銃・病原菌・鉄(上)

銃・病原菌・鉄(上)1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) by ジャレド・ダイアモンド

ジャレド・ダイアモンド

1937年ボストン生まれ。
生理学者、進化生物学者、生物地理学者。ハーバード大学、ケンブリッジ大学で博士号を取得。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、ピュリッツァー賞、コスモス国際賞など受賞多数。
長年にわたってニューギニアでフィールドワークを続けている…

アメリカ大陸の先住民はなぜ、
旧大陸の住民に征服されたのか。

なぜ、その逆は起こらなかったのか。

現在の世界に広がる
富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。

1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、
進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、
広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。

目次

ニューギニア人ヤリの問いかけるもの

第1部 勝者と敗者をめぐる謎(一万三〇〇〇年前のスタートライン
平和の民と戦う民の分かれ道
スペイン人とインカ帝国の激突)

第2部 食料生産にまつわる謎(食料生産と征服戦争
持てるものと持たざるものの歴史
農耕を始めた人と始めなかった人
毒のないアーモンドのつくり方
リンゴのせいか、インディアンのせいか
なぜシマウマは家畜にならなかったのか
大地の広がる方向と住民の運命)

第3部 銃・病原菌・鉄の謎(家畜がくれた死の贈り物)

銃・病原菌・鉄(上)
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MEMO

◆非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人が、
より優れた武器を持っていたことは事実である。

より進歩した技術や、より発達した政治機構を持っていたことも間違いない。

しかし、このことだけでは、少数のヨーロッパ人が、
圧倒的な数の先住民が暮らしていた南北アメリカ大陸やその他の地域に進出していき、
彼らにとってかわった事実は説明できない。

そのような結果になったのは、ヨーロッパ人が、
家畜との長い親交から免疫を持つようになった病原菌を、
とんでもない贈り物として、
進出地域の先住民に渡したからだったのである。

◆究極的には、
農作物や食料生産技術の伝播速度が大陸によって異なっていたことが、
なぜ民族によって手にした権力と富の程度が異なるのか、
という問いかけに対する答えとなる。

しかし、そうなってしまった直接の要因は、
農作物や食料生産技術の伝播速度の違いではない。

農耕民が何ひとつ有利なものを持たずに、
丸腰で狩猟採集民族に対して1対1の戦いを挑んでも、
勝てるわけがない。

農耕民を狩猟採集民より有利な立場にさせた条件のひとつは、
食料を生産することによって、
狩猟採集民よりも人口の緻密な集団を形成できたことである。
丸腰であっても、農耕民が10人がかりでひとりの狩猟採集民と戦えば、
農耕民側が有利に決まっている。

農耕民は、狩猟採集民よりも優れた武器や防具を持っていた。
より進歩した技術を持っていた。
そして、さまざまな病原菌に対する免疫を持っていた。
また、集権的な集団を構成し、文字を読み書きできるエリートたちが
征服戦争を指揮することもできた。

◆歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、
それは、人々のおかれた環境の差異によりものであって、
人々の生物学的な差異によるものではない。

投稿者: book reviews

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