統計学が最強の学問である[ビジネス編]

統計学が最強の学問である[ビジネス編]――データを利益に変える知恵とデザイン 西内 啓

西内 啓(にしうち・ひろむ)

東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、2014年11月より株式会社データビークルを創業。

自身のノウハウを活かしたデータ分析支援ツール「Data Diver」などの開発・販売と、官民のデータ活用プロジェクト支援に従事…

経営戦略・人事・マーケティング・オペレーションで
統計学を使う知恵と方法を詳細に解説…

目次

序章:「センス」と「事例」で分析をするな
01:日本人が知らない「リサーチデザイン」というスキル
02:本書の構成と枠組み

第1章:経営戦略のための統計学
03:データで戦略を導け
04:経営戦略の理論的背景1 ポーターのSCP理論
05:経営戦略の理論的背景2 経営戦略論の相性問題
06:経営戦略のための分析手順1 分析対象の設定
07:経営戦略のための分析手順2 分析すべき変数のアイディア出し
08:経営戦略のための分析手順3 必要なデータの収集
09:経営戦略のための分析手順4 分析とその解釈
10:本章のまとめ
統計学的な補足コラム1:分散成分分析または混合効果モデルについて

第2章:人事のための統計学
11:優秀な人は採れてますか?
12:一般知能と状況適合理論
13:人事のための分析手順1 分析対象の設定
14:人事のための分析手順2 変数のアイディア出し
15:人事のための分析手順3 必要なデータの収集
16:人事のための分析手順4 得られたデータの分析
17:人事のための分析手順5 分析結果の解釈
18:本章のまとめ
統計学的な補足コラム2:「打ち切り」と「切断」

第3章:マーケティングのための統計学
19:マーケティング戦略と顧客中心主義
20:現代マーケティングの基礎知識
21:マーケティングのための分析手順1 「誰に売るか」考えるためのデータの準備
22:マーケティングのための分析手順2 「誰に売るか」考えるための分析
23:マーケティングのための分析手順3 「何を売るか」考えるためのデータの準備
24:マーケティングのための分析手順4 統合行動理論を用いた質的調査
25:マーケティングのための分析手順5 「何を売るか」考えるためのデータ分析と解釈
26:マーケティングのための分析手順6 「4つのP」を考えるための分析
27:本章のまとめ
統計学的な補足コラム3:決定樹分析とランダムフォレスト

第4章:オペレーションのための統計学
28:デミングがもたらした新しい「マネジメント」
29:部分最適から全体最適へ
30:バリューチェーンと部署ごとの定石
31:業務のためのデータから分析のためのデータへ
32:データの品質向上と加工のポイント
33:「洞察のための分析」と「予測のための分析」
34:自己回帰モデルとクロスバリデーション
35:本章のまとめ
統計学的な補足コラム4:集合知を使った予測手法

統計学が最強の学問である[ビジネス編]

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MEMO

統計学が最強の学問である[ビジネス編]

◆いくらマーケティングを頑張っても、
製品自体が魅力的でなければ売れるはずはない。

良いマーケティングとは、
どうでもよい製品を広告や営業の力で無理矢理売りつける
ことではない。

むしろ顧客をよく理解することによって、
相手が自ら欲しがる製品を、
合理的だと感じられる価格で、
買いやすい場所やチャネルで販売していることを、
顧客が理解できるよう適切にプロモーションしていけば
自然に売れる、
という仕組みを作ることなのである。

つまり、
「売り込みを不要にすること」
というのがマーケティングの究極目標なのだ。

◆「一言で言えば、
自分たちは何を売るのか」
というポジショニングが明らかになったら、
最後にそれを具体化するための4つのPについて考える。

4つのPとは、
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(場所)
・Promotion(プロモーション)
である。

◆抽象的なレベルでポジショニングを考えるメリットは、
それが最終的な広告戦略やキャッチコピーに繋がるというだけに止まらない。

ポジショニングを考える真の意義は、
一度抽象的なレベルで提供する価値の意味づけを考えることで、
まだこの世にない製品や戦略の価値について
顧客へ調査することが可能になる。

すなわち、
iPhoneがこの世に存在していなければ
顧客はiPhoneを欲しいかどうかを答えることはできないかもしれないが、
「いつでもどこでもノンストレスで使えるインターネット」が欲しいかどうか、
という質問には答えることができるのだ。

