AIとBIはいかに人間を変えるのか

AIとBIはいかに人間を変えるのか by 波頭 亮

波頭 亮 (はとう・りょう)

東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。
1988年独立、経営コンサルティング会社(株)XEEDを設立。
幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける一方、明快で斬新なビジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。

人類史上初、我々はついに「労働」から解放される。
この歴史的大転換をどう生きるか!

目次

第1章 AI 人口知能とは
・AIとは AIの発展の歴史
・AIと人間

第2章 ベージック・インカム(BI)の仕組みと効力
・BIの仕組みとメリット
・BIの実現可能性
・民主主義・資本主義とBI

第3章 AI+BIの社会で人間はどう生きるのか
・AIとBIが導く「新しいステージ」
・AI+BIの社会で人間はどう生きるのか

AIとBIはいかに人間を変えるのか

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MEMO

AIとBIはいかに人間を変えるか

新しいステージ

新しいステージ

◆「新しいステージ」において、
人生の意義は「やりたいことを、やる
ことを通じて楽しみや貢献意識や自尊の念を得ることになる。

つまり、
AIが財貨を作り出し、
BIによって誰もが働かずとも生きていけるようになった時に人間がやるべきことは、
心的にも身体的にもポテンシャルをフルに働かせて
経験修練を積むことなのである。

それができた者が、
自らによって与えらる報酬として、
楽しく豊かだと感じられる人生を送ることができる。

◆やりたいことを見つけるために積極的に経験を広げ、
楽しむために修練を積むことが、
「新しいステージ」で豊かな人生を享受するための要件なのである。

◆人間は「自由」や「慈悲」といった抽象的な概念すら、
何らかの具体的な経験に結びつけなければ理解できない。

「これが自由なのかも…」
とか
「これは自由ではないな…」
と感じる実際の経験を重ねながら、
複数の状況や事実から実感として得られた「自由」の感覚を重ね合わせて、
抽象的な「自由」の概念を獲得する。

人間は経験を通じてものを分かることができる存在なのである。

従って、
ガーデニングや釣りやバイオリン演奏といった具体的な行為は、
当然のことではあるが、
それを実際にやってみないとその難しさも楽しさも実感できない。

◆豊かになるために必要かつ有効な資質は、
社会が「新しいステージ」にシフトすることによって
金を稼ぐ能力」から「やりたいことを見出す能力」へと転換する。

逆に言えば、
これから求められるのは
「お金を稼ぐ能力」ではなく「やりたいことを見出す能力」ということになる。

では、
「やりたいことを見出す能力」を身につけるには
どうすればよいのか?

答えは、
シンプルである。

経験」と「修練」を積むことである。

別の言い方をすれば、
心身両面で人間らしさを大切にする
ということでもある。

◆したいことは何でもできるだけの自由度を誰もが得た時に、
何をすれば自分が一番嬉しいのか、
一番豊かな気持ちになれるのかを自分自身で見い出せないと、
「AI+BI」が与えてくれた自由度を豊かな生活と充実した人生に繋げることができない。

◆AI+BIによって世の中における経済の重要度と存在感が
低下した社会になると、
万能のお金」の魔法は消えてしまう。

◆経済が価値の基盤である社会では、
お金があれば物財だけでなく、
健康や自由や人からの敬意や好意までもが得られるわけであり、
経済が神である世の中においてはお金はまさに「魔法の杖」なのである。

◆現代のように経済の重要度と存在感が大きな時代には、
経済力を得るための資質、
極論を言えば「金を稼ぐ能力」を身につけることが
豊かな生活、充実した人生を享受するために
必要かつ、有効であった。

◆AI+BIが生きるための糧を保証してくれて、
必需と外的強制が無くなった世界において、
人が豊かな生活と充実した人生を手に入れるために必要な資質は
やりたいことを見出す能力」ということになる。

◆ユートピアで幸せな人生を送るには
ひとつだけ条件がある。

何か?

やりたいことを自ら持たなければならないことだ。

そして、
「それをやること自体で楽しみ満足や自尊を得る」
ことができるような、
やりたいことを内発的に生み出すのは人間にとって意外に難しいことである。

◆生きるために必要な労働から解放されて、
自らがやりたいことを行い、
そのやりたいことをやること自体で楽しみ、
満足や、自尊の念を得ることが
「新しいステージ」において仕事や活動を行う目的となる。

◆生きるために働く必要の無い状態に置かれても、
人間はただ遊興に身をやつすだけでもなく、
無為に時をやり過ごすわけではない性向を
本能のうちに持っていると考えて良い。

