間違いだらけの食事健康法

間違いだらけの食事健康法 ~現代人が「慢性病」を抱えた理由~ by 崎谷 博征

崎谷 博征

1968年、奈良県生まれ。
奈良県立医科大学・大学院卒業。
脳神経外科専門医、ガンの研究で医学博士取得。
総合内科医。臨床心理士。

国立大坂南病院、医真会八尾病院を経て、私立病院の副院長をつとめる。
現在、みどりの杜クリニックを開業し、ガン、難病患者さんの在宅診療中心に従事している。
また崎谷研究所を設立、全国の述べ5000人におよぶ難病患者の根本治療指導に従事…

私たちは何を食べれば元気にすごせ、
健康寿命を延ばせるのか?

様々な食事健康法の情報が氾濫する中、
大事なのは人類の食の起源を探り、
食生活の基本ルールを確立させること。

慢性病を克服し、
日常を快適に過ごすカギは「狩猟採集時代の食事」に隠されている!

目次

■第1章 人類の起源から食事の意味を考察する
1-1 人類の食の起源を探る~ヒトは肉食を始めることで進化した?
1-2 人類の大脳が発達した理由~進化をもたらした「脳-腸トレードオフ
1-3 現代人の遺伝子は狩猟採集時代に「最適化」された
1-4 栄養豊富で健康的だった狩猟採集時代のライフスタイル

■第2章 現代によみがえる「狩猟採集時代の食事法」
2-1 「狩猟採集時代の食事」を現代人の食事に当てはめると
2-2 タンパク質を増やすことでどんな健康効果が得られるか?
2-3 高血糖・メタボを引き起こす「グリセミック負荷」が高いと食事とは?
2-4 「摂りすぎ」より「摂り方」が問題 現代食の「悪い脂」が病気を増やす!
2-5 ナトリウムよりカリウム? 塩分を控えたほうがいい本当の理由
2-6 農耕社会への変化が慢性的なビタミン欠乏を引き起こした
2-7 穀物・豆類・乳製品が慢性的な「ミネラル不足」の隠れた原因

■第3章 何が問題か? これまでの食事法を総検証
3-1 「狩猟採集時代の食事」と「糖質制限食」(ローカーボ食)の違い
3-2 「アトキンス・ダイエット」(極端なローカーボ食)はなぜ問題か?
3-3 「糖質制限食」のもう一つのリスク 長期的には死亡リスクが増大?
3-4 ミルク・乳製品の問題点1~重要な「カルシウムーマグネシウム」比
3-5 ミルク・乳製品の問題点2~摂りすぎは糖尿病・メタボの原因に
3-6 ベジタリアンでは健康になれない?1~菜食はビタミン欠乏につながる
3-7 ベジタリアンでは健康になれない?2~怖い「高濃度ホモシステイン」の影響
3-8 ベジタリアンでは健康になれない?3~ミネラル欠乏を引き起こす要因
3-9 ベジタリアンでは健康になれない?4~オメガ3脂肪酸・アミノ酸の慢性欠乏
3-10 「マクロビオティック」「玄米菜食」が起こす深刻な問題とは?

■第4章 「空腹が健康をつくる」はどこまで本当か?
4-1 「ファスティング(断食)すると健康寿命が延びる」のはなぜか?
4-2 カギはミトコンドリア? 断食(1日1食)が健康につながる理由
4-3 「酵素健康法」の酵素を裏付ける? タンパク質分解酵素の不思議な働き
4-4 「長寿遺伝子」研究と食事健康法1~IRT1遺伝子とレスベラトロール
4-5 「長寿遺伝子」研究と食事健康法2~細胞の成長をうながすTOR遺伝子
4-6 「やせ型」より「ちょいデブ」が長生き 過度のダイエットはなぜ危険か?

■第5章 食事の改善で病気が治る本当の理由
5-1 病気の原因はどこにあるのか?1~「慢性炎症」が現代病を引き起こした
5-2 病気の原因はどこにあるのか?2~フリーラジカルとミトコンドリア
5-3 病気の原因はどこにあるのか?3~慢性炎症は「カクテル効果」が決め手
5-4 慢性炎症を起こさない秘訣 個人差を決める「しきい値」とは?
5-5 感染や化学毒性に強い人は放射線にも強い?
5-6 慢性炎症を防ぐ食事の基本1~「リーキーガット」がなぜ問題になるか?
5-7 慢性炎症を防ぐ食事の基本2~カギを握る「分子擬態」と「交差反応」
5-8 慢性炎症を防ぐ食事の基本3~「リーキーガット」を起こす原因は?
5-9 現代病の根源にある「3つのライフスタイル革命」とは?

