お金の整理学

お金の整理学 by 外山 滋比古

外山 滋比古(とやま・しげひこ)

1923年、愛知県生まれ。
お茶の水女子大学名誉教授。
東京文理科大学英文科卒業。
雑誌『英語青年』編集、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を経て、現在に至る。
文学博士。
英文学のみならず様々な分野で創造的な仕事を続け、「知の巨人」と称される…

人生100年時代を迎え、
「定年後」の時間が断然、長くなった。

「年金が足りない」「貯金が底をつくかもしれない」…
そんな不安の声は尽きない。

しかし、
95歳にして現役で「株投資」を続けている外山滋比古氏は説く…

「もっと前向きに、『老後のお金』の話をしよう」年金、貯蓄、相続、仕事、趣味、そして投資…
「第2の人生」をどうやって面白く生きるか。
そのヒントがここにある。

目次

第1章 もっと「お金」の話を
第2章 「長い人生」面白く生きる
第3章 新しい「仕事」
第4章 実益を兼ねる「趣味」
第5章 株投資という選択肢
第6章 私の体験について

お金の整理学

お金の整理学

Amazonに移動する…

MEMO

◆本来、購入する銘柄を選んでいく際に、
外してはいけないポイントがある。

配当利回りである。

ところが、
売買で利益を出そうという考えが先行すると結果、
ここを見逃しがちである。

配当利回りの数字の変遷は、「会社四季報」などですぐに調べられるし、
2%から3%程度の利回りを約束している企業は決して少なくない。

配当をベースに考えることが、
株投資を貯蓄として考えることにもつながる。

◆株を買ったつもりになってシミュレーションしてみる

  1. まずは新聞を開き、株価欄をチェックする。
  2. 気になる会社をいくつか選ぶ。できれば、自分が株を買うために用意できる元手の額を決めた上で、銘柄をいくつか選択する。
  3. そうして選んだ株を「買ったつもり」になってシミュレーションを始める。このトレーニングを続ける秘訣は、最初から毎日の株価欄をチェックしないことだ。慣れないうちは週に1度、自分で決めた日に見る程度から始める。
  4. 少し慣れてきたら、グラフを作る。自分で選んだ銘柄が、どんな線を描いていて上がっているのか、あるいは下がっているのか。グラフにすると、全体像が可視化されるので、動きがはっきりする。その上で、さらに慣れたきたら、株価を毎日チェックする。そんなことを半年くらい続けたところで、損得をはっきりさせてみる。儲かっているのか、損をしているのかを確かめる。
  5. 実際に、お金を投じて株を買うのは、このシミュレーションがうまくいってからにしたほうがいい。

◆高齢者は、配当を重視し、
配当のしっかりした株を買うのがいい。

◆定年後に新しいビジネスを始めるときも、
あくまで社会貢献や第二の人生の生きがいを主眼として、
大きな儲けを出して事業を拡大させようなどと考えないほうがいい。

同じようなことは、
株投資にもいえる。

◆「儲けよう、儲けよう」と思うから、
結果的に損が多くなる。

あまり考えこまずに買うのでも、
十分に面白い。

持ち金が大幅に減らなければいいや、
配当で得られる金だけで十分だ。

そういう心境に達すると、
結果的に、
大きな儲けが出ていたりする。

儲けようと考えない境地とは、
株価が上がってもすぐに利益を確定しないということ。

やはり長期保有である。

◆素人は、業績が安定し、
しっかりした配当を出す企業を見つけていくしかない。

それはつまり、
きちんとした考えの経営者がいる企業
といういうことになるのだが、
探すのはななか骨が折れることだ。

素人には難しい。

これは素人が株を買うときの一番の弱点といっていい。

その会社の社長をはじめとした経営陣がどういう人たちで、
どういう考えを持っているのかが、
なかなかわからない。

長期的に保有する上で、
もっとも大事な観点のはずだが、
経営者の真の人物像など、どこにも書いていない。

一つは、直接会社に行ってみることだ。

社長に会って話を聞けるわけではないが、
その会社がどんな雰囲気の会社であるかぐらいは
実感しておいたほうがいい。

何よりも、
自分の目で見て考えて、
納得した上で買うことができれば最高である。

◆証券会社は株式のプロだが、
彼らが専門にしているのは「証券会社が儲けること」であって、
「客を儲けさせること」ではない。

結局、証券会社は信用取引で利益を上げているので、
すこし付き合いが長くなると、信用取引を勧めてくるかもしれない。

信用取引はプロでもなかなか成功しない。

何より、一時的に借金をして、
それを元手に投資する仕組みの信用取引は「3分割のルール」にも反している。

◆3分法

低成長の時代に有効な方針とは、どのようなものか。

  • 持ち金の3分の1までは株に投じていい。なるべき保守的で安定した会社を探すこと。そして、いったん買ったら最低でも数年間は保有し、すぐには売らない。購入する株の銘柄は3つ以上に分散する。
  • 生活で使うお金が3分の1
  • 残りの3分の1は、万が一ののお金としてとっておく。

