一流の人は、本のどこに線を引いているのか by 土井英司
土井 英司
有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役/日刊書評メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長。
1974年生。慶應義塾大学総合政策学部卒。
日経ホーム出版社(現・日経BP社)を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。
2001年に同社のCompany Awardを受賞。
独立後は数多くの著者のブランディング、プロデュースを手掛けた…
読書とは、数千行の中から自分の未来を拓く「1行」を見つける行為。
目次
序文 人生は「1本の線」から動きだす
◎たった1本。それで十分
◎小説は「消費」、ビジネス書は「投資」
◎「評価とは理解である」 ほか
第1章 こんな読書をしてはいけない
◎「おもしろいかどうか」はどうでもいい
◎「書評」なんていらない
◎「全部読まないといけない」という病
◎信念を確認するための「自己陶酔線」は無意味
◎著者の「ウソ」と「いい話」に線引くお人好し
◎読むべき本を立ち読みで見抜く11の戦略 ほか
第2章 「速く」読むな。「遅く」読め
◎速読なんていらない。知らないことは遅くて当たり前
◎できない人は「今年○冊読む」と目標を掲げる
◎その読書は「息抜き」か「努力」か
◎賢者は努力する人を決してバカにしない ほか
第3章 「全体」を見るな。「部分」を見よ
◎ジョコビッチがボリス・ベッカーをコーチにした理由
◎得手を磨き、不得手をなくす読書戦略
◎一流になるための8つの「部分練習」とは?
1.会計・ファイナンス
2.戦略
3.マーケティング
4.オペレーション
5.マネジメントとリーダーシップ
6.商品開発
7.統計
8.経済 ほか
第4章 「結果」を見るな。「原因」を見よ
◎原因とは「ボウリングのセンターピン」である
◎ユニ・チャームは国境を越えていく
◎成城石井はCランクがお好き! ?
◎KADOKAWAがはまる「ABCの罠」
◎USJのセンターピンとは何か? ほか
第5章 「同じ」をつくるな。「ちがい」をつくれ
◎代官山蔦屋書店が「駐車場」の幅を広くした理由
◎「ちがい」は「組み合わせ」でつくられる
◎最強の営業マンは「節税」を語る
◎そのビジネスの「上流」は何か?
◎「とんかつよりソースが大事」は本当か ほか
第6章 「中身」を読むな。「背景」を読め
◎流行りのベストセラーから何を学ぶか
◎『学問のすゝめ』は慶應義塾のパンフレット! ?
◎「俺のイタリアン」から学ぶこと
◎背景を知りたければ「現場」に出よ ほか
第7章 さあ、「教養」に挑め!
◎「恐怖」に「知的好奇心」が勝つかどうか
◎「金」は奪えるが、「知恵」は奪えない
◎『非才! 』になりたければ、かける時間を増やせ
◎「分厚い本」に挑むコツ
◎引けば引くほど、もっといい線が引ける ほか
終章 ブルー
巻末付録 私の引いた44本の線

MEMO
一流の人は、本のどこに線を引いているのか
◆成城石井の創業
ABC分析でいう、Aランクの商品を重視せず、
BCランクの商品を売ろうとした。
たくさんは売れないCランクの商品をしっかり売ることによって、
それを買いに来たお客さんが、
他のものを手に取って買ってくれる。
◆マーケティングの狙いは、
セリングを不要にすることだ!
◆「超」の納税法
究極の相続税節税策は教育!
◆フィッシャーの「超」成長株投資
安く買って高く売ろうと派手な動きをするよりも、
真に優れた企業を見つけ出し、市場がどれだけ激しく変動しても
その企業の株を保有し続けるほうが、
実際のところ、はるかに大きな利益をはるかに多くの人たちにもたらす。
◆「幸せ」は絶対評価、「成功」は相対評価
幸せは、あくまでも本人の問題、本人次第。
本人が「幸せだ」と思えれば、
それは紛れもなく幸せな状態である。
幸せはその人自身の「絶対的な評価」であり、
他人と比較することに本質的な意味がない。
比較し始めれば不幸になるだけである。
しかし、「成功」は違う。
成功は他人や過去の自分と比べた場合の度合いを示しているのであって、
つねに「相対評価」である。
「ただ思う」だけで成功することはありえず、
そこには学びと実績が必要になる。
◆スポーツ選手のセンターピンとは?
