完全なる投資家の頭の中 – マンガーとバフェットの議事録 by トレン・グリフィ
トレン・グリフィン
マイクロソフト勤務。
前職はイーグル・リバーのパートナー。
イーグル・リバーはクレイグ・マッコウが所有する未公開株式投資会社で、マッコウ・セリュラー、ネクステル、ネクステル・パートナース、XOコミュニケーションズ、テレデシック、そしてたくさんのベンチャー企業など、電気通信会社やソフトウェア会社に投資している。
それ以前は、ビジネスコンサルタントとして、韓国とオーストラリアで5年間働いた経験もある…
完全なる投資家はこんなことを考えている!
グレアム式バリュー投資家チャーリー・マンガーのすべて…
目次
監修者まえがき
はじめに
第1章 グレアム式バリュー投資システムの基礎
第2章 グレアム式バリュー投資システムの原則
第3章 智慧
第4章 間違いを犯す心理
第5章 必要不可欠な資質
第6章 グレアム式バリュー投資システムの7つの変数
第7章 会社経営において必要不可欠な資質
バークシャーの計算方法
堀
バリュー投資とファクター投資

MEMO
完全なる投資家の頭の中
◆健全な気質
成功していない投資家は、
感情に支配されている。
彼らはマーケットの変動に冷静かつ合理的に反応する代わりに、
怒りと恐れで感情的に反応してしまう。
投資家がどれくらい成功するかは、
機能障害を起こしそうになる衝動をほかの投資家よりもどれくらい
うまく抑制できるかによって決まる。
◆勉強熱心
ほかの人の間違いから学ぶほうがはるかにラク。
あまり本を読まないのに賢いという人には
出会ったことがない。
読書を通じて、生涯、自己学習を続けること。
好奇心を育て、毎日少しずつ賢くなるために努力する。
◆情熱
一番大事なことは、
そこから生まれる情熱や強みである。
◆長期思考
良いビジネスのほとんどは、
「今日の痛み、明日の利益」的な活動である。
私たちは、近い将来のことよりも遠い将来のことのほうが
価値が低く感じる。
簡単に言えば、
「明日は死ぬかもしれないので、
食べて飲んで楽しもう」
ということだ。
◆自信は持ってもイデオロギーは持たない
自分の判断に対して正しい自信が持てるようになる。
偽りの自信は危険だが、
本当の自信には価値がある。
イデオロギーの根本的な問題は、
難問に直面すると思考が止まってしまうことである。
◆誠実さ
どう行動したかが、
のちに思いがけない助けになる。
◆ある程度の知識は必要だが、知能指数の高さは必要ない
もしIQが120とか130ならば、
それ以上は必要ない。
投資家に、飛び抜けた知能はいらない。
◆冷静さ、そして勇気と決意
チャンスが見つかったら
素早く行動する。
おじけづいていてはだめ。
ちなみにこれは人生のすべてにおいて言えることである。
成功する投資家にとって、
最高のときはほかの投資家や投機家にとって最悪のときである。
成功する投資家は忍耐強くあると同時に、
ここぞというチャンスが訪れたときには
迷わず積極的に行動する。
◆規律
多くの人にとって、
破綻のリスクがあまりなくて、
ほぼ確実にある程度の出世をする人生を送ることは可能である。
そのためには、
たくさんの判断と、
たくさんの規律と、
活動しすぎないことが必要である。
投資は積極的に活動したほうが利益が増えるとみんな思っているが、
それはまったく間違っている。
◆忍耐
成功とは、忍耐強く待ち、
時が来たら、積極的に行動することである。
市場は資金を
「積極的な人から忍耐強い人に」
移すためのものである。
◆バフェットの天才性は、
性格、つまり忍耐、規律、合理性の天才であるところが大きい…
彼の才能は、だれよりも強い独立心と仕事への集中力と、
世界を遮断できるころから来ている。
◆ロラパルーザ効果
あやゆるバイヤス(思い込みなど)や効力や現象は、
自己強化しながら相互的に作用しているため、
それぞれのバイアスを単純に合わせたようりも大きな効果をもたらす。
そしてこれをロラルパルーザ効果と呼ぶ。
2007年の金融危機、LTCMの破綻、ITバブルなども
