脳が教える! 1つの習慣 by ロバート・マウラー
心理学者。臨床心理士。
UCLA医科大学准教授であり、サンタモニカ・UCLAメディカルセンターでは、研修医に向けた行動科学セミナーの責任者を務める。
医療現場はもちろんのこと、各国企業や英国政府のコンサルタントとしても活躍。
科学的な根拠と臨床医ならではの医学現場でのリサーチに裏打ちされたアドバイスには定評がある。
企業に対しては、「現場の雰囲気を変えて人的資源を活かす方法」、個人に対しては、「たやすく確実に効果が上がる成功と幸せのためのメソッド」を提唱しているロバート・マウラーさんの著書です。
脳科学を理解して行動すれば、
無意識のうちに目標に到達できる!
脳の仕組みを理解しているか否かで、
これからの人生ががらりと変わるでしょう。
- 人はなぜ変われないのか?
- 何かいい方法を知っても、なぜ実行できないのか?
- 仮に実行しても、なぜ継続できないのか?
その答えはすべて、脳が教えてくれる!
ダイエット、語学、人生の目標…
はりきって新しい試みを始めても、
三日坊主でスグ挫折する人と、
歯磨きのごとく無意識の習慣にし、
ラクラク達成できる人がいる。
両者の差は、脳の仕組みを知り、
それに沿って「小さな一歩」を実践しているか否か。
[脳科学] ✕ [小さな一歩の実践] = 目標達成
この、たった1つの習慣を知れば、
あなたの生き方はガラリと変わる!
本書では、まず人間の脳の仕組みを解説している。
人間の脳は、爬虫類脳(大脳基底核)、旧哺乳類脳(大脳辺縁系)、新哺乳類脳(大脳新皮質)の3層からできている。大脳辺縁系にある扁桃体は闘争・逃走反応をコントロールするが、私たちが何かにチャレンジしようとすると脳は「危機」を察知して扁桃体の機能が作動してしまう。
すると大脳新皮質へのアクセスが抑止されて創造性が働かなくなる。何かにチャレンするには、大脳新皮質の創造性の働きがもっとも重要になってくるが、肝心の創造性が抑止されて失敗することになる。この不都合を回避するには、何かにチャレンジするとき、扁桃体に気づかれないような「小さな一歩」から始めて、扁桃体の機能を迂回させればよい。
ダイエット、禁煙、読書、英語の学習といった行動を習慣化させるには、扁桃体に気づかれように「小さな一歩」から始める。そして脳が慣れてきたら、その行動を最終的な目標まで少しづつレベルを上げていく。そうすれば、脳に気づかれないでこれらの目標を達成することができる。
脳に新しいアイデアを考えてもらうには、「小さな質問」をする。「小さな一歩」と同じように、扁桃体に「危機」と悟られないように質問することが大事になる。「お金持ちになるにはどうしたらよいか?」「どうやってやせたらようか?」「どうやって結婚しようか?」といった質問は、あまりにも変化が大きいので「恐怖」を引き起こして創造性が抑止されてるので期待した答えが得られない。「○○するために毎日1分でできることはなんだろう?」といった小さな質問をする。すると扁桃体の機能が迂回されて大脳新皮質の創造性が働き、答えを「直感」「ひらめき」といった形で返してくれる。
目次
第1章 「1つの習慣」だけでうまくいく理由
第2章 小さな質問をする
第3章 小さな思考を活用する
第4章 小さな行動を起こす
第5章 小さな問題を解決する
第6章 小さなごほうびを与える
第7章 小さな瞬間を察知する
MEMO
◆「小さな行動」なら、挫折したくてもできない!
◆恐怖を静め、
「新たな習慣を確立している」と自覚しながら、
小さな一歩を実践するには信じる心と楽観的なものの見方が求められる。
・変化は常に迅速でないといけない
・変化には常に厳しい自己鍛錬が必要だ
・変化は楽しいものではない
こんなふうな言われたら、誰も乗り越えられない。
◆小さな行動を起こす
- 小さな質問をする、小さな思考をする
- 小さな行動を起こす
- いつの間にか無意識の習慣になる(お金、時間、強い意思を必要としないもの)
- 目標に向かって変化を遂げはじめる
変化を起こしたいからといって、
いきなり大胆で大きな試みをしては逆効果だと覚えておく。
大胆な試みの多くは、前途に横たわる障害物を考慮に入れていない。
その点、小さな行動は、時間もお金もほとんど必要とせず、
意志力に欠ける人にも向いている。
小さな行動にごまかされて、脳はだまされる。
◆マインド・フカルプチャーとは?
