日本のことわざを心に刻む

日本のことわざを心に刻む―処世術が身につく言い伝え― by 岩男 忠幸

岩男 忠幸

1956年、福岡県生まれ。
兵庫県立神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業後、一般企業にて主に社内の情報システムの構築・運用に携わる。
20年ほど前から漢字1万7000字の字源(成り立ち)、その訓読み=大和言葉の語源、ことわざ、慣用句等、日本語について研究しまとめてきた…

ものすごい説得力をもつ「諺」。

先人たちは、
生きていくうえでさまざまな場面で
ヒントや指針となる教えや知恵を
諺というかたちで私たちに残してくれた。

人との付き合い方、
言葉の使い方、
お金に対する考え方など、
先人たちとは生きていた時代は違うが、
現代に置き換えても通用するものばかり…

目次

男と女
夫と妻
親と子
嫁と姑
人間模様
言葉
お金
花木
四季
天候・天災
偉人たちの教え
もじり・しゃれ

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MEMO

日本のことわざを心に刻む

◆夏目漱石
知に働けば角が立つ

理知的でいようとすると人間関係に角が立って
他人ともめて穏やかに暮らせない。

理屈だけでは世の中は渡れないということ。

◆子孫のことを考え財産を残さない
児孫のために美田を買わず

子孫のために地味の肥えた田を買って残すことはしない。

財産を残しておくと、
子孫はそれに頼って努力をしなくなるので財産は残さない。

苦労させてこそ立派な人物が育つという教え。

◆何事も控えめがやり過ぎより良い
及ばぬは猶過ぎたるに勝れり

何事も控えめのほうが、
限度を超えてやり過ぎよりも良い。

◆ただただ自分を責めて人を責めるな
己を責めて人を責めるな

自分の反省を第一にして、
人の過ちを責めてはいけない。

人は失敗すると他人のせいにしがちですが、
自分自身にも何かしら落ち度があるはずなので、
まず自らを反省しなさいという戒め。

◆不自由が当たり前だと思えば不満は生じない
不自由を常と思えば不足なし

不自由なことが当たり前と考えれば不満は生じない。

思うようにならないことや不便なことがあっても、
それが当たり前のことだと考えれば、
不満に思うことはなくなる。

◆人生には忍耐と努力が必要である
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し

人の一生は重い荷物を背負って遠い道を
歩き続けるようなものだ。

だから、忍耐と努力で一歩一歩
着実に歩んでいかなければならない。

◆一時の怠け心は一生を無駄にする
一時の懈怠は一生の懈怠

「懈怠(けだい)」は仏教用語で、
善を修めることを努力しない心の状態、
怠けることで、一時の怠け心が、
一生を怠けて暮らすもとになる。

◆どんな社会にも悪事を働く者がいる
家に鼠、国に盗人

家には鼠(ねずみ)がいて食べ物を食い荒らし、
国には泥棒がいて国や人々の生活を害する。

程度の違いはあるが、
どんな社会にも必ず悪事を働く者がいる。

◆本を通じて古人と交流する
見ぬ世の人を友とす

書物を通じて、
会ったことのない古人(昔の人)と交流することで、
古典を親しむことのたとえ。

◆自分のためになると思えば苦にならない
我が物と思えば軽し笠の雪

自分の物と思えば笠に積もる雪も軽く思われる。

つらいこと、
苦しいことも、
それが自分のためになると思うと
苦にならないものだというたとえ。

◆つらく厳しい時期を耐えれば幸せな時が訪れる
冬来たりなば春遠からじ

寒くて暗い冬が来ているということは、
暖かくて明るい春がやって来るのもそう遠くはない。

今はつらく厳しい状態にあっても、
やがてきっと幸せが訪れるに違いないから、
じっと耐え忍び、辛抱しなさい、
という意味のことわざ。

◆時節に巡り合って世に出る
花咲く春に遭う

不遇でいた人が、
時節に巡り合って世に出ること。

