世界一孤独な日本のオジサン by 岡本 純子
岡本 純子
コミュニケーション・ストラテジスト、「オジサン」(の孤独)研究家。
企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化を支援するスペシャリスト。
グローバルな最先端ノウハウやスキルをもとにしたリーダーシップ人材育成・研修、企業PRのコンサルティングを手がける。
これまでに1000人近い社長、企業幹部のプレゼン・スピーチなどのコミュニケーションコーチングを手がけ、「オジサン」観察に励む。その経験をもとに、「オジサン」の「コミュ力」改善や「孤独にならない生き方」探求をライフワークとする。
読売新聞経済部記者、株式会社電通パブリックリレーションズコンサルタントを経て、株式会社グローコム代表取締役社長。
早稲田大学政治経済学部政治学科卒、英ケンブリッジ大学大学院国際関係学修士、元・米MIT(マサチューセッツ工科大学)比較メディア学客員研究員…
日本のオジサンは世界で一番孤独―。
人々の精神や肉体を蝕む「孤独」は
この国の最も深刻な病の一つとなった。
現状やその背景を探りつつ、
大きな原因である「コミュ力の“貧困”」への対策を紹介する…
目次
序章: 最も危険なリスクファクター ―― それは「孤独」
第1章:孤独なオジサンたち
“やりがい搾取”された営業マンの悔恨/妻が妬ましい夫、夫が疎ましい妻/「高齢男性の引きこもり」という大問題 ほか
第2章:孤独は「死に至る病」
パンデミック化する「孤独」/ なぜ、孤独は心身を蝕むのか/都市化が孤独を加速する/
高齢者はキレやすいのか?/世界一不幸な日本の高齢者 ほか
第3章:孤独の犠牲になりやすいオジサン
世界一寂しい日本の中高年男性/定年退職という呪縛/定年が怖い男たち/「名刺」に依存するオジサンたち/
男のプライドという厄介な代物 /「男らしさ」の縛り/「忙しい」と見栄を張りたい現代人 ほか
第4章:オジサンたちのコミュ力の“貧困”
ほめないオジサン、ほめられないオジサン/世界で一番、会社が嫌いな日本人/会社というムラ社会/
ダメ出しがデフォルトのオジサン/話したがるが、話を聞かない日本のオジサン ほか
第5章:孤独の処方箋
孤独対策先進国イギリスの取り組み/「喪失」のダメージを受けやすい男性/
ペットやソーシャルメディアは孤独を解消するのか/「億劫さ」を乗り越えて ほか
第6章:孤独にならないために
老後に向けて蓄えるべきは「カネとコネとネタ」/「孤独の迷宮」に入り込まないために ほか

MEMO
世界一孤独な日本のオジサン
◆ダンバーズナンバー
霊長類の脳の大きさと平均的な群れの大きさとの間に
相関関係を見出し、人間の脳の大きさを計算した上で、
人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度であると言われている。
◆女性はラポール(共感)トーク、男性はレポート(報告)トーク
ラポールトーク:
社会的所属と感情的なつながりを重視するコミュニケーションスタイル。
レポートトーク:
感情を交えることなく、情報を交換することに主眼が置かれている。
◆生物学的に見ても、
笑顔の健康・幸福効果は非常に顕著だ。
笑顔は、脳内物質のエンドルフィンやセロトニンを放出させる。
エンドルフィンは痛みを和らげ、
病気に対する免疫力を高める。
セロトニンは抗鬱効果があり、
精神的な幸福感につながる。
また、ストレスホルモンのコルチゾールを抑制する。
◆日本人は目元、アメリカ人は口元に注目し、
感情を読み取る。
日本人は周囲の人との関係や集団内の調和を守るため、
本当の気持ちが顔に表れないようにする。
この際、目の動きを司る筋肉は口の動きを司る筋肉と比べ、
意図的に制御しにくいので、
目にはどうしても本心が出てしまう。
だから、相手の本当の気持ちが知りたいとき、
日本人は目を見て判断する。
一方、アメリカでは本心を正直に顔に表すことが奨励され、
口角を上げて笑っているかどうかなど、
目元よりも大きく動く口に着目している。
◆「内にこもる」理由としては、
そもそも、男性は「感情」を抑圧しすぎてしまい、
自分が「鬱」であることも気づいていない。
◆人はロジックだけでは動かない。
相手の感情(エモーション)を揺り動かすことが大切だ。
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◆なぜ、オジサンは語りたがるのか?