◆ポジショニング

同じ市場の中で競合する企業や製品が増えてくると、
顧客はそれぞれの間で何がどう違うのかを把握することが困難になる。

そこで大事なのは
「一言で言えばこれはいったい何なのか」
とわかりやすく把握できるような差別化
こそが競争力の源泉となり、
またその差別化が顧客にとって魅力的である場合に
そのビジネスは成功するいうのである。

たとえば、
QBハウスであれば、
「安くアクセスがよく短時間で終わる散髪」である。

◆狙うべき顧客セグメントが決まり、
彼らをよく理解できれば、
やっと「何をどう売るのか」
を考えることができる。

「何を」というのは具体的には
取り扱う製品やサービスだが、
それより先に抽象的なレベルで
自分たちが売ろうとしているものは
「一言で言えば何なのか」、
すなわちポジショニングを考えるべきだというのも
現代マーケティングの定石である。

◆「顧客のニーズを考えずとにかく同じものを大量に販売したほうがコストは低い」、
その一方で
「顧客一人一人にニーズに合わせた製品を販売したほうが売れやすい」
という両者のバランスを現代マーケティングでは
セグメンテーションという考え方で解決する。

これは日本語で「市場細分化」と訳されることもあるが、
要するに市場全体を、
ニーズやライフスタイルが似通った小集団(セグメント)に
分割してマーケティング戦略を考えよう、
というのである。

◆現代マーケティングにおける戦略とは
大きく2つに分けられる。

一つは「誰を相手にビジネスを営むのか」、
そしてもう一つは
「その人たちに何をどう売るのか」
という点である。

◆マーケティングとは一般的に言われるように
商品をうまく売り込むことではない。

むしろマーケティングの究極のゴールは
顧客が何を欲するかをよく理解することによって、
「商品の売り込み」を不要にすることなのだ。

そうした観点から言えば、
「製品自体が(対象とする顧客にとって)魅力的でない」という時点で、
その企業はいくら広告宣伝費を投じようとも、
マーケティングに失敗しているのである。

◆現代マーケティングにおいてはその中心を顧客に置く。

これが顧客中心主義という考え方である。

製品についても販路についても広告についても、
何を重要視し何が魅力的かを判断するのは
あくまで顧客その人である。

だから必ず最初に顧客を深く理解しなければならない。

そしてこの顧客中心主義を実践するにあたり、
考えるべき顧客がたった一人なら、
その人と理解するために行うべきことは
「よく相手を観察し、話し合うこと」である。

しかし何千人、何万人といった顧客全員と対話することはできない。

だが、然るべき調査によってデータを集め、
分析することができれば、
あたかも何万人もの顧客と対話したかのように、
その集団を理解することができる。

これこそが現代のマーケティング戦略において、
統計学がときに天才のアイディアにすら打ち勝つことができる
最大の理由である。

◆有形の製品においても、
無形のサービスにおいても、
何かのメリットを足すことはそれ以外のデメリットに
繋がることがしばしば起こる。

大画面の液晶と物理キーボードを両立させようとすれば、
それだけ大きく重く、
製造コストの高い製品を作らなけれればならない。

だがそこで、
「比較的重要でないもの」を見極め、
大胆に削ることができれば、
より重要なものを大胆に増やすことも可能になる。

その結果が大きな魅力や競争力となる。

◆ブルー・オーシャンとなる収益性の高い戦略の特徴として、
自分たちのビジネスはどのような市場と競合しているかをよく考えたうえで、
その市場の中で重要な要素を大胆に増やしたり追加したり、
逆に不要な要素を大胆に削ることが挙げられている。

たとえば、
QBハウスは一般的な理髪店が提供するサービスのうち、
髭剃りやシャンプー、マッサージといったものを
「重要度が低い」と考えて外した。

そうすることで、
水回りの設備が弱い立地にでも出店可能となり、
顧客一人あたりの理髪にかける時間と価格を
下げられたことが大きな差別化要因となった。

◆「これまでにない素晴らしい製品を生み出す」
という考え方をこう言い換えてみてはどうか?

「過去にあった製品のうち不要なものを大胆に削り、
重要なものを大胆に増やすことができた」
のであると…

◆現在すでに、
マーケティングに力を入れる多くの企業のでは、
少なくとも販路別の売上推移や、
性別や年代などの属性別の顧客数といった程度の
集計作業は行っているだろう。

だが、このようなただの集計作業だけで、
「アウトカムの大小を左右するものは何か」
という点について示唆が得られるわけではない。

こうした単純集計の先にある、
統計学的な手法を用いた
マーケティングの考え方が必要になる。

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