ハーバードからの贈り物 by デイジー・ウェイドマン
デイジー・ウェイドマン
1996年、ブラウン大学卒業。
専攻は歴史学。
2002年にハーバード・ビジネススクールで経営学修士号(MBA)を取得。
ビジネススクール入学前は、J・P・モルガンに4年間勤務し、投資銀行業務および商業貸付業務に携わる。
ニューヨーク市で生まれ育ち、現在も同市に在住…
ハーバードの伝統、「最終講義」。
そこで教授たちが語り聞かせる人生訓とは…
ページをめくるたびに初心に立ち返らせてくれる、珠玉の15篇!
目次
・転落から高みへ(ジャイ・ジャイクマー)
・なぜ人はあなたのために働くのか(ティモシー・バトラー)
・ラシュモア山での問い(トーマス・J・デロング)
・剥製の鳥(ジェフリー・F・レイポート)
・自分らしくあれ(リチャード・S・テッドロウ)
・黒か白か(トーマス・K・マックロウ)
・まずい食事と真実(スティーヴン・P・カウフマン)
・同窓会(デイヴィッド・E・ベル)
・完璧を求めるな(ナンシー・F・ケーン)
・キャサリン・ヘップバーンと私(ロザベス・モス・カンター)
・サラの物語(H・ケント・ボウエン)
・今という瞬間を生きよ(フランシス・X・フライ)
・レース(ヘンリー・B・ライリング)
・誓い(ニティン・ノーリア)
・自分を見失わないで(キム・B・クラーク)

MEMO
ハーバードからの贈り物
◆真の成功を収めるための5つの要素とは
- 失望から立ち直る能力
人生にはあらゆる局面で、広い意味での失望が待ち受けている。仕事人生でも、数々の挫折やつらいことを経験する。成功する人は、人生に逆らわない。たとえ失望や苦難に直面しても、めげずに進んでいく。 - 運
金や地位のある家に生まれたとか、宝くじに当たるとかいうことではない。ここで言う運とは、親から良い遺伝子を受け継いている、良い教育を受けた、心にかけ、良いアドバイスをしてくれる師と呼べる人がいる、先進国に住んでいるか自由に行き来ができる、中世ではなく現代に生まれた、などである。 - リーダーシップの資質
偉大なリーダーは他者への思いやりから、あるいは自分という存在を超えた大義のために行動する。 - 公正さ
他人に対して公正であれというのは哲学的な意味ではなく、あくまで実践的なレベルでの話だ。成功を収めるためには、優秀な人材をそろえることが必須条件となる。けれども、もしその人たちを不公正に扱ったり、陰険なやり方で扱ったりすれば、彼らはほかの選択肢を求めて去ってしまう。そうなれば、代わりに2流の人間を充当しなければならなくなる。 - 決断力
先に述べた4つの要素「失望から立ち直る能力」「運」「リーダーシップの資質」「公正さ」をコントロールするものが「決断力」である。
◆「賢者は経験から学ぶが、
真の賢者は他人の経験から学ぶ」
ということわざがある。
そして、
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
ということわざもある。
◆2つの重要な教訓
▶学校での短期的な成績の良し悪しを過大評価してならない
▶今(あるいは5年後、15年後でも)あなたがレースのどの辺を走っているとしても、
成功するためには知性以外にどんな要素が必要か…そしてそれらの要素をどう組み合わせるべきか…を考えることが大切だということ。
◆キャリアを通じて思い切ってリスクを負う覚悟を決めたうえで、
結果が出るのをどのくらい待つか、
具体的な年数を決めておく、
ということだ。
そして、その期限が過ぎたらきっぱり諦める。
ある年齢に達したとき、
いくつものリスクを冒して自分の夢を目指してきたにもかかわらず、
まだそれを達成できていなかったら、
潔く身を引くことだ。
目標のことは忘れて、
そして二度と後ろを振り返らないことだ。
◆自分がどんな見返りを求めるかという点から仕事を選ぶこと、
成功の意味をあまり狭くしないこと、
長期的な展望を持つこと…
を実践する際に、
何よりも大事な心得がひとつある。
それは、バランス感覚を失わないということだ。
◆たったひとつの見方で世界をとらえることに