今まで認められなかった者がようやく認められ、
腕を振るえるようになること。

◆ものにはふさわしい環境がある
やはり野に置け蓮華草

野原で咲いているからこそ蓮華草(れんげそう)は美しいのであって、
摘んで観賞するものではない。

同じように、
ものにはそのものにふさわしい場所があり、
人にもその人にふさわしい環境があるということ。

◆明日も桜の花は咲き誇っていると思っていたのに
明日ありと思う心の仇桜

「仇桜」は、
はかなく散ってしまう桜の花のことで、
明日があると思っていると、
桜の花がはかなく散ってしまうように、
機会を失うことになる。

世の中や人生、
いつどんなことが起こってどうなるかわからないという、
世の無常を説いたもの。

◆桜が散るように世の移り変わりは激しい
世の中は3日見ぬ間の桜かな

桜の花が3日見ない間に散ってしまうように、
世の中の移り変わりは激しくてはかないものだ。

◆現実にはできない理想
梅が香を桜の花に匂わせて
柳の枝に咲かせたい

それぞれの優れた特徴を一ヶ所に集めてみたい。

それぞれの良いところを持った植物があるといいなあ、
と現実にはできない理想のこと。

◆お金にまつわる面白いことわざ
それにつけても金の欲しさよ

「それにしても金さえあればなあ」
と金の欲しいことをため息まじりに言う言葉。

こんな使い方もできる…

いつまでもあると思うな親の金
それにつけても金の欲しさよ

人に頼らず倹約を心掛けなさいという戒めのことわざ、
「いつまでもあると思うな親と金」

◆何事も辛抱すればいつか実を結ぶ
辛抱する木に金がなる

「辛抱する木」は「辛抱する気」を掛けて、
お金の倹約やつらい仕事など、
何事も辛抱強くこつこつと励んでいれば、
木に実がなるように、
いつか成功して財産もできるということ。

◆無駄遣いをしないように心掛けなさい
財布の紐は首に掛けるよりは心に掛けよ

財布の紐を首に掛けて、
金銭を盗まれないように気をつけるよりも、
無駄遣いをしないように心掛けるほうが大切だということ。

◆金持ちはつまらないことで人とは争わない
金持ち喧嘩せず

金持ちは、
喧嘩をすると損はしても何も得することはない
ということを知っているので、
つまらないことで他人と争うような無駄なことはしない。

また、有利な立場にある者は、
その立場を失わないために人とは争わないにする、
という意味もある。

人はお金に余裕があれば心にも余裕ができ、
小さなことは気にならなくなるもの。

西洋では
「訴訟は金がかかるから和解しろ」
という。

◆金持ちは無駄な金は使わない
金持ち金使わず

金持ちは無駄な金は使わない。

また、少しの出費も惜しむので、
金を持たない者から見るとケチに見える。

そのぐらい金を使わないから
金がたまるのである。

逆に、金のない者ほど無駄なお金を使うということを
「金なき者は金を使う」、
無計画に金を使ったりするために、
結局は無駄遣いをしてしまうことになるということを
「なけなしの無駄遣い」という。

◆お金にはなかなか巡り合えないもの
金が敵

敵(かたき)を探して尋ねて歩いてもなかなか巡り合えないように、
お金と巡り合うのはなかなか難しいということ。

◆やっと手にしたお金がすぐになくなる理由
銭は足なくして走る

金には足はついていないが、
まるで足でもあるかのように人から人へ渡っていく。

お金はあっという間になくなってしまうものだというたとえ。

◆お金はあるところに集まり、ないところには集まらない
金は片行き

「片行き」はある一方向だけに片寄っていることで、
お金というものは持っている人のところへは
どんどん集まってくるが、
ない人のところへは一向に集まらず、
お金のあるところは片寄っているものだということ。

◆金が金を呼び集めてくる
金が金を呼ぶ

お金を持っている人はそのお金をもとに利益を生み、
それがさらに大きな元手となって、
次々にお金を呼び集めるということで、
「金が金を溜める」
「金が金を儲ける」
ともいう。