「才能」ではなく「練習」である。
◆「天才系」の本を読んで学べることは…
「それをやっている時間が長い」ということである。
これは真理だ。
成果を出している人は、
そこにかけている時間が圧倒的に長い。
◆ワークライフバランスの議論など、
まったくバカバカしい
ワークとライフを分ける必要などない。
仕事は遊びであり、遊びもまた仕事だ。
すべての時間を学びに使うことが楽しいし、
その結果を仕事にいかすこともまた楽しい。
だから、ワークとライフ、
仕事とプライベートの間に線の引きようなどない。
◆いま投資すべきものとは?
今流行りのビットコインでも、「金」でもなく
「知恵」である。
なぜか?
土地や財産は奪われることがあっても、
知恵と人脈は奪えない。
さらに、知恵(知識)には税金がかからない。
◆業態別のセンターピン
・金融業:お金持ちを抱え込むこと
・飲食店:味
・ターマパーク:集客
英語学習のセンターピンは?
語彙力(英単語?)
◆原因とは「ボウリングのセンターピン」である
センターピンとは、
ボウリングの10本のピンのうち、
真ん中かつもっとも手前にある1番ピンのこと。
ストライクをとるためには、このセンターピンに当てなければならない。
ビジネスも同じだ。
「原因」とは、つまり「センターピン」のことだ。
絶対外してはいけないセンターピンが何かを知らないと、
成功はない。
そして、センターピンは「業態」によって違う。
・メーカー:ヒット商品
・卸売業:強い取引先の数
・小売業:品揃え
◆「原因」に線を引け!
本のなかに「◯◯社は20期連続増収増益をしている」という記述があったとする。
大したものだ、と関心しながらその1文にすっと線を引く。
たしかに20期連続の増収増益とは、
なかなかできることではない。
しかし、である。
ここに線を引いても、
あなたにとって何らプラスになることはない。
これはあくまで「結果」だ。
大切なことは、その会社がなぜそのように成長し続けることができるのか、
という「原因」の部分である。
他社には真似できない部分はどこなのだろう?
なぜ? どうやって?
こうして成功をつくりだした「原因」を探しながら読み進めていくと、
たいてい1箇所や2箇所はその核心部分が書いてある。
それを見つけたときに、線を引く。
そしれ、それを自分ならどうやって応用できるのか考えをめぐらせる。
◆統計を知ることの最大の利点は、
「未来を予測できる」ようになることだ
◆マネジャーとリーダーの違いを知る!
マネジャーは組織や部下を見ていて、
リーダーは未来を見ている。
優れたマネジャーは謙虚だが、
優れたリーダーは決して謙虚ではない。
孫正義はリーダーである。
◆トヨタとユニクロの強みとは?
自社にとっては黒字だがライバルには赤字になるであろうところに
「戦場」を設定するだけで、
相手は確実に撤退せざるを得なくなる。
ここにトヨタのユニクロの強みがある。
◆マーケティングの目的は「セリングを不要にする」ことだ!
セリングとは、要するにモノやサービスを売ること、
いわゆる「営業」である。
「営業」して売り込まなくても、
モノやサービスが売れていくような状態を作ることが、
マーケティングの機能である。
◆ブルー・オーシャンであり続けることはできない
その戦略は他者に真似できるかどうかを見よ!
