コロナ後の世界 by 大野 和基 (編集)
新型コロナウイルスが国境を超えて蔓延する中、
現代最高峰の知性六人に緊急インタビュー…
世界と日本の行く末について問うた。
このパンデミックは人類の歴史にどんな影響を及ぼすのか。
これから我々はどんな未来に立ち向かうのか。
世界史的、文明史的観点から大胆に予測する…
目次
第1章 独裁国家はパンデミックに強いのか
第2章 AIで人類はレジリエントになれる
第3章 ロックダウンで生まれた新しい働き方
第4章 認知バイアスが感染症対策を遅らせた
第5章 新型コロナで強力になったGAFA
第6章 景気回復はスウッシュ型になる

MEMO
コロナ後の世界
◆GAFAで生き残るのは?
GAFAの中で、
アップル以外の3社は20%強の成長率を維持している。
しかし、
現在の事業を続けていくだけでは
永遠に成長することはできない。
必然的にお互いのビジネス領域を
食い合うことになる。
食い合いはすでに始まっている。
たとえば、
Instagramは、Amazonの領域である
ショッピングに参入している。
Facebookは、
その投稿が消費者の購買欲をかきたてることで、
商品を検索するGoogleやAmazonから
マーケットシェアを奪っている。
そして、
Amazonは検索エンジンとして
Googleに次ぐ第2位で、
扱う商品の数は最大である。
では、
GAFAの中で最も生き残る可能性があるのはどこか?
それは、
Amazonである。
GAFAは様々な分野で食い合っているが、
Amazonと重なるときは、
たいていの場合、
Amazonが勝つ!
◆ポストコロナ時代に重要な4要素
ポスト・コロナの
人生100年時代にあたって、
「無形資産」に加えて、
重要になってくる要素が4つある。
- 透明性 (Transparency)
リーダーや企業が、今何が起きていると判断しているのか、透明性をもって国民や従業員に詳しく説明する。 - 共同創造 (co-creation)
私たちはみんなで一緒になって、協力しあいながら未来を築いていかなければならない。 - 忍耐力 (endurance)
ロックダウンや自粛生活を続けていくには、何よりも重要なことだ。 - 平静さ (composure)
同時に平静さを保つことも大切である。肉体的に健康であるとともに、精神的に健やかさを維持する。
◆ロボットやAIより人間が優れている点とは何か?
それは…
共感力、創造力、理解力、交渉力などだ。
その点では、
高齢者には力を発揮するチャンスが多くある。
もちろん誰でも歳をとれば洞察力が高まるわけではなく、
常に自分の視野を広く持ち、
物事を分析する努力が必要となる。
◆実は何を学ぶかはそれほど重要ではなく、
人生を通して絶え間なく学び続ける姿勢が大事。
その中で自分自身が夢中になれることを
見つけられれば、
あなたの人生は充実したものになる。
◆3つの無形資産
コロナ後の長寿社会を幸せに生きるために、
個人の備えとして何ができるのか?
一般的には、
不動産や株式などの「有形資産」が
重視されがちだ。
だが、
長く働くために強みとなるのは
むしろ「無形資産」である。
お金にはならないが、
人生のあらゆる場面で大きな役割を果たす。
無形資産には3種類ある。
- 生産性資産
価値ある高度なスキル、自分のキャリアにとってプラスとなる人間関係、会社や組織に頼らない自分自身の評判など… - 活力資産
100歳まで幸せに生きるためには、肉体的・精神的な健康が不可欠。運動や食生活を大事にすると同時に、適切なストレス・マネジメントの実践も求められる。 - 変身資産
長い人生を歩んでいく中で、ずっと同じ人間でいるわけにはいかない。会社が倒産するかもしれないし、時代も変化していく。年をとれば心身ともに変化する。変化についていける力を鍛えるためには、自分と向き合いつつ、自分と違う年代、性別、仕事、国籍の人たちと関わっていくことが大事。
◆人生のマルチステージ化
これまでは「教育・仕事・引退」という
「3ステージ」の人生が一般的だった。
だが今後、
このような生き方は時代遅れになる。
一人ひとりが自分にとって理想的な働き方を追求し、
各ステージの順序やタイミングも異なってくる。
つまり、
私たちの人生は、
「マルチステージ」化していくことになる。
人生が3ステージの時代は、
仕事は人生のおよそ半分を占める。
一方でマルチステージになると、
仕事は人生の「一部」に過ぎない。
長き生きればその分、
人は様々なことに挑戦できる。
趣味に没頭するなど、
プライベートも充実していく。
私たちはこれまで、
長時間労働をこなし、
会社に献身的であることを美徳としてきた。
その価値観を捨てることがなかなか出来ないのが、
私たちの直面している心理的障害だった。
ところが、
コロナを経験したことによって、
プレキシブルな働き方を知り、
心理的な障害から解き放たれつつある。
仕事を一生懸命頑張るのは大事なことだが、
「仕事に人生の100%を捧げるな」ということだ。
もちろん、
仕事に集中すべき時期があってよい。
だが、
それは数年(3年程度)に限定すべきである。
◆年をとることはワクワクすること
「Healthy Aging」は
ポスト・コロナ時代において何よりも重要なテーマである。
健康であれば60歳になっても好きな仕事を見つけ、
新しい人生を始めることができる。
年をとることは惨めなことではなく、
ワクワクするものでなければいけない。
まずは長寿をポジティブに捉える。
それこそが高齢化社会の問題を打破するカギである。
その上で政府や企業は、
働きたいと感じている高齢者に、
その機会を与えられるよう努力すべきである。
◆AIにとってデータは本当に「新しい石油」か?