◆金に物言わせて口止めする
金轡を食ます

「金轡(かなぐつわ)」は馬に手綱をつけるために、
口にくわえさせる金具のことで、
人に金轡をくわえさせて口をふさぐ。

つまり、金銭を与えて口止めする。
賄賂を贈って口外しないように口止めすること。

◆金が人にこんなことも言わせる
金が言わせる旦那

人から「旦那、旦那」と立ててもらえるのは、
その人の人柄によるものではなく、
持っている金が言わせているのだということ。

◆男女の仲も金次第
出雲の神より恵比寿の紙

出雲の神は縁結びの神のことで、
恵比寿の神は裏面に恵比寿の顔が描かれた
明治時代の紙幣のこと。

「神」と「紙」を掛けて、
男女の縁結びには出雲の神様より
金のほうが力があり、
所詮、男女の仲も愛情よりも金(財力)次第だということ。

また、恋よりも金のほうが大切だという意味もある。

◆嘘はあっという間に広まる
一人虚を伝うれば万人実を伝う

一人が嘘を言いふらすと、
それを聞いた多くの人が確かめもせずに、
真実として次から次へと広めてしまうものだということ。

今の時代はSNS等で、
真実であろうが嘘であろうがあっという間に
世間に広まってしまう。

——————————
◆言いたいことはよく考えてから
言いたいことは明日言え

言いたいことがあっても、
その場で言ってしまわずに、
じっくり考えてから言いなさい。

思ったことをその場でストレートにしゃべると、
失言したり、相手を傷つけたりすることがあるので、
一晩じっくり考えて、
それでも言いたい、
やはり言うべきだと思ったら翌日になってから言いなさい、
ということ。

西洋でも、
「今日考えて明日語れ」
「言う前に2度考えよ」といったりする。

◆不用意な言葉は自分にも他人にも害を及ぼす
口は禍の門

うっかり言った言葉が思いがけない災難を
招くことがあるから、
不用意にものを言ってはならない。

「口は禍の元」「禍は口から」ともいう。

◆怒りが爆発する
堪忍袋の緒が切れる

「堪忍袋」は堪忍する心の広さを袋にたとえた語、
「緒」はひものことで、
じっと我慢していたことが抑えきれなくなり、
堪忍袋のが広がって縛っていたひもが切れて
怒りが爆発する、というたとえ。

◆怒りは自身を滅ぼす敵のようなもの
怒りは敵と思え

相手に怒りの感情を持てば、
相手もこちらに怒りや憎しみを抱くようになり、
新しい敵を作ることになる。

自分自身も怒りのために冷静な判断ができなくなり、
誤った判断をして失敗していまう。

怒るということは結局自分を滅ぼす敵のようなものだと思い、
怒りはできる限り慎むべきだという戒め。

◆温和な仏様も3度○○されれば怒る
仏の顔も三度

どんなに温和で慈悲深い人でも、
礼儀知らずな行いをたびたびされれば
ついには怒り出す。

一度や二度は許すことができても、
三度目となるともう我慢できない。

何度も侮辱された時や、
たびたび迷惑をかけてくる者に対して、
「仏の顔も三度で、
もう許さない、いい加減にしろ」
という警告の言葉として使われる。

◆世間には人情に厚い人が必ずいる
渡る世間に鬼はない

世の中は薄情な人ばかりではなく、
慈悲深く人情に厚い人、
困っている時に助けてくれるような
人情に厚い人も必ずいるということ。

◆人を陥れようとすると自分も報いを受ける
人を呪わば穴二つ

「穴」は墓穴のことで、
「人を呪わば穴二つ掘れ」を略したもの。

人を呪い殺して墓穴に入れようとすれば、
自分も相手の恨みの報いを受けて
墓穴に入らなければならなくなる。

だから、
呪った相手と自分のために2つの墓穴が必要になる。

つまり、人を不幸に陥れようとすると、
それが自分の身にも必ず跳ね返ってきて
同じ目に遭うという戒め。

◆人への親切は巡り巡っていずれ自分に戻ってくる
情けは人の為にならず

情けを人に掛けておけば、
巡り巡って結局は自分に良い報いとなって戻ってくる。

だから、
どんな場合にも人には親切にしておくべきだということ。

「人を思うは身を思う」ともいい、
どちらも古くからあることわざである。

※「人の為ならず」は
「その人のためではない(その人のためだけではない)」
という意味ですが、
現代では「人の為にならず=人のためにはならない」と捉え、
人に情けを掛けることは、
かえってその人のためにならない、
という意味で用いる人がある。

