◆理屈がモノを売る
モノを売るには、まず相手の感情に訴えかけてから、それが可能であることを論理的に説明する。たとえば、「○○様、今後、半年から1年で売上を20~30%伸ばす方法に興味ありませんか?」と問いかける。
するとお客は間違いなく、「ああ、どんな方法なんだ?」と聞いてくる。そこで、「○○様、これは、今まで何百社もの会社の売上を伸ばしてきた方法で、効果は折り紙つきです。無条件の保障もおつけします。効果が出なければ、お代はいただきません。」これを聞くと、お客は安心して話しを聞いてくれる。
◆感情で決断を下し、理屈をつけて正当化する
ほとんど全員が、人間の決断は90%が感情で、理屈に基いている部分は10%しかないと答える。ものを考えるという行為には、時間と労力が必要になる。しかし、感情は瞬発的なもの。
つまり、人間はモノを買うとき、感情で決断を下し、その後理屈をつけて正当化する。
◆4つの質問
- いくら支払えばいいのか?
- どれくらいの見返りがあるのか?
- その成果はどれくらい早く得られるのか?
- それが必ず得られるという保証はあるのか?
セールスのプレゼンは、これらの問に対する答えを軸に展開する。
◆異なるお客に対する2通りのアプローチ
どんな商品をプレゼンするにも、2通りのアプローチがある。ひとつはプロが使うもの、もうひとつは素人が使うもの。プロに対するアプローチは、「この商品には何ができるのか」に焦点をあてる。素人に対するアプローチは、「この商品は何なのか」に焦点をあてる。
◆見せて、教えて、問いかける
もっとも簡単なのが、「特徴とメリット」を提示するやりかた。どんな特徴やメリットの提示にも使えるこの方法は3部構成になっている。見せて、教えて、問いかける。たとえば、コンピュターのソフトを売っている人なら、まずは、コンピュターにインストールされたソフトを客に見せる。
それから、そのソフトを使うことで、ビジネスの質がどう向上するかをお客に教える。そして最後に、こう問いかける。「これは、あなたの仕事に役立ちそうですか?」
3部構成のプレゼンには、もうひとつある。それは、「この商品は…なので」「…できます」「つまり…」で成り立っています。これを使って提示するのは、商品の特徴、商品のメリット、お客のメリットである。
たとえば、フラット画面の壁掛けテレビを売っている人なら、お客にこう言う。「このテレビは画面がフラットなので(商品の特徴)、どの角度からでもキレイに見えます(商品のメリット)。つまり、ご家族や友人とホームシアターを楽しめるんです(お客のメリット)」
◆「二段階」のセールスを行う
保険や投資といった、お客の個別のニーズに合わせるために調整が必要な商品を売る場合、「二段階」のセールスを行う。最初の訪問では、質問することで自分の商品が相手にどんなメリットをもたらしうるかを探る。そして2度めの訪問では、お勧めの商品を正面にしたものを持参して、それがどんなメリットをもたらすかを説明する。
◆実体のないものを売る
商品が実体のないもので、目の前のお客にとってそれを買うことがメリットにつながるかどうかが定かでない場合、一度の訪問で商談がまとまることはめったにない。最初の訪問では、お客の警戒心を解くことに専念する。いろいろ質問して、自分の商品が相手にとってメリットのあるものかどうかを判断する。相手のニーズを把握したら、次の来訪の予定を決める。
◆再訪問を断ることで、契約に結びつく
プレゼンが終わって、お客が「そうだな、少し考えさせてくれ」と言ったら、こう言う。
「申し訳ありませんが、私がこちらに伺うのは今日限りです」
するとお客は驚いて、「どういうことだ?」と聞く。
このとき、「お客様。あなたは、今日決断を下すのに必要な情報はすべてもっているはずです。これは素晴らしい商品で、1~2度使えば元が取れる仕組みになっています。その後も使い続ければ、カードの価格の何倍もの額を節約できるのです。買わない理由がどこにあるのです?」
すると、お客は「確かに筋は通っているな。じゃ買うよ」と言うはず。
◆「少し考えされてくれ」と言われたときの決め文句
もしお客が「なかなかよさそうな商品だな。少し考えされてくれ」と言ったら、こう応じる。
「○○様、現時点であなたはこの商品に関することはすべてご存知です。お話から察するに、この商品は○○様にぴったりのようですが。これ以上何を望むのです?」
すると、驚くほどの確立でお客はこう言うはず。
「そうだな。わかった。買うよ」
