60歳からの仕事 by 清家 篤, 長嶋 俊三
清家 篤
1954年生まれ。
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学、同大学商学部助教授を経て、1992年より慶應義塾大学商学部教授。
博士(商学)。
2009年5月より、慶應義塾長。政府の労働政策審議会委員などを兼務。
専門は労働経済学。
著書に、『高齢者就業の経済学』(共著、日本経済新聞社、日経・経済図書文化賞受賞)などがある…
長嶋 俊三
1947年生まれ。
明治大学法学部卒。
産経新聞記者、テレビディレクターを経て、フリー雑誌記者。
1979年、財団法人高年齢者雇用開発協会発行の月刊誌『エルダー』の編集を創刊から担当し、2003年に独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に移行して後も『エルダー』の編集者として現在に至る…
60歳からの人生を、
豊かに、幸せに生きるための指南書!
世界で類を見ない超高齢社会を迎える
日本において「生涯現役社会」の実現は、
必然かつ不可避である。
生活のため、自分のため、
社会のため―様々な理由から
60歳以降も働くことが求められているいま、
何をすべきなのか、どんな選択肢があるのか。
企業と個人、両方の視点から、60歳からの働き方を探る…
目次
- 生涯現役社会をどう生きるか
(「生涯現役社会」は必然かつ不可避である/高齢者雇用の理想と現実/団塊の世代が先導者になる) - 60歳以上の雇用はどうなっているか
(65歳までの定年延長/65歳まで「継続雇用」で働く/65歳まで「会社を変わって」働く/65歳以降まで「フリーランス」で働く/「70歳」まで働くにはどうしたらよいか) - 生涯現役の働き方
(「専門能力」で勝負する場合/「サラリーマン経験」を活かす場合/再び団塊の世代へ)
MEMO
◆平均年齢65歳で国際ビジネス経験が活かせる会社
活動会員の平均年齢は65歳。
有償ボランティアを基本としており、
報酬は低くても高いパフォーマンスを発揮して、
関係先から感謝されている。
会員の約90%が海外駐在経験者であり、
英語以外の外国語を話せる人が約半数いる。
NPO法人 国際社会貢献センター
東京都港区浜松町2-4-1
世界貿易センタービル6階
登録者数(活動会員) 1950人
売上高 1億183万円
◆土日限定で60歳以上が働ける会社
同社は古くからの技術集団として、
こだわりを持った経営を行ってきた。
高齢の技術者が多く、地元では高齢者雇用に熱心な会社として知られている。
得意先から低コスト、短納期という要求が強くなった。
この課題を解決するため、これまで休日だった年間約110日の土曜日・日曜日の
工場稼働を決めた。
そして、土・日に勤務する従業員について
「土曜・日曜は、わしらのウィークディ」というキャッチ・コピーで
60歳以上に限って一般から募集。
平均年齢65歳、最高年齢69歳の15人を採用して、
土・日稼働をスタートさせた。
この土・日パート社員制度の概要は、
- 雇用契約期間は1年
- 勤務時間は、午前8時から午後5時までのうち、4時間以上
- 所定勤務日数は、土曜日・日曜日・祝祭日で、月稼働日数10日程度
- 給与は時給800円以上
となっている。
株式会社加藤製作所
岐阜県中津川市駒場447-5
従業員数 88人
売上高 12億9700万円
◆65歳定年で、その後も再雇用がある会社
全社員のうち、49歳以下の年齢層がほぼ半数を占めているが、
60~64歳が25人、65~69歳が14人、70歳以上が1人と、
60歳以上も47人いる。
同社は創業当時から人生経験の豊かな専門家を採用してきており、
社員のなかに中高年齢者が多いのも、年齢にあまりこだわらない定年制にある。
同社の定年は、正社員が65歳、
それ以降も本人が希望した場合、
あるいは会社が必要と認めた場合は再雇用される。
パートタイマーの定年は68歳である。
安全センター株式会社
東京都大田区山王1-3-5
NTTデータ大森山王ビル6F
従業員数 294人
売上高 19億9400万円
◆70歳までの雇用を実現した会社
山形屋百貨店では、定年後65歳までの嘱託再雇用制度に加え、
65歳以降も本人が希望すれば
勤務日数や勤務時間をあたらに設定した雇用契約を結び、
最長70歳まで働くことができる。
「イキイキフリースタッフ制度」を創設して、
70歳までの雇用を実現させ、
生涯雇用を推進している。
定年60歳以降のベテランが77歳の最高年齢を含めて175人おり、
全従業員の14.4%を占めている。
イキイキフリースタッフ制度の雇用条件は、
1年ごとの更新で、
原則として満70歳を限度とする。
ただし同社は生涯現役を目指しているため、
70歳以降も頑張りたいというやる気と実績のある従業員については、
70歳を超えても雇用している。
2008年まで、82歳の男性が、外商のフリースタッフとして活躍していた。
株式会社山形屋
鹿児島県鹿児島市金生町3-1
従業員 1217人
売上高 524億円
◆70歳まで働ける社会を目指す
少なくとも65歳までは現役で働けるようにすることは、
これからの本格的高齢社会の基本である。
世界に類を見ない高齢社会において、
年金の支給年齢を65歳まで引き上げることは最低限必要であり、
これに対応して、本格的な雇用も65歳まで継続するのは当然である。
長期的には定年を65歳に引き上げ、
それにプラスして多様な働き方のオプションを用意するのが望ましい。
では65歳まで現役期間を伸ばせばそれで十分だろうか。
もちろんそうではない。
65歳を超えても、
働く意思と仕事能力のある人は
ずっと働き続けられる社会にしなければならない。
◆60歳以上を定年なしの営業職に採用している会社…
人間力を活かして、現役をしのぐ報酬を手に…
現在、この制度によって同社で働く営業マンは10人。
全員が60歳から72歳までの高齢者である。
この高齢者軍団が、
6年間で約64億円を売り上げている。
この営業職に定年はない。
仕事に意欲がもてなくなれば、
その時が定年である。
しかも、20人の正社員もいるが、
この正社員にも定年がない。
この会社は「定年は自分で選べ」
というユニークな会社なのである。
神奈川日本建工株式会社
神奈川県横浜市都筑区中川中央1-28-12
従業員数 40人、
売上高 9億1500万円
◆自営業という働き方
高齢化で年金支給年齢が引き上げられるのに伴い、
定年も60歳から65歳に引き上げる企業が増えてきた。
でもこれはあくまでも「雇われる」という生き方である。
人の働き方には、雇用労働だけではなく、
自営業という働き方もある。
伝統的な農業や小売店などがよい例である。
最近は、自分の持っている専門能力を、
企業と業務契約を結ぶようなかたちで提供する自営業、
つまりフリーランスの働き方もある。
自営業者は仕事自体を自分で取ってこなければならない。
またその収入も、大きく稼げるときもあれば、
まったく稼げないときもあるなど、不安定である。
しかし、それはリスクと同時に、
個人に大きな自由度をもたらす働き方である。
◆雇用制度が時代に合わなくなっている
年金が大変になるのは年金受給者である
高齢者の増加によるものだ。
もた老後の生活が心配になるのは、
長生きで老後期間が長くなるからでもある。
しかしそれはいずれも
人々が長生きするようになった結果だ。
では、それをめでたいと思えないのはなぜか?
理由はハッキリしている。
それは長生きすることができなかった時代、
高齢者が少なかった時代につくられた仕組みや行動パターンが、
長生きできるようになった社会、
高齢者の多くなった社会にそぐわなくなったからだ。
その典型が雇用制度である。