僕は君たちに武器を配りたい by 瀧本 哲史
瀧本 哲史
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。
エンジェル投資家。
東京大学法学部卒業。
東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーにて、主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事。
内外の半導体、通信、エレクトロニクスメーカーの新規事業立ち上げ、投資プログラムの策定を行う。
独立後は、企業再生やエンジェル投資家としての活動をしながら、京都大学で教育、研究、産官学連携活動を行っている…
20代が生き残るための思考法!
これから社会に旅立つ、
あるいは旅立ったばかりの若者が、
非情で残酷な日本社会を生き抜くための、
「ゲリラ戦」のすすめ。
目次
はじめに
第1章 勉強できてもコモディティ
第2章 「本物の資本主義」が日本にやってきた
第3章 学校では教えてくれない資本主義の現在
第4章 日本人で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ
第5章 企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方
第6章 イノベーター=起業家を目指せ
第7章 本当はクレイジーなリーダーたち
第8章 投資家として生きる本当の意味
第9章 ゲリラ戦のはじまり
本書で手に入れた武器

MEMO
僕は君たちに武器を配りたい
◆武器(その11)
▶投資家として働くことで、世の中の見方が一変する。
▶公開されている情報からでも、普通の人がやならい「一手間」をかけることで、大きな果実を手に入れられる。
▶大学では「奴隷の勉強」に時間をかけず、自由人になるための「リベラル・アーツ(教養)」を学べ。
▶本当の資本主義の時代に、「ほんとうに人間らいし関係」を探っていこう。
◆武器(その10)
▶日経新聞を読んでもけっして鵜呑みにするな。
▶機関投資家は個人投資家をカモにしている。株式投資は「損して学ぶ」つもりで挑め。
▶トレンドとサイクルを見極めることができればリターンが得られる。
▶人を今の評価で判断しない。
◆武器(その9)
▶ローリスクより、リスクがとれる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選べ。
▶サラリーマンとは知らないうちにリスクを他人に丸投げするハイリスクな生き方。リスクは自分自身でコントロールせよ!
▶投資は、長期的な視点で富を生み出し続けるか、人が信頼できるか、の2点で判断する。
◆武器(その8)
▶「駄馬※」を使いこなすのが本当のマネジメント。
▶クレイジーな人はコンプレックスを原動力とせよ!
▶クレイジーでない人はリーダーのサポート役になれ!
※乗馬用には使えない下等の馬。荷を運ぶ馬。にうま。
◆武器(その7)
▶自分の働く業界について、ヒト、モノ、カネの流れを徹底的に研究しろ!
▶イノベーションのチャンスは「今しょぼい業界」にある。
▶「TTP※」と「逆の発想」がイノベーションを生む。
※徹底的にパクる。
◆武器(その6)
▶自分自身も「商品」。売る「場所」を変えることでまったく結果が違ってくる。
▶「自分の頭で物事を考えない人」は、DQNビジネス(※)のカモにされる。
※DQN(ドキュン)とは、インターネットスラング・蔑称の一つである。軽率そうな者や実際にそうである者、粗暴そうな風貌をしている者や実際に粗暴な者かつ、非常識で知識や知能が乏しい者を指すときに用いる。
◆武器(その5)
▶マーケターとは新しくない要素の組み合わせで「差異」を作り出せる人のこと。これからのビジネスは「差異」が左右する。
▶企業や商品で差をつけることは難しい。差をつけるには、ターゲットとなった顧客が共感できるストーリーを作ること。
◆武器(その4)
▶資本主義の世界で、稼ぐことができるのは6タイプ(※)。
▶しかしそのうち「トレーダー」と「エキスパート」は価値を失いつつある。
※トレーダー、エキスパート、マーケター、イノベーター、リーダー、インベスター(投資家)
◆武器(その3)
▶大量のコマーシャルを打っている会社は、「今流行っている」商品・サービスを売る会社には気をつけよ!
▶生産性の低い40代、50代社員が幸せそうにしている会社には入るな!
▶企業を見極めるポイントは「お客さんを大切にしているか」。顧客を大事にする会社は従業員も大事にする。
◆武器(その2)
▶金融業界など高給で知られる会社ほど、変化が激しく、短命な商品の寿命ががそのままビジネスの寿命になる。
▶現在人気の企業でも40年後は消滅している可能性が大。就職ランキングに騙されるな!
▶日本の国内市場は先細り間違いなし。海外で働くことも考えよ!
◆武器(その1)
▶現役学生が起業するのは「高学歴ワーキングプア」への道。コモディティ企業を作るな!