すべての感覚を使って静かにイメージする新しい技法だ。
「見る」だけでなく、「聞く」、「味わう」、「においを嗅ぐ」、
「触れる」などの行為を実際に行っていると思い込む。
さらに自身の筋肉の働きや感情の起伏までイメージする。
マインド・フカルプチャーを行っている間、
脳はイメージしている行動と実際の行動との区別がつかない。
あらゆる感覚を使って、
頭のなかで数分間、なんらかの「訓練」をしていると、
脳の化学反応に変化が見えはじめる。
マインド・フカルプチャーは、
変化を遂げ、それを習慣にするプログラムのどの段階も活用できる。
多くの人がこれを活用するのは、
どんな行動を起こしたいかわかっているが、
そのための心構えができていいない場合だ。
すべての「小さな一歩を実践する習慣」と同様、
マインド・フカルプチャーは変化に向けたプログラムのどの段階でも利用できる。
◆「脳を目覚めさせる質問」をせよ!
質問は脳を目覚めさせ、喜ばせる。
脳は、たとえばかばかしい質問だろうと
奇妙な質問だろうと、
質問を受け入れ、じっくり考えるのが好きなのだ。
前出の「小さな一歩を実践する習慣」を身につけるには、
「小さな質問」を自分自身にしてみる。
脳は質問が大好きなので、
不安を引き起こすほど大きな質問でなければ
拒絶することはない。
- 年末までにどうやってやせようか?
- 年末までにどうやって金持ちになろうか?
- 年末までにどうやって結婚しようか?
こういった質問はあまりにも大きいため、
恐怖を引き起こす。
たとえ、自分が自分にした質問であっても、
受け取った側に恐怖心を与える。
こうなると、
脳は活発な答えを返すよりも恐怖心を感じ取る。
創造力を抑えこみ、
大脳新皮質(脳の思考部分)へのアクセスがもっとも
必要なときに、アクセスしなくなってしまう。
「小さな質問」をすることで、
大脳辺縁系にある扁桃体の闘争・逃走反応のスイッチは
オフの状態に保たれる。
- 能力アップをめざすとき、自分のできる、ごく小さなステップはなんだろう?
- クレジットカードのローンを減らすために1日5分で何ができるだろう?
このように自分に尋ねれば、恐怖は回避される。
これらの質問は、脳が問題解決に集中し、
やがてそのための行動に集中することを可能にする。
同じ質問を何度も繰り返す。
そうすれば、脳が質問を記憶し、
じっくり考え、やがて興味深く有意義な答えを返してくれる。
自己啓発や成功哲学の本に出てくる「潜在意識」、「超意識」
の働きを脳科学的に言えば、
「小さな質問をして脳の恐怖心を抑え、
扁桃体の闘争・逃走反応のスイッチをオフにして、
大脳新皮質の創造力をフルに発揮させる」と言い換えることができる。
大事なことなので繰り返す。
「小さな質問」を習慣的に繰り返し、辛抱強く答えを待つという、
たったそれだけの行為で大脳新皮質の創造力がフルに発揮される。
「小さな質問」とは、決して過大な要求をしない、
恐怖をもたらさない、楽しみを与えてくれるものでなければならない。
同じ質問を数日間あるいは数週間、繰り返すことで、
それが海馬に記憶される。
そして、脳はその質問に対する答えを探して返してくれる。
これが俗に言う、「直感」とか「ひらめき」である。
それは、お風呂に入っているときかもしれないし、
散歩しているときかもしれない。
いずれにしても、気長に待っていればいつか答えを返してくれる。
◆脳の仕組み
脳は、爬虫類脳、旧哺乳類脳、新哺乳類脳の3層の構造になっている。
爬虫類脳は、朝の目覚め、夜の眠り、体温の調節、心臓の鼓動などをつかさどる。
旧哺乳類脳は、感情・危険の察知、闘争・逃走反応をつかさどる。
そして新哺乳類脳は、創造(文明、芸術、科学、音楽)をつかさどる。
何か変化を起こしたのに、
行き詰まっているというとき、
たいていは旧哺乳類脳(大脳辺縁系)がそれを台無しにしている。
大脳辺縁系には、生き残りのカギを握る扁桃体と呼ばれるものがある。
扁桃体は闘争・逃走反応をコントロールする警報装置である。
差し迫った危機に対して行動を起こすよう、
身体の一部に警報を出す。
すると闘う、あるいは逃げるための身体の能力を妨げる機能をストップさせる。
たとえば、理性的・創造的思考を低下もしくは停止させる。
この闘争・逃走反応には大きな意味がある。
もしライオンが突進してきたら、
脳はじっくり問題に取り込む余裕がない。
こんなとき脳は、それほど重要でない機能(消化、性的衝動、思考)をあっさり停止させ、
