1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法 by 山口揚平
山口 揚平
事業家・思想家。
早稲田大学政治経済学部卒・東京大学大学院修士(社会情報学修士)。
専門は貨幣論、情報化社会論。
1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、30歳で独立・起業。
劇団経営、海外ビジネス研修プログラム事業をはじめとする複数の事業、会社を運営するかたわら、執筆・講演活動を行っている…
これからの働き方・生き方…
目次
第1章 思考力は AIを凌ぐ武器になる
・思考は情報に勝る
・考えるとは何か?
・なぜ考えるのか?
・考える真の目的とは何か?
第2章 短時間で成果を出す思考の技法
・日々、どのように考えれば良いのか?
・物事を考えるのに役立つ4つのツール
・未来をも見通す思考の哲学
第3章 2020年から先の世界を生き抜く方法を考える
・アフターオリンピック(2020年以降)の世界
・お金はこの先どう変化するか?
・経済にお金は必要か?〜非貨幣経済の出現〜
・社会は溶け去り、マルチコミュニティの時代へ
・2020年以降、「仕事」はこう変わる
・日本の産業はロボティクスに注力せよ
・個人から「関係」にシフトする

MEMO
1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法
◆今は、
努力して成果を挙げる能力より、
最小限の力で効率的に成果を挙げる
「コスパ力」が求められている時代である。
そして、
あと少ししたら努力もコスパも意識せず、
今あるもので満足する
「期待値コントロール力」が主流の時代になる。
そのためには、
SNSをやめることだ。
人間の不幸には2種類ある。
一つは「自分に降りかかる不幸」で、
「もう一つは他人に降りかかる幸福」である。
SNSはこの2番目の不幸を誘う。
◆人間とは常に自分のわずかな個性を際立たせ、
人と分かち合い、
互いに分業することで
繁栄していくことを生存戦略とした
生物種である。
◆幸福の半分は天才性に気づいているかどうかで決まる
天才性とはもっとも微細で、
深いレベルの自分の強みのことである。
◆キャリアの守破離
- 守(10代~20代):修行期(海外を経験する、ビジネスを学ぶ)
- 破(30代~40代):孤軍奮闘(起業経験を積む、リーダーシップ・マネジメントを学ぶ)
- 離(50代~60代):一国一城期(小会社や事業を率いて独立・MBO、自分の城を築き、人を守る)
MBO (Management by Objectives)
◆時間を生み出すのは健康(エネルギー)である
健康に注意を払いにくい人は、
健康(エネルギー)=お金
だと考えるべきである。
◆仕事で求められることは成果である
成果を出すためには
時間・コストに見合わない仕事をしないという
選択肢が出てくるし、
細切れ時間やまとまった時間を
どう有効に使うのかというタイムマネジメント能力が
ますます必要になってくる。
「モノの断捨離」が流行っているが、
今後必要になることは
「時間の断捨離」である。
お金で「買える時間はどんどん買い、
非効率な時間をどんどん捨てる」
という姿勢が大事になる。
◆価値の蓄積が信用となり、
それを外部化してお金に変換する。
では価値を作り出す要素は何かと言えば、
やはり時間である。
時間から価値への転換効率の高さは
一般的に「スキル」と呼ばれている。
◆価値を評価する方程式
価値=(専門性+正確性+親和性)/利己心
分母の利己心を限りなく小さくすれば、
分子の専門性や正確性、親和性が小さくても価値は生み出せる。
- 正確性は、生産管理で言うQCD(Quality Cost Delivery)に置き換えられる。
- 親和性とは、人間的な魅力、愛嬌、謙虚さなどのこと。
- 利己心とは、自分の利益を考えれば考えるほど価値が下がり、逆に相手のことを考えれば考えるほど価値が上がるという意味。
◆信用をお金に変えることは簡単にできても、
お金を信用に変えるのは手間がかかる。
◆「身体が資本だ」とよく言うが、
文字通り、健康(エネルギー)が
お金になる時代がやってくる。
◆お金を生む5つの流れ
お金は「お金、信用、価値」という3層構造からなる広義のマネーと、
それを下支えする原資の「時間、健康(エネルギー)」で成り立っている。
健康(エネルギー)▶時間▶価値(専門性+正確性+親和性/利己心)▶信用(Σ価値)▶お金(外部可された信用)▶消費
◆「縁」は「円」より強し!