安住しないでこと。
物事を黒か白かで見るレンズは捨てよう。
自分の過去を見つめ、
今までの歩みを振り返り、
自分の考え方はどこからきたのかを理解することだ。
黒と白との間にもさまざまな色があることに気づき、
それを理解すること。
それこそが、
的確な判断をもたらすのだ。
◆人間は、時代や文化的・社会的背景、
両親、そして偏見といったさまざまな要素の産物だ。
今後生きていくうえで最善の判断を下すためには、
そうした過去の要素ひとつひとつがどのように
今の自分の考え方を形づくったかを知らなければならない。
キャリアを追求していくためには、
自分の考え方がどのように形成されたかを理解することが必須なのだ。
◆自分がなぜ今のように思考するようになったのかを
把握することがきわめて重要である。
自分の考え方はどこからくるのか、
それが自分の世界観にどう影響しているのか、
その考え方に従うことでどんな間違いを犯す可能性があるのかを、
よくよく吟味することだ。
そのためには、
自分の過去を振り返り、
「黒か白か」を分けようとする信念や考え方が
どうして身についたのかを省みる必要がある。
◆仕事上の自分と本来の自分とをどう区別するかというのは、
何も駆け出しの時代だけの問題ではない。
富や成功や権力をどれだけ得たかにかかわらず、
それはキャリアを通じてずっとつきまとう。
社会に出たばかりであろうと、
定年が間近に迫っていようと、
公私の自分を分け、
そのバランスをとることはきわめて困難だ。
だが、やるだけの価値も十分にある。
◆家庭での自分と仕事での自分を分けることには、
家庭と仕事のどちらにおいても物事が
効率的に進むというメリットがある。
◆ペルソナ…
つまり、自分に似た自分らしい人格…
を持っていると役に立つ。
もっともペルソナというのは、
決してまやかしの自分ではない。
だが同時に、
本当の自分でもない。
本来の自分とは違う、
言わば仕事用の自分なのだ。
◆自分である必要はない、
大事なのは自分らしくあることだ。
つまり、私人としての自分と職業人としての自分を区別すること、
言い換えれば、自分は何者かということと、
何をする人間かということの間に、
微妙な一線を引くということである。
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◆ごくわずかの信頼できるデータを頼りに判断し、
結論をくださなければならないことがある。
そのようなとき、
必要なのは自信と信頼だ。
自分自身の能力やビジネスパートナーの才能への信頼、
そして革新の可能性、
世界の持つ可能性に対する信頼である。
自分自身を信じること、
これに尽きる。
◆人生にもビジネスにも、
確実なものはひとつもない。
結果を保証するものは何もないのだ。
それでも決断はくださなければならない。
重要で物事を左右するような決断を、
不十分なデータや見当違いのデータをもとにして
くださなければならないことも多々ある。
そして世界は、
肝心の事柄から注意をそらさせる雑音に
満ち満ちている。
なんであれ、価値ある目標を達成しようとすれば、
手に入る情報は常に限られている。
そして卓越した行動の裏には、
なみなみならぬ信念、経験に裏打ちされた
信念がなければならない。
ビジネスにおいても人生においても、
クリエティブな行動を起こすには
勇気と自信が要求される。
◆成功という言葉の意味を考え直してほしい。
成功したかどうかの尺度を、
いかに履歴書を磨き上げるかではなく、
あなたが周囲の人々にどんな影響を与え、
その人の生活にどんな変化をもたらしたかに置くことだ。
◆何かを達成するたびに視野は狭まり、
次に何を目標にするかしか目に入らなくなる。
成功を求め続けるうちにそれが中毒になり、
次の目標なしにはいられなくなる、
といった具合だ。
自分の価値を証明するものを絶えず
求めずにはいられなくなるのだ。
ところがここには、
個々の職業上の業績をリーダーシップと混同してしまうという
落とし穴がある。
経歴や業績ばかりに気を取られているうちに、
自分の周辺に絶えずある、
