父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 by ヤニス・バルファキス

ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)

1961年アテネ生まれ。
2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EU から財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。
長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。
2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている…

シンプルで、心に響く言葉で本質をつき、
世界中で大絶賛されている、
究極の経済×文明論!

目次

プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
・目の前の混乱から離れて世界を見つめ直す
・資本主義を解き明かす

第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?――答えは1万年以上前にさかのぼる
・なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?
・地域内格差――金持ちは100万ドルを簡単につくれる

第2章 市場社会の誕生――いくらで売れるか、それがすべて
・ふたつの価値――経済学者はすべてを「値段」で測る
・世界はカネで回っている?

第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ――すべての富が借金から生まれる世界
・悪魔が考えた「地獄」より残酷なこと
・富と競争――競争に勝つには借金するしかない

第4章 「金融」の黒魔術――こうしてお金は生まれては消える
・起業家はタイムトラベラー――未来から無限の交換価値をつかみとる
・歯車が「逆回転」しはじめる

第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界――悪魔が潜むふたつの市場
・狩人のジレンマ――全員で鹿を狙うか、ひとりでうさぎを狙うか?
・悪魔が潜む場所――「マネー・マーケット」とは何か?
・予言は自己成就する――もしソポクレスが経済の教科書を書いたら?

第6章 恐るべき「機械」の呪い――自動化するほど苦しくなる矛盾
・巨大企業にとっての「すばらしい新世界」
・絶望を見せてくれるのは誰か?

第7章 誰にも管理されない「新しいお金」――収容所のタバコとビットコインのファンタジー
・誰も税金を払いたくなければ、どうすればいい?
・ビットコイン――「1通のメール」がもたらした衝撃

第8章 人は地球の「ウイルス」か?――宿主を破壊する市場のシステム
・節度のない者は「愚か者」になる――駄目と知りながら競争を止められない
・未来のすべてを決める対決――「すべてを民主化しろ」vs「すべてを商品化しろ」

エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」
・思考実験――君は理想の世界に行きたいか?
・占い師のロジック――私が経済学者になった理由

が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話

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MEMO

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話

◆利益と富を生み出すまさにその仕組みが、
金融危機と破綻をも生み出す。

◆何もかも安定しているように見えているので、
銀行はその魔法の力をより頻繁に使いたくなってしまう。

そして銀行自身も気づかないうちに、
その魔力は黒魔術の領域に入ってしまう。

ある時点で、
社会全体が借金漬けになり、
経済の成長がそれに追いつかず、
利益を出しても返済しきれない状況が訪れる。

ここで、
みんなが思い描いていた未来は
やってこないことに社会が気づく。

未来から引っ張って借りてきた莫大な価値が
実現できないとわかったとき、
経済は破綻する。

◆事業がうまくいかない場合にも、
銀行が被害を被らない方法が生まれた。

たとえば、銀行は起業家Aさんに貸付を行ったあと、
その債権を小口に分割してたくさんの投資家に販売するようになった。

50万ポンドのローンを5000人の投資家に分けるとすると、
銀行はそれぞれの投資家から100ポンドずつ受け取れる。

しかし、投資家Aのローンを買いたい投資家などいるのだろうか?

