が請求されない。

そのことに負うところが大きい。

ビットコインの安い送金手数料の背景には、
ビットコインの生成と取引確定とをひとまとめにして
マイニングするという作業にする、
そのことで可能になった独特の利益実現構造にある。

◆今のビットコインの設計では、
そこに早く足を踏み入れた人は簡単に大量のコインが発見(採掘)でき、
後から来た人にとっては採掘がどんどん難しくなる。

そうした仕掛けを作っておけば、
うまくすればコインの値はどんどん上がるだろうというのは
容易に想像がつく。

サトシ・ナカモトらはそれを最初から想像しながらシナリオを描き、
そしてプロトコルを設定したのではないか。

もしかすると、彼らは、最初から投機の世界に多くの人を誘い込むことを狙い、
そして、それに成功したのかもしれない。

◆ビットコインの価格が不安定になってしまった理由(ワケ)

コインの原価(マイニングの限界費用)を決めるターゲットの大きさを、
何らかなのスケジュールによって除々に変更していけば、
コインの価格が一定の率に沿って変化するようシナリオを組み込んでおくことができる。

ビットコインの価格が不安定になってしまったのは、
そうしたコインの原価が誰でも予測できるようなルールによらず、
参入あるいは退出するマイナーの数、つまりビットコインの「人気」そのものによって
決まるルールを作ってしまっていることにある。

◆ビットコインの特徴は、
その供給量がプロトコルで事前的に決められていて変動の余地がないところにある。

こうした硬直した供給スケジュールの下では、
ビットコインに対する人気つまり需要が少しでも変化すると、
その価格は大きく揺れ動くことになる。

ビットコインが注目されて以来の価格急上昇と急下落の繰り返しは、
その硬直的な供給スケジュールに原因がある。

これでは、通貨としては欠陥品である。

貨幣としての価値を合理的に予想できないということは、
「将来のビットコイン」と「現在のビットコイン」を交換する、
つまりビットコインの貸付や預金をするときの金利に
相場観が形成できないということである。

あるいは将来の他の通貨との交換取引つまり先物の為替取引が
できないということを意味する。

これでは、ビットコインを買い物の決済に「貨幣」として使うことはできても、
金融契約を支える価値尺度つまり「通貨」として使うことはできない。

では、どうしたら良いのか。

どうしたらビットンコインを貨幣から通貨へと「格上げ」できるか。

答えは簡単である。

ビットコインを生成するときの原価を一定にして
(あるいは、少なくとも合理的に予測可能なものとして)、
その原価を超えたらビットコインの供給がどんどん増えるようにし、
それを下回ったら供給が抑制されるようにすればよい。

たとえば、ビットコインと基本的な構造はまったく同じで、
ただ、ブロックを閉じるときに要求されるターゲットの「大きさ」についての
「ルール」つまり「プロトコル」を変更して、
ターゲットの大きさを一定値で固定し、
ブロック形成の間隔が十分間より長くなろうが短くなろうが
調整しない、そんな方式を採用したアルトコインを想像してみればよい。

◆ビットコインに価値がある理由や
その価値が激しく上下してしまう理由を説明することはあまり難しくない。

ビットコインはマイニングという作業に膨大な電気代がかかる、
そのことによって貴重なものになり結果として価値が生じている。

要するにPOW(プルーフ・オブ・ワーク)が価値を生むと考えれば、
ビットコインの価値に生じている現象のほとんどは説明できる。

※POS(プルーフ・オブ・ステーク)とは?

ブロックチェインの正当性を判別するときの多数決を
ビットコインのように計算パワーで行うのではなく、
持っているコイン数比例の多数決にすればよいという考え方。

具体的には、持っているコインの持ち分に応じてマイナーごとに
ターゲットの大きさが別々に設定され、
持ち分の大きいマイナーは相対的に有利にマイニング競争の
勝者になれるようプロトコルを設定する。

◆ビットコインは
「枯れた技術」と「コロンブスの卵」で
結びつけたところに意義がある。

◆ビットコインが採用しているブロックチェインの決まりごと

ビットコインのブロックチェインには
ブロックが閉じられても、その後に6ブロックつながるまでは
受け取ったビットコインを使用できないという取引上の慣行がある。

この慣行はウォレット(wallet)の標準的な仕様として
維持されているようである。

6ブロックというと、だいたい1時間ぐらいになるから
我慢の範囲内ということか。

ただし、マイナーが生成取引(POW)で作り出したビットコインは、
その後に100ブロックつながらないと使用可能にはならない。

10分間隔で1ブロック作成されるとして
1000分になるから16.5時間ぐらたってから
使用可能になる。

そうプロトコルで決められている。

◆ビットコインが成功したのは、
利己心や競争原理を利用したところにある!

ビットコインが成功したのは、
現金をネットワーク上で作り出したい、
しかも中央銀行のような管理者なしに実現したい
という目標を、技術の高度化という観点から追い求めないで、
人々の利己心を利用してやろう、
あるいは競争原理を利用してやろう、
という方向から達成しようと発想を転換したところにある。

◆キプロス危機で分かったビットコインの価値!

キプロスで金融危機が起こった。

それはキプロスの銀行が海外から
大量の資金を預かり運用していたことにより増幅された。

銀行課税の話が広まると、
預金者とりわけロシアからの預金者は
何とか逃げ出そうとした。

ロシア政府がキプロスの銀行課税を非難したことも
預金逃避に勢いを与えた。

このとき、当局により海外送金監視の網の目を
逃れて資金を国境の外に持ち出す方法として浮上したのが、
「ビットコイン」だった。

そしてビットコインの価格は急上昇した。

それが、玩具だったはずのビットコインが、
本当に使えることに多くの人が気がついた瞬間だった。

キプロスの金融危機でどのくらいの規模の
資金がビットコインを乗り物にして島から脱出したかは分からない。

でも、ビットコインが玩具ではなく貨幣として使える、
しかも国境に関係なく相当の資金を動かすのに
使えるということがわかった、
そのことの方に大きな意味がある。

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