人間さまお断り – 人工知能時代の経済と労働の手引き

人間さまお断り – 人工知能時代の経済と労働の手引き by ジェリー・カプラン

ジェリー・カプラン (Jerry Kaplan)

1952年生まれ。
ペンシルヴェニア大学でコンピュータ科学の博士号を得たのち、名高いスタンフォードAI研究所に入所。

その後いくつもIT部門の新興企業を興して成功、いまは古巣のスタンフォード大学に戻り、法情報科学センターのコンピュータ学部で人工知能の及ぼす影響と倫理について教えている。

起業家、発明家として知られるだけでなく、著述家としても高い評価を受けている。

人工知能技術の進歩に伴い、
「人間さまお断り」の時代は必ずやってくる。

そのときに備え、
人類はどんな手を打つべきなのか?

AI研究に草創期から関わった著者が、
IT起業家としての視点から大胆に切り込む…

目次

はじめに
導入(イントロダクション)――これがあなたの未来です
第1章 コンピュータに釣りを教える
第2章 ロボットに治りかたを教える
第3章 こそ泥ロボット
第4章 神々は怒っている
第5章 おまわりさん、あのロボットが犯人です
第6章 送料無料(フリー・シッピング)の国、アメリカ
第7章 大胆なファラオたちの国、アメリカ
第8章 どんな仕事も自動化できる
第9章 ぴったりの方法がある
導出(アウトロダクション)――これがあなたの子供たちの未来です
謝辞/原注/日本語版解説(松尾豊)

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

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MEMO

人間さまお断り

◆将来的には、
どこの誰、あるいは何ともつかない相手に、
雇用されたり、報酬を支払わされたり、
解雇されたりすることが完全に可能になる。

なぜ人がそんなことに甘んじているのかといえば、
もちろんカネのためである。

◆世の中に自動運転車が普及したら…

車を自分で所有する理由はほとんどなくなってしまう。

なぜか?

必要になったら呼ぶだけでいいから。

今日のタクシーを呼ぶようなものだ。

目的地に着いたら乗り捨てるだけでいい。

専門家の間では、
20年から25年後には、
道路を走る車両の75%が自動運転車になっているだろうと
言われている。

◆職業訓練に関する2つの間違い

1)生徒に何を教えるか、概ね従来の学校に決めさせている
2)「まず学校に行き、卒業してから就職する」のが暗黙の前提になっている

今日の速い労働市場ではもう通用しない。

◆機械(ロボット)の農場労働者のきたるべき大軍は、
人間の労働者より速く作業できる必要はない。

なぜか?

自動運転車と同じく
ロボットは暗闇でも運用できるので、
昼夜の区別なく働けるからである。

◆Amazon vs Walmart

Amazonの場合、
従業員ひとり当たり売上高の過去5年間の平均は、
およそ85万5000ドルだ。

対して、ウォルマート(Walmart)の従業員ひとり当たりの
売上高は21万3000ドルほど。

ここからわかるように、
100万ドルを売り上げるために
ウォルマートはおよそ5人の従業員を雇用している。

しかし、同じ額を売り上げるのに、
Amazonはひとり強の従業員しか雇用していない。

つまり、100万ドルの売上がウォルマートからAmazonに
移動するごとに、
4人の労働者が職を失う可能性がある。

◆Amazon顧客の体験談

米国のある顧客が
42インチテレビの価格ずっと監視していた。

すると値段が一晩で927ドルに下がって、
それから東部時間で午前9時には967ドルに上がって、
午後5時ごろには5-10ドルぐらい下がって、
また一晩明けたら927ドルまで下がる。

3日間つづけてこのパターンを繰り返した。

今日のAmazonは、
いつでも安いという幻想をまだ保っている。

しかし将来は、顧客ひとりひとりに応じて、
会社の利益がちょうど最大になるような
値段と条件を掲示することを、
Amazonのような会社はまったく
ためらわなくなるかもしれない。

◆ジェフが学んだ教訓は、
情報の優位性を重視することだけではない。

その情報から利益を得るうえで、
先進的なコンピュータ技術が
途方もなく役に立つということも
胸に刻んでいた。

Amazonのようなネットショップは、
市場の状況や個々の顧客の行動に合わせて価格を
刻々と変えていくなど、
現実の店舗では考えられないことが可能になった。

そしてそこが、
人工知能、とりわけ機械学習システムが
活用できる場面なのだ。

◆Amazonが第三者に出品を許可している理由(ワケ)

Amazonはライバルに自社の強力なシステムを
利用させることで、公平な競争を可能にしている。

しかし現実には、
この巧妙な戦術によってAmazonは、
さらに2つの潜在的な競争優位を獲得している。

まず、ライバルの売上と価格がガラス張りになる。

そして究極的には、
ライバルの経費を自在に左右する力を
握ることになる。

なぜか?

