放射線被ばく-CT検査でがんになる

放射線被ばく-CT検査でがんになる by 近藤 誠

近藤 誠

1948年、東京都に生まれる。
慶応義塾大学医学部放射線科講師。
慶応大学医学部を卒業後、アメリカに留学。
帰国後は、がん一般の治療を専門とし、乳がん治療では早くから乳房温存療法を実践。
一方で、日本の医療界の変革と、患者本位の医療を実現するため、医療現場からの情報公開に力を注ぎ続けている…

「安全」「無害」と繰り返す専門家たち。

しかし検査被ばくによる発がん率は世界第1位、
CTの設置台数は圧倒的に世界第1位。

何が正しく、何が危険か、
判断するのは私たち一人ひとりだ。

目次

第1部 放射線被ばくの現在 ――なぜ欺瞞と誤解に満ちているのか
第一章 原発事故による被ばくをどう考えるか
第二章 CT被ばくと発がん大国日本

第2部 放射線による「発がん」のリスク ――「専門家」に頼らず正しく判断するために
第一章 治療被ばくによる発がん
第二章 検査被ばくによる発がん
第三章 なぜ検査被ばくが蔓延するのか
第四章 専門家たちの虚言
第五章 不要な検査被ばくを避けるには

第3部 安全か危険かを自己判断するための基礎情報 ――医療関係者もぜひお読みください
第一章 放射線と検査
第二章 放射線の健康への影響
第三章 発がんのメカニズム
第四章 医療検査による被ばく

Q&A 第五章 原発事故による被ばくQ&A

放射線被ばく CT検査でがんになる

放射線被ばく CT検査でがんになる

Amazonに移動する…

MMEO

放射線被ばく CT検査でがんになる

◆発がんのメカニズム

細胞ががん化するためには、
遺伝子が変異する必要がある。

細胞のがん化には
4つ程度の遺伝子が変異する必要がある。

もっとも、
どの遺伝子でもいい、
変異遺伝子が4つそろえばよい、
というものでもない。

「a, b, c,…z」までの26個の遺伝子からなる
細胞を想定し、
現実の細胞で生じている現象を考えてみる。

変異した遺伝子は(A, Bというように)大文字で表すことにする。

さて、
がん化のために(変異することが)
必要とされる遺伝子「a, s, d, f」というように
種類や組み合わせが決まっていると考えられている。

それぞれが変異して「A, S, D, F」になったときに、
がん細胞に変わる。

がん細胞になるための遺伝子の種類や組み合わせも
ひとつではなく、いくつもある。

そこでこのモデル細胞でも
「ASDF」のほかにも「hjkl」が「HJKL」に、
「cvbn」が「CVBN」になれば、
それぞれ(性質の異なる)がん細胞になると考える。

では、がん化に(「asdf」という)4遺伝子が必要として、
それら4遺伝子は一斉に変異する必要があるか。

その必要はない。

変異遺伝子が4つそろうことが重要で、
そろう順番や時期は重要ではない。

したがって遺伝子のうち、
まずひとつだけが変異して「asDf」になり、
つぎに別の遺伝子が変異して「aSDf」になるというように、
変異遺伝子が段階的に蓄積して、
最終的に「ASDF」の組み合わせが完成すれば、
がん化のためには十分であるはず。

そして、1ミリシーベルトといった低線量でも
変異遺伝子が生じるので、
細胞のかん化に役立つことになる。

◆放射線がん検診と「がんもどき」

肺がんのための胸部X線撮影、
乳がん用のマンモグラフィ(乳房X線撮影)、
胃がん検診でのバリウムを飲ませてする
胃X線撮影がよく行われてきた。

近時は、CTを用いて肺がん検診を行う
医療機関が増えている。

それら放射線検査は有効なのか?

検査を受ければ、
発見される癌は増える。

しかし、
がん死する人を減らすことはできない。

なぜか?

