新しいヘーゲル

新しいヘーゲル by 長谷川 宏

長谷川 宏

1940年、島根県生まれ。
68年、東京大学文学部哲学科博士課程修了。

主な著書は『ヘーゲルの歴史意識』―紀伊國屋書店、『ことばへの道』―勁草書房、『同時代人サルトル』―河出書房新社―など。
また『哲学史講義』―河出書房新社、『歴史哲学講義』―岩波文庫、『美学講義』―作品社―は、画期的なヘーゲルの翻訳と評価される。

社会を矛盾と対立のるつぼととらえ、
そのむこうに統一と秩序を見通した哲学者。

壮大で華麗な思考の躍動を平易な日本語で説きつくす…

目次

第1章 ヘーゲルはむずかしいか?―弁証法入門
第2章 『精神現象学』―魂の遍歴
第3章 世界の全体像―論理・自然・精神
第4章 人類の叡知―芸術と宗教と学問と
第5章 近代とはどういう時代か―日本と西洋
第6章 ヘーゲル以後

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MEMO

新しいヘーゲル

◆ヘーゲルの弁証法とは?

ここにヒマワリの種がある。

それを地面にまくと、
芽が出てくる。

やがて芽が伸び、
茎は葉をつけ、
夏になると大きな花が咲く。

花びらが散ったあと、
花の中央にたくさの大きな種がみのり、
年を越して春になると、
この種がまた芽を出す。

それがヒマワリという有機体の生命過程である。

これを弁証法的に表現すると次のようになる。

種が否定されて芽となり、
芽が否定されて茎や葉となり、
茎や葉が否定されて花となる。

花が否定されて種となり、
こうして有機体はおのれにもどってきて
生命としてのまとまりを得ることができるのだ、
と。

弁証法の要項として、
「否定」と「まとまり」の2点にとくに
注意を喚起すること。

普通には、
種が芽を出す、
というところを、
ヘーゲルはあえて
「種が否定されて芽となる」
とか
「種の否定が芽である」
とか、
もってまわったいいかたをする。

否定の働きをぜひとも強調したいのだ。

AがおのずとBになるのではなく、
Aが否定されてBが出てくる。

そのようにAとBとのあいだに対立があり、
その対立が変化や運動の原動力となると考えるのが
弁証法の基本なのである。

もうひとつ、
種から出発した生命過程が、
何回かの否定を経て、
ふたたび種にもどる…

そういう形でまとまりの生じることが、
前出に劣らず重要な弁証法の原則である。

否定に否定を重ねて、
ゆくえの定まらぬ運動が続く、
というのでは弁証法とはいえない。

種が種にもどってくる。

卵生の動物でいえば、
卵から出発して卵にもどってくる。

そういう形で運動がまとまりをもつことを
弁証法は要求するのである。

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