今後AIがどのように発展していくかという
「方向性」に目を向ければ、
中国や一部の巨大IT企業が行っているような、
膨大な量のデータの入手が、
AI開発におけるアドバンテージになるとは
考えにくいのも事実である。
現代社会ではしばしば
「データは新しい石油」だと表現されるが
これが本当かは疑わしい。
なぜか?
我々が現在大量のデータを必要とするのは、
単純に我々が作っているAIの知能が
まだまだ低いことに由来している。
たとえば、
AIに犬と猫の違いを学習させようとしたら、
今は1万枚もの犬と猫の写真のデータを見せないといけない。
一方、5歳の子どもに犬と猫の違いを学習させたいなら、
両方の写真が一枚ずつあれば十分である。
つまり、
5歳の子どもはAIよりはるかに優れた
学習アルゴリズムを持っている。
我々は、
今のAIが5歳児より知能ではるかに劣るという事実を、
膨大なデータを与えることで何とか埋め合わせをしているにすぎない。
しかし、
このまま技術の進歩が続けば、
それほど遠くない未来において
AIは何かを学習するのに大量のデータを
必要としなくなる。
今後、
AIのアルゴリズムが人間のレベルに近づけは近づくほど、
膨大なデータを持つことのアドバンテージは消えていく。
◆テクノロジーの分野で、
最近最大のブレークスルーだったのが
「AlphaZero」の開発である。
画期的だったのは、
このAIが人間の対局データを一切使わず、
ゲームのルールを学んだ後は、
AI内部で自己対戦を繰り返すだけで、
学習し、強くなっていったことである。
今まで何十年もの間、
どうやったらAIが強くなるか、
様々なアルゴリズムをせっせと開発してきた
AI研究者たちの成果が、
一気に「用済み」となって
ゴミ箱に捨てられるようなもの。
囲碁やチェスなどの分野では、
AIは自分たちだけでより最適なアルゴリズムを
次々と発明できるようになった。
この分野に限れば
AIは人間を超えたと言える。
◆パンデミックと闘うということは…
情報戦である。
もし、ウィルスに感染している可能性がある人を
全員リストアップできたならば、
彼らを隔離してケアすればいいだけ。
そのリストを作るために必要なのは、
接触履歴、移動履歴、体温など、
さまざまな個人情報である。
この情報こそが
問題の核心である。
欧米でコロナが蔓延した理由は、
こうした情報がなかったからだ。
欧米社会では政府に個人の情報を
把握されることでプライバシーを失ってしまうのではないかと、
人々はとても恐れた。
しかし、
AIにはビッグデータを集めて誰が感染しているかを見極めること、
人々のプライバシーをきちんと守ること、
その両方を実現することができる。
技術的には可能なのだ。
そして、韓国がこのAIとビッグデータをうまく活用
してコロナの感染を抑えるのに成功した。
◆米国で二極化が進んだ原因とは
この数十年でパソコン、携帯電話、インターネットによって
対面コミュニケーションからの乖離が加速した。
いまや米国は毎日6~8時間は
パソコンやスマホの画面を見つめている。
つまり、
コミュニケーションの相手が人間ではなく、
画面上に映し出される文字になった。
面と向かっては言えなくても、
画面であれば
「お前は本当にひどい奴だ」
と罵(ののし)ることは簡単だ。
この傾向は日本にも見られるが、
日本よりも米国で進んでしまった原因のひとつは、
国土の広さにある。
米国人はとにかく移動する距離が長い。
日本国内でなれば、
どんなに離れていても飛行機や新幹線ですぐの距離だ。
ところが、
米国では3千~5千キロの移動が普通だ。
これは北海道から鹿児島を往復できる距離だ。
その結果、
友人や知人とあまり連絡を取らなくなり、
対面よりも画面でのコミュニケーションに依存しがちになる。
すると、
自分と同じ意見ばかり見るようになり、
気に入らない書き込みを罵倒するようになる。
そして、これと同じことが日本でも起きている。
◆21世紀は中国の時代か?
21世紀は中国の時代だと言われているが、
それは「ありえない」。
なぜか?
中国は致命的な欠点を抱えている。
中国は4千年の及ぶ歴史の中で、
一度も民主主義国家になったことがない。
民主主義国家にも、
もちろん弱みがある。
みんなで議論するので、
何かを決めるまでのスピードが遅い。
中国では政府が何かをすると決断すれば、
すぐに実行できる。
市民の議論を待つ必要がない。
コロナの封じ込めは、
中国のような独裁国家が
得意とするところだとという指摘もある。
ただし、
中国はコロナの発生当初、
その情報を隠蔽しようとした。
これも独裁政権だからできたこと。
歴史上、
いいことだけをした独裁者と
いうのは存在しない
中国も例外ではない。
まとめると、
中国は民主主義国家であったことがない。
それが致命的な弱点である。
中国が民主主義を取り入れない限り、
21世紀が中国の世紀になることはない。
◆ウィルスとは何者か?
ウィルスには意図も目的もない。
脳と言えるものがないので、
意思が存在しない。
人間に危害を加えようとも思っていない。
目的はただひとつ、
「増殖」すること。
ウィルスは人間に感染して増殖し、
人間に自分たちを大量に吐き出させている。
それを繰り返して
感染が拡がっていく。
感染者を死なせてしまうことは
副次的なことであって、
唯一の目的は増殖すること。