ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か by エリヤフ・ゴールドラット

エリヤフ・ゴールドラット
イスラエルの物理学者。1948年生まれ。
TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)の提唱者として知られる。
生産管理の手法をTOCと名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立した。
その後、TOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与えた。

企業の最大の目的は何か。
それは「利益を出すこと」である。

目次

I   突然の閉鎖通告
II  恩師との邂逅(かいこう)
III   亀裂
IV  ハイキング
V   ハービーを探せ
VI  つかの間の祝杯
VII  報告書
VIII 新たな尺度

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

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MEMO

The Goal (ザ・ゴール)

ボトルネック(TOC:theory of constraints)【生産性】

TOC(theory of constraints)は「システム改善のツール」である。

TOCは、現場での個別の工程の生産性や品質の改善ツールではない。

あくまでも企業とか工場全体を一つのシステムと見なし、
そのシステムの目的を達成するための改善手法である。

企業の究極の目的は「現在から将来にかけて金を儲け続けること」である。

企業が金を儲けるには、スループットを増やすか、在庫を減らか、経費を減らすという3つの方法しかない。

TOCでは、このうちスループットを増やすということが最も重要なことで、次いで在庫を減らすことであり、経費節減は重要性が低いと考える。

スループットとは販売を通じて金を儲ける割合のことで、売上げから資材費を引いた金額に等しい。

たとえば、ある企業が1台100万円の販売価格で、資材費が30万円の製品を1種類だけ売っているとする。

その会社には、1台売るたびに70万円の利益が入ってくる。

つまりスループットとは、製品を売ることによって得られる
利益の増分のことである。

では、この製品を1年間で100個売ったら、利益が7000万円になるかと言えばそうはならない。

資材費以外に工場や販売チャネルを維持するための固定的な経費がかかるからだ。

仮にこの企業の固定費が年に5000万円とすれば、利益は7000万円から5000万円引いた2000万円ということになる。

そこで工場のスループットを最大化するには、実際に顧客に売れる製品のアウトプットを最大にすればいいことになる。

一見、単純なことに思えるかもしれないが、実際にはさまざまな要因が重なって非常に複雑な問題になる。

まず工場では、製品ができるまでに多くの工程を通っていくが、そのどこかが必ずボトルネックになっている。

このボトルネックの問題を複雑にしている要因は、統計的にバラツキ、つまり生産の途中で起こるさまざまな不測事態である。

多くの工場は自動化が進み、コンピュータ管理がされているのですべてが計画どおりに進むと思われるが、現実にはさまざまなトラブルが常に起きていて生産は計画どおりには進まない。

このようなボトルネックと統計的バラツキという、工場が本来抱えている問題をさらに増幅させるのが、従来の経理システムから導かれた評価指標である。

従来の経理システムでは、工場全体の能率は個別工程の生産性の緩和であると仮定し、個別工程の生産性を上げるように仕向ける。

ボトルネックがあるにもかかわらず、工場中のあらゆる機械を目いっぱい働かせようとすると、結局のところ工場内の在庫がどんどん増えるだけで、工場としてのアウトプットは増えない。

しかし経理部門は、在庫は工場全体として評価して、それを減らすように圧力をかけるので工場長としてはまったく矛盾したことを言われていることになる。

TOCが主張しているのは、このような従来の経理システムが
TOCのような全体改善手法の妨げになっているということである。

TOCの基本原理は、第一に工場全体のアウトプットを上げるためには、ボトルネック工程のアウトプットを最大限にするように工場内の改善努力をそこに集中させることだ。

このボトルネックに集中するということは、われわれにフォーカスすることの重要性を教えてくれる。

経営者は、経営結果に最も影響が出る項目に自らの関心を集中させれば、最小限の努力で最大の効果を出すことができる。

それと同様に工場内では、工場の経営結果に最も影響が出るボトルネックに全員の関心を集中させれば、いままでより少ない努力ではるかに大きな効果が出せるということになる。

TOCの第二の原理は、ボトルネック以外の工程では、ボトルネック工程より速くモノを作ってはいけないということだ。

どうせ工場全体のアウトプットがボトルネック工程の能力で制約されるのであれば、ボトルネック以外の工程はボトルネック工程と同じペースで(つまりフル操業せずに)動かす。

こうすれば工程の間に余計な在庫ができないので、製造期間は非常に短くなり、顧客から受けた注文を確実に短期間で
納めることができるようになる。

ただし、TOCでは工場全体の在庫をゼロにするのではなく、
ボトルネックの前には適切な在庫を置くべきだと考える。

これは、工場のなかの加工時間には統計的バラツキがあるため、仮にボトルネック工程前に在庫がなく、その前工程のどこかでトラブルが起こって加工時間が余分にかかると、ボトルネック工程が加工を開始しようとした際に加工すべき製品(部品)がなくなるからだ。

ボトルネック工程が少しでも仕事がないために動かないと、
工場全体が停止したのと同じことになる。

これによって失われたアウトプットは永久に取り戻せない。

これを防ぐための在庫(バッファー)をボトルネック工程の前に置く。

つまり、TOCでは在庫を最小限にするというのはあくまでもアウトプットを最大限にするという範囲内で行うべきであり、それ以上でもそれ以下でも在庫を持ってはいけない。

工場内に在庫をどれだけ持つべきかということは、工場関係者を長年悩ませてきた問題である。

在庫が多いと製造期間が長くなり、品質が下がり、工場の生産性が低下することは広く知られてきた。

しかし、工場内の在庫をゼロにすると各工程の統計的バラツキのおかげで多くの工程で手空き(つまり人や機械が仕事がなくなる)状態が生じて、工場としてのアウトプットが低下してしまう。

そこで大部分の工場では、最低でもすべての工程で手空きが生じない程度の在庫を持って運用していた。

しかしTOCでは、ボトルネック工程の前にある在庫以外の在庫は工場全体のアウトプット増大に貢献しないのでなくしてしまえばよいという、このジレンマに対する実に鮮やかな解決法を提示した。

TOCの原理は、システムレベルの改善手法であるので、システムの範囲を広げていけば、生産現場だけに限らずサプライチェーン全体とか、企業全体にも容易に適用できる。

たとえば工場という範囲で考えれば、工場内のボトルネックを改めればいいことになるが、サプライチェーン上流の部品メーカーがボトルネックであることも少ないない。

多くの工場では部品メーカーがボトルネックになっているので、サプライチェーン全体を見なければ問題が解決できなくなっている。

TOCは企業だけではなく、フリーランサーやビジネスパーソンにも応用できるのでぜひ活用してほしい。

投稿者: book reviews

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