実践 行動経済学

実践 行動経済学 by リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン

リチャード・セイラー(Richard H. Thaler):
シカゴ大学経営大学院教授、同大学意思決定研究センター所長。行動経済学の指導的研究者の一人であり、政策提案でも実績がある。

キャス・サンスティーン(Cass R. Sunstein):
ハーバード大学法科大学院教授。研究分野は種々の法制度から行動経済学まで幅広い。

“使える”行動経済学の全米ベストセラー

市場には何が足りないのだろう?

ごく凡庸な我々は、
様々な人生の決断において
自らの不合理性とひ弱さに振り回され続ける。

制度に“ナッジ”を組み込めば、
社会はもう少し暮らしやすくなる。

目次

はじめにーー「自由放任」でも「押しつけ」でもなく

第1部 ヒューマンの世界とエコノの世界
第1章 バイアスと誤謬
第2章 誘惑の先回りをする
第3章 言動は群れに従う
第4章 ナッジはいつ必要なのか
第5章 選択アーキテクチャー

第2部 個人における貯蓄、投資、借金
第6章 意志力を問わない貯蓄戦略
第7章 オメデタ過ぎる投資法
第8章 “借金市場”に油断は禁物

第3部 社会における医療、環境、婚姻制度
第9章 社会保障制度の民営化――ビュッフェ方式
第10章 複雑きわまりない薬剤給付プログラム
第11章 臓器提供者を増やす方法
第12章 われわれの地球を救え
第13章 結婚を民営化する

第4部 ナッジの拡張と想定される異論
第14章 一二のミニナッジ
第15章 異論に答えよう
第16章 真の第三の道へ

あとがきーーヒューマン投資家と2008年金融危機

実践 行動経済学
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MEMO

実践 行動経済学

◆クレジットカードには2つの機能がある。

・現金に代わる支払い手段を提供する
・手持ちの現金が足りない場合にすぐに流動性を供給すること

現在、アメリカでは1億1500万人が
クレジットカードの負債を毎月返済している。

1989年のアメリカの平均的な家庭の
クレジットカード負債額は2697ドルだったが、
2007年には約8000ドルにまで膨らんだ。

そして、2014年には
約15,000ドルになった。

◆リスクに対する姿勢は、
投資家がポートフォリをモニターする頻度に左右される。

◆完了後エラー

ガソリンタンクのキャップを置き忘れるのは、
心理学で「完了後エラー」と呼ばれる
特別な種類の予測可能なエラーである。

人は主要な課題を完了すると、
それまでのステップに関連することを忘れる傾向がある。

・ATMで現金を引き出したあとにカードをと忘れる
・コピーをとったあとに元の原稿をコピー機に置き忘れる

◆単純測定効果

何をしようとしているのか質問されると、
答えに沿った行動をとる可能性が高くなる。

◆あなたの隣人が「◯◯株を買っても損はしない」
と話したら、
その投資から手を引く絶好のサインになる。

◆肥満は伝染する。

太り過ぎの友人がたくさんいる人は
太り過ぎになる可能性が高くなる。

体重を増やす最高に効果的な方法は、
誰かほかの人と一緒に夕食を食べることである。

◆他人はあなたが思っているほど、
あなたを注意して見ていない。

シャツに染みがあっても気にしなくてよい。

たぶん誰も気づかない。

しかし、人は誰もが自分のことを注視していると考えている。

それが一因で、
人々があなたがそうすると期待しているだろうと
思うことに同調する。

◆集団的無知とは、
集団の全員あるいは大部分が他の人は
どう考えているのか知らない状態をいう。

私たちが習慣や伝統に従うのは、
それを気に入っているからではないし、
擁護できると考えているからでさえない。

ただ単に、自分以外のほとんどの人が
そうすることを望んでいると思っているからだ。

◆集団的保守主義とは、
状況が変わって新しい必要性が生じても、
集団が確立されたパターンに固執する傾向をいう。

たとえば、ネクタイを着ける習慣のように、
一度習慣が定着すると、
そうするべき特別な根拠がなくても
永久に続く可能性が高い。

◆民間部門、公的部門を問わず、
首尾一貫した揺らぐことのない主張をする人は、
集団や活動を自分の思い通りの方向に動かせる。

◆なぜ人は自分が認識した事実を無視してしまうのか。

答えは2つある。

・他人の答えから伝達される情報
・集団から非難されたくないという欲求

人は自分がなにを言わなければならないか
他の人がわかっていると同調しやすくなる。

他の人が全員間違っていると思っていたり、
そう確信しているときでさえ、
集団に従うことがある。

◆フレーミングとは、
選択は問題の言い表し方にもある程度左右される
という考え方。

たとえば、次の2種類のキャンペーンを検討してみる。

a)省エネ対策をすると、年間35,000円節約できる

b)省エネ対策をすると、年間35,000円損をする

この例では、
損失でフレーミングした(b)のほうが(a)よりずっと効果的
であることが明らかになっている。

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◆フレーミング

あなたが重い心臓病にかかっていて、
主治医はつらい手術を提案していると仮定する。

当然、あなたは手術の成功率を知りたいと思う。

・この手術を受けた100人の患者のうち、90人が5年後に生存している
・この手術を受けた100人の患者のうち、10人が5年後死亡している

この2つの情報は、
内容はまったく同じなのに、
人々の反応はかなり違ったものになる。

医者が手術を勧める可能性は、
「100人のうち10人が亡くなっている」と告げられた場合より、
「100人のうち90人が生存している」と告げられた場合のほうが高くなる。

◆ものを失う「痛み」は得る「喜び」の2倍

人は損失を嫌う。

おおざっぱにいうと、
あるものを失うときの惨めさは、
それと同じものを得るときの幸福感の2倍に達する。

専門的な言い方をすると、
人は「損失回避的」なのだ。

◆利害が大きいときでさえ、
人々は非現実的なまでに楽観的な見方をする。

結婚したカップルの約5割は離婚し、
この統計はほとんどの人が耳にしている。

しかし結婚式の前後では、
ほとんどすべてのカップルが自分たちが離婚する可能性は
ゼロに等しいと信じている。

離婚経験者でさえそうなのだ!

再婚とは希望が経験に打ち勝った結果である

by サミュエル・ジョンソン

◆人間の持つ2つの認知システム

自動システム: 
・制御されてない
・努力しない
・連合的
・早い
・無意識
・熟練を要する

熟慮システム:
・制御されている
・努力する
・演繹的(えんえき)
・遅い
・自覚的
・ルールに従う

 

◆デフォルト・オプションを設定するなど、
一見するとなんでもないようなメニュー変更戦略は、

・貯蓄が増える
・医療が向上する
・患者の命を救う移植手術に臓器が提供されるようになる

といった非常に大きな影響を生み出す。

◆現状維持バイアスとは
「惰性」のしゃれた言い方である。

人はいくつもの理由から現状維持やデフォルトの
選択肢に従う強い傾向を示す。

デフォルトの選択肢がどのようなものであるかに関係なく、
大勢の人がデフォルトに固執する。

利害の大きい重要な選択のときでもそうする。

このことから2つの重要な教訓を導き出せる。

・決して惰性の力をあなどってはならない
・その力は利用できる

◆人は「選択の自由」をもつべきだ。

我々は選択に自由を維持したり、
高めたりする政策を設計しようと懸命に努力している。

◆なんでもなさそうな小さな要素が
人々の行動に大きなインパクトを与えることがある。

そのため、
「あらゆることが重要な要素を持つ」
という想定をおくことが優れた経験則になる。

投稿者: book reviews

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