Amazonが提供するサービスについて、
請求する手数料の割合を勝手に変えることが
できるからである。

たとえば、ある商品の市場を乗っ取りたいとするなら…
ライバルが在庫をストックして輸送するのに対して、
自分が同じ商品を扱うのにかかる費用以上の手数料を
請求すればよい。

これらのビジネス戦術の裏に一貫して流れる思想は、
低価格、すぐれたサービス、公平な競争という
美しい表看板のかげで、
顧客やライバルよりも多くの情報を持つという強みを獲得し、
それをけっして手放さないということにある。

◆Amazonプライムの目的とは?

顧客の負担する費用を
商品の代金と輸送費に分割するのは、
操作しやすいフィクションだ。

最終の値段をいくつかに分割するのは、
真の費用をわかりにくくする
昔ながらの手法である。

Amazonプライムは、
定額の送料を1年分先払いするという方法だ。

その1年間に何度購入していても、
あるいは何度購入することになっても、
払う送料は変わらない。

これによって、
払っているのに送料無料という
矛盾する幻想が生み出される。

送料を先払いすることで、
顧客はほかの店で買う気をなくすだけでなく、
賢い買い方ができなくなる。

Amazonが顧客満足度を重視しているのは、
少なくともこれがひとつの動機である。

満足しているかぎり、
価格に疑問を抱いたり、
ほかの店と比較したりする
理由がなくなっていくからだ。

◆Amazonはユーザーによって価格を調整している?

Amazonの常連客なら
すでに知っていると思うが…

ショッピングカートに入れた商品の値段が、
しばらくするとなぜか変化する。

こういう変動を監視して最安値をつかむのを助けるために、
いまではひとつの産業すら生まれてきている。

ミシガン大学の価格調査の結果、
AmazonのDVDの値段が、
ユーザのブラウザやアカウントによって
最大20%も違うことが明らかになった。

顧客ごとに値段を買えるのは
違法だと思う人がほとんどだが、
基準が差別(人種、性別、性的嗜好など)
にあたる場合を除いて、
そのような商慣行は違法でもなければ
不適切でもない。

こういうことをしているのは
Amazonだけではない。

◆Amazonはどうやって大量の情報を
利益に結びつけているのか?

第一の方法は、
一定の経済的目標を達成するために、
頻繁に価格を調整することだ。

利益を犠牲にして成長することを投資家が
進んで認めているがぎりは、
ここで買えばどこよりも安い、
あるいは少なくともかなり安いという
顧客からの信頼をAmazonは勝ち得ようと努力する。

この目的を達成するには、
実際に値段を安くするのがいちばん簡単だ。

したがって、たえずライバルの値段を監視し、
それに従って自店の値段を調整することになる。

◆ジェフは20年近くを費やして、
個人の、そして集団の購買行動に関して、
かつて例のない大量の統計データを積み上げた。

それには、2億を超す積極的な
購買者に関する詳細な個人情報まで含まれている。

ここへ来るまでにAmazonは
損失を出し続けてきたが、
顧客が継続的に購入することが統計的に確実になり、
新規顧客の獲得コストが顧客の生涯価値に収束したら、
損失が利益に転じるのは確実だった。

◆Amazonの初期のころ、
Amazonがやっていたのは2種のさや取り売買だった。

ある値段で本を売り、
互いに合意できる期間内に届ける。

そしてもうひとつはイングラム(仕入先)との取引で、
これは本を購入して特定の目的地に
配送してもらうという契約だ。

顧客に対する「売り」値をたえず修正することによって、
Amazonは常に一定の値幅(スプレッド)を粗利として
確保していた。

この作戦がうまく行ったのは、
Amazonのほうが顧客よりよい情報をつかんでいたからだ。

具体的には、
どこでどんなふうに買えば安く買えるか
(つまりイングラムで買うことだ)を
知っていたということだ。

これは顧客は知ることができず、
また直接利用することもできない方法だった。

ジェフがいまも当時も理解していたとおり、
データは力なりだった。

◆真の価値は、商品ではなくデータにある

Amazonのジェフ・ベゾスの考え方…

在庫や物流は、
料金を払ってサードパティに任せればよい。

彼のビジネスの真髄は、
本のレビューを蓄積し、
顧客の購買履歴を手に入れることにある。

ほとんどの買い手にとっては、
本の値段よりもそれを読むのにかかる時間のほうが
コストとして高くつく。

読んでみたらつまらなかったというのでは
時間のムダだ。

それなら、経験豊富な実際の書店員の同じように、
顧客自身に商品を評価させてはどうか。

自分の意見を発表し、ほかの読者にアドバイスする機会が
得られるというのは、その労力に対して十分に見合う報酬になる。

ジェフはそのことを正しく見抜いていた。

Amazonのことを「オンライン小売業者」ではなく、
別の呼び方をすることもできる。

つまり、投資会社の株式売買戦略を、
小売商品の売買に応用・拡大した事業と見ることもできる。

◆広告を含むウェブページにアクセスすると、
合成頭脳という舞台裏の珍獣たちのあいだで、
それとばかりに壮大な戦闘が始まる。

リンクをクリックしてから、
実際にウェブページが画面に表示されるまでの
1秒かそこらのあいだに、
何百というトランザクションが
インターネットを猛然と行き来して、
その人の直近の行動に関する詳細情報が
驚くほど大量に収集され、
表示しうる広告のどれに
その人が反応しやすいかが推定され、
インプレッションを与える権利を
求めて瞬時に電子オークションが行われる。

もう少し詳しく説明すると…

人がウェブサイトを訪問したり、
リンクをクリックしたり、
URLをタイプしたりするたびに、
アクセスしようとしているウェブページから、
別のサイトに通知が行く。

訪問しようとしているサイト以外の第3者に、
その人が来るという知らせが行くのだ。

これがどういう仕組み行われているのか、
ここでは重要ではない。

しかしそれがわかれば、
歴史的に学問の分野で発展してきた
インターネットが、
いかにして商業目的に転用されてきたかが
見えてくる。

ウェブページには、
ほかのページへのリンクだけではなく、
そのページの区画、
すなわち「フレーム」内に現れる画像を
表示するファイルも含まれている。

たとえば、
ウェブページに1ピクセルくらいの
人には見えない画像を表示する。

ここがみそなのだが、
その1ピクセルの画像は
どこからくるかといえば…

その特定のウェブページに、
いつどこからその人が訪れたか
知りたい広告代理店などのサーバからきている。

その広告代理店は
メモを残す権利を自動的に与えられている。

そしてそのメモは、
そこを訪れた人のハードディスクに
クッキーとして残ることになる。

このクッキーには、
ユーザーのユニークな識別子が入っている。

この識別子からそのユーザーの
属性を管理しているデータベースを検索して
どんな広告に興味があるかを知ることができる。

そしてあなたが訪問したウェブサイトには、
あなたに興味があると思われる広告が
表示されることになる。

ちなみに、広告主はあなたがその広告に
どんな反応を示したかもわかるようになっている。

つまり、その広告をクリックしたのか、
または後日その広告に掲載されている
商品を購入したかまでわかる。

実際には広告取引所というのが存在していて、
もっとも高額の広告料を提示した広告主の
広告が表示される仕組みになっている。

あるウェブページにアクセスしたとき、
そこから広告が呼び出されると、
情報が広告取引所に伝送される。

するとただちに仲介業者に
競りの開始が知らされ、
仲介業者は自分のPCにクッキーがあるかどうか調べる。

もしあれば、その広告スペースにいくら払ってよいか
決めるために高度な評価作業に着手する。

これまでそのユーザーがどこを訪れていたか、
そして何をしてきたかを考慮する。

その今そのユーザーが訪れているウェブサイトの
ことも考慮する。

最後に、広告取引所は
最高値をつけた入札者に広告表示を認める。

————————————————-
◆失業問題は今後深刻な問題になるだろう。

しかし、それは職がなくなるからではない。

職はあるのだが、
それに必要な技能がどんどん進歩していくせいで、
労働者がそれに適応できないのだ。

◆情報工学の進歩はすでに、
凄まじい勢いて産業と職業を
内側から破壊しつつある。

その進行の速さに労働市場は対応しきれず、
これから状況はさらに悪化していく。

さらに、かつてない新たな形で資本による労働代替えが進み、
生み出される富の配分はそのために
はなはだしく偏って、
富める者だけが
ますます富むということになる。

◆産業の自動化が進むと、
資本さえあれば人の労働力は不要になる。

そして合成頭脳が登場すると、
資本さえあれば人の頭脳も不要になる。

低賃金の労働者と高給取りの経営陣の
あいだで闘争が起こるとマスクスは図式化したが、
それは見当違いである。

真の問題は、
金持ちはほとんど(まったくではないにしろ)
人の労働力を必要としなくなる、
ということである。

◆今日存在する職業のかなりの部分が、
ブルーカラーは労働機械によって、
ホワイトカラーは合成頭脳によって、
まもなく消滅の危機に瀕することになる。

◆人間は性急に
報酬を求める生きものだ!

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