◆信用主義社会において大事なことは、
現実のお金を持っていることではなく、
価値と信用を創造する力だ。
◆21世紀に行うべきことは
一時的な評価や一攫千金を得ることではなく、
ネットワークを広げ、
その網の中に信用を編み込んでいくことに尽きる。
◆クラウドファンディングやVALUなど、
信用を現金化するツールがこれだけ浸透して
手軽に使えるようになると、
お金を貯めるのではなく、
信用を貯めるほうが有効である。
◆「お金」より「信用」を貯めよ!
21世紀は個人がお金の代わりになるような
信用を創る時代である。
これは信用主義経済と言える。
◆そもそもお金とは「外部化された信用」のこと。
もともと信用のある母体が発行することで
流通可能となった産物である。
◆物事の全体を正しく分けるためには、
物事を考えるときにいつも「ペア」を想起し、
その相手を考えること。
このペアのことを二項対立と言う。
たとえば、
抽象と具体
長期的と短期的
効率と効果
などのこと。
———————————
◆特定の課題について体系的に学びたいときは、
入門書で全体像をつかみ、
専門書で深く洞察するというふうに
使い分けることが大事。
入門書と専門書では、
求める目的が異なる。
入門書はそのテーマの扉を開けるという目的があり、
専門書は本質へ早く到達させるという目的がある。
◆知識は選択肢を増やし、自由を増やす
知識があれば選択肢を増やし、
選択肢は自由を増やすことができる。
知識は我々に新たな選択肢を与え、
執着や悩みを解きほぐす力になる。
何の知識がいつ役に立つのか、
それはわからない。
でもだからこそ、
知識は選択的に得るものではなく、
あらゆる知識にアンテナを立てるべきである。
◆思考力を鍛える「3つのサイクル」
思考力を鍛えるためには、
「考える」「書く」「話す」の良いサイクルを確立する。
日々の業務の中でも、
集中して考え抜く時間を持つ。
- 考える(見えている結果ではなく原因を考える。「だいたいこんなものだろう」と妥協しない)
- 書く(思考を形にする。図で書く。内容をごまかさない)
- 話す(口癖を変える)
◆見えている問題にはできるだけ
手を触れてはいけないし、
仮にその場しのぎが必要だったとしても、
目の前に見える氷山の下にある
大きな氷の固まりを常に意識しなければならない。
◆本質を見抜くと成果を挙げやすい
- 思考の本質は、レバレッジを働かせることにある
- 問題解決のカギは、たった一つの決定的に大事なことを実行すること
多くの人は何らかの成果を挙げようとして
様々な問題に対処しようとする。
しかし、そうした問題は大抵の場合、
テコで言う「支点に近い部分」に位置する表出的問題である。
表出的問題への対策のことを対処療法という。
メタ思考ではテコの支点からより遠い本質的問題に対して、
したたかにメスを入れる。
つまり、
核心を突くということは
「ここを変えれば最も大きく動くだろう」という
レバレッジ・ポイントを見つけることである。
余談だが、日本の病院で予防医療が発展しないのは、
病院が予防医療に力を入れれば入れるほど
病院が赤字になって自分の首を絞めるからである。
予防医療を発展させるには、
病院が予防医療をやればやるほど
儲ける仕組みを作る必要がある。
◆本質を見抜く
メタ思考の最終的な目的は本質を見抜き、
核心を突く代替案を見つけることである。
では「本質的」とは何かと言うと、
3つの共通する要素があることがわかる。
- 普遍性(応用がきくこと)
- 不変性(時が経っても変わらないこと)
- 単純性(シンプルであること)
◆頭の良い人は、
極めてメタ(抽象的)な本質をいくつか押さえており、
そこから枝葉末節の問題を難なく解決してしまう。
◆物事を理解するとはその輪郭を明らかにすること!
