キリンビール高知支店の奇跡 – 勝利の法則は現場で拾え! by 田村 潤
田村 潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長。
1950年、東京都生まれ。
成城大学経済学部卒。
95年に支店長として高知に赴任した後、四国四県の地区本部長、東海地区本部長を経て、2007年に代表取締役副社長兼営業本部長に就任。
全国の営業の指揮を執り、09年、キリンビールのシェアの首位奪回を実現した。
11年より100年プランニング代表…
高知発、東海、そして全国へ!!
地方のダメ支店からの逆転力。
アサヒスーパードライから首位を奪回せよ!
フツーの営業マンが掴み取った、営業の極意…
「売る」ことを
真摯に考え続けた男が実践した
逆転の営業テクニックとは?
営業の極意、現状を打破する突破口の見つけ方…
大切なのは「現場力」と「理念」。
組織のなかで
リーダーも営業マンも
ひとつの歯車として動いてしまうと、
ますます「勝ち」からは遠ざかってしまう。
そんなときこそ、
「何のために働くのか」
「自分の会社の存在意義は何なのか」
という理念を自分で考え抜くことが、
ブレイクスルーの鍵となる…
- 会議を廃止
- 内勤の女性社員を営業に回す
- 本社から下りてくる施策を無視
- 高知限定広告を打つ
- 「ラガーの味を元に戻すべき」と本社に進言…
目次
第一章 高知の闘いで「勝ち方」を学んだ
1995年 高知の夜は漆黒だった
1996年 負け続けの年
1997年 病人をゼロに
1998年 V字回復が始まった
2001年 ついにトップ奪回!
第二章 舞台が大きくなっても勝つための基本は変わらない
四国での闘い―違う市場でも基本を貫く
東海・中部での闘い―現場主義の徹底
全国での闘い、そして勝利
第三章 まとめ:勝つための「心の置き場」

MEMO
◆田村語録
- 事実をベースに考えつくす
まず、現実を正視してそこから学ぼうという誠実さがなくてはならない。ダメなのは、データを分析し、観念論で現実を切ること。事実から出発しないで理想を語っても意味がない。事実をもとにして、自分の理念に達するまで考えぬく、考えつくことが重要である。また、現実と格闘してこそ、普遍的なフィロソフィーが得られる。 - 理念
自分は何のために仕事をするのか、この会社は何で成り立ってきたのか。根っこや源流は何なのか。そこを考えつくして生き着く、いわばアイデンティティ。困ったときの道標にもなる。ただし、理念を現実にどう生かすかは極めて困難。一方で、理念がないと前進しない。理念は現場で発見するきっかけを得ることが多い。リーダーには理念を形骸化させないという役割がある。 - ビジョン
理念に基づいた「あるべき状態」。これをチームで共有できれば、戦略の絞込ができるようになり、戦術はそれぞれの個人が自由に工夫をするというダイナミズムが出来上がる。理念、ビジョン、戦略、戦術が一貫性をもてば、必ず数字にも変化が表れる。 - 腹をくくる
コミットメント(約束)とは、「腹をくくること」である。 - 成功体験
- ブランドとは守りの思想
ビールでいえば、今飲んでくださっている人を徹底して大切にすることが重要。そうすれば自然とブランド力がアップする。ブランドを通じて会社とお客様との関係が成り立っているので、お客様との関係を強化することはブランド力アップと同じこと。 - 営業のイノベーションとは
- リーダーシップの確信を支えるもの
- 勝ちたいという執念
何としても勝ちたいという執念を持ち続けること。この執念の持続性が、勝敗を分けることに直結している。 - 結果のコミュニケーション
- 最少のコストで最大の顧客満足を
- チームワーク
- 量は質に転化する
基本活動を愚直に地道にやっていると、いつかそれが質を生み出してくる。平凡を究めると非凡に変わる。 - 苦しいときの変革は地方から起こる
- 顧客目線のシンプルな戦術
営業マンは忙しいので、やることをシンプルにしておかないとやらなくなってしまう。複雑すぎるとやらなくなってしまう。また、営業マンの先にいるお客様や流通の人も、シンプルなことしか聞いてくれない。 - バックミラーを見ながら運転してはいけない
データがこうなっているからとデータだけに基づく計画が多すぎる。データは過去の
我々の行動の結果に過ぎない。過去の行動が我々の未来を決定するのはおかしい。現在と将来は我々の手にある。 - 動きのあるものとして捉える
◆理想的なリーダーとは
- 正しい決定を下せる
- 現場を熟知している
- 覚悟と責任感をもっている
◆結果を出すための行動スタイル
- 「指示待ち」から「主体的に考え行動する」スタイルへ
- 非生産的で「自己中心的な業務」を切り捨て、顧客視点に立つ
- 状況を切り開く勇気と覚悟を持つ
正解などわからない。
必要なのは前進する力を常に創造し続けること。
正解など、その後で見つかる。
◆NKK活動
NKK活動とは、
何も(N)
考えないで(K)、
行動する(K)
の意味である。
「徹底して考えて行動せよ」
を実践しても結果が出ないときは
真逆の
「何も考えないで行動せよ」
を実践してみる。
すると、意外なことに
成果が生まれてくる。
営業では
「質」よりも「量」が
勝るときがある。
◆現場主義の徹底
- 会議をやめて現場へ出よ
- エネルギーを社内から社外へ
- 上司を見るな、ビジョンを見ろ
◆キリン高知支店での手法を真似るには
高知での手法は、
テクニックではなく、
考え方、そして行動スタイルにあった。
1本でも多くのキリンビールを
ひとりでも多くのお客様に
飲んでいただき、喜んでいただく。
その理念を実現するために、
キリンビールがどこにでもある
状態をつくりだすというビジョン。
現場は生き物だから
場所によって事情も違えば、
変化もしていく。
高知のとったやり方を
そのままあてはめることは
間違っているが、
「ビジョン実現のために、
自分の得意先でどう実現したら
いいかということを自分の頭で考えて、
主体的に行動する」
という行動スタイルは変わらないはずだ。
そのためには
理念、ビション、行動スタイルの
3つは高知のものを使用し、
戦略・戦術は現場で考え、
現場で責任をもって実行する。
◆リーダーは現場を歩け!
まずは、そのエリア担当の
メンバーから話しを聞く。
花見に参加しているお客様は
どの店でビールを買ってきたのか。
その花見会場の近くにある
酒販店や量販店、コンビニでは
キリンよりアサヒが目立つ陳列
だったのではないか。
冷えた状態ですぐに飲める
リーチインクーラーでの陳列状態は
どうなのか。
そこで幅を利かせていたのは
アサヒではないか。
また周囲のエリアの店に
足を運んでみる。
すると何がいけなかったかがわかり、
お客様の視界にキリンが多く並んでいて、
「なんか美味しそうだな」
「これ買っていこう」
と思う状況をつくりださなくては、
ということが理解できる