ぜんぶ、すてれば by 中野 善壽
中野 善壽(なかの・よしひさ)
東方文化支援財団代表理事 元寺田倉庫代表取締役社長兼CEO 1944年生まれ。
幼少期、祖父母の元で「全ては自己責任」という考え方を厳しく叩き込まれ、 その意識は人一倍強く持っていると自負する。
好きな言葉は「因果応報」。
その後、弘前高校、千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。
子会社のマミーナにて 社会人としてのスタートを切る。
1973年、鈴屋に転職、海外事業にも深く携わる。
1991年、退社後すぐに台湾に渡る。
台湾では、力覇集団百貨店部門代表、遠東集団董事長特別顧問及び 亜東百貨COOを歴任。
2010年、寺田倉庫に入社、2011年、代表取締役社長兼CEOとなり、 2013年から寺田倉庫が拠点とする天王洲アイルエリアを アートの力で独特の雰囲気、文化を感じる街に変身させた。
今日がすべて。
颯爽と軽やかに、
ぜんぶ捨てれば。
伊勢丹・鈴屋・台湾企業で異例の実績を残し、
寺田倉庫の経営改革を担った七五歳の伝説の経営者が語る、
“個の時代”で自立する生き方…
目次
今日がすべて。颯爽と軽やかに、ぜんぶ捨てれば
人の評価は気にしない。 自分自身が納得できるか
準備万端の日は一生来ない。 何も考えず、思い切ればいい
やりたいことが、なくてもいい。 正直であれば、道は開ける
会社はただの箱でしかない。 愛社精神なんて持たなくていい
とにかく進め、だけでは危険。 いつでもやめられる勇気を持って
目標はいらない。 がんばり過ぎたら、やめていい
五年後なんて考えなくていい。 今日を楽しく、 夢中になれることに集中する
所有は安定を生まない。 ものを捨てれば、自由になれる
自分だったらこうやる。 批判精神が仕事を磨く
など…

MEMO
ぜんぶ、すてれば
◆生涯現役
死ぬまで働き続けたい。
自分を保つために。
毎日を楽しむために
仕事は死ぬまで続ける。
仕事をしないということは、
生活を誰かに頼ることになる。
家族か国にお世話になることに…
そんな迷惑はかけたくない。
80歳になろうが、
90歳になろうが、
働ける体と心がある限りは、
誰もが働いて、
少しでもいいから税金を納めるべきと思う…
働き続けるつもりがあれば、
「年金がいくら足りない」
といった不安もなくなる。
年金はご褒美程度の
オマケくらいに思う。
人生100年の時代には
お金も「ストック」から「フロー」に切り替える。
貯めるのではなく、
常に収入が入ってくる状態をつくる。
◆今いる場所を捨てる。
いつでもゼロから始める。
新しいことをやるなら、
今いる場所でやるよりも、
新しい場所で始める。
なぜか?
今いる場所で始めると、
そこでやってきたことに影響されるから。
いつでもゼロから出発できる。
そのほうがずっといい結果を生める。
◆ふるさとに縛られるのも、
幻想でしかない。
◆旅は計画ゼロで。
偶然の出会いが最高のガイド。
自分が知らない土地、
知らない文化に触れることは、
心を自由にしてくれる。
若い人には
旅がおすすめ…
◆形あるものは残さない。
形ないものをどれだけ残せるか。
今日倒れても、
周りに迷惑をかけないための現金だけを残して、
あとは全部世の中のために使う。
自分の子どもに残す資産も必要ない。
形あるものは残さないほうが、
子どもたちも仲良く過ごしてもらえる。
◆お金の使いみちは
自分の心が決める。
自分が一人で生活するのに
必要最低限の現金を残して、
あとは世の中のために使う。
「お金を自分のために使う」という考えを捨てれば、
他の人のために使う選択肢が広がる。
◆フラリと立ち寄った先に、
人生を変える出会いあり。
◆未来をよくするための時間に
エネルギーを費やす。
◆すべての行いは因果応報。
責任と覚悟と希望を持つ。
自分がやったことが、
そのまま返って来る。
うまくいっても、
うまくいかなくても、
全部、自分の行いが呼んだこと。
◆ホウレンソウも企画書も要らない。
求めるのは結果のみ。
稟議を通すことに
労力をかけるのはもったいない。
仕事を始めるための仕事が
膨大に立ちはだかるなんて、
無駄でしかない。
◆一秒でも早くジャッジする。
決断が社長の仕事。
決断を遅らせている間にも、
刻一刻と環境は変わるので、
ますます精度は落ちる。
すぐ決める。
これが、
社長に求められる
一番の仕事だ。
◆人に頼むなら
信じて任せる。
◆気になった人には、
すぐに会いに行く。
仕事は人と人の信頼関係でやっていくもの。
実際に会ってどういう人間なのか、
お互いに自分を見せ合ってから
始めるのが基本。
あと、
情報は「一次情報」を
自分で取りに行くこと。
◆過去や実績で判断しない。
未来を語れそうな相手と組む。
◆やりたい仕事ができないなら、
そこにいる意味がない。
◆納得できないことは、
鵜呑みにしない。
「変なやつ」と言われても、
納得できないことは
鵜呑みにしないこと。
◆やめることを躊躇しない。
◆迷いなく、やると決める。
ただし、朝令朝改。
状況が変われば、
行動も変えないといけない。
2時間前の自分の発言に
とらわれて間違った行動をするのは、
あってはいけないこと。
自分の判断は、
決めた瞬間から疑うこと。
———————————-
◆スマホを捨てる。
自分を失くしたくないから。
スマホを持っていると、
情報が多すぎて余計な時間を取られてしまう。
結果、
自分が処理できる以上の情報を
ついつい扱うことになってしまう。
すると、
いつの間にか自分を失くしてしまう。
◆新聞を捨てる。
見出しで想像すればいい。
情報は最小限しか入れない。
日々変わるビジネスや政治の情勢を
だいたい把握するためだったら
「見出し」だけで十分。
見出しというのは
要約中の要約だから、
その十数文字から想像するだけで
記事の中身はだいたいわかる。
大事なことは、
すでに起こったことではなく、
未来について考える時間を多く取ること。
◆本は捨てる。
また、新鮮な気持ちで読みたいから。
本は読んだら捨てる。
どんなに感動した本でも、
とっておかない。
しかし、
良い本はしばらく経つとまた読みたくなる。
そんなときは、
また新品を買う。
なぜか?