もちろんだ。

なぜなら銀行は投資家に対して、
銀行に100ポンド預金したときよりも
高い金利を受け取れるように設定するからだ。

こうすれば銀行はすぐに50万ポンドを回収できるし、
利益も受け取れる。

もし投資家Aが破産して借金が返済できなくなっても、
5000人の投資家が損をするだけだ。

◆借金が罪だと思われなくなったことで、
金融機関は自由に金利を設定できるようになった。

このとき、
金融機関は巨大な力を持ちはじめた。

大規模な循環を起こす力を持つと同時に、
いきなり循環を止めて破滅を引き起こす力も持ったのだ。

◆現代の経済は、
生き物の生態系と同じで、
循環しなければ崩壊してしまう。

動物と植物が酸素と二酸化炭素を循環させているように、
労働者は稼いだ賃金を店で使い、
企業は売上から従業員の給料を支払って
お互いに生き延びている。

この循環が止まると、
生き物の生態系で言う「砂漠化」を
招くことになる。

すなわち、
経済は危機に陥り、
とてつもない貧困や窮状がもたらされる。

◆市場社会では、
すべての富が借金によって生まれる。

過去3世紀のあいだにありえないほど
金持ちになった人たちはみな、
借金のおかげでそうなった。

市場社会にとっての借金は、
キリスト教によっての地獄と同じだ。

近寄りたくはないけれど、
欠かせないものなのだ。

◆生産とカネの流れが逆転した

封建時代には、
次のような流れで機能していた。

生産▶分配▶債権・債務

はじめに、
農奴が土地を耕し、
作物を作った(生産)。

そこから領主が無理やり年貢を収めさせた(分配)。

領主は自分が必要とする以外の余った作物を売ってカネを稼ぎ、
そのカネでものを買ったり、
支払いをしたり、
カネを貸したりした(債権・債務)。

しかし、
土地と労働が商品になると、
「大転換」が起きた。

生産後に余剰を分配するのではなく、
生産前に分配がはじまったのだ。

イギリスで農奴が土地を追われ、
羊に置き換えられたことを思い出してほしい。

農奴はその後、
領主から土地を借り、
羊毛や作物の生産を管理し、
それらを売っておカネにし、
領主に土地の賃料を払い、
働き手たちに賃金を払うようになった。

つまり、
こうした元農奴たちは小規模な
事業を経営する起業家のようになった。

しかし、
事業を起こすには先立つ資金が必要だ。

賃金を支払、
作物のタネを買い、
領主に地代を支払わなければならない。

作物ができる前にそのおカネが必要になる。

起業家になった農奴たちにはそんなおカネはなかったので、
借りるしかなかった。

誰がカネを貸したか?

領主の場合もあれば、
地元の高利貸しの場合もあった。

彼らは利子を求めたが、
いずれにしろ、
まずは借金が必要だった。

これで、
分配が生産に先立つようになった。

かくして、大転換が起きた。

借金が生産プロセスに欠かせない
潤滑油になったのだ。

利益自体が目的になったのも、
このときだった。

利益が出なければ、
新しい起業家たちは生き延びることができないからだ。

◆利益の追求が人間を動かす大きな動機になったのは、
借金に新たな役割ができたことと深いつながりがある。

◆交換価値が経験価値を打ち負かし、
「市場のある社会」が「市場社会」に変わったことで、
何かが起きた。

おカネが手段から目的になったのだ。

なぜか?

