自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書 by 篠原 信
篠原 信
国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」上級研究員。
「有機質肥料活用型養液栽培研究会」会長。
京都大学農学部卒。
農学博士。
高校を卒業後、2年がかりで京都大学に合格。
大学生時代から10年間学習塾を主宰。
約100人の生徒を育てた。
本業では、水耕栽培(養液栽培)では不可能とされていた有機質肥料の使用を可能にする栽培技術を研究、開発。
これに派生して、やはりそれまで不可能だった有機物由来の無機肥料製造技術や、土壌を人工的に創出する技術を開発。
「世界でも例を見ない」技術であることから、「2012年度農林水産研究成果10大トピックス」を受賞…
「ほっといても成果を上げる部下」を育てる「教えない」育成塾!
周囲が指示待ち人間ばかりだ、
とお嘆きの方は、
おしなべて優秀な方ばかり。
自分のことはもちろんきちんとできるし、
スタッフや学生への指示も的確。
文句なしに優秀。
私なんて足元にも及ばない。
なのに私の周りには自分の頭で考えるスタッフや学生ばかり。
よくうらやましがられる。
なぜ優秀な人のところには指示待ち人間が多く、
ズボラで穴だらけの人間の周りに
優秀なスタッフや学生ばかりが集まるのだろう?
目次
序章 三国志に学ぶ理想のリーダー像
第1章 いかにして「自発的部下醸成方式」が生まれたか
第2章 上司の非常識な六訓
第3章 上司の「戦術」とは何か?
第4章 配属1日目〜3年目までの育て方
第5章 困った時の9の対応法

MEMO
自分の頭で考えて動く部下の育て方
◆創意工夫を凡人でもできるようにするにはどうしたらよいか?
「仮説的思考」がそのコツのひとつだ。
「仮説的思考」は、
人間が無意識のうちにやっていること。
ただ、無意識のままと、
意識的に実践するのとでは
結果がずいぶん違ってしまう。
創意工夫ができない人とは、
世界のどこかに「正解」なるものがあって、
それを自分が知らない、
知り得ないのだと諦めてしまっている人である。
しかし世の中のことは、
正解がないことがほとんどだ。
「仮説的思考」の優れているところは、
「知らない」ことを、
時間はかかっても「知っている」に
変えることができることだ。
————-
たとえば、
「お客さんでいっぱいの喫茶店をやってみたい」
と夢を持ったとする。
しかしどうしたらそんな喫茶店になるのか、
分からないことだらけだ。
そこで「流行っている喫茶店をたくさん見れば、
コツがつかめるのではないか」と仮説を立ててみる。
そして喫茶店を回るうち、
おじいちゃんばかりのお店や、
若者ばかりのお店があることに気がつく。
そこで「お店の内装によって客の年齢層が
決まるのではないか」と仮説を立てて、
若い人がたくさん来る店の内装はどんなものかを観察し、
自分の仮説を検証する。
こうしたことを繰り返すと、
観察眼が磨かれ、
仮説の立て方が次第にシャープになり、
実現可能性がどんどん増してくる。
仮説が間違っていたことに気がついても
それで終わりではなく、
反省の上に立って新たな仮説を立てることができるようになる。
手順をまとめると…
観察▶推論▶仮説▶検証▶考察
の5段階になる。
◆率先垂範(そっせんすいはん)
さしたる能力がないリーダーは、
率先垂範のやり方を取らないほうがよい。
大した能力がないことが赤裸になるだけで、
部下にも自分にとっても悲惨なことになる。
それよりも、部下の優れたところを認め、
そのパフォーマンスを引き出すことに専心したほうがよい。
大切なのは、部下の高い能力を認め、
伸ばしてやること。
パフォーマンスを向上させるほど
うれしくなるような「場」を整えること。
真の率先垂範とは、
能力で部下と張り合うことではない。
部下の能力発揮をどうやったら
最大化できるかに意を砕くことである。
山本五十六の有名な
「やってみせ、言って聞かせて、
させてみて、ほめてやらねば、
人は動かじ」という言葉は、
率先垂範の見本のように考えられている。
しかし、実際には、
「話し合い、耳を傾け、承認し、
任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を見守って、
信頼せねば、人は実らず」
という言葉が続くそうである。
部下の頑張りを全身全霊で承認することが
大事だということを、
山本五十六も指摘している。
◆士は己を知る者のために死す
この人のためなら死ねる、
というほど感奮するというのは、
果たしてよいことなのかどうか分からない。
しかし
「士(し)は己(おのれ)を知る者のために死す」
という言葉があるように、
人間にはこうした心理がある。
◆上司の非常識な6訓
1)部下ができたらラクになると思うなかれ
2)上司は部下より無能でかまわない
3)威厳はなくて構わない
4)部下に答えを教えるなかれ
5)部下のモチベーションを上げようとするなかれ
6)部下を指示なしで動かす