従って、AIとBIが導く「新しいステージ」が到来して
世の中から「労働」が無くなっても、
人は何らかの「仕事」や「活動」を行うと考えられる

◆生きるための労働が不要になれば、
多くの人々は働かなくなるのかというと、
実は人間はそのようにはできていない

人間は生きるために労働する必要が無くとも、
何らかの仕事や活動を行うものである。

この例として、
ギリシア時代の市民が挙げられる。

農業や建設といった人々が生きるための労働は
もっぱら奴隷が担っていたために、
市民は自らが労働する必要は無かった。

ではギリシア時代の市民は
日々のうのうと遊んでいたのかというと、
むしろ逆である。

市民は、
人生の時間とエネルギーを
学問や芸術や政治に注ぎ込んで
毎日を送っていた。

現在の学問、
芸術のルーツは
すべてギリシアにあると言っても過言ではない。

◆仕事の3つの種類

仕事の種類について3つに分ける考え方がある。

  • 労働(Labor):
    生きるための糧を得るためにやるもので、非自発的、受動的な姿勢での取り組みになる。単純作業や肉体的負担が大きいものであることが多い。
  • 仕事(Work):
    自分の特性を活かしたり、自己成長に繋げたいとする動機を以て、積極的に選択して就くもの。就業の動機に自己実現や興味・関心の追求といった金銭的報酬以外の要素も入っていることがポイント。また、取り組み姿勢も自発的・能動的である。タスクのタイプは高度な知識や技術・技能を要するものが多く、報酬水準も高い場合が多い。
  • 活動(Action):
    労働を提供している対価(主に金銭的報酬)を得ようとするのではなく、人や社会との交流を通じて自己実現や社会貢献をしようとするものである。自発的・能動的に行うものであるが、対価の獲得を意識しない点が仕事(Work)との大きな相違である。

◆「働く必要が無い」というのは
「働くべきではない」という意味とは全く異なる。

「新しいステージ」においては
「働く」という言葉の意味合いや、
人生における「仕事」の位置づけが、
これまでとは大きく転換することになる。

◆AIとBIによって人間が生きるために働くことから解放されて、
生きるための労働以外の活動を行うために生きる社会になる。

この特徴こそが、
これから到来する社会が歴史的に
「新しいステージ」であることの核心である。

◆AIとBIによって全て生産してくれる可能性がある。

そして、人間が働かなくても人々が生きていくことができる社会は人類史上初めてのことである。

また「働かざる者、食うべからず」という規範・理念は、
これまで洋の東西、時代の古今を問わず共有されてきたものであり、
歴史的にこれまで一度も廃棄されることがなかった。

その普遍的規範が初めて覆されることになる。

◆AIとBIによって我々人類は
これから歴史的に「新しいステージ」に立つことになるが、
その時、「働かなくても、食って良し」という理念が
「新しいステージ」の社会基盤を成す価値観・思想となる。

◆共産主義国や社会主義国が崩壊した原因は
市場機能が無いことによる非効率な経済体制にあり、
「働かなくても、食って良し」の理念にあったわけではない。

◆共産主義として現在も続いている国家が2つ存在する。

それは中国とキューバである。

中国は1993年に政治体制的には共産党一党制を残したまま、
市場主義と私有財産制を取り入れた「社会主義市場経済体制」に移行して、
今も目覚ましい成長・発展を遂げている。

キューバは食糧も教育も医療も無料であり(即ちBIの現物支給である)、
また政治家も医者も郵便配達員も清掃係も原則的に同程度の給与という、
文字通りの結果平等の分配を実行し、
また政治家や官僚の腐敗も起こさなかったため、
一人当たりのGDPは低いものの国家体制は共産主義のまま継続しているし、
国民の満足度も高い。

◆共産主義崩壊の要因には、
官僚機構の腐敗、資本主義国家以上の階級社会化、
自由抑圧に対する不満等々複数あるが、
最大の原因は市場主義を採用しなかったことによる
経済活力の低下である。

◆ギリギリの生産力と集団の人数バランスで営まれているコミュニティーにおいて
働かない者にまで食糧を分配してしまうと、
そのコミュニティーの全体が飢えてしまうことになる。

従って、
働かない者には食わせないという規範は、
その集団を維持するためには当然の掟とも言うべき、
集団が生き延びるための規範であった。

このように「働かざる者、食うべからず」は、
「殺すなかれ」「盗むなかれ」「偽るなかれ」と並んで、
単なる文化的美徳の域を超えた、
人類にとって進化論的合理性を持つ、
現実的に極めて重要な社会規範なのだ。

しかし、
集団に圧倒的な生産力があれば、
働かない者にも食わせても、
その集団が飢えたり社会が衰退したりしてしまうことは無いわけであり、
この規範の必然性は根拠を失うことになる。

つまり圧倒的に生産力がある社会であれば、
「働かなくても、食って良し」にしたとしても、
その社会にとっての致命的な不都合は無いと言える。

◆「働かなくても、食って良し」というBIの基本理念に基づいた再分配が採用されてこそ
AIという歴史的技術革新を社会の果実とすることができる。

◆AIが世の中を豊かにするために不可欠なのが「再分配」であり、
今後も市場主義経済のメカニズムを保ち、
経済を活性化させていくための再分配の切り札としては
BIが最も有効であるという意味において、
AIとBIは不可分に結びつくことになる。

