いちずに一本道 いちずに一ツ事 by 相田 みつを
相田みつを
大正13年(1924)年に生まれ。
昭和とともに歩み、昭和が終わってすぐ、
平成3(1991)年に67歳で亡くなった。
現代人の心を深くひきつける力強く繊細な書の数々。
在家のまま仏法を学び、
人間愛の真実を探求し、
孤高な精進を全うした著者唯一の自伝エッセイ。
未発表・カラーの書作品39点を収録…
目次
あんちゃんの話
以心伝心
ことばでは
決めるのは自分
逆縁の菩薩
あんちゃんの戦死
おろかに つたなげに
霧の中を行けば
やっぱり便利のほうがいい
自信はなくてうぬぼればかり
負けることの尊さ

MEMO
いちずに一本道 いちずに一ツ事
◆外灯というのは
人のためにつけるんだよな
わたしはどれだけ
外灯をつけられるだろうか
みつを
◆ともかく
具体的に動いてごらん
具体的に動けば
具体的な答えが出るから
みつを
◆肥料
あのときのあの苦しみも
あのときのあの悲しみも
みんな肥料になったんだなあ
じぶんが自分になるための
みつを
◆受身
柔道の基本は受身
受身とはころぶ練習まける練習
人の前にぶざまに恥をさらす稽古
受身が身につけば達人
まけることの尊さがわかるから
みつを
◆人間というのは、
途方に暮れる経験をすることが、
いかに貴重であるか…
途方に暮れる経験がないと、
人生はわからない。
にっちもさっちもいかない、
どこにも行く場がない。
そういう経験が、
あなたにも必ずあると思う。
右に行ってもダメ、
左に行ってもダメ、
南に行ってもダメ、
北に行ってもダメ、
どうにもしょうがなくて、
本当に途方に暮れる。
そういう経験が人間の
「いのちの根っこ」を育てていく。
負けるってことが、
いかに大事か…
そのことをわかってほしい…
◆ばかがいなけりゃ、利口がたたねい
全部が利口だと困ってしまう。
全部がお医者さんで、
患者が1人もいなかったら、困る。
全部が先生で生徒がいなければ学校なんて
成り立たない。
底辺を支える人がいて、
初めてトップが生きる。
だから世の中利口だけじゃダメなのだ。
負ける人がいるから、
勝つ人がいる。
人間は、
いつでも負ける方にいると、
心が安らかだと思う…
◆「負ける」ということは、
自分の思いを引っ込めること、
自己主張をやめること。
相手に勝ちを譲ること。
それから、
恥ずかしいことをさらけ出すこと。
◆親の財産というのは、
何にも遺さなくていいけれども、
「あんたのお父さんはたいへんいい人でしたよ」という、
その一言が我が子に残す一番いい財産じゃないのか。
◆「かねが人生のすべてではない」
ここをしっかりと押さえておかないから、
かねにからむ犯罪があとをたたない。
「かねは有れば便利、無いと不便」
ただそれだけの話し。
◆仏法は頭で考えたり、
知識として覚えることではない。
行とは…
只管打坐(しかんたざ)、
一切を捨てて、
ただひたすら坐ること。
それが行。
その行は、
いつどこでやるのか?
いま、ここ。
やるのは自分。
◆畢竟(ひっきょう)して何の用ぞ?
ぎりぎり決着のところ、
究極のところ、
それがなんの役に立つのか?
◆色即是空・空即是色(しきそくぜくう・くうそくぜしき)
かねが人生のすべてではないが
有れば便利、
無いと不便です
便利のほうがいいな
◆ただいるだけで
あなたがそこにただいるだけで
その場の空気があかるくなる
あなたがそこにただいるだけで
みんなのこころがやすらぐ
そんなあなたにわたしはなりたい
みつを
◆昨日は過ぎてしまってもうない
明日はきてみなければわからない
たいせつな事は今日只今の自分自身が
どう生きているかということである
みつを
◆ボロは最初に見せておけ
そうすればいつでも天下太平だ
みつを
◆ひとつのことでも
なかなか思うようにはならぬものです
だからわたしは
ひとつのことを
一生けんめいやっているのです
香雲堂主人
◆そのときの出逢いが
人生を根底から変えることがある
よき出逢いを…
いつ、どこで、だれとだれが、
どんな出逢いをするか?
どんなめぐり逢いをするか?
それが人生にとっては
いちばん大事なことだ…
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◆霧の中を行けば覚えざるに衣しめる
深い霧の中をお坊さんが歩いてゆきました。
気がついてみると衣がびしょり濡れていた。
私達は日常どんな霧の中にいるのか?
そして自分はどんな霧をまいているのか?
現実の生活の中では、
損得、勝ち負け、愛憎などという霧がいちばん多いのではないか。
そして、そういう霧の中で、
自分自身は欲張り(貪欲)、
いかり(瞋恚:しんに)、
ぐち(愚痴)という霧を、
まわりの迷惑もかまわずまき散らしているのではないか。
これは人のことではなく
自分のことだ。
◆説似一物即不中(せつじいちもつそくふちゅう)
本当のところは言葉や文字では説明できない、
自分で体験してみなければわからない…
◆忍
がまんをするんだよ
がまんをするんだよ
くやしいだろうがね
そこをがまんをするんだよ
そうすれば
人のかなしみやくるしみが
よくわかってくるから
みつを
◆つまずいたって
いいじゃないか
にんげんだもの
みつを
◆人間にとっていちばん大事なものは、
学歴でも肩書きでもお金でもない。
丈夫な身体と健康なこころ、
ころが最高の宝だ。
その他は枝葉、
一時の飾りだ…
◆東大がなんだ!!
早稲田がなんだ!!
体さえ健康ならば何をやっても
生きていけるぞ!!
父さんを見ろ!!
このひとこと、この叫び、
人間が生きてゆく上でいちばん大事なことはこれだ。
どんなことがあってもいい。
挫折結構、失敗結構。
大事なことは、
そのことでいちばん大事な命を落とさぬことだ。
身体さえ丈夫であれば、
何をやっても生きてゆける…
◆「正直者はばかをみる」
というのは現実社会では否定できない事実だ。
しかし、その反対に
「正直は一生の宝」というさわやかな諺もある。
ものごとというのは
一面だけ見たのでは本当の姿はわからない。
常に両面から見ることが大切である。
どちらの諺も本当だから…
◆物事の真理や真実というものは
どんなことばでも説明できない…
つまりことばで説明したら
真実から外れてしまう。
◆同じ、生きるんだったら、
少しでも、
世の中に役に立つような生き方をしてくれ。
そして、どんなに苦しくても、
音を上げちゃいかんぞ…
◆男として生まれてきた以上、
しかも学校に我々の働きで行かせてやったんだから、
自分の納得する生き方をしてくれよ。
世間の見てくれとか、
体裁よりも、
自分の心の納得する生き方をしてくれよ…
◆どんなにひもじくても、
卑しい根性にはならないでくれ。
貧すれば鈍するというけれども、
貧しても鈍しないでくれ…