ヨーガに生きる 中村天風とカリアッパ師の歩み by おおい みつる
おおい みつる
心身統一法を唱道し後に天風会をつくり、実業界のみならず各界に多大な影響を与えた中村天風に師事し、天風の哲学実践を独自の形で世に伝えることに努めた心理療法家。
平成14年逝去。
インドに大聖者カリアッパ師との偶然の出会いから、
師についてヨーガ行者の集落で厳しい修行に励むことになった
若き日の中村天風が、
幾多の苦難を乗り越えて不治の病を克服し、
ついには覚醒に至るまでを、
ヒマラヤの大自然の中に壮大なスケルーで描いた、
実話に基づく感動の物語…
目次
1 ヒマラヤの山々
2 邂逅
3 ヨーガの里
4 生いたち
5 壺の中の水
6 満月の夜
7 断崖の山径
8 花園と墓場
9 気になる傷口
10 われいずこより来る
11 三日三晩の眠り
12 生きる歓び
13 生命の復活
14 蟻の這う音
15 天の声
16 クンバハカ

MEMO
ヨーガに生きる
◆クンバハカ
刺激を感じたら、
すぐ肛門を閉める。
と同時に、
臍下丹田(せいかたんでん)に気力を込め、
肩の力も抜く。
この3つを同時に行って、
その瞬間息を止める。
◆今日の複雑な社会は、
遠い昔の人々が求めたそれとはまた違って、
激しい騒音や人間関係の重圧、
そしてそれから引き起こされる不安や恐怖、
焦燥という感情の歪みが、
日々現実の問題となって
われわれに覆いかぶさっている。
そして、多くの人々が、
それによって疲労を覚え、
心因性と分かる病を抱え、
何らかの問題解決を迫られている。
クンバハカの命題は、
それらの人々にとっては
決して見逃せない。
◆食欲と空腹とは、
厳重に区別して、
ただ食べたいという欲望に
身を任せることなく、
本当に腹がへったら食べる。
本当の空腹とはどんなものかを
味わうために断食をする。
◆病や心配事があっても、
心がそれから離れているなら、
たとえ身に病があっても、
その人は病人ではない。
また、よからぬ境涯に置かれていても、
その人は悪い境涯に生きてはいない。
反対に、病がなくとも、
病のことを考えていれば、
その人は病があるのと同じだし、
よい境遇であるにもかかわらず、
思い患ってばかりいれば、
悪い運命に陥ったのと同じことになる。
病も、肉体だけのものにして、
心にまで迷惑をかけない。
そうするためには、
折りに触れ、時に触れ、
心に天の声を聞かせてやる。
声なき声のあるところこそ、
本当に安らぎのある世界なのだ。
◆ヨーガ哲学の鉄則
与えられた命題は自ら考え、
また瞑想の中から湧出する直観によって、
その解答を得ていく。
これがヨーガ哲学における
ひとつの鉄則である。
◆病があろうが、
不幸な出来事に遭おうが、
それらが人間の幸不幸を決めるのではない。
生きていられる歓びの中には、
不幸や悩みなどというものは存在しない。
たとえ身の上に何が起ころうと、
どんな境遇に置かれようと、
心だけは生きていられることを思い、
その感動で生きていく。
そうしてこそ、
天は奇跡を与えてくれる。
つまらぬ生き方で、
いくら長く生きても、
何もならない…
◆不幸はあってなきがごとし
人間の幸不幸というものは、
その瞬間瞬間のその人の思い方、
考え方にある。