働く君に伝えたい「お金」の教養: 人生を変える5つの特別講義 by 出口 治明
出口 治明
ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO。
1948年三重県生まれ。
京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。
企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。
ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。
2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。
2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。
2013年6月より現職…
20代の新しいお金づきあい入門!
お金の不安に支配されたまま、
あと60年生きるつもりですか?
5つの講義で、
一生使える「お金」の教養を手にしよう!
世界一シンプルな財産管理術、
アマでもできる投資法、
20代の保険選びの鉄則、
親と相続について話すときのポイントなど…
目次
- 第1講 「知る」編―なぜ、お金には不安ばかりがつきまとうのか?
(お金の不安はじつは「思い込み」だった!/日本って借金ばかり増えているらしいけれど大丈夫? ほか) - 第2講 「使う」編―幸福かどうかを決めるのは貯蓄額ではない
(知っておくべきセオリーは「財産三分法」だけ/バブルおじさんにだまされるな! ほか) - 第3講 「貯める」編―不安は貯めることへの執着から生まれる
(本当にその「貯蓄」は必要か?/まずは貯蓄額を決めよう! ほか) - 第4講 「殖やす」編―希望は長期投資から育まれる
(なぜ、投資が必要なのか/自分への投資で最大のリターンを ほか) - 第5講 「稼ぐ」編―働き続けるからこそ自由になれる
(若者は「金の卵」である/やりがいのある仕事、やりたい仕事 ほか)
MEMO
◆お金を稼ぐとは?
お金を稼ぐというのは、
一言で言えば能力である。
自分がある分野において高い能力がある、
もしくは深い知識があるとき、
蛇口から水(お金のフロー)が出てくる。
それが人より優れていたり、
めずらしい分野だったら、
より多くの水が出る。
つまり、お金を稼ぐ能力があるということは、
ひとりで食べていける、
ひとりで生きていけるということでもある。
そしてその結果、
「自由」という人生の選択権が手に入る。
◆ドル・コスト平均法
ドル・コスト平均法とは、
同じ投資対象を、常に一定の金額で、
定期的・機械的に買っていく投資法である。
積立投資で、毎月1日に1万円ずつ、
株式や投資信託を買い続けるイメージ。
金額を決めて毎月投資すれば、
株価が上がった月は少ししか買えないが、
下がった月にはたくさん買える。
これが、ドル・コスト平均法である。
何がメリットかというと、
「安いときにたくさん買い、
高いときに少しだけ買う」
という投資の基本原則に沿った投資ができる。
つまり、1株あたりの平均購入単価を抑えることができる。
人間はそれほど賢くないから、
購入のタイミングはマーケット(市場)に任せるというものである。
◆トランスパレンシー・ジャパン(腐敗認識指数)
その国の公務員と政治家がどの程度腐敗
していると認識されているかを調べることができる。
ちなみに、日本の腐敗度は上から15位である。
最下位は北朝鮮とソマリサである。
◆投資信託の種類
A:国内x債券型
B:国内x株式型
C:海外x債券型
D:海外x株式型
リターンとリスクの大きい順に並べると:
D➡B➡C➡A
となる。
リスクを小さくしたければ、
A(国内x債券型)に投資すればよい。
リスクを取ってリターンを大きくしたければ、
D(海外x株式型)かB(国内x株式型)に投資すればよい。
投資信託には市場平均など特定の指数を上回ることを目指す「アクティブ・ファンド」と、
市場平均など特定の指数を目指して投資する「パッシブ・ファンド」の2種類ある。
アクティブ・ファンドは手数料が高く、
パッシブ・ファンドは圧倒的に手数料が安いという特徴がある。
今、注目されているETF「上場投資信託(Exchange Trade Fund)」は、
パッシブ・ファンドである。
ETFはいま、世界的に規模が急拡大している人気商品である。
◆投資の種類
- 個別の株式投資
- 債券
- 投資信託
- FX(外国為替証拠金取引)
- 不動産
これらの投資の中で
初心者にオススメなのが
「投資信託」である。
◆投資の「3つの心得」
- ポートフォリオをつくる(リスク分散)
- 成長するものに投資する
- 長期投資で考える
◆投資するなら自己投資と言われるワケ!