■第6章 最新の科学が教えてくれる「理想の食事健康法」
6-1 「狩猟採集型ダイエット」の基本ルール1~3つのレベルと肉・魚の摂り方
6-2 「狩猟採集型ダイエット」の基本ルール2~野菜・果物・発酵食品の摂り方
6-3 食材はどんな基準で選ぶか? 「自然の食べ物」と「工業食品」の違い
6-4 「狩猟採集型ダイエット」の実践1~パンをご飯に代え、魚貝類・肉類を増やす
6-5 「狩猟採集型ダイエット」の実践2~一日の食事の組み立てはこう考えよう
6-6 「狩猟採集型ダイエット」の実践3~高温加熱調理がなぜ問題になるのか?
6-7 「狩猟採集型ダイエット」の実践4~注意したい「液糖」と「植物油の種類」
6-8 食事とともに心がけたい「狩猟採集型ライフスタイル」とは?

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MEMO

間違いだらけの食事健康法

◆高温加熱調理はなぜ問題なのか?

1)高温での加熱調理を避ける

食べ物を高温で加熱調理すると、
糖とタンパク質が結びつくメイラード反応によって
「AGEs」が生成される。

AGEsは体内で常に生成されるものだが、
食事の内容によって増大し、
血液中に多量にめぐるようになると、
皮膚などのタンパク質組織(コラーゲン繊維)が
硬化したり、細胞の受容体と結びついて慢性炎症を起こしたりする。

また、細胞内のタンパク質にくっつき、
正常な構造や機能を変えることもある。

その結果、免疫系から「異物(内なる敵)」と見なされ、
攻撃(自己免疫反応)を受けることになる。

さらに、AGEsには老化を促進させる作業もある。

では、どうやったら調理の際に生み出されるAGEsを
減らせるのか?

食品中に含まれるブドウ糖の濃度が10%の場合、
AGEsを生み出すメイラード反応は80℃で5倍に、
130℃では25倍に増加する。

AGEs含有量の少ない食品を選ぶことも重要だが、
それよりも食品の直火焼き、フライなど高温調理するほうが
ずっと危険である。

AGEsを減らす調理方法として

▶煮込む(低温にゆっくり煮込む)
▶茹でる
▶低温でゆっくり焼く・あぶる
がある。

2)使用するオイルに注意する(酸化しにくい油を使う)

調理に使用する油は、熱の酸化作用に対して安定している、
つまり酸化されにくい性質のものを使う。

酸化されにくいものとして順番に

▶飽和脂肪酸(ココナッツオイルなど)
▶単鎖不飽和脂肪酸(オリーブオイル、アボガドオイル、アカダマアオイルなど)
▶長鎖不飽和脂肪酸(オメガ6脂肪酸※1、オメガ3脂肪酸※2)

となる。

ココナッツオイルがおすすめだが、
入手しにくいときはオリーブオイルでもよい。

※1紅花油、コーン油、菜種油など

※2亜麻仁油、大麻油、ウオールナット油など

◆食生活の基本ルール

▶「赤肉、鶏肉、魚貝類、野菜、果物、発酵食品」中心の食事

▶穀物、乳製品、豆類(発酵食は除く)、加工食品は摂らない

「健康な人」は、基本ルールを80%守る。

「アスリート」は、基本ルールを90%守る。

「病気の人」は、基本ルールを100%守る。

※卵を生で食べるときは、
白身を取り除くこと。

白身に含まれる「アビジン」というタンパク質には、
栄養の吸収を阻害する働きがある。

加熱すれば白身も食べて問題ない。

◆現代病の根源にある「3つのライフスタイル革命」とは?

1)農耕・家畜革命(約1万年前)
2)近代化革命(300年前)
3)加工食品革命(第二次大戦以降)

現代人が直面している慢性病という問題は、
約1万年前から現代に至るまでに起こった
ライフスタイルの3つの革命が
重なり合うことで起こっている。

慢性病を治癒し、
健康を回復させるためには、
このひとつひとつを丹念に紐解いていけばよい。

◆ベジタリアン(菜食主義)の何が問題なのか?

