脳には妙なクセがある

脳には妙なクセがある by 池谷 裕二

1970年静岡県藤枝市生まれ。
薬学博士。
東京大学大学院薬学系研究科准教授。

記憶のメカニズム解明の一端として「脳の可塑性の探求」を研究テーマとし、
2012年には、これまで未解明だった脳内の神経細胞同士の結合部(シナプス)形成の仕組みを突き止め、
米科学誌「サイエンス」に発表した。
脳研究者の池谷 裕二の著書です。

あまりにも人間的な脳の本性。
最新の知見をたっぷり解説!

不可思議さに思わず驚嘆!

脳にはこんなクセがある!

  • 「行きつけの店」にしか通わない理由
  • 何事も始めたら「半分」は終わったもの?
  • 脳はなぜか「数値」が苦手
  • 「笑顔をつくる」と楽しくなる!?
  • 「心の痛み」も「体の痛み」も感じるのは同じ部位
  • 歳をとると、より幸せを感じるようになる理由
  • 「今日はツイテる!?」は思い込みではなかった!
  • 脳は「自分をできるヤツ」だと思い込んでいる

目次

脳は妙にIQに左右される―脳が大きい人は頭がいい!?
脳は妙に自分が好き―他人の不幸は蜜の味
脳は妙に信用する―脳はどのように「信頼度」を判定するのか?
脳は妙に運まかせ―「今日はツイテる!」は思い込みではなかった!
脳は妙に知ったかぶる―「○○しておけばよかった」という「後知恵バイアス」とは?
脳は妙にブランドにこだわる―オーラ、ムード、カリスマ…見えざる力に動いてしまう理由
脳は妙に自己満足する―「行きつけの店」しか通わない理由
脳は妙に恋し愛する―「愛の力」で脳の反応もモチベーションも上がる!?
脳は妙にゲームにはまる―ヒトはとりわけ「映像的説明」に弱い生き物である
脳は妙に人目を気にする―なぜか自己犠牲的な行動を取るようにプログラムされている〔ほか〕

book970

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MEMO

◆眠くなるから横になるのではなく、横になるから眠くなる

「眠いから寝る」という、
一見あたり前に思える行動も、
間違った表現である。

もちろん、寝不足だったり、
酒や睡眠薬を飲んだりすれば
「眠くなったから寝る」ことはありえる。

しかし、それはごく一部の状況である。

普段は、「就寝時間になったから寝る」のである。

あるいは、「あら、もうこんな時間だ。明日も仕事だし」
と寝ることもある。

いずれのケースも、
眠いから寝るのではなく、
むしろ眠くもないのに寝る。

では、どう睡魔を呼びこむかといえば、身体を使う

寝室に入って、電気を消して、
布団をかぶって、横になる。

すると自然に睡魔が訪れる。

身体をそれにふさわしい状況に置くから
「眠くなる」のである

身体が先で眠気は後になる。

「やる気」も同じである。

やる気が出たからやるというよりも、
やり始めるとやる気がでるのである。

「何事も始めた時点で、もう半分終わったようなもの」
という諺があるが、これは真実である。

◆心と脳の関係について

精神と身体は切り離して考えることはできない。

心は脳にあるのではない。

心は身体や環境に散在するのである。

◆就寝前は記憶のゴールデンアワー

眠っている間は、身体こそ休息しているが、
脳はフルに稼働している。

つまり、脳は私たちが眠っている間も休んでいるわけではない。

睡眠中脳は、「記憶の整序と固定化」を行っている。

したがって、睡眠の効果を最大限に利用するためには、
起床後の朝ではなく、睡眠直前の夜に学習した方がよい

つまり、就寝前は記憶のゴールデンアワーなのである。

◆怠惰のすすめ!

