なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?―日本人が知らない本当の世界経済の授業 by 松村 嘉浩

松村 嘉浩

1989年神戸大学経済学部経済学科卒(数理経済学専攻)。
同年にゴールドマン・サックス証券に入社し、メリルリンチ証券を経て、1996年にドイツ証券に入社。
ドイツ証券で円債トレーディング部長を務めた後、バークレーズ・キャピタルに移籍し2011年に引退。
主に日本国債トレーディングおよび自己勘定トレーディングに従事…

マイナス金利、イスラム国と世界中のテロ事件、
中国バブルの崩壊、アート作品の高騰、人工知能、少子高齢化、
年金問題、アベノミクスの失敗―全てが繋がり理解できる…

目次

【前期】
Prologue
不人気ゼミの数理経済学者
Seminar No.1
『進撃の巨人』はなぜ売れたのか?
Seminar No.2
これからは『鉄腕アトム』が人類を不幸にする
Seminar No.3
『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリーが気づいたこと
Seminar No.4
人類はもう、“賢者の石”を使い果たした
Seminar No.5
「不安」の正体
Seminar No.6
日本人にしかできないこと
Seminar No.7
アベノミクスは等価交換の原則をやぶっている
Seminar No.8
中央銀行はインフレをつくれない─等価交換の原則をやぶるリスクとは

【後期】
Seminar No.1
これって、セカイノオワリの始まりなの?
Seminar No.2
アートとテロはコインの裏表?
Seminar No.3
カラスが増えたから殺します、けど人類は増えても増やします
Seminar No.4
テロは劇薬の副作用
Seminar No.5
このままでは麻薬の乱用で国家は破たんする

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?
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MEMO

なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか

◆未来の不安を解消するには

今、私たちが未来をこれほど不安に感じ、
行き詰まってしまうように思うのは、
成長を当たり前にしてきた社会の仕組みが矛盾を生んでしまっているからである。

たとえ一人当たりの所得が維持できていたとしても、
働く人の数が減って、養わなければならない高齢者の数が増えていくから、
つじつまが合わず、働く人の負担はどんどん大きくなり、
貧しくなってしまう。

人口が増えていかないと、
つまり成長しないと、
高齢者を養えないモデルなのである。

にもかかわらず、問題を先送りして、
ついには無理やりつじつまを合わせようと、
異次元の金融緩和のような麻薬に手を出すはめになっている。

今は麻薬の弾も切れ、
麻薬中毒の副作用でもだえ苦しみ始めている状態である。

この問題は日本がフロントランナーになっているが、
いずれ世界中が抱える問題である。

大事なことは、次のステージに移行するためには、
年金のような成長を前提とした過去の約束を清算しなければ、
先に進むことはできないということである。

そこが根本の問題だと言っていい。

この問題を解決しないと、定常状態でいくら給料が一定といっても、
どんどん税金が上がっていって貧乏になる。

税金を上げられないといって、
無理やり成長しようとして、
マネタイゼーションのようなハイパーインフレになりかねないことをすれば、
国の存亡に関わるようなもっとキケンなことになる。

結局、この問題を解決するには、
構成者が自分が生きてる間だけ良ければよいと考えず、
子々孫々の繁栄を考えていかなければならないし、
若い人たちもどういうふうに
この問題に折り合いをつけていくのか考えないといけない。

◆結局、定常経済に即した社会に移行していくしかない

現状の政策は、成長を前提とした社会システムになっている。

一番問題なのは、高齢者の問題である。

過去の成長を前提として支払いを約束した年金をもらう高齢者が
増えていく一方で、それを支える人の数が減少する一方である。

この問題を政治的に痛みなく解決する方法は、
経済全体が成長してくれること。

政治は安易にその道を選択しようとするのだが、
もう無理やり成長するしかない状況なので、
国債を発行分すべて買ってしまうような
異常な金融政策という麻薬を使ってしまっている。

高齢者を養うために、
つじつまを合わせようと無理な成長を目指し、
無茶なことをやっていたら、
「国」そののの存在を危うくしていまう。

過去の成長を前提とている約束は
「高すぎて払えない」ので、
なんらかの形で清算しないと、
成長しない新しい世界のモデルに移行することはできない。

正攻法で清算する方法は3つしかない。

1)消費税を最低20%に増税する
2)年金や社会保障費を大幅にカットする
3)高齢者にも働いてもらって年金のように税金をもらうのではなく、税金を払ってもらう

◆マイナス金利

日銀はついに掟破りの「マイナス金利」を導入した。

このマイナス金利は、
銀行が中央銀行に預ける準備預金に対してかけられるものだから、
預金者にはマイナス金利がかかることはない。

銀行が中央銀行に預ける準備預金にかかる金利がマイナスになるということは、
中央銀行が銀行から強制的におカネを徴収するということ。

中央銀行は政府の銀行なので、
政府がおカネを銀行から徴収する、
つまり強制的に税金をとるようなものである。

◆日銀の量的緩和とは?