1回目に読んだときの自分と
2回目に読みたくなった自分は
まったくの別人。
ゼロに立ち返って新鮮な気持ちで、
フレッシュな学びに出会う。
◆執着を捨てる。
精神の自由を選ぶ。
夫婦の間においても、
「高め合える関係でなくなったら、
離れたほうがお互いのため」。
そのほうが、
長い人生をより豊かに、
有意義に生きられる。
◆慣れを捨てる。
見知らぬ人との会話が刺激になる。
人間は慣れるとバカになる。
頭を使わなくなって、
衰えていく。
だから、
できるだけ不慣れな機会に身を置くことが大切。
◆人付き合いを捨てる。
未来を語れる仲間だけでいい。
◆予定を捨てる。
ひらめきのための余白をつくる。
アイデアのひらめきは、
バラバラに入ってきた情報が
思わぬ組み合わせで
結びつくことで生まれる場合が多い。
だから、
「ぼんやりと考える時間」を
意識的に持つことがとても大事だ。
仕事で忙しくても、
定期的に「何もしない時間」をつくって、
ぼんやりお茶でも飲む習慣を持つ。
◆所有は安定を生まない。
ものを捨てれば、
自由になれる。
地震などの災害が発生したときに、
「家が心配で残りたい」という人がいる。
でも、
家のために命を捨てるのは本末転倒。
かえって、
生きることを不自由にしている。
ものを所有することは安定を生まない。
むしろ不安が増えるだけ。
「いつでも移れる。
どこでもすぐに新しい生活を始められる」
人生の選択肢を広げてくれる、
そんな軽やかさを持ちたい。
———————————-
◆諸行無常
世の中に安定はない。
常に流れるのが自然の摂理。
常に変化している世の中で必要になるのは、
安定を求める心ではなく、
変化に対応する力。
変化に強い自分を鍛える。
◆5年後なんて考えなくていい。
今日を楽しく、
夢中になれることに集中する。
大事なのは今日楽しく働けるかであって、
自分にできそうなことがあれば
一生懸命やってみる。
その繰り返しだけ…
◆目標はいらない。
がんばり過ぎたら、
やめていい。
始める勇気と同じくらい、
大事なのは「やめる勇気」。
じゃあ、
どうやって、
「やめどき」を見極めるのか?
それは、
「がんばり過ぎている」
と気づいたとき。
◆とにかく進め、
だけでは危険。
いつでもやめられる勇気を持って。
車にアクセルとブレーキがあるから
安全に走れるのと同じように、
人間も「進む」と「止まれ」を
バランスよく使い分けないといけない。
「これ以上進んだら危険だ」と察したら、
迷わずブレーキを踏むのが大事。
◆会社はただの箱でしかない。
愛社精神なんて持たなくていい。
自分はなんのために働くのか。
答えはひとつ。
自分のため。
「会社のため」じゃない。
「家族のため」というのも、
ちょっとあやしい。
人が中心で、
会社が道具。
この関係性を間違えないこと。
◆やりたいことが
なくてもいい。
正直であれば、
道は開ける…
◆準備万端の日は一生来ない。
何も考えず、思いきればいい。
何かを気にするよりも大事にすべきなのは、
自分に嘘をついていないか。
「できることは精一杯やってきたよな?」
と自分に問いかけて、
嘘がなければ、
思いきればいい。
◆人の評価は気にしない。
自分自身が納得できるか。
自分に対して恥ずかしいことは、
誰に何を言われようがやらない。
そういう気持ちが大事。
◆周りになんて、
合わせなくていい。
自分の中のレジスタンス(抵抗)を守り抜く。
同時に、
相手のレジスタンスを尊重する。
◆「明日がある」という希望は持つべきだけれど、
本当に明日が来ると信じてはいけない。
だから、
今日できることは、
今日のうちやる。
今すぐやる。
「何から先にやればいいのか」
なんて考えなくてい。
思いついた順に、
なんでもすぐやれば、
後悔することはない。
◆誰かをあてにしてもしょうがない。
自分を花開かせることができるのは、
自分自身に他ならない。
すべては因果応報(※)。
将来をつくるのは、
今日の自分。
今日の自分を妨げるものは
ぜんぶ捨てて歩いていこう…
※因果応報:
善いのも悪いのも、自分が受ける結果のすべては、自分が作るという意味。
「因果」とは、「原因」と「結果」のことで、「どんな結果にも必ず原因があり、原因なしに起きる結果は一つもない」ということ。
「応報」とは、「原因」に応じた「報い(結果)」が現れる、ということ。
◆不確実で変化の激しい時代。
個人の力が試される時代。
人生100年への備えが必要な時代。
こんな時代で生き残るには、
どのような知識を持ち、
いかなる力を身につければならないのか…
「何も、必要ない。
ぜんぶ、捨てればいい…」
何も持たないからこそ、
過去に縛られず、
未来に悩まず、
今日を大切に生きることができる。