アイデアをひらめいたり、創意工夫に満ちた着想を得るためには
王道」があると言われている。

それは、次の4ステップからなる。

  1. 課題に直面する
  2. 課題を放置することを決断する
  3. 休止期間を置く
  4. 解決策をふと思いつく

この中でとくに、ステップ3が重要となる。

これは「怠惰思考」と呼ばれる行為である。

当面の課題(問題)を放置することは勇気がいるが、
創造のためには相応の熟成期間が必須である。

したがって、アイデアを要する仕事をこなすには、
十分な余裕を持って手をつける必要がある。

自己啓発書や成功哲学書では、
この4ステップを「超意識」または「潜在意識」
の活用法として説明している。

◆睡眠時間について

ヒトは生涯の30%ほど寝て過ごす。

一見ムダとさえ思えるほどの膨大な時間を、
睡眠に費やしている。

睡眠時間は人によって随分異なる。

毎日5時間以内という短眠タイプの人もいれば、
9時間以上の長眠タイプもいる。

睡眠時間が短いことはなんの自慢にもならない。

理由は2つある。

ひとつは、睡眠は必須な生物学的プロセスであるということ。

睡眠を完全に剥奪すれば必ず死に至る、
わずかな睡眠不足でも学習・認知機能が低下する。

睡眠は単なる休憩ではない、

仕事に匹敵(ひってき)する以上の大切な行為である。

短眠を強調することは、
栄養失調や拒食症であることを自慢することに似ている。

もうひとつの理由は、
短眠タイプと長眠タイプには遺伝的要素がある。

人口の5%ほどが短眠タイプが占めると言われている。

◆「ひらめき」と「直感」の違いとは?

“ひらめき”も”直感”も、「ふと思いつく」という状況は似ている。

しかし、思いついたあとの様子がまるで違う。

「ひらめき」は思いついたあとに、
その答えの理由を言語化できる。

その理由が本人に明示的にわかる。

これが「ひらめき」である。

一方、「直感」は、本人にも理由がわからない。

思い至ったまではよいが、
「ただなんとなく」としか言いようがない曖昧な感覚である。

根拠は明確ではないが、
その答えの正しさが漠然と確信できるのが直感である。

そして重要なことは、
直感は意外と正しいという点である。

単なる「ヤマ勘」や「でたらめ」とは決定的に異なる。

自己啓発書では、「ひらめき」や「直感」のことを、
「超意識」として説明している。

◆無意識の学習!

ヒトは意識的に記憶するだけでなく、
無意識にも学習し、成長する。

ただし、無意識の場合、
本人に成長したという実感がないため、
なかなか気づきにくい。

研究によると、
意識的学習より、無意識の学習のほうが、
ヒトの人格や成長に与える影響が
はるかに大きいと言われている

◆健全な精神は健康な胃腸に宿る!
胃腸を健康にすれば、脳も健康になる。

◆脳の健康を保つには?

私たちの胃や腸などの消化器官は脳と密接に関係している。

たとえば、消化器官の出すホルモンには
血液に乗って脳に到達し、
神経機能に影響を与えるものが少なくない。

食欲のコントロールはもちろん、
覚醒状態や記憶力に至るまでが胃腸の支配を受けている。

だから、脳によい食べ物を論じる前に、
そもそも胃腸の具合が脳の状態とリンクしていることを
理解しておく必要がある

近年の「脳ブーム」の影響で、
脳の健康が注目されているが、
内蔵を含めた全身がバランスよく機能して、
はじめて脳の健康を保つことができる。

◆日本人が「RとL」の発音が下手な理由

なぜ私たちは”R”と”L”の聞き分けができないのか?

理由は単純で、日本語に”R”と”L”に相当する発音がないからである。

つまり、日常生活において”R”と”L”を区別する必要がないため、
しだいに区別の能力が退化し、
最終的には日本語の「ラ行」に同化されてしまう。

このように外国語の音韻が母国語の音に飲み込まれてしまう現象を
「認知マグネット効果」と呼ぶ。

たとえば、韓国語を母国語とする人は”Z”の発音が苦手だ。

「座布団をどうぞ」と言おうとすると、
「じゃぶとんをどうじょ」と”J”の発音になってしまう。

これと同じことが、
日本人の”R”と”L”で生じている。

◆長寿と体温の関係について

日本は男女とも世界1、2位を争う長寿国である。

この理由のひとつは、
私たちは日頃から自覚しているように、
野菜や魚などのカロリーの少ない食事を好む傾向があるからである。

しかし、もうひとつ忘れてならない重要な要因がある。

体温だ!

日本人を含むアジア人は、
欧米人にくらべ、平均して0.5℃以上も体温が低い。

ネズミの実験では、体温が0.3~0.5℃低いと、
オスで12%、メスで20%も寿命が伸びる。

日本人の長寿も、この体温が関係あるらしい。

ただし、低体温だと欧米人に比べて、寒がり屋である。

◆もっとも効果的な勉強法とは?

勉強は「入力」を繰り返すよりも、
「出力」を繰り返すほうが、
脳回路への定着がよい

私たちの脳は、
情報を何度も入れ込む(学習)よりも、
その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、
長期間安定して情報を保存することができる。

これを拡大して解釈すれば、
「参考書を繰り返し読むより」、
問題集を繰り返しやるほうが、
効果的な学習が期待できる。

脳は入力よりも、出力を重視した設計になっている。

だから、本を読むときも大事なところに線を引いたり、
端を折っておく(dog-earと呼ぶ)。

そして、読み終えたら線を引いたり、端を折っておいたところを
紙に書いたり、SNSやブログに投稿するとよい。


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