オプティミストはなぜ成功するか [新装版] by マーティン・セリグマン
マーティン・セリグマン
ペンシルベニア大学心理学部教授。
元アメリカ心理学会会長。
動機付け理論の第一人者で学習性無力感の権威。
ペンシルベニア大学ポジティブ心理学センター理事を務める…
あなたは人生を思いのままにできる。
ケネディもブッシュも皆オプティミストだった…
成功に不可欠な「思考法」を解き明かし、
現代心理学に革命をもたらす一冊…
目次
旧版のためのまえがき
第二版のための序論
第一部 オプティミズムとは何か
第1章 人生には二通りの見方がある
第2章 なぜ無力状態になるのか
第3章 不幸な出来事をどう自分に説明するか
第4章 悲観主義の行きつくところ
第5章 考え方、感じ方で人生が変わる
第二部 オプティミズムが持つ力
第6章 どんな人が仕事で成功するか
第7章 子どもと両親――楽観主義は遺伝するか
第8章 学校で良い成績を上げるのはどんな子か
第9章 メッツとビオンディはなぜ勝てたか
第10章 オプティミストは長生きする
第11章 選挙も楽観度で予測できる
第三部 変身――ペシミストからオプティミストへ
第12章 楽観的な人生を送るには
第13章 子どもを悲観主義から守るには
第14章 楽観的な会社はうまくいく
第15章 柔軟な楽観主義の勧め

MEMO
オプティミストはなぜ成功するか
◆反論することと気をそらすこと
ABC分析で、
自分が悲観的な思い込みをしていることに気づいたら、
対処の仕方は大きく分けて2つある。
▶悲観的な考え方をしそうになったら、「気をそらす」こと…何か別のことを考える。
▶悲観的な考え方に「反論」する。自分の考え方をうまく否定することができれば、同じような状況が再び起こっても、悲観的な思い込みにとらわれることが少ない。だから、長い目で見れば、「反論」するほうが有効と言える。
◆ABC分析
私たちは困った状況(Adversity)に直面すると、
それについて考えをめぐらす。
考えはすぐに思い込み(Belief)となって固まる。
この思い込みはあまりに習慣的になっていて
自分では気づかないことも多い。
思い込みは結果(Consequence)を生む。
どのような思い込みをするかで、
落胆して諦めるか、
または満足して建設的な行動が取れるかが決まる。
第一のステップは、
困った状況と思い込みと結果の因果関係を知る。
第二のステップは、
自分の日常生活で、
これらA(困った状況)、B(思い込み)、C(結果)
がどのような作用をしているかを知る。
例1:
A:目をつけていた駐車スペースを他の誰かに横取りされる
B:あなたは◯◯◯と思う
C:あなたは腹を立て、窓を下ろしてそのドライバーにどなる
例2:
A:子どもたちが宿題をやらないので大声でしかる
B:あなたは自分が悪い母親だと思う
C:あなたは◯◯◯と感じる。または◯◯◯する
例3:
A:親友に電話してくれるように伝言を入れておいたのに、電話がかかってこない
B:あなたは◯◯◯と思う
C:あなたは1日中、ふさぎこむ
例4:
A:親友に電話してくれるように伝言を入れておいたのに、電話がかかってこない
B:あなたは◯◯◯と思う
C:あなたは別に気を悪くしないで、1日をふつうに過ごす
これらの状況を見て、
それぞれの要素がどう作用し合っているかを検討する。
例1の検討:
あなたはじゃまされたという思いでかっとくる。
「あのドライバーは私の場所盗った」
「失礼で自分勝手なやつだ」
日常これらのABCがどのように起きるのかを知るために、
自分の生活の中でABC日記をつけてみる。
そのためには、
ふだん気づかない自分の心の中での対話に
注意することだ。
非常にささいなことでもいいから、
何か困った事態が起きたとき、
どんな気持ちになるか気をつけて見てみるといい。
◆楽観主義を使うべきとき、使うべきでないとき