————————————–
◆人との出会いには必ず別れがある
会うは別れの始め

人との出会いはその人との付き合いの始まりであるが、
いずれやってくる別れの始まりでもある。

人との出会いには
必ず別れがあるということ。

◆親元を離れてありがたさを知る
他人の飯を食わねば親の恩は知れぬ

「他人の飯を食う」というのは、
親元を離れて他人の家に寝泊まりして
食事の世話を受ける、
他家に奉公などして、
多くの人の間でもまれて
実社会の経験を積むことをいい、
親元を離れて他人のところで生活し、
飯のおかわりにも遠慮するような
苦労をしてみて、
やっと親のありがたみがわかるということ。

◆親は成長していく子の気持ちを理解できていない
子の心 親知らず

親は子の本当の心を知っていないということ。

親は子が大きくなってもいつまでも
幼いと思っているので、
自分の子どものことをよく知っているつもりでも、
子どもがどんどん成長していることを認識せず、
子どもの気持ちや考え方を理解できていないもの。

◆叱るのも必要だが繰り返し教えることが大切
2度教えて1度叱れ

子どもは間違えながら成長するものだから
いきなり叱るのではなく、
繰り返し教えることが大切で、
叱るのはたまにでよいという教え。

◆甘やかすのは子どものためにならない
親の甘茶が毒となる

親が子どもをちやほや甘やかして育てることは、
その子の将来のためにならず、
むしろ害を及ぼすことになる。

子どもを甘やかして育ててはならないという
親への戒めで、
「親の甘いは子に毒薬」
ともいう。

◆我が子にさまざまな経験をさせる
かわいい子には旅をさせよ

親は子どもをつい甘やかしがちになるが、
我が子が本当にかわいかったら、
親の手元から離して世の中のつらさや苦しさを
経験させることが大切だ。

◆(1部の)人はしみじみとこう言う
添わぬうちが花

結婚して一緒に生活してみると、
それまで知らなかった欠点が目について、
ちょっとしたことでいさかいをするようになってしまう。

結婚する前が一番楽しい時期である。

西洋では
「大人になることと
結婚を望んでみんな後悔する」という。

◆一度別れたらもとどおりにはならない
覆水盆に返らず

一度こぼれた水を、
再び盆に戻そうとしてもできないことから、
一度してしまったことは取り返しがつかないこと。

◆愛さえあればといっても…
愛想尽かしは金から起きる

女性が男性に愛想を尽かし、
手を切ろうとしたり離婚したりするのは、
金銭が原因となることが多いということ。

現代では、女性の離婚の動機で
2番目に多いのがこの金銭の問題で、
まさに、
金の切れ目が縁の切れ目
ということ。

西洋では
「貧乏が戸口から入って来ると
愛は窓から逃げ出す」
としゃれた表現をしている。

◆男の浮気心は年を取ってもおさまらない
頭禿げても浮気はやまぬ

男は年を取って頭の毛はなくなっても
色欲はなくならず、
浮気心はおさまならいもの。

◆中にはこういう人もいる
思うに別れ思わぬに添う

好きな人とはいろいろな理由で別れて一緒になれず、
まったく思ってもいなかった相手と結婚すること。

◆嫁をもらうなら
娘を見るよりも母を見よ

相手の女性の人柄をよく知りたければ、
母親の良い点も悪い点も
娘は受け継いでいるので、
その母の人柄を見ればよくわかる。

「この親にしてこの子あり」

良くも悪くも子は
親の性質を受け継いでいる。

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