禁断の金融政策である量的緩和は、
政府の銀行である中央銀行が、
「等価交換」の原則を破って自らがリスクをとることである。

たとえば、
千円札は中央銀行が千円分の国債を買って、
その代わりに発行したもので、
いわば千円分の国債が化けたものと言える。

でも、もし中央銀行が、株や不動産や、
長期の国債のような値段が変動するものを買って、
千円札を発行していたらどうか?

この千円札は株が化けたものということになる。

これったちょっとコワいですよね。

だって本当に千円の価値があるかどうかわからない。

でも量的緩和というのは、そういうことをしているのである。
——————————————-

◆成長しないということは非常に都合が悪いことである。

なぜなら、私たちは産業革命以来、
爆発的な成長を前提とするシステムの中で生きている。

年金などが象徴的だが、成長を前提としたリターンを将来にわたって支払う約束をしてしまっている。

ところが今私たちが生きている時代は、
高齢化が進み、消費が減っていく一方で、
将来に高いリターンを要求する貯蓄が増えている。

にもかかわらず、
将来の成長が低下して投資先がないという困ったことになっている。

カンタンな言い方をすれば、
おカネだけが余って、それに見合う投資案件がない。

その結果、無理なりターンを生み出そうとする圧力がかかりやすく、
どこかにバブルを生み出しやすい環境になっている。

◆アメリカがやってきたことは支離破裂である。

そもそもアルカイダを生んだのもアメリカである。

冷戦時代にソ連がイスラム原理主義勢力=アルカイダに武器を供給し、
戦闘を教えたのがアメリカである。

そのアルカイダがアメリカに刃向かってきた。

◆イスラム国が生まれたワケ

アメリカはキリスト教とユダヤ教が共闘している宗教国家で、
イスラエルとはまるで昔の十字軍と同じことをやっていると言える。

とくにブッシュ政権のときはその色彩が強く出た。

一神教の世界に疎い日本人には、信じがたいことかもしれない。

日本人はもう少し、自分たちがよく知らない一神教の世界の歴史を理解する必要がある。

でないと、中東の紛争は理解できない。

そして重要な点は、勝った側は勝った側に都合のよいルールで世界を仕切ろうとするし、
それが正義になる。

戦争の勝者がルールをつくるのは、今も昔も同じ。

イスラム国がどうして生まれたのかといえば、
アメリカがイラク戦争を起こして独裁者のサダム・フセインを排除したところから始まる。

イラクはシーア派とスニン派とクルド人が同居する人口国家になった。

そういう仲の悪い人たちで成り立っている国だから、
フセインのような強面が仕切らないと収拾がつかない国である。

それはシリアも同じである。

そこにアメリカが信奉する民主主義を押し付けても機能しない。

◆「聖書」とは神と人間との契約である

ユダヤ教やキリスト教の経典である「旧約聖書」と「新約聖書」というのは、
絶対神とちっぽけな人間との「契約」を示したものである。

旧約聖書では、神との契約を人が守れば「契約」した人を保護し、
世界を「契約」した人のものにすることを神が保証する。

逆に神と「契約」しない異教徒は、
たとえ善人でも神は救わないし、
過酷な運命(最後の審判)に遭うことになる。

そして、もしちょっとでも契約を破るようなことをすると、
神はカンタンに人の命を奪う。

「契約者」以外には絶対に保護しない。

◆ユダヤ教 VS キリスト教

アメリカにおいては、
ユダヤ教とキリスト教は手を組んでいる関係にある。

それを証明するのはイスラエル。

イスラエルがユダヤ人の国である。

そのイスラエルの背後にいるのが
キリスト教国のアメリカであるということから、
両者の関係は明らかである。

ユダヤ教とキリスト教は宗教的に利害が一致している。

イスラエルのようなユダヤ人の国ができることが、
キリスト教にとってもいいことである。

◆キリスト教とイスラム教の対立はコインの裏表

キリスト教とイスラム教の対立軸は、
排他的な一神教にある。

同じコイン=同じ神様を信じているにもかかわらず
表と裏になって対立し、究極の勝者(キリスト教)と敗者(イスラム教)となっている。

◆腐敗したキリスト教が引き起こした十字軍の話しのように、
経済的な利権や権力拡大を目的とするキリスト教側が、
イスラム教側を1000年にわたって「賢者の石※」化してきたという怨みつらみが
根源的な対立の背景である。