◆日本では、月給のようなかたちでもらう勤労所得は「よいお金」で、
投資などで得た不労所得は「あまりよくないお金」という考え方が支配的だ。

しかし、成長性が見込める企業を探して、
そこにお金を投じていく社会貢献だと考えれば、
株投資を「品がよくない」ことととらえるのが誤りであることは明らかだ。

◆値上がりで儲けることだけが、
株投資のメリットではない。

配当利回りの安定した株を押さえる。

そうすれば、
年金だけを頼りに過ごすより、
しっかりした生活ができる。

◆株投資のリターンを老後の備えとして考えるときに、
忘れてはいけないのが「配当」だ。

銀行預金だと、金利がゼロだが、
株式投資は配当金を受けることができる。

ある程度経験を積んでからは、
配当で生活を成り立たせることを目標にしてもいい。

買った株をベストな時期に売って、
利益を確定させようとしても、
なかなかタイミングが難しい。

その点、配当は基本的に保有していれば自動的に入ってくる。

配当利回りが2~3%の企業は珍しくない。

◆株投資を新しい仕事ととらえることもできるかもしれない。

体力はいらない。

足がうまく動かなくても、
株を買うことはできる。

その意味では、
かなり高齢者がやりやすい仕事と見ることができる。

◆株投資は、
投資先を分散しておけば、
赤字の銘柄が出ても致命的なことにはならない。

逆にいえば、
どんなにうまくやってもいくつか失敗するのが出てくる。

その小さな失敗をうまく活力に変えることができれば、
より健全で健康的、かつ積極的な生き方ができるようになる。

◆大切なのは証券会社に相談したり、
その言いなりになったりしないこと。

どうしたら損が少なくなり、
利益が多くなるか、
自分で考えることだ。

◆働くという意味では日本人は
たしかに真面目かもしれないが、
人生の最後まで、
経済的に自立した生活を送ることへの覚悟が足りない

どうしたら、自立した人生を送れるかを考えれば、
株投資は案外、悪くない選択肢だということがわかる。

◆本気で老後の生活やお金のことを考えれば、
新しい仕事を見つけることと同様に、
株がその選択肢の一つに入ってくるはずである。

株を買うのはオレオレ詐欺で騙し取られるより、
よっぽどマシである。

◆日本人は、
必要以上に株投資のことを口にすることをはばかる。

結果、株を買った経験がない人が、
日本人の大半を占める状況が続いている。

調査によると、
株や投資信託の取引を一度もしたことがない人が
8割以上という数字が出た。

◆カギを握るのは、
定年後の高齢者たちだ。

歳をとっても人生を面白く生き、
経済的にも安定している人を増やしていく。

その結果、
社会保障費の増大に歯止めをかけることに成功したら、
世界中の先進国はこぞって日本に学ぼうとするだろう。

◆シンガポールでは日本を上回るスピードで
高齢化が進んでいる。

それなのに、
経済成長の勢いは落ちない。

理由はいくつかあるが、
そのうちの一つに「高齢者がきちんと稼げている
というポイントがある。

日本では、定年後の継続雇用などのときに
給与待遇を大幅に下げるのが普通だが、
シンガポールではそれが認められていない

多くの高齢者がやる気を出して働ける環境があり、
それが国を豊かにする一因になっている。

◆どうすれば新しいビジネスが成り立つのか、
どうやったらミスがなく仕事が続けられるのか、
考えて工夫する。

失敗のリスクを伴う「実験」の機会があるからこそ、
「思考」が生まれ、新しい「知識」を身につけられる

自宅や図書館、公園などで一日中のんびり過ごしている老後では、
決して得られない人生である。

人生は、成功よりも失敗から学ぶことのほうが多い

定年後の仕事をうまく続けていく上でも、
やはり失敗の経験が大切になる。

◆定年後に稼ぎ口が何もない人生は、
やはり考えものだ。

人生の最後に、
お金が足りなくなって社会保障のお世話にならなきゃいけないというのは、
少し情けないことだ。

もちろん、
本当に困っている人を助けるための制度は必要だが、
一人ひとりが「多少は苦しくても自立して生きていきたい」
と考えることが大前提ではないか。

歳をとってからでもある程度の収入が得られる方法を考える上で、
実益を兼ねる趣味」は心強い味方である。

ただし、甘くない。覚悟がいる。

◆「趣味」がお金になる可能性

動物好きの人なら、
飼い主が旅行などで留守にしている間、
面倒を見るペットシッターがあるし、
子ども好きなら保育士の仕事を補助する、
「グランドシッター」という民間資格を取得してみる手もある。

手芸の好きな女性なら、
編み物をつくって売ってみるのもいいかもしれない。

趣味をお金につなげようとする場合、
起業と同様に助走期間があったほうがいい。

定年退職する10年くらい前から、
仕事につながりそうな趣味を探しておく
という考え方である。

大きな額を稼ぐのは難しいだろうが、
「実益を兼ねる趣味」なら月に数万円であっても、
それほど不満は感じないと思う。

◆94歳の春から老人ホームに入居することにした。
理由のひとつは、年寄りの一人暮らしだと夕食に困るのだ。

朝はファミリーレストランなどで適当に済ませればいいのだが、
夜は食べる場所に困る。

周りに飲食店があるのだが、
酒を飲ませて採算を取ろうとする店がほとんどだから、
食事だけのお客には冷たい顔をする。

老人ホームに入るメリットとは、
食事を提供してくれるところにあった。

ひとり暮らしの高齢者は都会に少なくないと思うから、
酒を飲まなくても嫌な顔をしない食堂を作れば、
案外、流行ることもあるのではないか。

あるいは、
同様の高齢者をターゲットにした食堂を
宅配する事業にも、
可能性があるように感じる。

◆50代になったら辞めるための準備を始め、
目途が立つなら60歳の手前で退職して
新たなビジネスを始めてみる。

そんな流れが面白い。

個人事業主であれば、
自宅の家賃・光熱費・パソコン・スマホ利用料金などを
経費で計上できる

個人事業主に定年はない

自分が続けられる限り、
現役でいられる。

寿命が延びていく時代に、
その点は見逃せない。

◆定年は「延長しない」ほうがいい

たとえ会社が雇ってくれるといっても、
70歳まで同じ会社に勤め続けることは
避けたほうがよい。

むしろ定年を前倒しにするくらいの気持ちがあっていい。

会社に長くしがみつくほど、
定年後に新たな仕事を始めることは難しくなる。

事業を軌道に乗せる上で必要となる
体力もやる気も、
50歳と70歳では大きく違う。

目的はあくまでも、
少しでも長く、
経済的にも精神的にも
自立した人生を歩むことだ。

◆衰退産業にチャンスあり?

