人生100年時代のお金の不安がなくなる話 by 竹中 平蔵, 出口 治明
竹中 平蔵
1951年、和歌山生まれ。
一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。
大阪大学経済学部助教授、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年より経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣、郵政民営化担当大臣などを歴任。
現在、東洋大学国際地域学部教授、慶應義塾大学名誉教授。
ほか、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長、(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを兼職…
出口 治明
ライフネット生命創業者。
1948年、三重県生まれ。
京都大学を卒業後、日本生命に入社。
企画部などで経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。
ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2008年にライフネット生命保険株式会社を開業した…
AIで雇用がなくなるのか?
将来、年金はもらえるのか?
これから日本はどうなるのか?
私たちがなんとなく抱えている将来の不安について、
竹中平蔵氏と、ビジネス界きっての教養人・出口治明氏が徹底討論…
歴史、経済、世界情勢まで及ぶ話に、
なんとなく感じていた「不安」が、一気になくなる…
目次
序章 「歴史」から見て、今はどんな時期なのか?
・第四次産業革命=産業革命が「革命」と言われる理由
・AIとロボット、IoT ビッグデータ シェアリングエコノミー
・Uberがトヨタの4分の1、Airbnbも日本のメガバンクを超す成長
・トランプ大統領の誕生は、歴史にどんな影響を及ぼすのか(半年後変わる可能性あり)
第1章 2020年の世界を予想する
・人口・統計からみる日本の数字
・ビットコイン、ブロックチェーン、フィンテック……お金のIT化で、変わること
・銀行・金融機関はどうなるか?
・AIは本当に働き方を変えるか
・教育の変化(「とりあえず偏差値の高いところに」という現状)
・大学の変化(東大は資産を使ったほうがよい)
・変化に耐えるにはどうすればいいのか
・「変化」すること自体がチャンスである
第2章 年金・格差 自分たちが生きていくための「お金」の話
・今、20代の人は、まったく心配しなくていいですよ
・90歳まで生きたいなら、お金は準備すべき
・一番、つらいのはどの世代か?
・20代、30代、40代、50代、60代……世代別考えておくべきこと
・90歳まで生きるための最低限の「準備」について
・この先、稼ぎ続けられる人の条件とは(歴史が変わった時に、生き残れた人)
・「老後のためにお金が使えない」と思っている人が知っておくべきこと
第3章 「日本」の経済は大丈夫か?
・「年金」「国庫」の今後はどうなるか?
・「社会保障」の本来の意味。一生面倒を見てくれるスウェーデンは給与の3分の2を持っていかれます
・日本の経済政策がうまくいく日はくるのか?
・日本が「お金」を使うべき分野と「使わない」べき分野
・「格差」があることを前提に、国民が幸せになるために
第4章 今後のために知っておきたい「お金」と「生き方」のリテラシー
・日本は「低学歴」社会であることを知っておく
・「第四次産業革命」に必要な「人材」とは
・今後は兼業が当たり前になる
・就職できない人、無職になった人の選択肢は「社長になる」こと

MEMO
人生100年時代のお金の不安がなくなる話
◆タテ・ヨコ思考
▶縦(タテ)
過去の人の考え方を知ること、
つまり歴史をたくさん読むこと。
▶横(ヨコ)
世界にあるさまざまな考え方を知ること。
つまり広く世界に出て旅をすること。
歴史と世界から学んで
知恵をだしていかなければ、
経済を強くすることはできない。
◆変化こそ唯一の永遠である
永遠に不変のものなんてない。
唯一永遠のものがあるとすれば、
それは変化することだ。
◆地図よりも羅針盤(コンパス)が大事!