しかし、ここでお客に「ゆっくり考える」猶予を与えてしまうと、お客はそもそも自分がなぜその商品に惹かれていたのかも忘れていく。
◆実体のあるものとないもの
実体のあるものとないものとでは、売り方も変わってくる。車、コピー機、携帯電話、冷蔵庫といった実体のあるものを売る場合、お客の質問があらかた出尽くしたと見るや、すかさず注文を打診するべき。お客が商品の性能のみならず、それを買うことでどんな恩恵を受けることができるかを理解したときが、商談をまとめるタイミングである。
◆契約をまとめる
この世には、売り手が変に遠慮してしまうせいで、成立までに無駄に時間がかかってしまう商談が山ほどある。
◆信頼を気づく方法
お客との信頼を築く最善の方法は、相手に質問をしてその答えに真摯に耳を傾けること。相手のことを本当に知りたいのだという姿勢を見せれば、相手も心を開いていろいろと情報を提供し、あなたの言葉にも耳を貸してくれる。相手と打ち解けるまで、商品の売り込みを始めてはいけない。まずは親しくなってから、売り手と買い手の関係を作るのが鉄則である。
◆相手によって対応を変える
営業マンで成功している人の大半は、「社交型」か「任務遂行型」のどちらか、もしくはこの2つの混合型である。
「人間関係重視型」の営業マンは、相手に遠慮してしまってなかなかモノを売り込むことができない。「分析型」の営業マンは、詳細な情報を集めることに没頭してしまって、お客に接触する努力を怠りがち。たとえ接触しても、商品を売ることよりも、相手の情報を入手することのほうに熱心になってしまう。
セールスをするうえで一番問題なのが、人は皆、自分の目を通して世の中を見ているという点である。そのせいで、他人に自分を投影して接してしまう。「社交型」の人は、相手もまた「社交型」であるかのように接する。「任務遂行型」の人は、自分が買うべき理由を提示した限りは、お客はすぐに決断を下すのが当然だと思っている。
セールスで成功するには、相手の人格に合わせる柔軟性を身につけなければならない。
目の前のお客がどのタイプであるかを分析し、自分もそれに合わせる。お客が「人間関係重視型」なら、話しのペースを落とし、相手にたくさん質問をして、絆を作ることから始める。「分析型」のお客を相手にするときも、話しのペースを落とし、情報の細かい部分を伝えるようにする。一つ一つの質問に時間をかけて答え、できれば書面にするとよい。
「任務遂行型」のお客には、話しの要点を率直に伝える。相手が質問してきたら率直に答え、商品を購入することで得られるメリットを明快に説明する。商品が自分に役立つことがわかれば、相手はすぐに購入を決める。
◆お客の特徴
モノを買う人間の特徴は、大きく6種類に分類できる。
- 無関心なお客は、時間の無駄
「無関心なお客」は、全体の5%を占める。彼らは、たとえあなたが、5ドルの商品を買ってくれたら100ドルを進呈すると言っても、関心を示さない。彼らは、元々買うつもりがない。彼らは消極的で無気力である。モノを売る人間は、こうした人間を即座に識別できなくてはいけない。そして、無駄な努力をする前に、丁重にその場を辞し、本当に買ってくれそうなお客のもとに急ぐ。 - 希望が具体的なお客には、希望が合致する商品を
「希望具体的なお客」も、お客全体の5%を占める。彼らは、自分が欲しいものをはっきりと認識している。求める特徴やメリット、いくらなら出していいかが明確に決まっている。あなたはそれに合致する商品を提示すれば、相手は飛びつくはず。望みどおりの商品を差し出せば、あっという間に商談は成立する。 - 分析型のお客には、一般論をまくし立てない
「分析型のお客」は、市場全体の25%を占める。彼らは自己充足型で、機能重視型である。特に外交的ではなく、物事の正確さと細部にこだわる。彼らを動かすのは、主に「正確さ」。彼らを相手にするときは、大まかな一般論をまくし立てるのは避けなくてはいけない。具体的で明確な情報を提供する。 - 人間関係重視型のお客には、思いやりと忍耐を
「人間関係重視型」は、市場全体のおよそ25%を占める。商品によってその割合は変わる。彼らは概して自己充足型であり、格別に社交的だったり積極的だったりはしない。彼らを相手にするときは、こちらもペースを落とし、肩の力を抜かなくてはいけない。彼らは、自分がこの商品を買ったら周りにどう思われるかを考える。だから、購入に先立って、複数の人に相談することがよくある。人によっては、家族全員に始まり、友人知人、同僚などあらゆる人の意見を聞いて回ったりする。彼らは、モノを買う際、すでにその商品を使っている人たちの感想を知りたがる。こういう人が家を買う場合、一番気にするのは来訪者たちの反応である。服や車を買うときも、周囲が自分の選択にどう反応するかを気にする。 - 任務遂行型のお客には、てきぱきとしたプレゼンを