結局、キリスト教側が戦争に勝って、
勝ち組のお金持ちになって、
負け組のイスラム教側は
「賢者の石」にされて貧乏。

その格差が問題となっている。

※中世ヨーロッパの錬金術師が、鉛などの卑金属を金に変える際の触媒となると考えた霊薬である。

◆日本人だけが、一神教の世界に飲み込まれなかった唯一の先進国なので、
宗教的な面においても日本人が世界に示すべきことは大いにある。

本当に、日本のような宗教観が世界で受け入れられるとすれば、
憎しみが連鎖するヤクザの抗争のような世界に終止符が打てるかもしれない。

◆日本人の宗教観というのは
Believe in somethingではなくて、
Respect for somethingである。

◆日本は世界システムに取り込まれたなかったゆえに、
世界の半分の人の宗教になった一神教の世界にも取り込まれなかった。

だから、自然の中で生まれた古い昔の人間が持つ森の宗教、
多宗教の世界を残している。

◆イスラム教

イスラム教はわかりやすく言えば、
ヨーローッパで拡大化したキリスト教を、
本来の出身地である中東風に戻したものと言える。

だから、イスラム教はユダヤ教に似て、戒律主義になる。

唯一神アッラーがムハンマドに天啓として与えた教えは
コーランに記されているとされる。

ムハンマドはキリスト教の天使ガブリエルから天啓を受けているので、
このコーランの神にかかわる基本教義の内容は
キリスト教と同じであり、コーランには新・旧約聖書の一部も含まれている。

主な違いは理解の仕方や強調点で、
あとの違いは当時の中東アラブの生活習慣に基づく戒律が多く含まれている点だけである。

イスラム教においては、ユダヤ教と同じで唯一、
絶対・永遠の天地の創造主であるアッラーを絶対神としていて、
キリスト教での「神の子イエス」を絶対に認めない。

イスラム教はキリスト教をおかしいと思っているが、
積極的に攻撃したり改宗を迫ったりしていない。

キリスト教とイスラム教の因縁の始まりは
キリスト教が仕掛けた十字軍である。

◆キリスト教

そもそも、「イエス」はユダヤ人で、
イエス自身はユダヤ教徒である。

「怖い専制君主」的な神であるユダヤ教が教えるヤハウェ神を、
イエスは「慈悲深い名君」に変貌させた。

ところがユダヤ教の側からすると、とんでもない異端の反逆児なので、
イエスを十字架の刑にして殺してしまう。

ここからユダヤ教とキリスト教は仲が悪くなってしまう。

キリストというのはヘブライ語での「救世主メシア」のギリシャ語訳。

つまり、人間のイエスは実は人間ではなく救世主=キリストだったのではないか?

という言う人たちがイエスの死後に現れた。

イエスの死後、イエスが復活し昇天したという逸話から、
イエスこそ神の子、メシアであったという信仰が起こり、
キリスト教が誕生した。

ところが人間であるイエスが「神」なわけがないと、
ユダヤ教の人たち怒ったので
キリスト教はユダヤ教と袂を分ける。

そして、広くいろいろな異教徒の民族に信者を求める
「世界宗教」の道を歩む。

キリスト教の経典は旧約聖書(ヘブライ語というユダヤ民族の言葉で書かれている)
と新約聖書(ギリシャ語でかかれている)の両方ある。

◆ユダヤ教というのは
キリスト教やイスラム教と違って、
ユダヤ民族のためだけの宗教である。

このような宗教を「民族宗教」と呼ぶ。

ユダヤ教は、
「神の言いつけ、つまり戒律を守る」ということが絶対の教えとされ、
ユダヤ教は厳しい「戒律主義」となった。

ユダヤ教の「絶対神」は、人間の世界の時空を超越した存在なので「姿や形」はない。

「絶対神」のヤハウェは、地球も宇宙も創り出した存在なので、
いわば、宇宙のシステムそのものみたいなもの。

つまり抽象的な存在である。

ユダヤ教のような一神教を「砂漠の宗教」と呼ぶ。

これに対して、自然環境が豊かな地域の宗教は多宗教である。

これを「森の宗教」という。

◆ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の基本

この3つの宗教は仲がよくないので
まるで違う宗教のように思うかもしれないが、
実は同じ神様を信じている。

ユダヤの神様とイスラム教の神様アッラーは同一。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は、
旧約聖書を経典としていて、
同じ神様を信じている。