それは、
検査で発見された圧倒的多数は
「がんもどき」だから。

どのような癌も、
どういう進行度でも、
ほかの臓器への転移はあるかないか、
どちらかである。

そして臓器転移があれば、
大腸がんにおける例外的場合を除いて、
治すことはできない。

この意味で、
臓器転移がある癌は
「本物のがん」といえる。

他方、
癌は発見した時点で他臓器移転がなければ、
その癌を仮に治療しないで放置しても、
後に転移が生じてくることはない。

それゆえ、
癌と診断されても、
その実質は、「がんもどき」である。

検診を受けて癌を発見された場合、
それは「本物」か「もどき」のどちらかだ。

発見された時点では、
微妙な転移が体のどこかに潜んでいる可能性があるので、
「本物」か「もどき」かはわからない。

しかし、どちらかであることは確実である。

そして「本物」であれば、
治療を受けても転移がいずれ育ってくるので、
結局治らない。

それなのに臓器を切断され、
あるいは放射線治療をされたりするので、
合併症や後遺症が生じる。

それでは癌を発見することは、
無意味という以上に有害である。

これに対し、
発見された癌が「もどき」であった場合、
転移は出てこないので、
長生きできる。

治療を受ける、
受けないにかかわらず、
その癌では死なない。

逆に見ると、
検診で癌を発見されて治療された人が
長生きしていることは、
転移がなかった証拠であり、
「もどき」であった証拠になる。

他方で被ばく線量を見ると、
胸部X線撮影を除き、
ほかの放射線検査は相当に多い。

被験者のうち、
本物の癌をもつ人は、
そのために死亡するはずなので、
被ばくを気にする必要がないともいえるが、
まったく異常がなかった人や、
もどきを持つ人は、
長生きするので、
放射線被ばくによる発がんで寿命を
縮める可能性が出てくる。

これらの理由によって、
がん検診には意味がない。

——————————-
◆受診しなければ被ばくなし

「まずCT」「何でもCT」が蔓延するのは、
日本の医学教育レベルは先進諸国のうちで
もっとも劣り、
臨床能力が育たないような仕組みになってからだ。

また、あまりに外来が混んでいて、
能力を備えた医者でも、
患者の話を聞く時間的余裕がなく
先に検査を受けさせてデータ一式をそろえたい
気持ちになってしまう。

CT検査をすればするほど、
病医院が経済的に潤う医療構造もある。

そこで(私たち)患者が、
放射線検査による被ばくを減らそうと思ったら、
私たち自身が、
不要な検査を避けるしかない。

そのためには…

  • 少々のことでは、病医院に行かないようにする。中年以降の不調は、大方老化現象で、つける薬はない。そうだとすれば、医者に診てもらう必要もない。受診しなければ被ばくしない。
  • 患者が医療機関に歩いて行くだけの体力があり、症状も軽いのに、初診時に「まずCT」と言われたら、CT室に行かず、そのまま帰宅する。CTの必要性があるほどの病状であれば、医者は何らかの見通しを言えるはずで、それが説明できないのは臨床能力がない証拠である。
  • 検査の必要性に納得がいったら、担当医に、「X線撮影とCTでは、線量はどちらが多いか」と聞いてみる。答えが間違っていたら、その場では争わず、診察室外に出たら帰宅する。

◆「とりあえずCT」の危険性

危険をはらむCT検査だが、
被ばく線量を制限する法規やガイドラインは
存在しない。

医者は、
いくらでも放射線検査をオーダーできる。

なぜ被ばく線量に上限がないのか?

それは、
放射線診断は患者にとって利益になる、
というのが理由である。

しかし実際には、
CTが必要とはいえない多くの場面で、
安易にオーダーされている。

なぜ不必要・不適切なCT検査が行われるのか?

