この世でいちばん大事な「カネ」の話 by 西原 理恵子
西原 理恵子
1964年高知県生まれ。
武蔵野美術大学在学中に『ちくろ幼稚園』で漫画家デビュー。
97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞を受賞。
2004年『毎日かあさん カニ母編』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、05年『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞…
「カネ」と「働く」の真実が分かる珠玉の人生論!
お金の無い地獄を味わった子どもの頃。
お金を稼げば「自由」を手に入れられることを知った駆け出し時代。
「お金」という存在と闘い続けて見えてきたものとは……。
目次
第1章 どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。
第2章 自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。
第3章 ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失うことで見えてくるもの。
第4章 自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。
第5章 外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。
谷川俊太郎さんからの四つの質問への西原理恵子さんのこたえ

MEMO
この世でいちばん大事な「カネ」の話
◆なぜ貧富の格差が広がるのか?
たとえば、1時間で10万円稼げる人にとって、
3万円の商品やサービスは18分の時給と同じだから、
18分円にすぎない。
ところが、1時間で1000円の時給の人にとっては、
30時間円になる。
そして18分円の人は気軽に3万円のお金を使えるが、
30時間円の人は3万円は使えない。
時給10万円の人が300万円を使う感覚と、
時給1000円の人が3万円を使う感覚は
同じ時給単価である。
そしてこのように気軽に3万円を使える人は、
自分にも投資ができるし、
新しい知識を得る機会も増えるし、
人脈も増える…
そして数年後には時給が20万円にも、
100万円にもなってしまう。
そしてますます格差が広がる。
◆専業主婦になってはいけない…
自分でカネを稼げないのは不幸への道…
◆貧しさは「考える」ことさえ諦めさせる!
貧乏人の子は、貧乏人になる。
泥棒の子は、泥棒になる。
こういう言葉を聞いて
「なんてひどいことを言うんだろう」
と思う人がいるかもしれない。
でも、これが現実!
お金が稼げないと、
そういう負のループを断ち切れない。
生まれた境遇からどんなに抜け出したくても、
お金が稼げないと、
そこから抜け出すことができないで、
親の世代と同じ境遇に追い込まれてしまう。
そうなると人は、
人生の早い段階で、
「考える」ということを止めてしまう。
「止めてしまう」というか、
人は「貧しさ」によって、
何かを考えようとする気力を、
よってたかって奪われてしまう。
貧困の底で、
人は「どうにかしてここを抜け出したい」
「今よりもましな生活をしたい」
という「希望」を持つことさえもつらくなって、
ほとんどの人が、その劣悪な環境を諦めて受け入れてしまう。
そうして「どうせ希望なんてないんだから、
考えたってしょうがない」という諦めが、
人生の教えとして、子どもの代へと受け継がれていく。
考えることを諦めてしまうなんて、
人が人であることを諦めてしまうに等しい。
だけど、それが、あまりにも過酷な環境をしのいでいくための
唯一の教えになってしまう。
◆あなたに娘がいるなら
旦那の稼ぎをあてるにするような人にはならないようにした方がいいよ…
リストラや倒産、失業みたいなことが
これだけ一般化している今の時代に
「人のカネをあてにして生きる」ことほど、
リスキーなことはない。
「人の気持ちと人のカネだけは、
あてにするな!」
ってことをしっかりと教えてあげてね。
人の気持ちとカネをあてにするってことは、
「自分なりの次の一手」を
打ち続けることを自ら手放してしまうことである。
◆あなたに子どもがいるなら
絶対アルバイトをさせてほしい…
あなたの家庭に子どもがいるなら
「アルバイト」をさせてほしい。
とくに男の子は外の釜の飯を絶対に食べなきゃダメ。
アルバイトをしてできるだけ
いろんな仕事を経験して、
外の世界の大人からたくさん叱られる…
親以外の、外の世界で出会った大人から怒られたり、
叱られたりするのって、
すごく大事なことだ。
塩味と砂糖味みたいなもの。
しょっぱい思いも知っておくと、
いいことだって、ちゃんと味わえるようになる。
嬉しいことは、
しんどいことがあると倍嬉しい。
これは実際に体験してみないと分からない。
アルバイト自体が将来の夢と直接結びつかなくてもいい。
大人になる前にマイナスを知ること、
自分で体を動かして、
自分なりの経験を積み重ねることのほうに、
より大きな意味がある。
そうやって叱られて、社会勉強できて、
しかもお金がもらえるのがアルバイト。
◆「カネの話って」本当に下品なの?
洗脳されてるだけじゃないの?
日本人の多くの人は、
カネの話をしない。
特に大人は子どもに
「お金の話をするのははしたない、
下品なことだ」と言って聞かせたりする。
「カネについて口にするのははしたない」
という教えも、ある意味、
「金銭教育」だと思う。
子どもが小さいときからそういった
「教え」を刷り込むことで、
得するのは誰か?
少し考えてみてほしい…
いちばん得するのは、
経営者だと思わない。
日本人は、
「働き者で欲がなく、文句を言わない」
というのが美徳みたいに言われてきたけど、
それって働かせる側にしたら、
使い勝手がいい最高の「働き手」じゃない。
カネの話で下品だという「教え」が生んだものがまだある。
これ…
「人間はお金がすべてじゃない」
「幸せは、お金なんかでは買えない」
これって何を根拠にして、
そう言い切れるのか?
「いかにも正しそうなこと」
の刷り込みが、
どれだけ事実に対して人の目をつぶらせ、
人を無知にさせるのか…
◆「女の子なんだから、おごられて当然よね」
という文化がある。その根拠は?
「私みたいなカワイイ子が一緒にご飯を食べてあげるんだから、
払ってもらうの、当然よね」?
どんな理屈をくっつけようと、
お金をタダで出してもらうことが
習慣化しているというのは、
恐ろしい、よくないことである。
女の子だって、
ワリカンで当然ぐらいな気持ちでいるべき?
「おごられて、あたりまえ」
という態度には相手のことを甘く見て、
みくびったり、
自分自身を卑屈に思う気持ちが潜んでいる。
お金との接し方は、
人との接し方に反映する。
お金は、つまり「人間関係」のことでもある。
◆カネ=人間関係
日本には、
「お金の話はしない」
「お金について、とやかく言うのは品のいいことじゃない」
という文化がある。
だからお金について、
心の底では「こんなことをされたらイヤだな」
と思うことがあっても、誰からも、
何も言われないかもしれない。
でも腹が立ったことは、
口に出さないでいると、
お腹の中にたまっていく。
「あいつに貸すと、
モノでも小銭でも返ってこないよな」
と思われたら最後、
人は離れていってしまう。
◆若いときに体験しておくべき大事なこと…
それは「このお金は今日1日稼いだ稼ぎた」と実感できるような
体験を積んでおくこと!
◆お金がないときにいちばん手を出したらいけないもの…
それはギャンブルである! でも、現実はむしろ逆…
◆ギャンブルの基本中の「基」とは…
負けてもちゃんと笑っていること!
◆人とは反省しない、
反省しても忘れる生き物である…
◆バクチに追いつく稼ぎなし
「どんなに稼いでも、
バクチをしていたら追いつかない」
という意味…
◆大事なことは
単に「カネ」があるってことじゃない…
働くこと。働き続けること…
◆マイナスを味方につける…
今いるところがどうしてもイヤだったら、
ここからいつか絶対に抜け出すんだと
心に決める…
◆才能って自分で探すのではなく
他人から教えられるものである!