それは、ズバリ「気持ちがいい」からだ。
研究によれば、
自分のことを話すとき、それが会話であろうと、
ソーシャルメディア上であろうと、
人はお金や食べ物、セックスと同じような快楽を感じる。
◆「我慢強い」日本人は、
たとえ、相手に嫌気がさしても、
愛情がなくなっても、
「腐れ縁」で続ける結婚生活が非常に多いが、
欧米人にはそんな我慢強さなや諦念(※)はみじんもなく、
とっとと別れる。
※道理を悟る心。また、あきらめの気持。
◆多くの脳科学研究から明らかになったのは、
一生懸命、働いて成功すれば幸せになるのではなく、
幸せだからこそ、成功するということ。
だから最初に、
幸せになることを見つけろ。
そうすれば、成功があなたを探してついてくる。
◆仕事をする上で大切だと思うもの…
中国、韓国、インド、アメリカ:
高い賃金・充実した福利厚生
日本:
良好な職場の人間関係
◆米国のPR会社の調査では、
世界28ヶ国中、日本人は、
「世界で、最も自分の働く会社を信用していない国民」
という結果が出た。
日本のサラリーマンは世界一、
会社に不満だらけで、
会社が大嫌いということらしい。
◆今どきの日本のサラリーマンの多くは、
本当は自分の会社が
「大嫌い」で、
「不満タラタラの会社人生」
を送っているらしい。
それを如実に示すのが、
世界的に見た日本人社員の
「エンプロイー・エンゲージメント」の数値の低さだ。
◆なぜ、「ほめること」は人のやる気を刺激するのか?
それは仕事が認められ、賞賛されることによって、
脳内に「生きる意欲を生み出す快楽ホルモン」ドーパミンが
放出されるからだ。
◆報酬を上げなくても、
1)上司からの賞賛
2)幹部(リーダーシップ層)からの評価
3)プロジェクトやタスクフォースの仕事を主導するように任せる
という3つの方法で、
コストをかけずに、
社員のやる気を刺激できる。
◆アメリカ人などと比べると、
日本人は基本的に「ほめ下手」だ。
アメリカは、
子供のころからとくなくほめて育てる文化なので、
「子供をほめる100の言葉」といったリストが山ほどある。
たとえば、日本語の「すごい」だけで、
Super, Fabulous, Amazing, Fantastic, Terrific, Awesome, Marvelous, Brillioant, Great, Excellent, Wonderfull
など、ゆうに50種類以上の言い方がある。
◆「働きバチ」日本人は、
休むのが極めて苦手で、
「忙しさ」に価値を見出す国民性である。
◆個人商店主や農家、漁師など、
会社に雇われることのない、
自立した働き手には定年がない。
かつて、日本にもこうした
「定年なく働く人たち」は大勢いた。
1953年には、
仕事をする人の半数以上が、
「定年」というものなく、
働き続けることができた。
ところが、
2016年には会社に雇われている人が89%にまで達している。
現在は10人に9人が会社員、
つまり「定年」という人為的なシステムによって、
「働き続ける」権利を自動的に収奪される対象となってしまった。
◆男女に求められる特質
男性:
1)誠実さ・道徳心
2)職業・金銭的成功
3)野心・リーダーシップ
女性:
1)身体的魅力
2)共感、育成、親切心
3)知性
◆美化される孤独
男性は、「孤高」であることが美化されてきた。
高倉健のように無口で「群れない」人が、
男らしく、究極的にかっこいい、
そんな固定観念が根強いように思う。
◆「武士は食わねど高楊枝」というように、
「対面」を保ちたいと願う男性は
「群れるより、孤高」を選ぶ。
本当は寂しいのに、
そうやって「やせ我慢」を
してしまっている人は少なくない。
◆アメリカには「定年退職」という制度はない。
多くの人が65歳ぐらいで退職するが、
業績や勤務実績・態度などに問題なければ、
働き続けることができる。
そもそも、
年齢による差別を禁止しているアメリカでは、
履歴書に年齢を書かなくてもよいことになっている。
何歳からでも、
何歳まででも、
スキルがあり、
職務を履行できれば働き続けることができる。
◆人間は年を取るほど、
神経質ではなくなり、
感情をコントロールしやすくなる。
同時に、誠実さと協調性が増し、
責任感が高まり、
より敵対的でなくなる。
これはまさに、
日本の高齢者に対する評価と真逆である。
◆日本では、職場や親戚、近所の付き合いを重視する人は
年々減少しているのに対し、
「家族が一番大切」という人は増加しており、
夫婦や子供など、
家族の人間関係を、
より重視する傾向が強まっている。
◆2030年には女性で22.5%、男性で29.5%と