◆企業が発展していくうえで、「損益計算書の項目の、上から順に大切にしていく」
▶売上高(お客様)
▶売上原価(取引先)
▶販売管理費(従業員)
▶営業外損益(銀行)
▶税金(国)
▶当期純利益(株主)
◆一流になるための8つの「部分練習」
1)会計、ファイナンス
2)戦略
3)マーケティング
4)オペレーション
5)マネジメントとリーダーシップ
6)商品開発
7)統計
8)経済
◆「速く読む」ことに価値がないのと同じく、
「読んだ冊数」にも価値がない。
それを「どういかしたか」にこそ価値がある。
◆速読なんでいらない。知らないことは遅くて当たり前
◆今日のビジネス環境では「大きいものが小さいものに勝つ」のではなく、
「速いものが遅いものに勝つ」
◆ブランドとはお客様がどう評価するかであり、
単なる表層的なイメージを飾れば良いのではない
◆読むべき本を見抜く11の戦略
1)経営者本は「創業者」か「中興の祖」を選ぶ
2)「プロフィール」で本物か偽物かを見極める
3)著者は「一流の変態」を選ぶ
4)「コンサルタント」から学ぶのは王道の戦略
5)著者が「専門外」を書いていたら避ける
6)本の「タイトル」にだまされない
7)「固有名詞」の多い本を選ぶ
8)冒頭の数ページで「いい線」が引けそうな本は買い
9)膨大な「データ」に立脚した本を選ぶ
10)「翻訳書」は良書の率が高い
11)「箇条書き」に注目する
◆「原因」に線を引く
ある事象を、「原因」と「結果」に分けて考えてみると、
線の引き方は劇的に改善できる。
結果ではなく、原因に線を引く。
「生産性の高い従業員が充実感を抱くのであり、その逆ではない」
やる気があるから仕事ができるようになるのではなく、
仕事ができるようになったからやる気が出る。
つまり、モチベーションの有無は結果にすぎず、
その原因は仕事ができるかどうかである。
◆本に線を引くべきでない箇所とは
それは「そうだ、その通り!
自分の考えは間違っていなかった!!」
と感じる箇所には線を引く必要がない。
線は、新しい発見や役に立つ箇所、
そして自分の考えと「ちがう」箇所に引くことで成長の糧になる。
◆全体を通して読むような「全体練習」をするよりも、
いま必要な箇所だけを読む「部分練習」をするべきである。
本は、いまの自分の身になりそうな大切な部分だけを読めばいい。
1冊すべてを読破する必要などまったくない。
◆書評や読書感想文など書く必要はない
たった1行でいいから、
自分の身になる文章に線を引き、
それを体にしみ込ませること。
それができれば、その本は価値がある1冊になる。
◆読書には2種類ある
すでに「知っていること」に深みをつけるか、
「知らないこと」を身につけるか。
どちらの場合であっても、知的なワクワクがある。
◆読書の大きな効用は、
偉大な著者たちのものの見方、
考え方、つまりフィルターをのぞけることである。
その作業は他者との「ちがい」を作るためにとても役立つし、
自分自身の成長にもつながる。
◆評価というのは、「理解」である
◆原因を作り出す作業こそが、人間の価値である
人間には原因が作れる。
しかし、コンピュータには原因を作ることはできない。
原因が何かを探ることもできない。
だから、コンピュータなど敵ではない。
未来を作れるのは人間だけだ。
無論、人工知能(AI)の発達によって、
今後コンピュータにできることはもっと増えていく。
だからこそ、著者を目利きし、
本を目利きし、線を引くことこそが、
コンピュータに決して代替えされない人の能力だ。
◆「原因」と「結果」
いい仕事ができない。人生が辛い。楽しくない。
その結果として、
人は飲酒やギャンブルと同じような目的で
エンターテイメントに一時の救いを求めているのであって、
エンターテイメントそのものは、
結局「結果」でしかない。
◆小説は「消費」、ビジネス書は「投資」
◆1冊に100本の線を引くよりも、
100冊に1本の線を見出すほうが現実的だし、実りが多い。