これから潰れる出版社は増えると思う。

だからこそ、
規模は小さくても読者が楽しめる本を出す
零細出版社を立ち上げる手があるのではないか。

従業員が2人くらいの出版社なら、
年に2冊くらい本を出して
それぞれ5000~6000部くらいの売上
だったとしても、
なんとかなる。

働いている人たちが一家の家計を支えているわけではないから、
ベストセラーを出して大きく稼ごうとする必要はない。

そもそも目的は大きく儲けることではなく、
充実した定年後を送るための仕事である
という意識が大切だ。

たとえ小さな成功であっても、
それによって感じられる面白さは
格段に大きいものになる。

◆働くことは社会貢献

岐阜県の加藤製作所という会社は、
「日本一の高齢者雇用企業」と呼ばれている。

100人ちょっとの社員のうち、
実に半数近くがシルバー世代だ。

この会社は、
土日祝日も工場を稼働させるため、
「意欲のある方求めます。ただし60歳以上の方」
という求人広告を出した。

すると、100人以上が面接に訪れた。

◆定年後の人生が退屈に見えるのは、
失敗という危険を伴う、
「実験」を避けている
からである。

人間らしい生き方をするために、
リスクを伴う選択は必要だ。

定年退職したら、
あとは安全運転で余生を過ごす…
そんな思考では、
長い人生は面白くならない。

◆一般的な教育では、
まず知識を与え、
その次に思考力を育もうとする。

ただ、その順番だと、
知識が思考の邪魔をしてしまう。

あるべき順序は、
まず実験なのである。

実験、思考、知識という順に
段階を踏んでいくことで、
人間は賢くなる。

実験を繰り返す精神によって考える力が育まれ、
そこからまだ見ぬ新しい知識が生まれる。

重要なのは、
実験が「失敗」を伴うものであるという点だ

試行錯誤を繰り返すことからこそ、
本当の思考力が身についていく。

◆知識には思考を妨げるという弊害がある

知識とはいわば、
「他人がすでに考えた結果」であり、
それを蓄えるほどに、
自分では考えなくなる

逆に、
知識がない人ほど
自分で考えるしかなくなる

◆人生を面白くするためには、
知識偏重でリスクを過度に恐れる考え方を
改める必要がある。

◆節約と貯金に熱心になり、
財産に余裕があれば子どもに相続させるという考え方では、
世の中にお金が回らない。

家族のことばかり優先する個人主義的な思考である。

それでいて、
困ると社会保障に寄りかかろうというのでは、
矛盾している。

◆寄付先の問題はあるにせよ、
子孫にお金を残すことが美徳と考えるのは、
もうやめたほうがいい。

◆親が子どものために家を買ったり、
結婚式の費用を出したりすることは感心しない。

そうした贈与に対して、
国は優遇策を設けているがこれもいけない。

若い世代が、
相続や贈与を期待するようになると、
既得権益の上にあぐらをかいて
真面目に働くなくなる。

何より問題なのは、
若いうちに難局に直面することがなくなるから、
失敗してもくじけない心が育ちづらくなる。

◆「わが子への相続」はいけない

子ども世代への相続自体、
やらないほうがいい。

自分の人生は最後まで
自分で稼いだ金で賄(まかな)い,
死ぬときに残ったお金は寄付してしまえばいい。

親も子も、自立した個人なのだから、
それで何の問題もない。

◆生命保険の加入者は、
先に保険料を払い込む、
契約期間中に不幸があれば、
払込分より多くの保険金が支払われるし、
満期までいけば、
契約時に約束された返戻金が入る。

一見、リスクが少ない仕組みに見えるが、
ここにはインフレの視点が欠けている。

◆一人ひとりが生き方、
考え方を変えれば、
現実は大きく変わる。

いま、高齢者は社会にとって
マイナスの存在だと思われている。

どうすれば
それをプラスに変えられるのか、
考えるのだ。

発想を変えて、
経済的にも、精神的にも自立した老後を目指す。

◆定年後のことを考えるといっても、
将来の不安から、
節約して貯金を増やそうとするのとは違う。

ある程度の蓄えは必要かもしれないが、
それではサラリーマン時代の惰性で
老後を過ごそうとしていることに変わりはない。

結局は、
貯金と年金で老後を乗り切ろうという考え方である。

人生100年時代には
貯金と年金で生きるストック型の人生ではなく、
収入が定期的に入ってくるフロー型の人生に切り替える
必要がある。

◆いま必要なのは、
定年後のお金の備えを社会保障に期待することではなく、
一人ひとりが主体的に老後の人生設計に取り込むこと。

◆どうすれば、
定年後の第二の人生は面白くなるのか。

「生きがい」を探すのである。

常に受け身で誰かに引っ張ってもらう
「グライダー」型の人間ではなく、
思考力というエンジンを備え、
自力で飛ぶことのできる「飛行機」型の人間になる
べきだ。

◆稼ぎを失った定年後の人たちには、
社会保障に頼り切りになるという「経済的」な問題に加えて、
やることがなくなって人生に面白みが感じられなくなってしまう
「精神的」な問題も生まれる。

◆サラリーマン時代の貯金と退職金、
そして定年後の年金や手厚い社会保障があるから、
「死ぬまでお金の心配はしなくていい」という時代は
終わりにすべきである。

社会保障に養われるばかりの人がこれ以上増えたら、
国の財政がたちゆかなくなるのは明らかだ。

そこから目を逸してはいけない。

◆お金は大事だ!

とりわけ長い老後を送るにあたって、
もっとも大切なものはお金だといっていい。

「お金の話」をすることも大切である。

◆日本人は「アリ」でなくて「キリギリス」だった!

サラリーマンは毎月の棒給で当面の生活はなんとかなるから、
適当に消費して、老い先のことまで考えない人が多かった。

「アリとキリギリス」の寓話でいうと、
キリギリス」ばかりになってしまっていた。

とりわけ問題なのは、
日本のサラリーマンの多くが、
自分たちのことを「アリ」だと思って生きてきたことだ。

冬を乗り越えるためにコツコツ働く「アリ」がたくさんいる社会だから、
欧米から「エコノミック・アニマル」と呼ばれるのだと勘違いしていた。

日本人の多くは、
「定年後」という冬の時代の厳しさを真面目に考えず、
なんとなく働き続ける「キリギリス」になってしまった

海外から「エコノミック・アニマル」という皮肉を投げかけられたとき、
私たちが真剣に考えなければならなかったのは「定年後」のことだったのだ。

自分の手にするお金にこだわりの少ない俸給生活者たちが、
本当に「アリ」型の人間なのか。

実は、老後の備えを疎かにする「キリギリス」型の人間ばかりになっていないか、
ということを一人ひとりが考えてみるべきだったのだ。

真剣に考えれば、
会社を勤め上げるだけで、
あとは悠々自適の老後が送れるというのが
幻想だと気づくはずである。

結果として、
老後の安定した暮らしに欠かせない「お金」について、
表立って話題にすることが敬遠される状態が長く続いてしまった。

気が付けば、
事態はかなり深刻だ。

「お金の話をするのは恥ずかしい」などといっている場合ではない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする