コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった by マルク・レビンソン
マルク・レビンソン
ニューヨーク在住のエコノミスト。
The Economistの金融・経済学担当エディターや、Newsweekのライターを務めた…
コンテナ船を発明したのは、
トラック運送業者マルコム・マクリーン。
その果敢な挑戦を軸に、
世界経済を一変させた知られざる物流の歴史を明らかにする。
目次
最初の航海
埠頭
トラック野郎
システム
ニューヨーク対ニュージャージー
労働組合
規格
飛躍
ベトナム
港湾
浮沈
巨大化
荷主
コンテナの未来

MEMO
◆世界のコンテナ港上位20

◆大型コンテナ船は単に「箱」を運んでいるだけのように見える。
だが実際には、1国の経済をグローバル・サプライチェインに結ぶ媒介役を果たしているのである。
◆高い輸送コストがちょうど関税のように貿易を阻い、
製造業を他国との競争から遮断し保護してきた。
その代償として、消費者は高い製品を押しつけられていた。
だがコンテナの導入で国際輸送コストが下がり、
また信頼性が向上すると、
メーカーは賃金の安い労働者を求めて海外に目を向けるようになる。
そして、労働集約的な作業は人件費の安い国に任せることが当たり前になり、
欧米や日本の製造業では労働者が職を失うことになった。
とはいえ、人件費の安い国はいくらでもある。
そうなると、輸送コストの少しの違いが決定的な差になることもあった。
コンテナ船のカギを握るのは、量である。
量が多ければ多いほど、
1個あたりの輸送コストは割高になる。
輸送需要が少ない都市や効率的な輸送インフラが整っていない都市では、
輸送コストは割高になる。
そうなると、グローバル市場をめざすメーカーにとってはあまり魅力的ではなくなってしまう。
◆輸送コストの影響分析が行われるようになったのは、
1990年代初めになってからのことである。
その結果、当然ながら、輸送コストは取引に重大な影響をおよぼすことがはっきりした。
輸送コストが高ければ、地元の消費者を相手にせざるを得ない。
そうなると生産は小規模にととまり経費もかさむが、致し方なかった。
しかし、他のコストより大幅に輸送費が下がると、
製造業は地元から全国へ、そして世界へと打って出る。
大量につくり大量に売ってコストを下げる傾向は次第に拡大し、
その行く着く先はグローバリゼーションという大潮流になった。
経済活動は国境を軽々と越えて世界に広がったのである。
輸送コストが低下するにしたがい、生産地も人件費の高い国から低い国へとシフトする。
この流れは、あらゆる国の賃金が同一水準になるまで続くだろう。