読書の技法 by 佐藤 優
佐藤 優
作家、元外務省主任分析官。
1960年、東京都生まれ。
1985年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。
在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。
2002年、背任と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕され、2005年に執行猶予付き有罪判決を受ける。
2009年に最高裁で有罪が確定し、外務省を失職。
2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞…
月平均300冊。
多い月は500冊以上!
佐藤流「本の読み方」を初公開!
目次
【第I部 本はどう読むか】
第1章 多読の技法――筆者はいかにして大量の本を読みこなすようになったか
第2章 熟読の技法――基本書をどう読みこなすか
第3章 速読の技法――「超速読」と「普通の速読」
第4章 読書ノートの作り方――記憶を定着させる抜き書きとコメント
【第II部 何を読めばいいか】
第5章 教科書と学習参考書を使いこなす――知識の欠損部分をどう見つけ、補うか
【世界史】【日本史】【政治】【経済】【国語】【数学】
第6章 小説や漫画の読み方
【第III部 本はいつ、どこで読むか】 第7章 時間を圧縮する技法――時間帯と場所を使い分ける
【特別付録】本書に登場する書籍リスト

MEMO
読書の技法
◆平均的な1日(著者自身)
- 5時 起床
- 5時~5時半 入浴、朝食
- 5時半~13時 原稿執筆
- 13時~13時半 昼食
- 13時半~19時 読書、原稿執筆(途中、約1時間散歩)
- 19時~21時 食事と休憩
- 21時~24時 原稿執筆、ノート作り、語学学習
- 24時~読書
◆普通の速読技法
- 「完璧主義」を捨て、目的意識を明確にする
- 雑誌の場合は、筆者が誰かで判断する
- 定規を当てながら1ページ15秒で読む
- 重要箇所はシャープペンで印をつけ、ポストイットを貼る
- 本の重要部分を1ページ15秒、残りを超速読する
まずは、目次とまえがきを注意深く読み、それから結びを読む。 - 大雑把に理解・記憶し、「インデックス」をつけて整理する
新聞の読み方を応用する
◆超速読の目的は2つ
- 本の仕分け作業
「この本が自分にとって有益かどうか」、「時間をかけて読むに値するかどうか」の仕分け。この判断ができるためには、その分野について一定の基礎知識があるといのが大前提になる。 - 本全体の中で当たりをつける
「この本はこの部分だけを読めばいい」「この箇所を重点的に読めばいい」という当たりをつける。
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◆超速読の技法
5分の制約を設け、
最初と最後、目次以外はひたすらページをめくる。
まず序文の最初1ページと目次を読み、
それ以外はひたすらページをめくる。
このとき文字を読まない。
とにかくページ全体を見るのだ。
ページに太字やゴジック体で書かれている本は、
ページ全体を見るには値せず、
太字やゴシック体の文字だけを追っていけばよい。
図表や資料はおのずと目に飛び込んでくるので、
他と同様に扱う。
原則として、
時間がかかるので一行一行、線は引かない。
しかし、何か気になる語句や箇所が出てきたら、
後でわかるようにシャープペンで大きく丸で囲むなど印をつけ、
そのうえでポストイットを貼る(ページの角を折ってもよい)。
そして、結論部のいちばん最後のページを読む。
これで本全体の印象をつかむと同時に、
その本で自分が読むべき箇所の当たりをつけることができる。
◆速読には2種類ある
- 超速読(1冊を5分で読む)
- 普通の速読(1冊を30分で読む)
「超速読」は試し読みと言ってよい。
この試し読みによって、
本を4つのカテゴリーに分ける。
- 熟読する必要があるもの
- 普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
- 普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
- 超速読にとどめるもの
◆基本書は3冊、5冊と奇数にする
読者が知りたいと思う分野の基本書は、
3冊もしくは5冊購入すべきである。
なぜか?