1)ビタミンB12欠乏症
2)高濃度ホモシステイン
3)ミネラル欠乏
4)ビタミンD、ビタミンB6欠乏
5)オメガ3脂肪酸欠乏
6)アミノ酸欠乏

◆牛乳・乳製品にまつわるリスク

1)「カルシウム・マグネシウム」バランスが悪い
2)慢性炎症の原因になる
3)糖尿病・メタボリックシンドロームのリスクが高まる
4)有害物質が多量に含まれる

◆「穀類・豆類」を控えないといけない理由(ワケ)

全粒穀類(麦類、トウモロコシ、コメ)や豆類には
ビタミンBの吸収を阻害するピリオキシン・グルコサイドという
「抗栄養素」が含まれている。

ピリオキシン・グルコサイドが含まれていると、
約3分の2のビタミンBが吸収されなくなる。

◆塩分を控えたほうがいい本当の理由(ワケ)

現代では、保存料としての塩がそれほど必要ないにもかかわず、
ナトリウムの摂取量がカリウム摂取量に比べて2倍にもなっている。

これは、調味料として塩の使いすぎや加工食品に大量の塩を
含まれていることが原因。

カリウムは新鮮な野菜や果物に多く含まれている。

野菜や果物が、カリウムをほどんと含まない植物油、精製糖、
全粒粉の食品(穀物)、乳製品にとって代わっていることも
ナトリウムとカリウムのアンバランスの原因である。

一般に使われている塩(食塩)は、正式には「塩化ナトリウム」という。

カリウムにはナトリウムの腎臓での再吸収を抑制して
尿中へ排出量を増加させることにより、
血圧を降下させる働きがある。

このようにナトリウムとカリウムは真逆の働きをする。

両者が拮抗することでバランスが保たれている。

ところが現代人のようにナトリウムを過剰摂取する生活を
続けているとその均衡は崩れてしまう。

こうしたナトリウムとカリウムのアンバランスは、
高血圧だけである、脳卒中、消化器系のガン、不眠などにも
関係している。

まずは「ナトリウムとカリウム」のバランスを
均衡させるような食生活をする必要がある。

◆狩猟採集生活は、豊かな食物、固い絆で結ばれたネットワークと
余暇の時間に恵まれた「人類史上もっとも豊かな社会」だったと言える。

狩猟採集時代の食事を現代食に当てはめると、
次の6点が基本になる。

1)赤肉(脂肪分の少ない)、魚介類を中心としたタンパク質を摂取
人間が細胞膜を維持するためには、肉を食べる必要がある。
また肉類には、肝臓の働きを助けたり、肝細胞の再生を促進させたり、
細胞膜を安定化するタウリンが豊富に含まれている。

2)デンブン質でない野菜と果物を摂取
デンプン質でない野菜と果物は、
GI値が低いため、摂取後急に血糖値が上がることはなく、
ゆっくり消化・吸収される。
それに比べて、穀物は(麦類、トウモロコシ、コメ)は、
血糖値を急激に上げる。

3)穀物を控える
4)豆類を控える
5)乳製品を控える
6)加工食品を控える

そしてこれに
「発酵食を取り入れる」
とよい。

◆狩猟採集時代から農耕時代に入って、
栽培収穫に適し、長く保存できる食品、
つまり穀物に切り替えた。

三大穀物といわれる小麦、トウモロコシ、コメはいずれも、
必須アミノ酸が欠如していて、
血糖値を上げて体重を増加させる糖、そして消化にダメージを与える
様々な物質(抗栄養素)が含まれている。

◆現代病の要因

私たちの遺伝子と環境の変化のミスマッチによって、
現代病といわれる慢性病が引き起こされている。

そのミスマッチの原因となる最たる環境の激変が、
じつは私たちの食事である。

◆私たちの脳は全体の2%程度の容積しかないのに、
全体に要するカロリーの20%も消費する。

類人猿の脳で消費されるカロリーはわずか8-9%程度。

いかに人類が脳を最大化することで環境に適応してきたかが分かる。

◆いま健康や食事に関しての情報が混乱している…
なぜか?

それは栄養学、医学といった学問が
細分化されてすぎて、
全体の一部分しか見ていないからである。

栄養はひとつの栄養素のあつまり以上のものである…

それをタンパク質、脂質、炭水化物(糖質)と細分化して、
その一部分だけを切り取って考えるから誤りが始まる。

部分を切り取って足しても
全体にはならない…

現代の医学・栄養学がぶち当たっているカベが、
この「進化」という視点がすっぽり抜け落ちている点にある。

現代の医学・栄養学は高度に断片化(タコツボ現象)されていて、
枝葉末節にこだわるばかりで土台となる幹がしっかりしてない。

食事に私たちの遺伝子が適応してきた結果が、
人類の進化を織りなす大きな要因になっている。

人間を含むすべての生物体は、
究極的には遺伝子的にどのような栄養を摂取すればよかが決定されている。

大事なのは「進化の視点から私たち人類が遺伝的に適応した食事内容を探ること」にある。

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