原因は複合的だ。

まず、放射線検査を管理・指導するはずの
放射線診断医(検断医)に知識がない。

CTのオーダーは、
臨床各科の医者がする。

患者がCT検査室に来てしまったら、
検断医が断ることができない。

そもそも、
検断医を置かずにCT装置を置く施設が
圧倒的多数である。

さらに日本では、
診察方式が変わってしまった。

患者を診る医者は、
話をよく聞き、触診や聴診をして診断をつけ、
不明な場合にCTなどの検査をする、
というのが従来の方式だった。

ところが最新鋭のMDCT(多列検出器型エックス線CT 装置)は、
検査余力が大きいので、
多くの病医院では、
オーダーした当日にCTを施工できる。

その結果、診察もそこそこに、
「とりあえずCTをやりましょう」
「念のためCTを」
ということになる。

また、万一医療事故を起こしたときの対策に、
防衛目的でCTをすることもある。

◆胸部・腹部が発がんリスクが大

人体に照射されたX線のうち、
臓器や組織で吸収される分を
「(臓器)吸収線量」といい、
その多寡が、発がんリスクを左右する。

X線撮影の吸収線量は、
体の厚みに応じて変わり、
人体の左右の幅は、
前後の幅より厚いので、
胸部X線撮影だと、
左右方向撮影(側面像)の吸収線量は、
前後方向撮影(正面像)の2~3倍になる。

CTについて見ると、
X線を通しにくい頭蓋骨が存在する頭部は、
胸部・腹部に比べ、
吸収線量が数倍になる。

でも、頭部には発がんリスクが高い臓器が
存在しないのでリクスが低い。

逆に、肺、乳房(女性)、胃、結腸など、
発がんリスクが高い臓器が存在する
胸部や腹部のCTは、
吸収線量は頭部CTより少ないけれど、
発がんリスクは高くなる。

なので、吸収線量を比べるのではなく、
「実効線量」が考案された。

実効線量が多いと、
発がんリスクも高くなる。

1回のCT撮影での実効線量は、
胸部CTが18ミリシーベルト、
腹部・骨盤CTは男性が23ミリシーベルト、
女性が29ミリシーベルトである。

留意すべきは、
実効線量は1回撮影の線量にすぎない、
ということ。

通常は、一度の検査で何度も撮影することが少なくない。
したがって実際の実効線量は2倍~3倍にもなる。

◆放射線診断の主役は、
X線撮影とCT(コンピュータ断層撮影)検査だ。

前者は、X線を人体に照射して
(臓器・組織で吸収されず、人体を通り抜けたX線で)
レントゲン・フィルムを感光させる。

後者は、X線を360度方向から照射して、
人体を通り抜けたX線を検出器で測り、
コンピュータ計算して、
人体の輪切り像を作る。

被ばく線量はCTの方がはるかに多い。

装置や撮影条件によっては、
500~1000倍という見積もりも可能だが、
200~300倍とする論文が多い。

このように、
X線撮影とCTとでは、
被ばく線量に大差があり、
日本国民の被ばく線量が多い原因は
CTにある。

そして、
診断を受ける患者・家族の知識がなさすぎる。

◆危険か安全かは自分で決める

特に問題なのはCT(コンピュータ断層撮影)である。

胸部CTの被ばく線量(6.9ミリシーベルト)がよく引き合いに出される。

日常診療では最低10ミリシーベルトと考えた方がよい。

しかも「造影CT」といって、
1回撮影した後に、
造影剤を静脈に注射しながら再撮影することが
常態化している。

その場合、
2回撮るので、
最低20ミリシーベルト。

腹部・骨盤CTはもっと被ばく量が多く、
最低でも20ミリシーベルト。

造影CTまでやれば(2倍で)40ミリシーベルト。

頸部から骨盤までの「全身CT」で造影CTまで行えば、
60ミリシーベルトを超えかねない。

機会を異にして何度もCTを受けていれば、
100ミリシーベルトなど簡単に超えてしまう。

◆ごく低線量でも発がんする(直接の)
契機になりうるので、
発がんにはしきい値がない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする