変わった世界 変わらない日本

変わった世界 変わらない日本 by 野口 悠紀雄

野口 悠紀雄

1940年東京生まれ。
63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。
一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。

専攻はファイナンス理論、日本経済論…

世界はこんなに変わった!

日本はなにも変わらない!

アベノミクスでは日本は浮上しない。

日本経済を復活させる唯一の解決策とはなにか…

目次

序 始まりは80年代

第1章 経済思想が大転換した
必然だったソ連崩壊
サッチャーとレーガンの経済改革
市場経済以外はありえない
石油価格の安定とインフレなき成長

第2章 IT革命と市場型経済の復活
新しい技術 ITの登場
アメリカ経済の復活
イギリスの大変貌:脱工業化と金融立国
90年代、アイルランドの驚異的な経済成長

第3章 中国が工業化に成功した
改革開放が軌道に
新しい企業が台頭する
巨大EMSというバケモノ
中国経済の矛盾

第4章 取り残された日本は円安のぬるま湯に
不良債権の処理に追われた日本の90年代
大規模介入で円安に
垂直対水平

第5章 100年に一度の金融危機
アメリカ住宅バブル
金融危機の進展
投資銀行モデルとその破綻
アメリカ経常赤字の拡大
円安バブル

第6章 リーマンショック後の世界
GDPがマイナス10%減
中国の経済対策と不動産バブル
アメリカの金融緩和策
ユーロ危機
米中というG2の時代

第7章.日本経済が抱える深刻な問題
下落する賃金
貿易赤字、脱原発、海外移転
デフレが問題なのか?
消費税増税で財政再建できるか?
社会保障の見直しこそ最重要

第8章 アベノミクスは答にならない
空回りする異次元金融緩和
動かない実体経済
円安は日本人を貧しくする
目標も手段も間違っている

第9章.日本の成長に本当に必要なこと
何をやってはいけないか?
何が必要か?
政府に依存するのは間違い
人材開国による新しい成長に向けて

変わった世界 変わらない日本

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MEMO

変わった世界 変わらない日本

◆日本で雇用を引き受ける役割をになってきたのはサービス産業であった。

しかし、それが介護などの賃金水準が低い分野であったために、
経済全体の所得が低下した。

日本全体の所得水準を高めるには、
生産性の高いサービス産業を雇用を引き受けなければならない。

◆新興国に対しては、売るのではなく
その労働力を使うビジネスモデルを確率することが必要だ。

製造業の海外移転は、この観点から見て正しい。

国内の雇用は、別の方法によって維持されなければならない。

◆新興国の工業化が今後もさらに進展することを考えれば
先進国において製造業の比重が低下するのは、不可避である。

◆現在の年金制度を続ければ、
厚生年金の積立金は2030年ごろに枯渇する。

保険料率の引き上げには限度があるので、
年金の支給額を引き下げなければならない。

最も重要なのは、支給開始年齢の引き上げである。

65歳支給開始では早すぎる。

これを70歳を超える年齢にまで引き上げることが必要だ。

◆デフレと円高が日本経済を停滞させるという人が多い。

だが、本当に恐ろしいのは、
インフレと円安なのである。

インフレが起これば、
消費者の実質所得は減少する。

◆税とインフレは、経済的には同じものだ。

だから、コントロールできないほど膨れ上がった財政赤字は、
ほとんどの場合にインフレによって処理されてきた。

第二次大戦直後の日本がその典型である。

◆歳出構造に手をつけないかぎり、財政赤字は縮小しない。

そして、際限のない増税が繰り返される可能性がある。

歳出のなかでとくに重要なのは、社会保障だ!

だから、社会保障制度を抜本的に見直さないかぎり、
どうにもならない。

◆消費税増税が財政再建に寄与しない最大の原因は、
歳出の伸びが税収の伸びより高いことだ。

◆消費税の税収のうち国が自由に使えるのは、6割未満である。

現在の制度では、2割が地方消費税、さらに国に入った消費税の29.5%は、
地方交付税となる。このため国が使えるのは6割未満である。

◆「賃金下落からの脱却」は、
「デフレからの脱却」によっては実現できない。

「賃金下落からの脱却は」、生産性の高い産業の創出によってしか実現できない。

◆「需要が不足するのでデフレになる」とか
「国内の需要ギャップがデフレの原因」と言われることが多いが、
現実にはまったく逆の現象が起きている。

◆サービス産業の多くは貿易ができない。

だから、サービス産業の価格は主として国内的要因で決まる。

◆工業製品の価格下落は、
国内要因によって生じた現象ではなく、
グローバルな経済構造の変化により引き起されている現象である。

◆雇用増大のためには、
雇用を創出する新しい産業を国内につくるしか方法がない。

◆製造業が海外移転しなくとも、
国内雇用は確保されない。

なぜか?

製造業はいまだに大量の過剰雇用を抱えているからである。

◆貿易収支が黒字から赤字に転換した理由(ワケ)

▶米国の消費ブームの終焉
▶発電用燃料輸入の増加
▶生産拠点の海外移転

◆利益を賃金に分配するのではない!

売上から原価を差し引いたものが利益である。

原価には人件費も含まれている。

賃金が利益を決めるのであって、
利益を賃金に分配するのではない。

「利益があるなら賃金を増やせ」という主張は、
企業会計と賃金決定の基本的なメカニズムに対する無知である。

◆日本の賃金を上昇させるためには
製造業に代わって雇用を創出する
新しい生産性の高い産業が登場しなければならない。

◆日本の産業構造が変わらず、
給与格差が今後も変わらなかれば、
今後も産業全体の平均給与は下がり続けることになる。

そうであれば消費は増えず、
日本経済が活性化することもない。

◆日本経済の問題は、
価格下落ではなく所得下落である…

所得が下落せずに価格だけが下がるのであれば、
実質所得は増加するのだから、
なんら問題とする必要はない。

問題は、所得が下がったことなのである。

つまり、デフレが問題なのではなく、
賃金低下が問題なのだ。

◆製造業の雇用減を介護関係の人員増が補う形で
雇用が量的に確保されたきた。

しかし、介護関係者の所得が低いことから、
経済全体の所得を低下させる要因ともなった。

◆産業間の労働の移動(※)が、
全体として給与を下落させた要因である。

※労働が製造業から医療・福祉に移動した。

◆製造業の雇用が減少して
それを賃金が低い部門(医療・福祉)で吸収しているために、
平均的な賃金が下落した。

◆最も重要なのは、
就業者が製造業で減少し、医療・福祉で増えたことである。

◆給与が下がったのは、
生産性の低いサービス産業だ。

とくに、医療・福祉の給与は某著に下落した。

しかも、この分野は給与水準も低い。

◆どの先進国でも製造業が規模を縮小した。

ただし、経済全体に対する影響は、
とくに日本において大きかった。

それは、製造業に代わる新しい産業が発展しなかったからである。

日本の賃金が長期的な低下傾向を辿っているのは、このためだ。

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