地図は便利だが、
すぐに古くなってしまって役に立たなくなる。
そのとき大事なのは、羅針盤。
これからの時代に必要なのは、
「自分はどいう専門性を持って、
どういうふうに生きていきたいのか」
という羅針盤だ。
◆Episode VS Evidence
▶Episode(エピソード)
個別の経験談なので
「一般的にそうだ」「誰にでも当てはまる」とは言い切れない。
だから、エピソードだけを真似しても、
効果があるかわからない。
▶Evidence(エビデンス)
科学的、統計的に裏付けがあるもの。
エピソードは、おもしろいし分かりやすいので印象に残るが、
その背後にエビデンスがないと、
「それでどうした?」で終わってしまう。
私たちにとって、
エビデンスこそが基本力である。
◆Resilience over Strength
強さより復元力が大事!
◆生き残っていくためには、
結局は変化に対する対応力しかない。
強いものや賢いものが生き残れるのではなく、
変化に対応したものだけが生き残る。
◆強さよりも変化への対応が大切
▶Competitive(コンペティティブ)
現状のルールや限られた範囲の中での競争力のこと。
たとえば、「Excelをこんない上手に使いこなせる」
というのは、「Competitive」。
▶Competent(コンンピタント)
Excelがなくなったり、
もっと新しいシステムに変わっても、
したたかにやっていける能力のこと。
つまり、根本的なことがわかっている人がCompetent。
これからの時代で大切なのは、
Competentであり、基本の力である。
◆好きなこと、
やりたいことをやって、
たくさん稼いで、
そのお金で社会事業を行い、
弱い人に手を差し伸べる。
そうすれば社会が安定する。
ビル・ゲイツがその良い見本である。
◆お金持ちを貧乏にしても、
貧乏な人はお金持ちにはならない。
◆生き残っていくために必要なのは、
強さや賢さではなく「対応力」である。
では「対応力」とは何か?
それは、
環境の変化に条件反射する力というより、
世の中で何が起こっているのかを、
原点に立ち戻り根本的なところから
「考える力」がベースになる。
そのためには、
経験に振り回されずに、
ゼロベースで考え抜くことが重要である。
大事なのは、
これからのことではなく、
「今」の私たちが置かれている状況をよく認識すること。
◆定年制はおかしい!
定年制をやめて、
働きたければ、
いつまでも働いたらいい。
65歳の雇用義務を企業に課すのではなく、
定年制の廃止を義務づけ、
年齢フリーの雇用環境をつくり出せばいい。
◆人間にとって何が幸せかといえば、
元気なときに自分のやりたいことができることだと思う。
やりたい仕事がやれず、
年老いていくとしたら、
それは不幸せである。
置かれた場所で咲けなければ、
別の場所を探せばいい。
◆「置かれた場所で咲きなさい」▶「咲ける場所を探しなさい」
必ずしも、
置かれた場所で咲くことが正しいとはかぎらない。
もちろん、
置かれた場所で咲くことができればベストである。
そこで全力を尽くせばいい。
でも、全力を尽くしても咲けないと思ったら
咲ける場所を探したほうがい。
◆人、本、旅
たくさんの人に会ったり、
たくさん本を読んだり、
たくさんの場所を訪れたりして
インプットの量を増やさなければ、
おもしろいアイデアは生まれない。
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◆センターピンを倒す!
たとえば、
ジュリアナ東京にとっての
センターピンは何かといえば、
「女性客」である。
男性客は単純なので、
女性客が集まれば、
それを目当てに自然と集まる。
では、どうすれば情勢客が集まるのか?
