何のために働くのか by 北尾 吉孝
北尾 吉孝
1951年、兵庫県生まれ。
74年、慶應義塾大学経済学部卒業。
同年、野村證券入社。
78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。
89年、ワッサースタイン・ペレラ・インターナショナル社(ロンドン)常務取締役。
91年、野村企業情報取締役。
92年、野村證券事業法人三部長。
95年、孫正義氏の招聘によりソフトバンク入社、常務取締役に就任。
現在、ベンチャーキャピタルのSBIインベストメント、オンライン総合証券のSBIイー・トレード証券、住宅ローンのSBIモーゲージ等の革新的な事業会社を傘下に有し、金融、不動産、生活関連サービスなどの事業を幅広く展開する総合企業グループ、SBIホールディングス代表取締役CEO…
あえて艱難辛苦の道を行く
それが著者の考え方!
この強い精神力の源は何なのか?
それは…
幼少より親しんできた中国古典…
目次
第1章 人間は仕事の中で成長する
第2章 古典が教えてくれたこと
第3章 あえて艱難辛苦の道を行く
第4章 誰でも仕事の達人になれる
第5章 天命をまっとうして生きる
MEMO
何のために働くのか
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◆繰り返して読むことの効能
本を読むときは、
まず気になった箇所にマーカーで線を引いて、
ページの端を折っておく(ドックイヤーと呼ぶ)。
そして次に読むときは、
付箋に気になる単語やキーワードを書き抜いて、
それを貼り付けておく。
そうしておいて、
たとえば「自得」という言葉について
考えようというときには、
貼ってある付箋から「自得」と書かれた箇所を探す。
そうすると、
いろんな本から「自得」と書かれた付箋が見るかるので、
その部分にずっと目を通していき、
改めて自分なりに「自得」という意味について考える。
本を読みながらマーカーで線を引いていると、
前回と今回で線を引く箇所が違うケースが出てくる。
その違いを明らかにするために、
読むたびに線を引くマーカーの色を変える。
たとえば、最初に青いマーカーを使ったら、
2度目は赤のマーカーを使う、
3度目は黄色のマーカーを使うという具合。
いい本は何回も読まなければいけない。
一回読んでわかったつもりでいても、
実はわかっていないことがよくある。
とくに、古典などは非常に奥が深いから、
何回も読まないと、
その真意はとても理解できない。
◆読書術
孔子、孟子、老子といった古典や
中村天風などの本を
何回も何回も繰り返して読む。
◆人を知る者は智、自ずから知る者は明
人を知る者は知者に過ぎない、
自分を知ることが最上の明なのだ。
自分自身というのは、
わかっているようでなかなかわからないもの。
ゆえに、人類に共通のテーマになる。
ソクラテスも「汝、自らを知れ」と言っているし、
ゲーテも「人生は自分探しの旅だ」と言っているように、
非常に難しいことである。
◆5つの人生観
- 天の存在
1人でいて誰にも見張られていないからといって何をしてもいいわけではない。人は見ていなくても、天は必ず見ている。 - 任天・任運
生きるか死ぬか、これはまさに天命である。そしてまた、金持ちになるか貴(とうと)くなるか、これもまた天の配剤なのだ。 - 自得
人間は自得から出発しなければいけない。人間いろんなものを失うが、何が一番失いやすいかといえば自己である。根本的本質的に言えば、人間はまず自己を得なければいけない。人間はまず基本的に自己を徹見する。これがあらゆる哲学、宗教、道徳の根本問題である。 - 天命を悟る
自分の天職と思える仕事を通じて天に仕える、社会に貢献する、すなわち世のため人のために仕事をする。仕事を自分自身の金儲けのためや自分の生活の糧を得るためのものだと考えると、人生はつまらないものになる。世のため人のためになることをするからこそ、
そこに生きがいが生まれる。人は1人では生きていけず、周りによって生かされている。そういう認識に立つと、自分が社会において果たすべき責務や、個人と社会とのあるべき姿がだんだん見えてくる。そしてついに天命を知り、自分の生き方が変わってくる。それがわからなければ、決して立派な人物にはなりえない。天命を悟り、それを楽しむ心構えができれば、人の心は楽になる。 - 倫理的価値観
ブレない判断をするためには何が必要なのかと考えると、それは自分の根底にある倫理的価値観こそが根本になる。たとえば、自らの価値判断の基準として「信・義・仁」という3つの言葉を置く。この3つを判断の物差しにする。
・信
約束を破らないこと。「これをやると人の信頼、社会の信頼を裏切ることにならないか」と常に考える。
・義
正しいことを行う。自分の行為が社会的に問題になると「会社のためにやった」と弁解する人がいる。しかし、その人は本当に会社のためにやったのではなく、すべて自分のためにやっているのだ。上役によく思われたいと考えてやっている。
・仁
思いやりの精神。これは「相手の立場になって物事を考えているかどうか。自分の私利私欲が前面に出ていないか」を確かめるための基準になる。
◆「人間というのは若いと思っているうちに、
すぐに老人になってしまい、
学問はなかなか進まないものだ」
と教えるのは普通だが、
「だから、
寸暇を惜しんで勉強しないと、
人生というのははかないものだ」
というところまで説く人は少ない。
◆天知る、地知る、子知る、我れ知る、何ぞ知ることなしと謂うや
誰も見ていないと思っても
そんなことはない。
天が知っているし、
地も知っている。
お前も知っているし、
私も知っている。
どうして知るものがないなどと
言えるのか。
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◆自分を知らなければ成長できない
あらゆる行動の前提に、
自得(※)の問題がある。
自分のことがわからなければ、
人生いかに生きるべきかなどわからない。
己を知らない人が、
どうして自らの将来を意識して
変えることができるのか。
いくら周囲が
「変えなければいけない」
とアドバイスしたところで、
それは無理。
※自分自身に対して得意になること。うぬぼれ。
◆本気で天職を見つけたいなら、
まずは与えられた仕事を素直に受け入れる。
そして、熱意と強い意志を持って、
一心不乱にそれを続けていく覚悟が必要。
◆好き嫌いで判断している限り、
決して自分の望んでいる仕事には巡り合えない。
◆一生懸命に働けば、
その見返りとして人間的に成長できる。
これこそ仕事の対価。
そして、
仕事にはもうひとつの対価がある。
それは「ご縁」。
◆働くことの対価とはお金だと
考えている人が多いが、
そうではない。
ぎりぎりの生活の中でつかんだ
仕事の対価とは、
自らの成長である。
◆親は、
勉強がいくらできても人間的に未熟であっては
意味がないということをはっきり
子どもに教えるべき。
そのうえで、
人間として一流になるためには
どういう勉強をすべきなのかを教え、
導いてあげる。
それが親の務め。
◆人間とは何かと考えることは、
よく生き、いい仕事をするためには
欠かせない大きなテーマになる。
◆人間としての根本を養うために実践すべきこと
・心の糧になるような本を読む
・自分が私淑(ししゅく※)できるような師を持つ
・さまざまな経験や体験を踏まえて自分を練っていく
※尊敬する人に直接には教えが受けられないが、その人を模範として慕い、学ぶこと。
◆仕事観
・仕事とは公のためにするものである。
・仕事とは天命にしたがって行うものである。
◆「仕」も「事」も「つかえる」と読む
では誰に使えるのかと言えば、
天につかえる。
◆働くことが人間性を深め、人格を高くする
働くことは人間を磨くこと、
魂を磨くことだ。
稲盛和夫