順番からいえば、ユダヤ教からキリスト教が生まれて、
キリスト教からイスラム教が生まれてきているので、
同じ神様なのはある意味当然である。

ユダヤ教▶キリスト教▶イスラム教

◆権力や経済的な利権のために宗教を政治利用した

十字軍がその典型である。

ローマ教皇は権力を拡大しようとし、
封建領主には領土的野心があり、
イタリア商人は商圏を拡大して利益を得ようとして、
皆が私利私欲のために宗教を利用した。

◆イスラム国が生まれたワケ

第一次世界大戦でイギリスが中東をめちゃくちゃに分断したあと、
第二次世界大戦の覇権国アメリカも中東に介入してめちゃくちゃにした。

アメリカがイラクの独裁者フセインを倒したら、
イラクは良くなるどころかより貧しく悲惨な国になって、
その結果イスラム国が生まれた。

◆中東紛争の根本的な原因とは

およそ100年前、イスラムの大国、
オスマン帝国を第一次世界大戦で亡ぼすにあたって、
イギリスがアラブ人、ユダヤ人、ロシア・フランスの3者と矛盾する約束をして、
オスマン帝国を分割する。

その結果、クルド人は分割され、
イラクやシリアのような人造国家が生まれ、
ユダヤ人の国のイスラエルが生まれる伏線(※)となった。

これが中東の火種の根本的な原因である。

※のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。

◆銀行は一般の債権を自分の「信用」で流動性がある貨幣に変えることができる。
これが信用創造の仕組みである。

おカネは「信用」である。

抽象的な「信用」を背景にしておカネは流通するので、
おカネの発行者の「信用」が非常に大事だ。

つまり、おカネの大本の発行者である中央銀行には、
「信用」を損ねてはいけないという大原則がある。

だから「等価交換」しかしてはいけないことになっているし、
政治から独立することになっている。

◆貨幣の本源は、具体的な「モノ」ではなくて、
「債権」つまりは抽象的な譲渡可能な「信用」である。

◆フロー経済からストック経済へ

無理に成長させて、つじつま合わせをするのではなく、
成長しないことを前提にした新しい時代に合わせた社会をつくるべきである。

◆高齢者も過去と異なり人生が長くなったのだから、
早々に引退して赤ちゃんに養なわれるような
既得権者にならないようにするために、
働くようにすべきである。

◆世界中がアメリカ人と同じ暮らしをすると、
地球が5.3個必要になる。

だから、成長しない経済をつくらないと、
地球が壊れるし、現に成長できなくなってきている。

◆昔の日本人が普通に持っていた価値観が、
これから我々が移行していかなければいけない
「定常型経済」において非常に大事である。

◆高齢者ではなく若者におカネを使うべき!

将来の繁栄を考えれば、
社会が未来を背負う人たちに投資をしていかなければならないのは当然で、
現状のような高齢者ばかりにおカネを使うのではなく、
機械に負けない人々を養成すべく教育におカネをかけなければダメである。

◆成長しなけど豊かな生活

略奪して成長する世界システムが稼働するなかで、
日本人は、成長しないけれどみんなが豊かに暮らせる江戸時代のような
平和な時代を250年間も実現できた国民である。

我々の先祖が、どういう思いでこのような「日本人」を、
世界システムの中で残そうとして苦労してきたかをちゃんと思い出せば、
既得権益にしがみついて若者の夢を壊し、赤ちゃんに養われるような
わがままは、恥ずかしくてできないと思う。

◆中国の「中華思想」とは?