投資には「自分への投資」と
「お金(金融商品)への投資」の2種類ある。
何に投資するか悩んでいるなら、
まずは自分自身に投資すること。
なぜか?
最大のリターンが得られるからである。
現在のサラリーマンの生涯年収は約2億円と言われている。
たとえば、100万円の資金を株に投資したとする。
運良く2倍になったとしても200万円、
3倍になったとしても300万円止まりである。
ところが、自分自身に100万円投資して2倍になったら
生涯4億円稼げることになる。
3倍になったら生涯6億円稼げるとんでもない投資を
していることになる。
20代で働きながら自分に投資して、
そこで学んだことを仕事に生かした結果、
年収が2000万円になるかもしれない。
そうすれば、5年で億の稼ぎも目指せる。
自分自身への投資をしなければ、
みんなが生涯で稼ぐであろう2億円は、
一生2億円のままになる。
手元にある100万円をコツコツ運用するのと、
2億円の価値がある自分自身に投資をして
その価値を増やすのでは、
どちらがいいのか一目瞭然である。
◆ひとりの子どもの出産から大学卒業までにかかる費用目安
公立:
幼稚園(66万円)
小学校(183万円)
中学校(135万円)
高 校(116万円)
大 学(511万円)
—————–
合計約 1011万円
私立:
幼稚園(146万円)
小学校(854万円)
中学校(389万円)
高 校(289万円)
大 学(740万円)
—————–
合計約 2418万円
◆保険に入るなら…
「掛け捨ての保険」と「就業不能保険」がオススメである。
まず、保険と貯蓄は分けて考える。
保険はあくまでもリスクをカバーする目的で加入すること。
貯蓄型の保険に加入してもあまりメリットがない。
貯蓄を目的にするなら投資にする。
- 独身
{就業不能保険} - パートナーが専業主婦・子どもなし
稼ぎのあるほうに{就業不能保険}+{死亡保険} - 共稼ぎのカップル・子どもなし
ふたりに{就業不能保険} - パートナーが専業主婦・子どもあり
稼ぎのあるほうに{就業不能保険}+{死亡保険(教育費分)} - 共稼ぎのカップル・子どもあり
ふたりに{就業不能保険}+収入が多いほうに{死亡保険}
◆下流老人にならない生き方
蛇口から水が流れて水槽にたまって、
水槽の穴から水が出ている状態を想像してほしい。
経済学では、この水槽に貯まっているお金のことを「ストック」、
蛇口の穴から出入りするお金のことを「フロー」と呼ぶ。
退職は、蛇口の水を止め、
水槽から少しずつ水を出して生活するという発想である。
だからこそ「水槽に2000万円ないとダメらしい」
「3000万円あっても破産してしまう人がいるらしい」
と、60歳までにいかに水を貯めるか躍起になる。
でも、蛇口を止めずに水を出し続けることができれば、
その恐怖心もだいぶ薄らぐ。
つまり、水槽に貯めたストックではなく、
蛇口から出てくるフローで生活する。
なぜ、フローのほうが安心か?
それは、人間は誰しも、何歳まで生きるか分からないからである。
できれば、生涯現役か不労所得で、
蛇口から8種類のフロー(収入源)があることが理想である。
定年という制度があるのは先進国で日本くらい。
定年制は廃止すべきだし、おそらく近い将来そうなっていくと思われる。
◆お金を貯めるよりも確実に入ってくる方がもっと大事!
毎月「○万円貯める」ことよりも、
毎月「確実にお金が入ってくる」ことのほうがずっと大事。
◆渡辺 和子さんの
「置かれた場所で咲きなさい」の本が売れている。
でも、この考え方は少し古いように思える。
今の日本では、置かれた場所に満足してそこで咲くことばかり考えず、
「咲けないとわかったら、場所をかえさない」
と言いたい。
◆専業主婦文化の終焉
この20年間で1世帯あたりの平均所得は20%減少している。
このような状況下で、
夫婦どちらかの収入だけで家族全員を養っていくのは
かなり厳しい。
つまり、専業主婦になろうと思っても、
簡単になれる時代ではなくなった。
◆いまの日本では、
賃貸ではなくマイホームを買ったほうが
トクをするという状況はあり得ない。
◆日本の経済成長率が低いのは、
若者が消費しないからではない。
人口の減少と政府の経済運営のマズサ(構造改革の遅れ)が原因である。
◆お金の大原則「財産3分法」とは?