▶専業主婦はハイリスク。「婚活」ブームに踊らされずに、女性もキャリアを目指せ。
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◆人生ではリスクをとらないことこそが、大きなリスクとなる。
◆「英語・IT・会計知識」の勉強というのは、あくまで「人に使われるための知識」であり、きつい言葉でいえば、「奴隷の学問」なのである。
◆投資家として生きるのであれば、あらゆることについて自分で調べてみて、考えて結論を出すことが必要となる。
◆「売り物がある人」は必ず「武器」として英語を身につけるべきだ。
◆きれいな英語を話せることより、さまざまな国のひどい訛りが混ざった英語を聞き取れることのほうが、ブローバルビジネスにおいてはずっと役立つ。
◆これからの世界を生きる人々にとって、世界共通言語である「英語」は必要不可欠のスキルになる。売りになるスキルや知識のない人が英語を勉強してもそれほど価値は産まないが、技術者や起業家のような「売る物」がある人は、英語ができないと非常に損をする。
◆今ある技術を組み合わせることで、世界を変えるイノベーションは生み出すことがいくれでもできる。
◆「投資」とは、お金を投資することだと一般的に思われているが、本質的な「投資」とは、
自分の労働力や時間、人間関係を投資することでもある。
◆どうすれば「歪み」に気づくことができるか?
人々と違う「インプット」を得ること。
人間の行動(アウトプット)は、インプットの結果である。
だから行動を変えようと思うならば、インプットを変えなければならない。
◆世の中の動きを見るときには、サイクルなのかトレンドなのか、それを正確に判断することが重要となる。
◆トレンドとサイクルを見極めよ
投資の世界ではよく「トレンド」と「サイクル」という言葉が使われる。
一定方向の動きを「トレンド」と呼び、波打つ動きを「サイクル」と金融の世界では呼ぶ。
トレンドとは、長期的な視点で、一定方向に世の中が変化していくことを指すときにも使われる。
サイクルとは、より短期的な、「繰り返す」変化のこと。
トレンドは一度起こったら元には戻らず、そこで起こった変化が常態となる。
その反対にサイクルは時とともに変化が循環し、再び以前と同じような状態に落ち着いていく。
◆証券会社は、機関投資家向けの説明と一般投資家に向けての説明を、微妙に変えている。
露骨に変えては問題となるので関係者にしか分からないような表現だが、機関投資家はみなその微妙なニュアンスを読み解き、素人と逆張りをすることで儲けている。
◆公開株に投資するのは「カモネギ」
基本的に一般投資家が株式投資で確実に儲けることはほぼ不可能と考えるべき。
日本の株式市場は、制度上も構造的にも、素人が参加する場合、博打的な要素が強い。
まっとうな方法で投資して、儲けるのはとても難しい。
◆基本的に新聞には、
誰かが「アナウンスしてほしい情報」だけが載っている。
新聞やテレビで公開された情報は、誰か声の大きな人間が、世間を自らの望む方向に誘導するために流している情報だと考えるべき。
◆短期的な儲けではなく、長期的な視点で意味のあることに投資せよ。
同時に人を見て投資せよ!
◆真の投資家は、目先の損得を無視して、長期的なりターンを考える。
だからデイトレーディングは本質的な意味では投資ではない。
◆フランチャイズはハイリスク・ローリタン
最悪なビジネスといっても過言ではないのが、コンビニに代表されるフランチャイズに加盟すること。
フランチャイズビジネスの多くがリスクを加盟店に背負わせることで、本部だけが安全に儲かる仕組みとなっている。
なかでもコンビニの経営は、「ハイリスク・ローリタン」の最たるものといえる。
◆サラリーマンとは、
ジャンポジェットの乗客のように、リスクをとっていないのではなく、実はほかの人にリスクを預けっぱなしで管理されている存在である。
つまり、自分でリスクを管理することができない状態にあるということである。
◆サラリーマンはハイリスク・ローリタン
投資家的な観点からすると、就職して一生サラリーマンの道を選ぶ、というのは35年ローンで家を買うのと同じくらいハイリスクな選択である。
◆住宅ローンはリスク管理できない人のもの
投資の世界に「計算管理可能なリスク」という言葉がある。
この言葉は、自分で計算でき、管理できるリスクのことを指す。
投資家がリスクをとるときは、必ずこの「計算管理可能なリスク」の範囲内で投資を行う。
私たちは往々にして、リスクの計算を誤る。
たとえば、年収400万円のサラリーマンが、35年の住宅ローンを組んで年収の10倍以上の借金をして家を買ったとする。
これは現在の日本の経済状況からいえば、非常にハイリスクな選択だ。
銀行と不動産会社が作った35年ローンという仕組みは、「リスクを正確に計算できない人々」を狙った商品であることを覚えておいたほうがいい。
◆投資家として生きるのならば、人生のあらゆる局面において、「ローリスク・ローリタン」の選択肢を選んで安全策をとるより、「ハイリスク・ハイリターン」の投資機会をなるべくたくさん持つことが重要となる。
◆野球というゲームは、選手が守備率を上げるために、「難しい球を捕りにいってエラーをするより、初めからヒットにしてしまったほうが、自分の成績のためによい」と考えて、消極的なプレイをすることは、本末転倒である。