中国がずっと世界でも最大の帝国だったため、
中国は世界で一番であるという「中華思想」があって、
他の国はその下にあるという考えがる。

じょの序列からみると、
中国が親分で、韓国・朝鮮は一番目の子分、
ベトナムが2番目の子分で、日本は最下層の子分という状態。

つまり、序列の低い日本がアジアのリーダーシップをとるのは、
中国や韓国・朝鮮にとっては不快だった。

韓国・朝鮮がいまでも日本と軋轢が存在することの背景にあるのは
「中華思想」の影響があって、
中国の一番の子分が最下位の子分の植民地となったことに対する憤りがあると思われる。

◆定常型社会、定常型経済に移行すべき

人類が無茶な成長をしてきた結果、
地球が限界を迎えようとしていて、
成長しない「定常型社会」や「定常型経済」に移行しなければ
人類の存続にかかわるということが自然科学的な視点からわかる。

◆行き詰まってしまった日本

いま我々は、何百年間当たり前だった経済の成長が
当たり前でなくなるという、あまりにも大きな何千年規模の
時間軸の変化を理解できず、もがいている。

いまの状況は、成長できなくなって「おかしい」
「こんなはずじゃない」と思い、
いろいろ医者に相談していろいろな薬を飲んだけどダメで、
遂には行き詰まって☠マークの薬に手を出してしまっている。

◆今本当にやるべきこととは?

我々は「新しい時代」にいて、
そもそも経済成長することが難しいという根源的な問題を抱えている。

人口が減っていき、
欲望が飽和し…

というふうに「需要」が足りないのだ。

今本当にやるべきことは、
我々が新しい時代にいることを認識して、
それに合わせた社会をつくる努力をすべき。

でも、残念なことに、
それをしてしまうと政治が過去にした約束を反古にすることになるので、
政権がもたなくなるという問題が起きてしまう。
————————————————
◆少子化の原因は実は高齢者にある

国としては、人が増えないと困るので、
少子化を止めるためにさまざまな補助を出すような政策をとろうとする。

でも合理的に考えれば、
生まれた瞬間に800万円の借金を背負った子どもを産むのに、
わずかな補助をもらっても割にあわない。

わずかなお金をエサに子どもを産んだら、
じつは800万円の借金を背負わせていたことになる。

子どもを育てるコストが高くなって少子化が進む傾向があるのに、
完全な悪循環である。

高齢者が赤ちゃんに借金を押し付けて養ってもらっていると…
というふうにわかりやすくデフォルメすれば、
みんなすぐに分かると思う。

こういう社会の歪みというのは、
ほとんどの人は本質的な原因が難しくてわからないので
深く追求しない。

◆日本人の不安の正体とは

高齢者は、小さくなる「新しい時代(少子高齢化社会)」に合わせて、
年金を少なくしてもいいとは言ってくれない。

昔と変わらず年金を払って欲しいと言う。

つまり、高齢者が自分たちも気がつかないうちに
既得権益者になってしまっている。

しかも、やっかいなことに人の寿命が飛躍的に延びて、
高齢者の数が飛躍的に増えその負担がとんでもなく増大するという
歪みが生まれてしまった。

このような状況をなんとかつじつまを合わせようとして、
成長できない世界を無理やり成長させようとしたり、
無理なリターンを生み出そうとして、
社会が歪んでしまう。

その結果、人々はこれで大丈夫なんだろうかと不安に襲われる。

これが我々が襲われている「不安の正体」である。

◆中東紛争が絶えないワケ

日本人が理解しづらい中東の混乱は、
オスマン帝国が、世界システムに飲み込まれ解体されたことが、
もとものと原因である。

オスマン帝国は大枠ではイスラム教でありながら、
他の宗教を許容していた。

西欧がキリスト教一色で、他を許容しなかったのとは対照的である。

ところが世界システムがそういう秩序ある世界を壊し、
勝手に国境線を引いて自分たちで勝手に分けるようなことをしてしまった。

つまり、あるときまで全然別の民族だったり宗教だったりした人たちが、
いつのまにか勝手にひとつのグループにさせられ、
国家になってしまった。

たとえば、イラクのような国はスニン派とシーア派とクルド人というように、
仲の悪い人たちが無理やり同居する人工国家がつくられてしまった。

日本人のようにアイデンティティがあるわけじゃないし、
そこに住んでいる人たちは西欧の都合で勝手にイラク人にさせられ、
しかも仲が悪い者同士だから、
国として普通にまとめるには無理がある。

なので、どうしても独裁政治で治めるしかなくなり、
フセインが暴力的に仕切っていた。

歴史を理解すれば、
フセインが独裁をするのは必要悪で、
民主主義を押し付けても機能しないことは、
だれにでもわかることである。

◆低開発化とは

中世には「周辺」だった西欧が世界システムの「中核」となることで、
「周辺」は「中核」の成長のための食料や原材料の生産地にさせられ、
逆に猛烈に資本投下されて開発され、
めちゃくちゃに社会や経済が歪んがいく。