日本の生涯未婚率が上昇すると見られている。
男性の約3人に1人、女性の4人に1人は
生涯独身という時代になる。
◆中高年の男性は
「孤独が好きだ」
「孤独を楽しむのだ」
と引きこもる人が多いが、
それは、傷つくことを恐れる、
ある種の自己防衛メカニズムが働くからだ。
孤独はまさにアリ地獄。
一度入り込むとなかなか出てこられない。
◆慢性的な孤独下に置かれた人は、
他の人のネガティブな言動に対して、
極度に過敏になったり、
ストレスのある環境に対する耐性が低くなる。
さらにアンチソーシャル(非社交性)になり、
孤独を深めていく、
という悪循環に陥ってしまう。
◆孤独は敵の来襲にたった一人で立ち向かわねばならないことを意味し、
脳を「サバイバル(自己保身)モート」に変える。
人間は「サバイバルモード」においては、
ウィルスと戦うのではなく、
バクテリアと戦うようにプログラミングされているため、
ウィルス耐性が下がり、
がんなどへの免疫力が落ちる。
◆孤独のリスクは、
▶1日タバコ15本吸うことに四敵
▶アルコール依存症であることに四敵
▶運動をしないことよりも高い
▶肥満が2倍高い
◆孤独は伝染する
寂しさがインフルエンザのように
人から人へ「感染」する。
そもそも、
「楽しい」「悲しい」「怖い」「怒り」
などといった「感情」は周囲にいる人を
同じ気分にさせる「伝染効果」を持っている。
孤独な人が引きこもれば、
その周りにいる人も孤独になり、
孤独の連鎖が起きていく。
人は寂しくなると他人を信用しにくくなり、
友人関係を構築するのがさらに難しくなる悪循環に陥る。
◆今、世界で、
人々の精神的・肉体的健康上、
最も憂慮すべき問題として語られているのが、
「孤独」だ。
◆やせ我慢する男性たちに根本的な解決策は
なかなか見当たらない。
高齢男性の「引きこもり」はこれからもっと、
もっと深刻化する大問題。
◆老後はね…
「きょういく」と「きょうよう」が大事だ。
「今日行く」ところがある、
「今日用」がある。
◆日本を襲う閉塞感の背景には、
日本人の「コミュニケーション力不全」、
さらにそこに起因する「孤独」がある。
問題は、人と人との関係性の希薄化、
コミュニケーションの欠落によって、
誰ともつながっていない、
誰も頼る人がいない、
という精神的な「孤独」感に
苦しめられている人が増えていることだ。
◆日本は高齢者が世界一不幸な国である。
多くの国で、
人の幸福度は50代で底を打ち、
また上がっていく傾向を示しているのに、
先進国の中で、日本だけは、
右肩下がりに落ちていき、
年を取れば取るほど、
不幸に感じる人が増えていく。
◆Loneliness and the feeling of being unwanted is the most terrible poverty.
孤独と、人に必要とされていないという感覚は、
究極の貧困である。
マザー・テレサ
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◆褒め方のコツ
- よく観察する
部下や妻、友人など身の回りの人をよく観察し、変化に目を配る。 - すぐに褒める
褒めるべき言動があれば、なるべく間を置かず、その場で褒める。 - 具体的に褒める
具体的にどこがどう、よかったのかをきっちりと述べる。 - 本心から褒める
社交辞令ではなく、本心から認め、賞賛する。 - 「でも、しかし」と続けない
褒めた後、けなさない。 - 相手の好みのパターンで褒める
皆の前で褒められたい人、あまり大げさでなく褒められたい人、それぞれの好むパターンを把握し、合わせる。
◆嫌われれオジサンの「八大禁忌症状」
1)むっつりオヤジ
「あいさつ」をする▶まずは「カベ」を破ろう
2)威張るオヤジ、3)ダメ出しオヤジ
「いいね!」▶ほめ上手になろう
4)説教オヤジ、5)昔話オヤジ、6)自慢オヤジ
「うん、そうだね」▶耳を傾けよう
7)キレるオヤジ
「えがお」
8)文句オヤジ
「お礼」を言う▶感謝をする
◆イギリスのWalking FootballやMen’s Shedのような
取り組みが日本にも普及すれば、
ひとつの「ビジネス市場」といsて活性化する可能性がある。
◆「ネタ」を見つける3つの視座
- 得意なもの
- 夢中になれるもの
- 社会が求めるもの
◆老後に向けて備えるべきは「カネとコネとネタ」
▶「カネ」、充実した老後を送りたいと思えば、これはあるに越したことはない。
▶「コネ」、まさに人とのつながりだ。いざと言うときに支え合う、深くて緊密な絆。
▶「ネタ」、これは老後の題材、つまり「生きがい」のようなもの。