フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠 by マイケル モス
マイケル モス
ニューヨーク・タイムズの敏腕記者。
2010年に食肉汚染の調査報道でピューリッツァー賞を受賞。2006年にもイラク戦争の報道で、ピューリッツァー賞の最終候補になった。
ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ニュースデイ、アトランタ・ジャーナルコンスティチューションなどを経て2000年より現職…
巨大食品企業の欺瞞と苦悩を丸裸にする…
一度食べたら、やめられない!
加工食品に巧妙に仕掛けられた
「至福ポイント」の罠に落ちる消費者…
目次
第I部 糖分
|第1章|子どもの体のしくみを利用する
|第2章|どうすれば人々の強い欲求を引き出せるか?
|第3章|コンビニエンスフード
|第4章|それはシリアルか、それとも菓子か
|第5章|遺体袋をたくさん見せてくれ
|第6章|立ち上るフルーティーな香り
第II部 脂肪分
|第7章|あのねっとりした口当たり
|第8章|とろとろの黄金
|第9章|ランチタイムは君のもの
|第10章|政府が伝えるメッセージ
|第11章|糖分ゼロ、脂肪分ゼロなら売り上げもゼロ
第III部 塩分
|第12章|人は食塩が大好き
|第13章| 消費者が求めてやまない素晴らしい塩味
|第14章|人々にほんとうに申し訳ない
|エピローグ|我々は安い食品という鎖につながれている

MEMO
フードトラップ
◆加工食品メーカーは、
消費者が手間を省き、ガスレンジから解放されたいという
望みをかなえてきた。
だが、この社会的変化を推し進めるために
彼らが利用してきた塩・砂糖・脂肪は、
彼らの手中においては栄養素より兵器に近い。
競争相手を負かすためだけではなく、
消費者にもっと買わせるためにも
利用される兵器である。
◆加工食品から塩分か糖分か脂肪分を少々取り除くと、
食べ物でなくなってしまう。
それどころか、
加工処理がもたらす動かしがたい結末がそこにあった。
苦味、金属味、渋味といった不快な味が
際立ってくる。
◆大企業は、
特定の食物、特に糖に対して神経系が
どのように反応するかを調べるため、
脳のスキャンを行っている。
そこで発見されたのは、
糖に対する脳の反応が
コカインへの反応と同じということだった。
◆食肉産業の経済において、
病原体(大腸菌など)に関することは「知らぬが仏」になってしまっている。
だが、塩分・糖分・脂肪分は事情がまったく異なる。
これらは、
大腸菌のように事故によって混入するわけではなく、
食品業界が論理的な研究を積み重ねて
使い方をコントロールしている成分である。
◆肥満の子どもの割合は、
問題が表面化しはじめた1980年から倍増し、
やがて3倍に達した。
糖尿病も増加した。
健康を著しく損なうこの病気の兆候は、
成人だけでなく小児にも見られるようになってきた。
「贅沢病」と呼ばれた痛風ですら、
今や患者数が全米で800万人に達していた。
◆米国社会は、
子ども向けに宣伝活動を行う
タバコ会社に立腹するようになったが、
まったく同じことをしている
食品会社のことはのんきに傍観している。
不健康な食生活が人々の健康にもたらしている損害は
タバコによる損害に四敵するとも言えるのに。
◆「食べたい」という欲求の根源となる3つの成分とは?
- 塩:最初のひと口で味蕾に生じる刺激感を増大させる
- 脂肪:カロリーが極めて高いうえ、食べる量がつい多くなるという微妙な作用を持つ
- 砂糖:脳の興奮作用を持つ(この成分こそ最も恐るべき存在)
商品をヒットさせるため
大量に使われるこの3つの成分は、
肥満の急増をもたらした主役である。