招待券を配る。
ただし、
有効期限が長いと「いつか行こう」
と思うだけで実際には放置されてしまう。
そこで、1日だけ使える招待券を配る。
◆成功したいなら、
クヨクヨ考えていないで、
今すぐ行動してみる。
今すぐにはじめた人のほうが、
成功確率が圧倒的に高い。
陽明学に「知行合一」という考え方がある。
知ることと実行することは
2つに分けられないという教えである。
この言葉は、
朱子学の「知先行後」
(知が先にあって行が後になる)
に対するアンチテーゼである。
知先行後だと、
学ぶだけで何もしないで終わってしまう。
◆健康のこととお金のことは、
考え出したらキリがない。
▶どうやったらお金が貯まるか
▶どうやったら健康を維持できるか
▶老後に備えてどれくらいお金を用意しておけばいいか
を考えることより、
▶自分が何をしたいのか
を考えるほうが、
よほど大事である。
◆自分の人生を大事にするためには
お金は使い切ったほうがいい。
人生「悔いなし、遺産なし」が理想…
高齢者には、
▶自分で全部使う
▶相続税率100%で国に自由に使ってもらう
▶自分の子どもや孫、あるいはNPOなどの寄付先に贈与税率ゼロでお金を移す
という選択の自由があればいい。
◆大事なことは、
格差をなくすことではなく、
貧困をなくすことである。
貧困には主に、
▶働きたいけれど職がない
▶働いているけれど賃金は安い
▶病気などでそもそも働けない
「病気で働けない」なら生活保護を受けるしかない。
「賃金が安い」のは、最低賃金の問題であり、
「職がない」のは雇用政策の問題である。
◆少子化が進行する中で、
直面する選択肢は2つ。
▶みんなで等しく貧しくなる
▶少子高齢化が進む分、今の生活をキープし向上させるためにGDPを上げる
これからの社会は、
消費者のニーズをきめ細かく捉えて、
アイデアを出して、生産性を上げて、
ひとりあたりのGDPを増やすことを
考えなければならない。
◆日本は、敬老原則と言いながら、
「年齢による差別」がものすごくある。
その典型が、定年制度。
先進国で主要企業が非常に強い定年制度(年齢による差別)
を持っているのは日本だけである。
◆先進国の中で、年齢による差別があるのは日本だけ
年金にせよ医療にせよ、
年をとった人を優先するという、
いわゆる「敬老原則」はそろそろ捨てるべきだ。
◆国債を発行できれば、
年金の支給を含めて予算を組むことができるので、
財政を維持できる。
つまり、国債の発行が可能である限り、
公的年金保険が破綻することはない。
一方で、国債の買い手がいなくなったときは、
財政が破綻する。
仮に日本政府がデフォルト(債務不履行)を宣言して、
国債が紙くずになったとしたら、
政府が倒れる前に、
国債をかかえている金融機関は全部破綻して、
市民の預貯金は紙くずになってしまう。
金融機関がいくつか潰れても国は潰れないが、
国が潰れたら金融機関は必ず潰れる。
◆老後のお金については、
まったく心配する必要がない。
いろんなが理由があるが、
ひとつは定年をなくして生涯働けば、
一定の収入が入ってくるから、
心配する必要はない。
◆年金を保険として考える
生命保険は、
どんなに高い掛け金を払っても、
ピンピンしていたら1円ももらえない。
掛け捨てであることが、
生命保険の特徴である。
年金も保険と同じで、
どんなに掛け金を払っても、
年をとって一定の所得があれば、
もらえないのが原則だったはず。
ところが、
年金の制度設計をした当時は、
高齢者が少なかったこともあって、
全員がもらえるようにした。
その結果、実質的に保険ではなくなった。
本来「90歳まで」生きると思っても、
100歳まで長生きするかもしれない。
その10年分を補う保険として、
年金がある。
◆GAFA(※)の時価総額は、
日本の国家予算約100兆円を軽く超えている。
※Google, Apple, Facebook, Amazonの4企業をまとめた呼称。
◆アメリカで自分たちの生活に不満を持っている貧しい人たちは、
トランプに投票した。
しかし、その人たちの生活は、
これからもっと貧しくなる。
なぜか?
保護主義が長引けば長期的に見ると
経済力を弱めるからである。
◆今のアメリカの最大の貿易相手国はどこか?
それは…
中国ではなく、
隣国のカナダである。
◆悲観は気分である。
しかし、楽観は意志である。
by アラン