外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」

外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」 by 山口 周

山口 周
1970年東京都生まれ。
慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。
電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て2011年より組織開発を専門とするヘイグループに参画。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発、新しい働き方研究…

論理思考やフレームワークを学んでも、
仕事がうまくいかないのはなぜ?

劇的に成果が上がる、
本当に使える「知的生産の技術」=「行動の技術」。

目次

第一章 知的生産の「戦略」
1.「顧客の知識との差別化」を意識する
2.「新しさの出し方」を決める
3.顧客を明確化する
4.要求されているクオリティを押さえる
5.使える時間を押さえる
6.活用できるリソースを確認する
7.顧客の期待値をコントロールする
8.期待値のズレはすぐに調整する
9.指示は、「行動」ではなく「問い」で出す

第二章 インプット
10.情報ソースは幅広にとる
11.まずはインタビューを押さえる
12.「よい質問=よいインプット」と知る
13.質問は紙に落とす
14.「わかったふり」をしない
15.インタビューガイドを忘れる
16.情報をインプットする前に、アウトプットのイメージを持つ
17.強いのは一次情報
18.現場観察を活用する
19.「現地現物」を「現地見物」にしない
20.仮説は捨てるつもりで作る
21.情報量は運動量で決まる
22.青い鳥を探さない
23.「とにかく、なんとかする」という意識を持つ
24.学習のS字カーブを意識する

第三章 プロセッシング

第四章 アウトプット

第五章 知的ストックを厚くする

外資系コンサルの知的生産術
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MEMO

外資系コンサルの知的生産術

◆常に「問い」を持つ!

質問というのは、
わかっていないから生まれるのではなく、
わかっているからこそ生まれるものである。

だから、学ぶことで
「わかっている領域」の境界線が
宇宙に向かって少しずつ広がっていくに
したがって、質問の数はどんどん増えていく。

知識豊富で創造性豊かな人ほど
好奇心旺盛なのはそのためである。

・これはどうなっているんだろう?
・なぜなんだろう?
・恐らくこうなっているんじゃないかな?

という問いを持って、
その問いに対する答えを得るために
インプットを行うと、
インプットを楽しめるばかりでなく、
定着率も高まって結果的にストックも
充実する。

では、どうしたら「問い」を持てるのか?

まずは、日常生活の中で感じる素朴な
疑問をメモにしてみる。

◆情報選択の時代!

人は何を読むかによって決まる。

仕事の上でも、個人生活の上でも、
人は目にする情報によって判断される。

身についた情報が、
私たちのパーソナリティの輪郭をつくり、
考え方を形成し、世界観を色づけする。

したがって、何を読み、何を無視するかは、
私たちが行ういくつもの判断のなかで
もっとも重要なものであるが
それは決まってほとんど考えなしに、
無意識のうちに行われる。

by リチャード・ワーマン

◆独学する!

クオリティの高い知的生産には
継続的なインプットが必要である。

が、その際に「では学校で」と
考えるだけでなく、
まずは「仕事を通じてよい学びを得る」、
あるいは日常生活の中で
「独学でよい学びを得る」
ということを意識する。

◆時間ドロボウに気をつけろ!

いま、多くのビジネスパーソンにとって、
もっとも希少な資源は時間である。

現代社会を究極的に表現すれば
「万人の万人に対する時間の奪い合い競争」
ということになる。

すべてのビジネスパーソンが
知恵を絞っているのは、結局のところ
「いかに人から時間を奪うか」
という問題で、これはつまり、
よほど意識的に自分の時間を
防御しない限り、インプットのための
時間は他の誰かに奪われ、
その人の富に変換されてしまう。

時間というのは個人が自由に
配分の意思決定をできる唯一の
投資資源である。

この投資資源を
どのように使うかによって
自分へのリターンが変わる。

自分の時間をFacebookなどの
ソーシャルメディアの閲覧に使えば、
その時間は閲覧している
ソーシャルメディアの富に変換され、
その会社(Facebook)の企業価値が向上するし、
その時間を良質なインプットのために使えば、
その時間は自分の正味現在価値に変換される。

自分の時間を奪いに来る
さまざまな組織や個人から、
自分の時間をできる限り防御する、
という意識を持つ。

よほど気をつけていないと、
自分の時間は他の誰かの富に
どんどん変換されてしまう。

◆「思考停止ワード」に注意する

思考停止ワードとは、
議論や考察のプロセスにおいて、
思考を深めることを止めてしまうような
ワードを指している。

代表的なものに
「グローバル化」や
「イノベーション」といった
用語が挙げられる。

典型的なのが、

「グローバル化の要請を受け、
これから外国人社員の採用比率を高めるます」

といった主張である。

少し考えてみればすぐに
意味不明であることがわかる。

グローバル化が進むと、
なぜ外国人社員が必要なのか?

そのあいだをつなぐためには、
少なくとも次のような論点に対して
答えを出しながら議論を積み上げていく
必要がある。

▶グローバル化とはそもそもなんなのか?
▶それは当社にとってどのような機会と脅威をもたらすのか?
▶その機会を捉え、あるいは脅威を回避するためにはどのような組織能力が必要なのか?
▶その能力を獲得するためには、どのような人材が必要なのか?

「思考停止ワード」が出てきたら、
それが具体的に何を指し示しているのかを明確化させ、
関係者間で、それぞれ異なるイメージを
持ちながら同じ言葉を使っている状況を避ける必要がある。

◆「言葉」とは「論理」である

山本七平は著書で日本軍の失敗を
「兵士から言葉を奪ったこと」
であると指摘している。

言葉を失われた人間は
思考することができない。

言葉を奪われた人間は
論理的に思考することを放棄し、
ただひたすら「空気」に流されて
漂うことになる。

これは逆に言えば、
言葉を変えることで空気も
大きく変わるということである。

◆知的生産術▶「問い」を裏返す【その2】

18世紀フランスの栄養学者パルマンティエは、
度重なる飢餓を凌ぐための特効薬として
ジャガイモを普及させようとありと
あらゆる手立てを講じた。

しかし、保守的な農民は一向にジャガイモに
関心を示さなかった。

そこで一計を案じたパルマティエは、
普及活動を一切中止し、
その代わりに自身のジャガイモ畑を
軍隊に厳重に警備させて誰一人として
近づけないようにした。

すると何が起きたか?

あれほどかたくなにジャガイモを
拒否していた農民たちは、
「これほど厳重に警備して育てている
作物であれば、よほど貴重なものに違いない」
と考え、夜の闇にまぎれてパルマンティエの
畑からジャガイモを盗み、
それを自分の畑で育てはじめた。

パルマンティエは、
どうすればジャガイモの魅力を効果的に
アピールすることができるか、
という当初立てた問から離脱することで、
ジャガイモ普及のブレークスルーを実現した。

これもまた「問を裏返す」ことで
成功した事例のひとつである。

◆知的生産術▶「問い」を裏返す

ケチャップメーカーのハインツ社は、
シェアの低下に苦しんでいた。

消費者調査の結果見えてきたのは、
残量が少なくなってきた際に、
同社が創業以来用いている
ガラスボトルの底に残った
濃度の高いケチャップを取り出しにくい
という顧客の不満であった。

一方で、競合メーカーは、
濃度の低い(=サラサラした)
ケチャップをチューブ型の
パッケージに入れており、
きっちりと最後まで使い切ることが
できるようになっていた。

つまり顧客は「ドロドロしていて
最後まで使い切れないハインツ」と
「サラサラしていて最後まで使い切れる
競合メーカー」という比較の結果、
使用ブランドをスイッチしていたのだ。

さて、このような事態に直面して
あなたならどうのように対応するか?

普通に考えれば
「ではハインツもパッケージをチューブ型に
変えよう」ということになる。

だが、同社のガラスボトルは創業以来ずっと
続いている、いわばブランドの
アイデンティティだった。

利便性を高めるために創業以来の
アイデンティティともいえるガラスボトルを捨てるか、
あるいはある程度の顧客流出は仕方ないと
諦めて伝統のガラスボールに執着するか。

迷ったハインツ社は、
「ガラスパッケージを継続した上で、
顧客に対して『中身が出しにくいのは
トマトを沢山使っていて濃度が高いから』
と訴えた上で、競合の商品はトマトの濃度が
低いから出しやすいのだ、と暗に攻撃する」
戦略を採用した。

つまりハインツ社自身が捉えていた問題を、
ユニークな強みとして徹底的に世の中に
訴えることにしたのである。

結果はどうなったか?

ハインツ社は、シェアを回復するどころか、
むしろ以前より高めることに成功した。

これは「問を裏返す」ことで成功した
典型的な事例といえる。

いま、目の前にある「問題」は、
そもそも本当に「問題」なのかと考えてみることで、
思わぬ打開策が見えてくることがある。

◆知的生産術▶「問い」をずらす

英国の名門陶器メーカーは、
それまで破損防止のために
箱詰めに用いていたオガクズを、
コスト削減のために古新聞に変更した。

ところが、資材そのもののコストは
下がったものの、箱詰めの作業員が
新聞を読むようになってしまって
作業効率が低下し、結局、
全体としてのコストは以前より増えた。

さてこの問題について、
あなたならどのように対処するか?

普通に考えれば、
現状を「作業員が新聞を読むために
業務効率が低下している」、
あるべき姿を
「作業員が新聞を読まずに作業し、
業務効率が以前より改善している」
と定義し、
どうやって作業員に新聞を
読ませることなく作業させるか、
という問題設定をするはず。

しかし、この磁器メーカーが
採用した打ち手はとてもエレガントな
ものだった。

彼らは、視覚障害者を雇って箱詰め作業に
当たらせたのである。

この結果、作業効率は大幅に改善し、
また障害者の雇用にもつながることになった。

彼らは、あるべき姿を
「作業員が新聞を読まずに作業する」ではなく、
そもそも「作業員が新聞に関心を持たない」
と再定義する、
つまり「問いをずらす」ことで
問題解決の突破口を掴んだ。

◆意外に思うかもしれないが、
知的生産を生業とする典型的な職業ともいえる
広告代理店やコンサルティングファームでは
「思考の技術」に関するトレーニングが
ほとんど行われていない。

なぜか?

実務を離れた場でそんな技術を学んでも
知的成果にはほとんど貢献しないということを
わかっているからである。

知的生産には、
目的に照らして情報を集め、
集めた情報を分けたり組み合わせたりして
示唆や洞察を導き出し、
それをアウトプットとしてビジュアルや
レポート文書にまとめるという
一連の作業プロセスがある。

知的生産のプロセスを全うするためには、
たくさんの「道具」や「コツ」が必要になる。

思考技術一点だけに焦点を当てて鍛えても、
それをプロセスの中の一局面でしか
使いようのない一種の「一発芸」を
身につけるのと同じこと。

どんなにピカピカの学歴を持った
頭脳優秀な人材でも、
「働き方」を知らないとまったく
知的成果を生む出すことができない。

こういった人たちに何より必要なのは、
「思考技術」のトレーニングではなく、
具体的に手や足をどう動かすか?
という「行動技術」、つまり「心得」
のトレーニングが必要である。

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