人間が、
利益を追求するようになったからだ。

◆産業革命によるグローバル化は、
「偉大なる矛盾」を生み出した。

「思いもよらないほどの富」と
「言葉にできにあほどの苦痛」が
共存する世界ができあがった。

農業革命が生んだ格差は、
産業革命によってものすごい
規模に拡大した。

◆赤ちゃんはみんな裸で生まれてくる。

高価なベビー服を着せられる赤ちゃんがいる一方で、
お腹を空かせ、すべてを奪われ、
惨めに生きるしかない赤ちゃんもいる。

それは赤ちゃんのせいではなく、
社会のせいだ。

◆人間は、
自分が何かを持っていると、
それを当然の権利だと思ってしまう。

何も持たない人を見ると、
同情してそんな状況に怒りを感じるけれど、
自分たちの豊かさが、
彼らから何かを奪った結果かもしれないとは思わない。

貧しい人がいる一方で、
金持ちや権力者が、
自分たちがもっと豊かになるのは当然だし
必要なことだと信じ込むのは、
そんな心理が働くからだ。

◆地域格差

アフリカとオーストラリアと南北アメリカが
ヨーロッパの植民地になったのは、
もとをたどると地理的な環境が理由だった。

DNAや、性格や、知性とは何の関係もない。

大陸の形と場所がすべてを決めたとも言える。

しかし、地理では説明できない格差もある。

地域内や国内の格差だ。

このタイプの格差を理解するには、
経済について話さないといけない。

農作物の余剰が国家と宗教を生み出した。

余剰を蓄積するには、
権力の集中が必要で、
権力が集中するとさらに余剰が蓄積され、
富が支配者に偏った。

それが「寡頭制」だ、

寡頭制(かとうせい)という言葉は、
もともとギリシャ語の「少数の」と「支配する」
という言葉を組み合わせたものだ。

この体制がなぜ延々と続いていくかは想像できるはずだ。

蓄積した余剰を独り占めできる支配階級が、
さらに経済や政治の権力を持ち、
文化的にも力を持つようになる。

その力を使ってさらに
大きな余剰を独り占めするようになる。

数百万ドルがすでに手元にあれば、
さらに100万ドルを稼ぐのは比較的簡単だ。

しかし何も持たない人にとって、
100万ドルなんて手の届かない夢だ。

そんなわけで、
格差はふたつの形で拡大していった。

ひとつは、
グローバルな格差だ。

これによって、
一部の国は20世紀になっても極度の貧困に苦しみ続け、
一部の国はありあまるほどの力と富を享受している。

そして豊かな国は、
しばしば、
より貧しい国から奪い続けることによって
その地位を安泰にしている。

もうひとつは、
それぞれの社会の中での格差だ。

貧しい国でもひと握りの金持ちは、
豊かな国の金持ちよりも金持ちということすらある。

どちらの格差も、
もとをただせば経済的な余剰に行きつく。

その余剰は、
農耕という人類最初のテクノロジー革命から
生まれたものだった。

———————————————-
◆なぜ、アフリカから強国が出てこなかったのか?

ユーラシア大陸を太平洋岸から大西洋岸まで
旅しても気候はあまり変わらない。

しかし、
アフリカ大陸で南のヨハネスブルグから
北のアレキサンドリアまで旅すると、
いろいろな気候帯を通過する。

熱帯のジャングルやサハラ砂漠といった極端な気候もある。

アフリカの一部で農耕経済を発展させた社会があっても、
その仕組みは広がらなかった。

赤道を隔てて南北に長いアフリカ大陸では、
北部では栽培できる作物も南部でも育たない。

もちろん、サハラ砂漠ではどんな作物も育たなかった。

一方、ユーラシア大陸では誰かが農耕技術を発明したとたん、
それが西と東にあっという間に広がった。

穀物(とくに小麦)はどこでも育ったので、
リスボンから上海まで同じような小麦畑が広がっていった。

侵略も盛んだった。

ひとつの農耕民族がほかの民族の余剰を略奪し、
自分たちの技術を別の場所でも生かすことができた。

そうやってユーラシア大陸では巨大な帝国が築かれた。

◆すべてが「余剰」から始まった。

農作物の余剰によって、
文字が生まれ、
債務と通貨と国家が生まれた。

それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれた。

つまり、
ユーラシア大陸の土地と気候が農耕と余剰を生み出し、
余剰がその他のさまざまなものを生み出し、
国家の支配者が軍隊を持ち、
武器を装備できるようになった。

そのうえ、
侵略者は自分たちの呼吸や身体をとおして
ウィルスや細菌も武器として使うことができた。

◆実は、
オーストラリアでもアメリカでも、
先住民は侵略者から殺されるよりも、
ウィルスに感染して死ぬほうが多かった。

侵略者がわざとウィルスを武器がわりに使うケースさえあった。

毛布に天然痘のウィルスをすり込んで
アメリカ先住民にプレゼントし、
その地域を根絶したこともあった。

◆支配者を正当化する思想がなければ、
国家の権力は維持できなかった。

支配者が死んでも国家が存続し続けられるような、
国家権力を支えるなんらかの制度化された
思想が必要だった。

そして、
思想を制度にするような儀式を執り行ったのが、
聖職者だ。

大量の余剰がなければ、
複雑な階層からなる宗教組織は生まれなかった。

というのも、
「神様に仕える」人達は、
何も生み出さないからだ。

宗教の裏付けがなければ、
支配者の権威は安定しなかった。

だから、
何千年にもわたって、
国家と宗教は一体となったきた。

◆支配者たちはどうやって、
自分たちのいいように余剰を手に入れながら、
庶民に反乱をおこさせずに、
権力を維持してきたのか…。

「支配者だけが国を支配する権利を持っている」と、
庶民に固く信じさせればいい。

自分たちが生きている世界こそが
最高なのだという考えを植え付ければいい。

すべてが運命によって決まっているのだと
思わせればいい。

庶民の暮らしは、
天からの授かりものだと信じさせればいい。

天からの授かりものに異を唱えたら、
この世がとんでもない混乱に陥ってしまうと
思わせればいい。

◆借用書にも、
仮想通貨にも共通することがある。

どちらも、
使ってもらうには、
あるものがたくさん必要になる。

そのあるものとは…

「信用」だ!

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