ロラパルーザ効果によるものだ。
◆理由を尊重するバイアス
◆ビジネス書の著者は
さして役に立たないたわごとやあいまいな概念を盛り込んで
意図的に本が売れるようにしている。
◆若いころに磨いたスキルを、
年を取ってもうまく維持するには…
継続的な思考と学びを楽しんで行うこと。
そうすれば、
必ず訪れる老いをいくらか遅らせることができる。
◆人を破滅させる3つとは…
薬物と酒とレバレッジである。
◆能力は使わなければ失われる
どのようなスキルでも使わなければ衰える。
仮想通貨の投資もときどきするものではない。
投資家として成功するためには、
定期的にそれなりの時間と労力をつぎ込む必要がある。
かつて投資に詳しかった人が、
今でもそのスキルを保っているとは限らない。
◆身近なデータを過大評価するバイアス
投資家は、簡単に思い出せることに基いて、
判断を下す傾向がある。
その出来事や事実や現象が鮮明で、
印象に残っているほど、
投資家はそれを判断材料にするが、
たまたま思い出したことがその判断において
最善のデータとは限らない。
たとえば、最近仮想通貨の価格が劇的な大暴落に見舞われたとすると、
たとえそのときが最高の買い時だったとしても、
投資家は怖くて買えなくなる。
◆ストレスによるバイアス
人はある程度のストレスを受けるだけなら、
実はパフォーマンスが上がる。
しかし、ストレスが大きすぎると、
ひどい判断をくだすようになる。
この悪名高い販売手法が行われている例のひとつが、
リゾートコンドミニアムである。
販売員はたいてい親しげな人と、
ストレスの使い方に長けた人がペアを組んでいる
(良い警官・悪い警官戦術として知られている手法)。
◆対比による誤反応
たとえば、6万5000ドルの車を買うときに、
本体価格と比べれば大したことはないという感覚で、
割高な1000ドルの皮張りのダッシュボードをつけてしまう。
大きなダメージになると、人生を蝕む場合もある。
たとえば、ひどい両親に育てられた素敵な女性が、
自分の親に比べれば良いという理由で結婚相手を選んでしまったり、
ひどい妻に懲りた男性が前妻よりもマシだという理由で
再婚相手を選んでしまったりすることがある。
不動産屋が特定の物件の成約率を高めるために、
顧客に魅力がない割高な物件を見せてから
本命の割高な物件を見せるのも対比によるバイアスを
利用した例である。
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◆最も効果的にリスクを減らす方法は、
自分がしていることを知ることである。
本物の専門家になるということは、
自分のコンピタンス(能力)の限界を知ることである。
◆返報性のバイアス
人には好意にも敵意にも
極端なまでに返報(※)したくなるバイアスがある。
※人は目的達成に力を貸してくれた人には、自分も力を貸そうとする。それが返報性の法則である。
◆世の中を動かしているのは欲望ではなく、
羨望(※)である。
※うらやましく思うこと。自らの持たない優れた特質、業績、財産などを他者が持つときに起こる、それらへの渇望、ないしは対象がそれらを失うことへの願望である。羨望は他者が自分が持たない望ましい物品を持つときに、自己肯定感の低下という感情的な苦痛として現れる場合がある。
◆羨望と嫉妬の起源について…
不足しがちな物を食料とする生き物は、
進化の過程で、
その食物を目にしたらとにかく
それを確保しようとする習性を身につけた。
このような世界では、
もし食料が同じ種の別の個体の手にあると、
対立が起こる。
これが、進化の過程で人の本性の奥底に根付いた
羨望と嫉妬の起源なのかもしれない。
※嫉妬と羨望は一般的には同じような意味を持つ言葉として用いられているが、心理学的には異なる2つの感情である。羨望は、自分以外の誰かが望ましいよいものをわがものとしていて、それを楽しんでいることに対する怒りの感情であり、二者関係に基づいている。嫉妬は、三者関係で自分が愛する対象が別の存在に心を寄せることを怖れ、その存在をねたみ憎む感情である。嫉妬は主として現実、想像上にかかわらず、自分以外の誰かとの情欲関係においてみられる。羨望は最も原始的で悪性の攻撃欲動であり、よい対象を破壊してしまうが、嫉妬は愛する対象への愛情は存在していて、羨望の様によい対象が破壊されてしまうことはない(嫉妬の中に羨望が入りこむことはある)。羨望を乗り越えたところに発達する、相対する情緒として感謝が挙げられる。
◆友人や親戚を好きだったり、
もしかして愛していたりしたとしても、
それとその人を信用してお金を託すことは別だ。
親戚にお金を貸すには危険が伴う。
友人や親戚がお金を必要としているときは、
ただあげてしまうほうがはるかに良い場合が多い。
そして、もし貸すならば、
返してもらうことは期待しないほうがよい。
◆◯◯を信じることによって生計を立てている人に、
◯◯でないことを信じさせるのは非常に難しい。
脳は無意識のうちにあなたを騙し、
自分にとって都合の良いことを、
信じるべきことだと思ってしまう。
◆バイアスは多くの場合、
害よりも利益をもたらす。
◆投資における間違いには2つのタイプがある…
▶何もしないこと
▶たくさん買うべきところを少ししか買わないこと
◆人生における智慧とは…
間違いから学ぶことである。
◆投資家のプロとアマの違い
プロの投資家とアマの違いは、
「判断」「直観」などといった漠然としたものではない。
もしプロの頭の中をのぞくことができるならば、
そこにはすぐに使える行動の蓄積と、
行動する前に考えるべきことのチェックリストと、
判断をくださなければならない場面で
それらの情報を引き出してきて意識的に
注意を向けることができるメカニズムが見つかる。
◆投資家として成功するために最も重要な資質は…
合理的な思考と判断である。
◆仮想通貨投資のリスクを下げるには…
仮想通貨の投資において、
リスク(損失の可能性)は買う価格によって決まる。
資産を高く買えば、
資本を失うリスクは高くなる。
もし買値が下がれば、
リスクも下がる(上がるのではない)。
なので、特定の仮想通貨の価格が下がれば、
チャンスと見て買い増す。
◆仮想通貨の投資…
仮想通貨の価格が下がれば買い足す。
もちろん、何かが起こって自分が間違っていたことに気づけば、売る。
しかし、判断が正しいと自信が持てれば、
割安なときを利用して買い増していく。
◆投資の第一のルールは、
大きな損をしないこと。
第二のルールは、
第一のルールを忘れないこと。
◆仮想通貨の投資は
ポンジ・スキーム(自転車操業)なので、
早い時期に安い価格で買った人が儲ける仕組みになっている。
だから、仮想通貨の投資に出遅れた人が勝つには、
暴落して価格が下がったときに買うしかない。
◆複雑で、予想がつかず、急速に変化している世界では、
仮想通貨を本質的価値よりも十分安く買って人為的なミスや、
不運や、極端なボラティリティに耐えられるようにすることで、
安全域は手に入る。
◆仮想通貨の投資とは単純に
「割安な価格で買い、あとは待つこと」
である。
◆マンガーがゴールド(金)に投資していないのは、
ゴールドが収益を生み出す資産ではないため、
ボトムアップでファンダメンタルズ的な評価ができないからである。
マンガーは、
ゴールドには投機的な価値と商業的な価値はあるが、
本質的価値は算出できないと考えている。
◆見通しや予想は何の役にも立たない。
これらが正確に見えるのは幻想である。
予想は詳細であるほど疑うべきである。
◆投資家は資産がどうなるかを見守る。
投機家はたいていその価格がどうなるかを見守る。
◆群衆のマネをすれば、
平均に回帰することになる。
平均的なパフォーマンスしか上げられない。
◆投資とギャンブルの違い
投資は、将来により多く消費することを期待して、
現在の消費を先送りすることである。
一方、ギャンブルは、
現時点で消費して、
その活動の長期的な正味現在価値はマイナスになる。
ただ、自分では投資しているつもりで、
実際にはギャンブルになっている人もかなりいる。
◆何も知らない投資家とは?