手取りでもらったお金を「財布」「投資」「預金」の3つに振り分ける。
- 財布(日常で使うお金)
食費、日用品など数日間生活できるくらいの金額 - 投資(なくなってもいいお金)
株、習い事など使い方は自由 - 預金(流動性の高いお金)
困ったらすぐに引き出せることがカギ
◆お金で悩む人の考え方・行動
- お金に苦労する人は、データを見ず、自分で考えない人である。
- お金に振り回される人は、考えても仕方がないことを考える人である。
- お金で損をする人は、与えられた情報を鵜呑みにする人である。
◆どうして政府は借金をしてまで年金制度を維持しようとするのか…
それは、年金をなくしたら、社会が不安定になるから。
◆お金とは、
「あなたは価値ある労働をしましたよ。
世の中に価値を生み出しましたよ」
と証明してくれるものである。
価値を生み出しているからこそ、
「職場から」お金をもらえるのである。
◆国以上に安全な金融機関は存在しない
国の危機とは国債の危機であり、
国債の危機とは金融機関の危機である。
金融機関がつぶれても国はつぶれないが、
国がつぶれたら金融機関もつぶれる。
近代国家では、
その国以上に安全な金融機関など存在しない。
だから、
政府が信用できないから
金融機関に自分で預けよう、
という考えは間違っている。
国民年金の保険料を払うのをやめて、
その分、自分で貯蓄しようとする行為などがその典型である。
◆年金が払えないときとは
日本は、予算を組む段階で
「今年は100兆円使いたい。でも税収は55兆円くらいだから、
足りない40兆円超は借金でまかなおう。
国債を発行するからよろしく」と決めている。
これってどういうことかと言えば、
国債を発行できるかぎり、政府はいくらだって
お金をひねり出すことができる。
年金や医療保険といった社会保障のお金も、
借金さえすれば払える。
そんな政府が年金を払えないときがくるとしたら、
どういうときか。
誰もお金を貸してくれないとき。
つまり、国債の買い手がいなくなってしまったときである。
これが、政府が破綻するときである。
※銀行や証券会社などの金融機関や個人投資家などが
国債を買わなくなったら、最後の禁じ手として
日銀がお札を刷って国債を買うという方法がある。
◆儲けのタネは、
ほんとうの価値を「知っている人」と
「知らない人」のギャップの中に潜んでいる。
◆なぜメディアは不安ばかり煽るのか?
答えは簡単である。
不安を煽るほうが商売がしやすくて、
「儲かる」から。
健康不安を煽って商売する健康食品会社、
受験の不安を煽る進学塾などいろいろある。
不安になれば、まじめな人ほどなんとかしようと行動する。
そのまじめな人の行動の先には、
必ず「儲かる人」がいる。
「年金制度は信用できません。
自分の身は自分で守らないと」
「こんなに政府に借金があるなんて危ないです。
海外に投資しましょう」
「海外なら利回りもいいですよ」
そう言って不安を煽ることで、
商品を買ってもうらおうとする。
書店に行けば不安を煽る本や雑誌ばかりが置いてある。
テレビではコメンテーターが深刻そうな顔をしている。
誰かが不安を煽っているときは、
「これで儲かるのは誰だろう?」
と考えるクセをつける。
◆不安の正体
「将来の不安」とは「お金の不安」である。
いったいどうすれば不安から
抜け出すことができるのか?
どのようにお金とつきあえば、
一生お金に振り回されず、
楽しく自由に生きていけるのか?
それには、
「お金の原理原則」
を学ぶ必要がある。
具体的には…
お金について「知る」、
お金の「使い方」「貯め方」「増やし方」「稼ぎ方」
を学ぶ。