輪郭を明らかにするためには
4つの切り口がある。
- 背景・原因(なぜか?)
背景・原因を考慮する - 結果・意味(だからどうした?)
対象がもたらす結果・意味を考察する - 下位概念(具体的には?詳細は?)
対象の下位概念を分解して、より具体的に内容を詳しく考察する - 上位概念(本質は何か?)
対象の上位概念、またはその上位から見つめた対象と同レベルにある対象物を考察する
—————————–
◆物事の全体像を捉えるべき、
俯瞰するときに特に意識すべきは、
「時間軸」と「空間軸」で、
このとき実際に紙に書き出すことがポイントだ。
◆複数の選択肢がある人は、
一つの案に執着しないから
幸せでいられる。
幸福が人間の目的なら、
真の知性とは、
囚われない心を持つ力である。
◆アイデアがある人は悩まない
その意味することは…
「代替案(Bプラン、Cプラン)を
持っている人は安心して生活することができる」
というものだ。
◆考える目的を端的に言えば、
- 代替案を出すこと
- 具体策を出すこと
- 全体像を明らかにすること
- 本質を見抜くこと
の4つである。
◆我々の直面する重要な問題は、
それを作ったときと
同じ考えのレベルで解決することはできない。
アインシュタイン
◆すべてのものは一見、
分かれているように見えるが、
実は有機的につながっている。
そしてそのつながりの中に潜む
本質を問い続けることこそ、
最も有効な解を見つける手段である。
効率的に何かを成し遂げたいのであれば、
常に考えて最も本質的なことだけに
手をつけるべきである。
◆すべての問題の裏側には一見、
目に見えないものの本質が常に存在している。
だからこそ、
その一点の追求に時間をかける。
100個のタスクをこなすのではなく、
たった一つの最も重要な因子(レバレッジ・ポイント)を
見つけてそこに注力する。
◆メタ思考とは?
メタ思考とは、
対象を一度抽象化して本質に迫り、
再度各論に落とす思考のこと。
思考の幅をできるだけ広く取り、
因果・上下関係を整理することで対象を立体化し、
最終的にどれだけ本質まで結晶化できたかが勝負となる。
◆考えるとは?
考えるとは、
概念の海に意識を漂わせ、
情報と知識を分離・結合させ、
整理する行為である。
考えるとは、
意識を使って情報を整理すること。
つまり、
考えるとは「意識的な行為」なのだ。
◆考える力を鍛えることは、
一生食べていける力をつけることと
同じくらい重要である。
◆情報デトックス
情報の洪水から逃れたいのなら、
一定期間、情報を遮断すること。
情報流入量を常に意識して、
「思考量>情報量」という
状態を維持することが大切である。
◆情報はスポンジのように
意識を吸い尽くす「毒」である。
毒となる情報に意識が囚われると、
頭がカチカチに固まってしまう。
賢い人というのは頭が柔らかい人であり、
それは意識が自由な状態の人を指す。
◆思考>情報
思考は情報に勝る!
世の中は超情報化社会と言われるが、
情報量が増えれば増えるほど
人は思考しなくなる。
これを「思考と情報のバラドクス」と呼ぶ。
◆21世紀において、
知識はお金にはならないが、
コストを下げることができる。
◆20世紀にはお金を生むのは知識だった。
だが、21世紀では知識はお金を生まない。
知識は誰でも手に入る。
お金を生むのは社会的関係(信用)である。
21世紀、
知識はあらゆるコストを下げるために使われる。
たとえば、
健康に関する知識があれば
治療費や保険料が下がる。
◆ハードディスクからCPUへ
20世紀までがハードディスク(情報・知識)主体の時代だったとすれば、
21世紀はCPU(思考力・想像力)が主体になる時代である。
◆「頭の良さ」は、
20世紀から21世紀で変化している。
思考力や想像力が重要になり、
情報や知識などのハードディスクは
重要ではなくなっている。
◆「解を問う」のが20世紀の教育だったならば、
「問いを問う」のが21世紀の教育である。