「任務遂行型のお客」は、ほかのどのタイプのお客よりも機能重視型である。他人に指図することを好み、率直で短気で、周りくどいことを嫌う。事務的かつ合理的で、何よりも「結果」を重視する。このタイプのお客は無駄話を嫌う。売り手との温かい交流などには興味がない。とにかく早く本題に入り、決断を下そうとするのがこのタイプの特徴である。事業家、セールスパーソン、せースル・マネージャなどにこのタイプの人が多い。彼らがあなたに望むのは、「これは私にどう役立つのか?」という問に対する答えだけである。彼らには決断力がある。彼らは自分が何を求めているのかを明確に把握し、もしあなたがそれをもっているとわかれば、すぐにでも手に入れ、使おうとうする。こうしたお客を相手にする際には、てきぱきとプレゼンをしなければいけない。 - 社交型のお客には、書面を使う
「社交型のお客」は、積極的かつ社交的である。他人と一緒に働いて、結果を出すことが得意である。他人との関係を計りながら任務を遂行するバランス能力に長けているので、
しばしば「総合型のお客」とも呼ばれる。彼らは、さまざまな個性の人たちとうまく折り合いをつけながら仕事を成し遂げることができる。監督官、管理人、指導員、オーケストラの指揮者、大企業の理事、非営利団体の会長などにこのタイプが多い。
◆メリット提示型アプローチ
最初に、あなたの商品を買うことでお客が得られるメリットを提示する形で質問する。
たとえば、「もし私が、現時点における最高の投資話しを提示したら、今すぐ5000ドルを投資してくださいますか?」
この質問によって、会話の方向性が一変する。
「私の話しを聞いてくれますか?」から、「私が提示したメリットを実現するために、あなたはいくら投資しますか?」になる。
お客が「そこまでよい話しなら、5000ドル投資するよ」と言ったら、さらに質問する。
「もし本当にこの話しを気に入ったなら、1万ドル投資してはいかがですか?」
答えが「イエス」にしろ「ノー」にしろ、それによって相手の懐事情が見えてくる。
お客が「5000ドルも投資できない」と答えたら、「では、3000ドルならどうです?ほかにはない、最高にいい話しですよ」と尋ねることができる。
そうしたらお客は、「そんなにいい話なら3000ドル投資するよ」と言うかもしれない。
このように話しを進めることで、あなたはお客の経済状況を探ることができる。
質問をすることで、あなたは開口一番の質問で提示した商品のメリットを、お客にふさわしい形で提示するチャンスを得られる。
この「メリット提示型のアプローチ」のすごいところは、商談の終わりにはお客が何らかの答えを出さなければいけない点である。
決断を下すことを最初に約束してしまっているので、もう少し考える、または誰かと相談するなどと言って逃げることができない。
◆囲い込みアプローチ
お客の最初の拒絶には、「お時間を割いていただきありがとうございます。どうか気を楽にしてください。今すぐ何かを売るつもりはありません。今日伺ったのはそのためではないのです。」と言って対応する。
それから、こう言う。
「数多くのお客様が私どもの製品をお買い上げになり、その後も継続して購入していただいております。今日は、その理由を知っていただきたくて参りました。どうか素直な気持ちでそれをご覧になり、ご自分の状況に当てはめてお考えください。最後に、この製品があなたのお役に立つかを教えていただければ結構です。よろしいですか?」
この「囲い込みアプローチ」では、売り手はお客に交換条件を提示する。
「何も売り込むつもりはないから、素直な気持ちでこちらの話しを聞いてください」と告げている。
相手の現状やニーズが明らかになったら、次は、現時点において自分の商品がそれに対する最善の解決策であることを伝える。
そうすれば、あなたはお客よりも優位な位置に立てる。
最後に必要なのはお客の答え。
お客が「もう一度ゆっくり考える」とでも言ったら、こう応じる。
「お気持ちはわかります。では、これだけ教えてください。この商品は、今のあなたに役立つと思いますか?お話を伺った限りでは、これを今のあなたにとって理想的な商品だと思うのですが」
こう言われると、お客は自分が迷っている理由を言わざるを得なくなる。
内容がどうあれ、理由を言ってもらえれば、こちらもそれなりに対応できる。