これが「低開発化」である。

「中核」にとって困るのは不平不満が自分たちに向かうことだから、
内輪揉めにエネルギーが使われて、
矛先が自分たちのほうに向かわないのは支配に都合がよかった。

もともと「中核」は、「周辺」を搾取する以外に興味がないから、
社会が歪んてしまっても気にしない。

そして当然ながら、民衆を高度教育することもない。

つまり、「低開発化」されてしまうと、
社会がめちゃくちゃになっていまって、
今さら「中核」のようになれといわれても、
うまくいかない。

◆ヘゲモニー国家とは

ヘゲモニー国家は、同じような発展と崩壊のパターンを描く。

第一段階は農業や工業が優位になって生産力が高まり、
第二段階は商業が発展し、最後に金融業が発展していく。

この順番で発展して、崩壊するときも農業や工業が競争力を失い、
商業がダメになって、最後に金融が残る。

◆恋愛と贅沢と資本主義

贅沢こそが資本主義の生みの親の一人であり、
人々を贅沢へと向かわせたのは女性である。

モノや快楽に対する欲望がこれまでの資本主義を動かしてきた。

キレイになりたい女性の欲望は消費を生み出す源泉で、
物質主義および資本主義を象徴するものである。

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◆高齢者ではなく子どもたちにもっとお金を使うべき

現状のように高齢者にお金をかけていくのではなく、
未来ある子どもたちに高度教育を施すための教育コストを
社会でどう負担するのかという議論をすべきある。

現状のようにホワイトカラーを大量につくたえにできた教育制度も
見直していく必要がある。

こういった本質的な政策努力をしないと、
まずます人は「漠然とした不安」に襲われて
極端な少子化が進むという悪循環が発生する。

◆中間層の所得が下がっている原因

ホワイトカラーやブルーカラーの仕事は
機械によって置き換えられる部分がどんどん増えていき、
勝ち組である創業者や出資者である株主、
機械に勝って機械をコントロールする人に富が集まる形になってしまう。

つまり、勝ち組でなければ負け組といったように、
真ん中がなくなっていく傾向が出る。

これが、一人あたりの生産性は大きくなっているのに、
所得の中央値が下がっているという事実の原因である。

◆アメリカのティー・パーティとは?

ティー・パーティのTEAとは、
Taxed Enough Alreadyの略称である。

アメリカの白人のキリスト教徒の保守派が中心。

簡単に言えば、
中西部の田舎で昔からの伝統的な生き方をしていたら、
いつの間にか仕事がなくなったり、
昔より貧乏になったりして、
その原因をヒスパニックなどの移民に仕事を奪われていると考えたり、
政府がヒスパニックなどのマイノリティのために無駄遣いしていて、
余分な税金をかけられているせいだと考えたりしている人たちのこと。

◆デジタル革命とは

デジタル革命は「情報」の革命である。

なので、人間の「脳」の機能を、
さらに高速の処理能力のある機械で代替えしていく。

つまり、人間そのものを機械が代替えしていく革命なのである。

知識や技能のない人が切り捨てられてしまう可能性も高い。

単純にいえば、低スキルの仕事は機械に置き換えられて、
高度な能力のある人が機械を管理して利益を独占するという、
負け組と勝ち組の二極化がどんどん進んでいく。

なので、生産性が上昇しているのに普通の人の給料が下がる。

◆少子化の原因

子どもを投資とリターンというふうに純粋に経済的にだけ考えるのであれば、
経済が高度化すれば、少子化は進む。

もうひとつ、経済的な理由から少子化を起こす原因になっているかもしれないのは
年金制度である。

日本の場合、年金制度が導入された時点から少子化が本格化した。

過去はおじいちゃん・おばちゃんの面倒は家族がみてきたが、
年金制度は、言ってみれば国が家族の代わりに老後の面倒を見る制度である。

そうすると子どもを産んで育てるコストを負担しなくても
決まった金額がもらえるならば、子どもを持たないほうが経済的には得という
「タダ乗り」という発想が出てくる。

◆なぜ、みんな「漠然と不安」なのか?

それは…

まったく「新しい時代」にいるのに、
今までどおりに生きようとする既得権層が
世の中を歪めているからである。

では、その既得権層とはだれか?

それは…

お年寄りやこれからお年寄りになろうとする方々、
普通のおじいちゃんやおばちゃんたちである。

つまり、お年寄りなどの既得権層が
人々を不安に陥れているのである。

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