他人にポジティブな影響をもたらす
小さなチャンスが見えなくなってしまうのだ。
往々にして目に見える見返りがないため、
そうしたチャンスを自分の野心に優先させることは、
まずます困難になっていく。
だがリーダーシップとは、
野心を持つことではない。
ただ目標を達成することとも違う。
リーダーシップとは、
他人にモチベーションを与えてやる気を起こさせ、
チャンスを与えることである。
◆優れた管理職は、
部下の真の姿を見抜く力を持っている。
部下をよく知り、
どんな課題を与えれば彼らの能力を引き出し、
その意欲を会社への貢献に結びつけ、
同時に、その人の自信にもつなげられるかを
見つけることができる。
これこそ、根本的な意味での
キャリア開発にほかならない。
◆部下に仕事を任せ、
部下のキャリアを開発するというのは、
本質的には多様性の問題だ。
言い換えれば、
真の意味で他人の視点に立って
物事を見るということである。
多様性というと、
普通は人種や宗教、性、国籍、
あるいは性的指向の違いを思い浮かべる。
だが、ここで言うのは別の意味の多様性、
つまり自分とは違った考えを持つ人の視点に立って世界を見るという、
根本的な意味での多様性である。
多様性を尊重するとは、
部下に対する支配(コントロール)を棚上げし、
自分とは別の人間が仕事の一部(または大部分)を委ね、
その人の裁量に任せることだ。
◆人間のモチベーションの本質とは何か?
部下の才能をフルに活かすリーダーになるためには、
支配(コントロール)に頼ってはならない。
上司としてのパワーをある程度抑え、
恐怖を管理の手段にするのをやめること。
効果的で実現可能なビジョンを持っていたら、
部下に全面的に任せてみることだ。
人には人なりの仕事のやり方があり、
コミュニーケーションのとり方があり、
ビジネスパートナーや顧客との話し合い方がある。
部下に仕事を任せるとは、
誰かになたのアイデアを実行させることではない。
その人のアイデアが実現するための環境を整えること、
その人のビジョンに沿ったやり方でビジネスさせることなのだ。
全権を任せることによって、
部下は恐怖ではなく、
自らのポジティブなビジョンに突き動かされて
仕事をするようになる。
◆相談にくる人の多くは、
業種、会社、部署のどれをとっても
その人にぴったり適合している。
ところが、もっとも大切な「仕事への満足度」が欠けている。
これは上司そのものへの不満でもあり、
パワーやリスク、仕事への任せ方などについての上司の
考え方に対する不満でもある。
自分の仕事の主人公は自分だという感覚が持てないため、
せっかくの仕事への情熱を失ってしまう。
仕事への意欲を掻き立て、
その炎を消さずにおくには、
どうしたらよいのか?
これらの問に答えるには、
思い切った決断が必要である…
部下の能力開発を、
リーダーが取り組むべき最優先課題に据えるのだ。
◆登山への情熱から山の頂きをきわめようとした。
けれども転落事故は、
私をそれよりはるかに高いところへ導き、
私の世界観を形づくってくれた。
肩の力を抜くこと。
仕事と家庭を両立させていくことは、
時に大きなストレスになる。
大事なのは、
仕事やプライベートのどんな局面におても
肩に力を入れすぎないこと。
肩の力を抜き、
人生を大いに楽しむ、
それを忘れないことだ。
幸運が成功を生み、
成功は義務を生む。
他の人々の幸運を作り出すことで、
あなた自身が最高の高みへと到達することができる。
◆人の命とはなんとももろいものか。
ほんの一瞬のうちに、
人の置かれた状況はいかに激減するものなのか。
あの羊飼いの女性は、
なぜあんなに親切にしてくれたのだろう。
言葉も通じない見ず知らずの相手に、
なんの見返りも求めず、
なぜあれほど献身的に尽くしてくれたのか。
◆ハーバードの多くの教授は
ユーモアを交えながら、
気さくな調子で話した。
話の内容は、それを語る教授の個性と同じく、
バラエティに富んでいた。
けれども同時に、
すべての話には共通点があった。
どの教授もリーダーとしていかに良い人生…
有意義な人生…を築くかについて語った。