つまり、
AIとBIが人類を「新しいステージ」に
導いてくれる両翼となる。

◆AIが大量生産を担ってくれる状況においては、
消費者となる多くの人々の需要を喚起するために、
BIによる再分配の規模と給付水準をどれくらいに設定するのかという事項が、
国家にとって最も重要な経済政策になってくる。

◆20世紀初頭、
アメリカの自動車会社フォードは徹底的な
生産性向上のためにベルトコンベア方式をとった一方で、
1日5ドルという当時では破格の報酬(他の企業の約2倍)を
従業員に支払っていたが、
これには優秀な人材を集めるためというだけでなく、
大量生産した製品(自動車)を大量消費させるための
購買力・需要を作り出すという狙いもこめられていた。

生産された財貨は、
需要があってこそ意味を持ち、
そして生産と消費の両面が揃ってこそ、
生産者も消費者も豊かになっていく。

◆新しい時代のBIは生きていくために必要な金額というよりは、
様々な楽しみや自由な活動を支えることができるだけの金額として
設計した方が経済全体の活性化に有効であり、
支給される消費者にとってだけでなく、
財・サービスを供給する側の資本家にとっても得るものは大きくなる。

◆今後AIがますます発達し、
技術的生産性が現在よりもはるかに向上したとしても、
それだけで世の中が豊かになるわけではない。

AIが生み出す財やサービスを人々が消費することができてこそ、
世の中が豊かになる。

従って、
AIがほとんどの生産活動を代替するようになった社会では、
その生産物を消費することが人間の経済的役割となる。

そのためには再分配が不可欠であり、
再分配が実現されてこそ経済の羽根車が勢い良く回って経済成長が実現する。

◆生産活動に関われない人間は消費の原資を持てないが、
人々はものが要らなくなるわけではない。

人間は働かなくてもご飯は食べるし、
洋服も着る。

洗濯機もエアコンも欲しい。

従って、
AIが効率よく生産してくれる財・サービスを
人々に行き渡らせるためには、
消費者となる一般の人々に購買力を提供する必要がある。

つまり生産と供給を担うAIの所有者・資本家の側から
消費者に対して再分配を行う必要が生じる。

◆人間は、
経済活動において「生産」と「消費」の2つの役割を担っている。

ところが、第一次・第二次産業革命において蒸気機関や内燃機関・電力が発明・導入され、
生産における物理的パワーが機械によって代替えされた。

そして、第三次・第四次産業革命でITやAIによって知的作業までもが機械に代替えされるようになると、
生産活動の大半が人間の手を離れることになる。

◆今後AIの技術が更に向上し、
ハードウェアの性能も上がっていくと、
知的労働において人間がたちうちできる分野はほとんど無くなってしまうだろう。

こうなった時、
社会を根底から崩壊させてしまいかねない次の2つの重大な
構造的問題が起きる恐れがある。

  • 資本家による社会の完全支配状態
  • 消費の減退による経済の崩壊

◆第一次・第二次革命を起こした発明は、

  • 人間が担っていた物理的パワーを代替する技術であった
  • 様々な応用に展開することができる汎用的インフラ技術であった

という2点が有史以来発明されてきた他の様々な技術と大きく異るポイントであり、
そしてこの2点が満たされたからこそ、
「マルサスの罠」を超えて人々に豊かな生活をもたらすことができた。

◆BIはAIが生産活動の大半を担うようになった時に
大多数の人々に生活の糧を保証する、
人間が生きていくための新しい社会の仕組みであり、
新しい社会を回すための方法論である。

こうしてAIとBIが結びついて、
人類は歴史的に「新しいステージ」に移ることができる。

◆資本主義と民主主義によって構築されている現代社会は、
資本主義のメカニズムによって必然的に生じる格差と貧困問題によって閉塞し、
破綻しかかっているが、
これを打開できるのがBIである。

BIによって実質的な民主主義を実現し、
資本主義の活力を復活させることができる。

◆AIとBIによって、
人間は食うため、
生きるための労働から解放されることになる。

これは人類史上初めてのことであり、
人間は重大な歴史的意義を持つ
「新しいステージ」に立つことになる。

AI:Artificial Intelligence(人口知能)
BI:Basic Income(ベーシックインカム)

◆BI(ベーシックインカム)は、
「働かざる者、食うべからず」
という歴史上の規範を覆し、
「働かなくても、食って良し」
という新しい規範を打ち立てることになる。

そしてBIがもたらすこの規範が、
民主主義の基本理念である
機会の平等を現実的に担保することになり、
民主主義を十全(万全)な形で完成させる。

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