そこで現代の野球では、どれだけエラーしたか、という観点からではなく、どれだけ自分の守備範囲でアウトにすることに貢献したか、という観点から守備力を評価する方法が採用されるようになった。
◆シリコンバレーの投資家たちはリスクを回避することよりも、リスクを見込んでも投資機会を増やすことを重視する。
◆資本主義社会では、究極的にはすべての人間は、投資家になるか、投資家に雇われるか、どちらかの道を選ばざると得ない。
◆投機と投資の違い
「投機」とは、利殖のみを目的に、一攫千金を狙って行う賭け事だ。
得する人間が一人いれば、損する人間がその何倍もいる。
つまりは大勢の損が、少数の得に移転するだけの、ゼロサム・ゲームである。
本質的には、パチンコや競馬、競輪と変わることがないギャンブルだ。
それに対して「投資」は、畑に種を蒔いて芽が出て、やがては収穫をもたらしてくれるように、ゼロからプラスを生み出す行為である。
投資がうまくいった場合、誰かが損をするということもなく、関係したみんなにとってプラスとなる点が、投機とは本質的に異なる。
また投機が非常に短期的なりターンを求めるのに対して、投資は本質的に長期的なりターンを求めるところも大きな違いだ。
◆君子豹変す、小人は面を革む
君子は時に応じて、豹の毛が生え変わるように鮮やかに変化する。
本当に、ひとかどの人物であれば、変化や改革を恐れない。
必要であれば、あるいは過ちと分かればがらりとやり方、態度を変えたりもする。
ところが、小人は、表面上それを受け入れるそぶりをしつつも、旧来のやり方や面子にとらわれて、古いやり方や一度口にした自説にこだわってしまう。
◆自分の頭で考えない人はカモにされる
成功している投資会社は、個人市場からはいっさい資金調達していない。
投資した企業が成長したり、運用で儲けても、もともと出資者にリターンを支払い、
残ったお金は次の投資に回す。
うまくいっている投資会社は、市場から資金調達する必要がないのだ。
つまり、一般の個人投資家向けに売られている金融商品は、「プロが買わないような商品だからこそ、一般個人に売られている」ということなのだ。
◆主体的に稼ぐ人のタイプ
1)商品を遠くに運んで売ることができる(トレーダー)
2)自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
3)商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
4)まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
5)自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
6)投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)
※今後生き残っていくのが難しくなるのが「トレーダー」と「エキスパート」である。
◆儲かる漁師と、儲からない漁師
儲からない漁師というのは、自分では何も考えず、ただ人に使われるだけの漁師である。
儲かる漁師とは…
1)とれた魚をほかの場所に運んで売ることができる漁師
2)一人でたくさんの魚をとるスキルをもっている漁師
3)高く売れる魚を作り出すことができた漁師
4)魚をとる新たな仕組みを作り出す漁師
5)多くの漁師を配下に持つ、漁師集団のリーダー
◆従業員を大切にする会社は、顧客を大切にする会社である。
逆に言えば、顧客を大切にしない会社は、従業員も大切にしない会社である。
◆アメリカや中国では、それなりのIT技術者は人材不足の状況が続いている。
日本では600万円程度の給料に甘んじているプログラマーでも、アメリカに行けば日本円に換算して、1000万円くらい稼げるような状況があるため、英語の話せる人から日本に見切りをつけて、どんどんアメリカに移住している。
◆「地面に死体が転がっているような不景気なときに投資をし、まだ早すぎるというタイミングで売り抜けろ」というのが投資のルールである。
◆「ブームとなってから投資すると、死ぬ」というのが投資の鉄則。
誰も投資など考えられない、焼け野原のようになっているときに投資して、誰よりも早く実った果実を回収し、「まだまだ儲かる」と普通の人が思い始めるタイミングでさっと身を引く。
◆専業主婦の高いリスク
結婚して専業主婦になるという選択は、夫に自分の人生のすべてをかけるということである。
死ぬまで健康な男はいない。
絶対潰れない会社も存在しない。
他人に自分の人生のリスクを100%委ねることほど、危険なことはない。
◆生きるために「ゲリラ戦」を戦え
投資家的に生きる、というと、「金持ち父さん貧乏父さん」を思い浮かべる人もいると思う。
この本は、ビジネスや不動産を所有することで、いかに不労所得を増やすか、というテーマの本である。
この本を読み、書いてあることを実践して、「不労所得で大金持ちになった」人はあまりいないと思う。
この本に書いてあることをそのまま実践できる人がいるとは、とうてい思えない。
大切なのは、不労所得を得ることではない。
投資家的に考える、ということなのだ。
重要なのは、まず資本主義の本質を理解すること。
そして、そのメカニズムを正確に認識し、日々刻々と変わる情報を察知して、インプットを変えることで、アウトプットである自分自身の行動を具体的に変えることだ。