楽観主義を使うべきとき:
▶何かを達成しようとしているとき(昇進、製品販売、難しい報告書の作成、試合…)
▶自分の気持ちを高めよう、落ち込まないようにしようとしているとき
▶困難な状況が長引きそうで、自分の健康状態が問題になているとき
▶指導的役割を演じたいとき、他の人々を啓蒙したいとき、自分に投票してもらいたいとき
楽観主義を使うべきでないとき:
▶リスクの大きいことを計画する場合、将来の見通しが不確かなときは楽観主義を避ける
▶将来の見込みがはっきりしない人にカウンセリングするとき、最初は楽観主義を用いないほうがいい
▶他の人たちの困り事に同情的にあることを示したい場合、最初は楽観主義を用いず、信頼関係ができあがってから、楽観主義を使ったほうがいい
楽観主義で行くかどうかの基本的なガイドラインは、
その状況で失敗した場合どうなるかを考えることだ。
もし、失敗が高くつくようであれば、
楽観主義は勧められない。
一方、もし失敗しても大した被害はない場合は、
楽観主義で行くべきだ。
- 楽観主義者は失敗してもなかなか落ち込まないし、簡単に諦めない。一生を通じて考えると、楽観主義者は悲観主義者よりも無力状態に陥ることが少ないので、それだけ免疫機能もよい状態にある。
- 楽観主義が健康に役立つのは、楽観的な人は健康のために摂生し、医者のアドバイスに従う。病気は永続的、普遍的、個人的なものだと見ている悲観主義者は、自分が何をしても病気を防ぐことはできないと考える。自分で物事をコントロールしようとする楽観主義者は、病気を予防するために行動を起こしたり、いったん病気になったらすぐ治療を受けることが多い。
- 楽観主義が健康に関連してくるのは、その人が一生にどれだけ不幸な出来事遭うかという点だ。人生でより多くの悪い出来事に出会うのは誰か?悲観主義者である。彼らは積極的に悪い出来事を避ける方策を取ろうとせず、悪い出来事が始まってしまうと止めるための手を打とうとすることの少ない。つまり、悲観主義者がより多くの不幸な出来事に遭い、それがより多くの病を引き起こすとしたら、悲観主義は病気にかかりやすいことになる。
- 楽観主義者のほうがよい健康状態でいられるのは、社会的なバックアップを得られるからだ。たとえば、夜中でも電話して悩みを聞いてもらえる人を少なくとも一人は持っている人は、友だちのない人より健康状態でいられる。結婚していない者は、既婚者よりもうつ病にかかりやすい。病気のとき引きこもりがちの人はさらに病状が悪化する傾向がある。悲観主義者は問題が起きると受け身になりやすく、友人知人などの助けを求めようとしない。この点でも楽観主義的な生き方のほうがよい健康状態をもたらすと言える。
◆ある老人ホームの実験によると、
「選択」と「コントロール」が命を救い、
「無力」さが死を招くことが分かった。
◆楽観主義の応用がもっとも役に立つのは、
うつ病の治療、成績や業績の向上、
健康増進の3分野だが、
自分自身を新たな視点から理解するのにも
役立つ可能性がある。
◆健康を決定づけるものは何?
健康に関する従来の考え方に、
欠陥がある。
楽観主義と悲観主義は
肉体的要素とほとんど同じくらい、
健康そのものにも影響を与える。
◆成功と失敗と分けるものは何?
成功と失敗に関する従来の考え方を、
改める必要がある。
職場も学校も、
成功は才能と意欲の結果であるという
一般的な推論のもとに機能しており、
失敗するのは才能か意欲が欠けているときだと
考えられている。
しかし、才能と意欲が豊富にあっても、
楽観的なものの見方が欠けているときには、
失敗に終わることもある。
◆悲観主義者は
楽観主義者よりも簡単に諦め、
職場でもスポーツでも政治の場でも
能力以下の成績しか上げられない。
健康状態も驚くほどよくないことが多い。
しかし、幸いなことに悲観主義は
変えることができる。
楽観主義は学んで身につけることができる。