1冊の基本書だけに頼ると、
学説が偏っていた場合、
後でそれに気づいて知識を矯正するのには時間がかかる。
また、基本書は奇数でなくてはならない。
なぜなら、
定義や見解が異なる場合、
多数決をすればよいからだ。
2冊、4冊だと、
半分に分かれた場合、
読者自身が判断しなくてはならない。
◆書店員の知識を活用する
- 八重洲ブックセンター本店
- 丸善丸の内本店
- 三省堂書店神保町本店
- ジュンク堂店池袋本店
- 紀伊国屋書店新宿本店
などの書店において、
書店員に聞いてみる。
◆速読の目的とは?
ビジネスパーソンの場合、
熟読できる本の数は1ヶ月6~10冊程度だろう。
つまり、最大10冊読んだとしても
1年間で120冊、30年間で3600冊にすぎない。
3600冊というと、
中学校の図書館でもそれくらいの数の蔵書がある。
人間が一生の間に読むことができる本の数は
たいしてないのである。
この熟読する本をいかに絞り込むかということが
読書術の要諦である。
数ある本の中から、
真に読むに値する本を選び出す作業の過程で
速読術が必要とされるのだ。
速読の第一の目的は、
読まなくてもよい本をはじき出すことである。
◆本屋に行けば、
速読術の本がいくつか並んでいる。
ページのめくり方や視線の動かし方について
指南しているものも多いが、
結論から言うと、
これらの本を読んでも速読術は身につかない。
なぜか?
速読術とは、
熟読術の裏返しの概念にすぎない。
熟読術を身につけないで
速読術を体得することは不可能である。
◆本には3種類ある
- 簡単に読むことができる本
- そこそこ時間がかかる本
- ものすごく時間がかかる本
◆基礎知識は熟読によってしか身につけることはできない
しかし、熟読できる本の数は限られていいる。
そのため、
熟読する本を絞り込む、
時間を確保するための本の精査として、
速読が必要になる。
◆なぜ速読が必要なのか?
読書に慣れている人でも、
専門書なら1ヶ月に3~4冊しか熟読できない。
重要なのはどうしても読まなくてならない本を絞り込み、
それ以外については速読することである。
1ヶ月に熟読することができる本が3~4冊ならば、
それ以外の本は速読することを余儀なくされる。
ただし、速読する場合、
その本に書かれている内容について基礎知識がなければ、
そもそも読書にならず、
指でページをめくっているにすぎない。
そういう指の運動を速読とは言わない。
逆に基礎知識が身についているならば、
既知の部分を何度読んでも時間の無駄だ。
新たな本を読むとき既知の内容に関する部分は読み飛ばし、
未知の内容を丁寧に読む。
このように速読を行うことによって
時間をかなり圧縮することができる。
◆正しい方法論を確立するために重要になるのは、
時間という制約要因について、
常に頭に入れておくことだ。
◆人間50歳を過ぎると、
そろそろ人生の残りの時間が気になりはじめる。
どんなに努力しても、
知りたいことの大部分について、
諦めなくてはならない。
しかし、
そう簡単に諦めたくない。
そのときに役立つのが読書だ!
他人の経験、知的努力を、
読書によって自分のものにするのだ。
正しい読書法を身につければ、
人生を2倍、3倍豊かにすることができる。
◆新しい情報をインプットする時間を
1日に最低4時間は確保するようにしている。
◆時間が人間にとっての最大の制約条件
なぜ、読書術が知の技法のいちばん初めに
位置づけられなくてはならのか?
それは、
人間が死を運命づけられている存在だからだ。
そのために、
時間が人間にとって最大の制約条件になる。
◆「熟読」の技法
- まず本の真ん中くらいのページを読んでみる【第一読】
- シャープペン(鉛筆)、消しゴム、ノートを用意する【第一読】
- シャープペンで印をつけながら読む【第一読】
- 本に囲みを入れる【第二読】
- 囲みの部分をノートに写す【第二読】
- 結論部分を3回読み、もう一度通読する【第三読】
▶熟読の要諦は、同じ本を3回読むこと
基本書は最低3回読む
第1回目 線を引きながら通読
第2回目 ノートに重要箇所を抜書き
第3回目 再度通読
熟読できる本の数は限られている。
熟読する本を絞り込むために、速読が必要になる。