親子で学びたい二宮金次郎伝 (不運を幸運に変える生き方・考え方) by 三戸岡道夫
三戸岡 道夫
昭和3年静岡県生まれ。
28年東京大学法学部卒業後、協和銀行(現・りそな銀行)入行。
副頭取を最後に作家活動に入る…
二宮金次郎は農村指導者であって、学者ではない。
したがってその教えは机上の学問ではなくて、
困難な農村復興の中から生まれてきた実践哲学である。
その故に、
この教訓は、現代の我々の生き方や、
経済活動にも、
ぴったり当てはまる教えなのである。
目次
第1章 生家の復興
第2章 桜町領の復興
第3章 関東一円の復興
第4章『二宮翁夜話』に学ぶ金次郎の教え

MEMO
親子で学びたい二宮金次郎伝
◆金次郎の徳のとらえ方は独得で、
宇宙間すべてのものに徳があり、
その徳を引き出すのが人間であり、
その徳を引き出す行為を「報いる」という。
報徳とは、
「
▶神徳(天地自然のめぐみ)
▶公徳(社会の恩恵)
▶祖父母の徳(肉親のおかげ)
に報ゆるに、
わが徳行(報恩、感謝、積善)をもってする実践の道
」
とされている。
そして、報徳の実践に当たっては、
▶至誠・勤労(誠実に働き)
▶分度(収入に応じて支出に限度を設け)
▶推譲(余裕を生み出して、その蓄えた余裕を、次世代や地域社会のために差し出す)
と4つの綱領をあげている。
一口でいえば、
人間が働くのは、
ただ自分のためだけに働くのではなくて、
他の生命のために働かなければならない
ということである。
◆一円観
人には絶対の善人もないかわりに、
絶対の悪人もいない。
善や悪など、
世の中のあらゆる対立するものを、
一つの円の中にいれて観る。
世の中には、善悪、強弱、遠近、貧富、男女、老幼、
苦楽、禍福、生死、暑寒など、
互いに対立し、対照となっているものが無数にある。
この対立するものを、
一つの円の中に入れ、
相対的に把握する。
互いに対立するものは、
いずれもそれぞれ円の半分である。
世の中のことは何事も、
互いに対立する2つの半円を合わせて、
1円となる。
金次郎は、
物事の相対性を、
1円観として説いた。
◆五常講貸金(ごじょうこうかしきん)
五常というのは、
人間の行うべき道として
儒教が定めた5つの根本原理で、
▶仁(金の余裕のある人が、ない人へ、金を差し出す)
▶義(借りた人は約束を守って、まちがいなく返済する)
▶礼(借りた人は、貸してもらったことを感謝する)
▶智(金を借りたら一生懸命働いて、どうしたらはやく返済できるか努力工夫する)
▶信(金の貸借には、確実に約束を守ることが大切)
の5つの徳である。
この5つの徳を守る人間であれば、
信用が置け、安心して金を貸すことができる。
すなわち物を担保にするのではなく、
人間関係を基にした、
人の心を担保にした貸金なのだ。
◆積小為大(せきしょういだい)
小を積んで、大を為す
大きいことをしたいと思えば、
小さいことを怠らずに勤めなくてはならない。
およそ小人の常として、
大きいことを望んでも、
小さいことを怠るので、
結局大きいことを成し遂げられない。
それは小を積んで大となることを、
知らないからである。
◆二宮金次郎の教訓(3原則)
▶勤労(よく働く)
▶分度(身分相応に暮らす)
▶推譲(世の中のために尽くす)
この3原則は
道徳と経済の一致
という教えでもある。
そして、その内容は
▶道徳のない経済は犯罪である
▶経済のない道徳は寝言である
ということであり、
これも金次郎の経験の中から生まれた
実践哲学である。