ただちに身体を動かそうとする。
今日、扁桃体とその闘争・逃走反応がもたらす現実的な問題は何かというと、
私たちが安全な日常から脱却しようとするたびに、
警報ベルを鳴らしてしまうことである。
脳は、新たな挑戦、チャレンジ、欲望によって、
ある程度の恐怖心が起こるようにできている。
その挑戦がダイエット、禁煙、転職、億万長者になることであろうと、
扁桃体は身体の一部に対し、「動きにそなえろ!」と警報を出す。
そして、脳の思考部分である新哺乳類脳(大脳新皮質)へのアクセスを制限し、
ときには停止させてしまう。
だから、現状を変えようとすると、
大脳新皮質の創造性を制限、停止させてしまうのでうまく行かない。
目標(ダイエット、禁煙、転職、億万長者になるなど)を達成しようとするとき、
もっとも必要となるのが大脳新皮質がつかさどる創造力である。
ところが肝心の創造力が低下(制限・停止)されるのでうまくいかない。
したがって、
目標を達成するには、大脳辺縁系の扁桃体の働きを迂回させる必要がある。
それには、扁桃体に気づかれないような
「小さな一歩」を実践すればよい。
「革新的な試み」を実践すれば扁桃体の働きで創造性が機能しなくなるが、
「小さな1歩」から始めれば、扁桃体の働きを迂回させて、
大脳新皮質が持っている創造性をフルに活用できる。
余談だが、トヨタの「改善」は、
この脳の特徴を100%活用している。
だから、目標を達成したければ、
扁桃体に気づかれない「小さなこと」を実践してそれを習慣化すればよい。
小さなことを習慣化して脳が慣れてきたら、レベルを少しづつあげていく。
これを繰り返していけば、あなたは最終的に目標を達成することができる。
◆「小さな一歩」が人生を変える
老子の「千里の道も一歩から」という有名な格言がある。
小さな改良をつづけ、それが「習慣」として身につけば、
すべては変わる。
変化に向けて、日々小さな一歩を実践する習慣が、
人生で成功して幸せになるためのカギとなる。
なぜ、小さな一歩によって成功するかと言えば、
人間の心(脳)が持っている、
成功や創造性の妨げとなる「恐怖」を迂回しやすくなるからである。
一歩一歩は小さくても、
確実に行動し、習慣にすれば、
やがて大きな目標に到達することができる。
◆脳は変化を恐怖として避ける一方、
創造性をつかさどる大脳新皮質は、
質問を好む性質がある。
質問は、脳を目覚めさせてくれる。
もう、何を始めても長続きしないと嘆く必要はない。
ただ、脳の仕組みを知り、
ごく当たり前どころか、
ばかばかしく思える小さな一歩を実践していけば、
どんな目標も叶う。
◆何か新しいことを始める際に、
脳の抵抗を避けなければならないという大原則がある。
脳は新たな試みに恐怖を感じる性質があることを知らずに、
それを迂回しなければ、何をやってもうまくいかない。
ダイエット、禁煙、英語学習などで失敗するのは、
この脳の性質を知らないからである。
1ヶ月でダイエットといった
「大改革」をしようとすると、
脳のなかの扁桃体がとたんに警報装置を働かせる。
脳は「変化=危機」ととらえるため、
防御体制になってしまう。
脳がダイエットという新たな習慣を拒絶しているのに、
いくら「やる気を出さねば!」と自分を励ましても、
なんの意味もない。
人生で成功している人は、
無意識のうちに脳の拒否反応を迂回するやり方を
身につけている。
目標を設定しても、途中で挫折する人は、
脳科学に逆行するような「方向違いの努力」を
しているからである。
だから、途中でくじけてしまう。
- すぐ結果を出したい
- 目標を達成するには、厳しい自己鍛錬が必要だ
- つらいことにも耐えるためにセルフ・マネジメントをしよう
こんな思い込みのもとに、
歯を食いしばって「つらい努力」をしても、
最初から無理がある。
◆人間は脳という仕組みのなかで生きている。
それなら、脳の習性にそむくことをしても、
何ひとつ効果がでないのは、
当たり前すぎる理屈である。
この原理原則を知っているか、知らないか…
それだけで大きな格差が生じる。
この原理原則を知れば、
貧困格差も英語格差もすべて解消できる。
◆人はなぜ、変われないのか?
何かいい方法を知っても、なぜ実行できないのか?
仮に実行しても、なぜ継続できないのか?
その答えはすべて、
脳科学が教えてくれる!
◆人生を変えるには、
まず、脳の仕組みを知らなければならない。