投資の基本を理解していない人である。
何も知らない投資家は、
たとえば、定期的にインデックスファンドに投資すれば、
ほとんどのプロの投資家のパフォーマンスを上回ることができる。
◆多くの投資家が愚かなことをしてしまう理由は、
釣具屋の店長の話しを聞けば分かる。
ある人が店に並んでいるルアーを見て、
「こんな紫や緑のルアーで本当に魚がかかるのかい」と聞くと、
店長はこう言った。
「お客さん、私の客は魚じゃありませんよ」
◆成功している投資家が動き出すのは適正価格でない仮想通貨が買えるときで、
それはマーケットを構成する人たちが恐怖に震えているときでもある。
皮肉なことに、マーケットが下落したときこそ、
成功する投資家にとっては最大の利益チャンスなのである。
◆成功している投資家は、
マーケットは長期的には上昇すると思っており、
マーケットの短期的な予想に基づいた投資判断はくださない。
◆投資はマーケットと比較すればゼロサム・ゲームである。
すべてのトレードには2つの側面がある。
仮想通貨を「買う」ということは、
誰かが「売って」いる、
と考えるべきである。
トレードするときは必ず、
「なぜ自分がマーケットの正しい側にいるのか」
と自問しなければならない。
◆マーケットのさまざまなところで、
勝者の数だけ敗者がおり、
投資家の平均的な利益は
そのマーケットのリターンから手数料を引いた額になる。
◆優秀なことよりも、
自分が知らないことを分かっていることのほうが役に立つ。
◆ほとんどの投資家は、
そもそもリターン(どれだけ儲かるか)にばかり気をとられて、
リスク(どれだけの損失を被るか)にはあまり関心を払わない。
◆本当の知るということは…
孔子曰く、
「知るを知るとなし、
知らざるを知らずとなす、
これ知るなり」
知らないことは
知らないと自覚すること、
これが本当の知るということである。
アリストテレスやソクラテスも
「無知の知」と同じことを言っている。
◆世の中には、
物事を不必要に複雑にしてしまう人が多すぎる。
たとえば、NASAにもこれに通じるジョークがある。
NASAは無重力状態だとボールペンが使えないことに気づいた。
そこで、NASAは10年の歳月と巨額の費用をかけて、
無重力状態だけでなく、
極めて低温でも、
宇宙飛行士がどのような大勢であっても、
ほぼすべての場所で使えるボールペンを開発した。
一方、ロシアの宇宙飛行士は「鉛筆」を使っていた。
◆マンガーは、
投資家として成功するための秘訣を
「訓練による学習」と呼んでいる。
これは、劣った判断につながる行動をやめることができれば、
ほかの投資家よりも優位に立てるということを意味している。
◆本に足が生えたような人
マンガーは、貪欲に本を読まないで成功している投資家は
ひとりも知らないと言っている。
彼の子供たちは父親のことを
「本に足が生えたような人」と呼んでいる。
本を読み、学ぶことはかなりの努力を要する。
◆利口で賢くなるための最速の方法
他人の成功や失敗から学ぶことは、
大きな痛みを被らなくても、
より利口で賢くなるための最速の方法である。
◆多くの人が投資を自分の判断で行わない(周りに流される)、
という基本的かつ重要な事実がある。
これは、自立的な思考ができる人は感情を抑制して、
心理的な間違いを避けることで有利な投資ができることを意味する。